その舌圧子、ただのゴミじゃない―感染性廃棄物処理の3原則
第119回医師国家試験 F問題 第35問
国試問題にチャレンジ
医療機関での感染性廃棄物の処理で正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.収納容器を満杯まで使用する。
- b.収納容器を運搬する際は密閉する。
- c.注射針を段ボール容器に廃棄する。
- d.発生したその場で容器に収容する。
- e.使用した舌圧子は処理の対象となる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
感染性廃棄物とは、病原体が含まれる・付着している、またはそのおそれのある廃棄物で、唾液などの体液が付いた舌圧子も対象となります。取り扱いの目的は、針刺しなどの曝露防止と病原体の拡散防止であり、発生したその場で分別・収納し、容器は満杯にせず8割程度で交換し、運搬時には密閉します。注射針などの鋭利物は段ボールではなく耐貫通性の堅牢な容器に入れ、バイオハザードマークは赤=液状・泥状、橙=固形状、黄=鋭利物と色分けされます。使用済み針はリキャップせず、判断に迷う物は感染性廃棄物として扱い、医療機関は委託後も最終処分まで責任を負います。こうした原則は、自分自身と同僚、廃棄物に関わるすべての人を守るための日常的な感染対策の基本です。
解答・解説
正解はb, d, eです
問われているテーマ
医療機関から出る廃棄物のうち、病原体が含まれる、付着している、またはそのおそれがあるものを感染性廃棄物という。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では「特別管理廃棄物」に位置づけられ、環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に従って処理する。
正解を導く考え方
感染性廃棄物の取り扱いの目的は、(1)医療従事者・清掃作業員・運搬業者の針刺し事故や曝露を防ぐこと、(2)病原体を周囲に拡散させないこと、の2点に集約される。これに照らして各選択肢を検討する。 ・容器を詰めすぎると蓋が閉まらず、内容物があふれたり針が飛び出したりする→満杯まで使うのは誤り。 ・運搬中の飛散・流出を防ぐには密閉が必須である。 ・鋭利物は、針が突き抜けない耐貫通性の容器に入れる→段ボールは不適切。 ・持ち歩くほど落下や接触の機会が増えるため、発生した場所ですぐに容器へ入れる。 ・患者の唾液など体液が付着した器具は感染性廃棄物として扱う→使用済み舌圧子は対象となる。
選択肢考察
- ×a. 収納容器を満杯まで使用する。
容器を満杯にすると蓋が確実に閉まらず、内容物が漏れ出たり、中の注射針が開口部から突き出して針刺し事故を起こしたりする危険がある。容量の8割程度に達した時点で密閉して交換するのが一般的な運用である。
- ○b. 収納容器を運搬する際は密閉する。
院内での移動や処理業者への引き渡しの際、容器が開いていると転倒や振動で内容物が飛散・流出し、病原体が拡散するおそれがある。そのため運搬時には容器を確実に密閉することが求められる。
- ×c. 注射針を段ボール容器に廃棄する。
注射針やメスなどの鋭利物は、段ボールのような容器では容易に貫通し、取り扱う人の針刺し事故につながる。鋭利物は、プラスチックや金属製など耐貫通性があり堅牢で、密閉できる専用容器に廃棄しなければならない。段ボール容器は、血液が付着したガーゼなど鋭利でない固形物向けに、内袋と組み合わせて用いられるものである。
- ○d. 発生したその場で容器に収容する。
使用済みの針や汚染物を手に持って移動したり一時的に別の場所へ置いたりすると、落下や接触による針刺し・汚染の機会が増える。発生した場所(ベッドサイドや処置室など)ですぐに専用容器へ入れることで、曝露と病原体の拡散を最小限にできる。
- ○e. 使用した舌圧子は処理の対象となる。
舌圧子は口腔内に直接触れるため、使用後は患者の唾液(体液)が付着している。病原体が付着しているおそれのある廃棄物に該当するので、感染性廃棄物として処理の対象となる。
感染性廃棄物の定義と判断の目安
感染性廃棄物とは、人が感染し、または感染するおそれのある病原体が含まれ、もしくは付着している廃棄物、またはそのおそれのある廃棄物をいう。マニュアルでは主に次の観点から判断する。 ・形状:血液・血清・血漿・体液、手術などで生じる病理廃棄物(臓器・組織など)、病原微生物に関連した試験・検査に用いたもの、血液などが付着した鋭利物 ・排出場所:感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来、集中治療室、検査室など ・感染症の種類:感染症法に規定される感染症の治療・検査等に使用された後に排出されたもの 具体例として、血液や体液が付着したガーゼ・脱脂綿・包帯・紙おむつ、注射針・シリンジ・輸液セットなどがある。一方、未使用で汚染のない物品などは原則として感染性廃棄物に当たらない。判断に迷う場合は安全側に倒して感染性廃棄物として扱う。
バイオハザードマークの色分け
感染性廃棄物の容器には、内容物の性状に応じた色のバイオハザードマークを付ける。 ・赤:液状・泥状のもの(血液など)→ 漏れない密閉容器 ・橙(オレンジ):固形状のもの(血液付着ガーゼなど)→ 丈夫なプラスチック袋を二重にする、または堅牢な容器 ・黄:鋭利なもの(注射針、メスなど)→ 耐貫通性のある堅牢な容器
取り扱いの原則
・発生時点で分別し、その場で専用容器に収納する。 ・容器は詰めすぎず(8割程度で交換)、運搬時は密閉する。 ・使用済み注射針はリキャップしない(針刺し事故の主要因であるため)。 ・医療機関は排出事業者として、処理を委託した後も最終処分までの責任を負い、マニフェスト(産業廃棄物管理票)で処理の流れを確認する。
POINT
・感染性廃棄物は、病原体が付着している、またはそのおそれがある廃棄物。体液(唾液を含む)が付いた舌圧子も対象。 ・発生したその場で分別・収納する。 ・容器は満杯にせず8割程度で交換し、運搬時は密閉する。 ・鋭利物は耐貫通性の堅牢な容器(黄色のバイオハザードマーク)へ。段ボールは不可。 ・バイオハザードマーク:赤=液状・泥状、橙=固形状、黄=鋭利物。
