StudyMed医師国家試験

三つの弧が告げる「生物学的危険」―バイオハザードマークと医療廃棄物の色分け

第109回医師国家試験 H問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第109回 H問題 第3問

容器に付された標示を別に示す。  正しいのはどれか。

第109回 H問題 第3問の問題画像
  1. a.劇薬
  2. b.爆発物
  3. c.有毒ガス
  4. d.感染性廃棄物
  5. e.放射性廃棄物

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療現場で毎日のように目にする標示の意味を問う問題だよ。ポイントはマークの「形」と「色」の2つ。形で何の危険を示すかが決まり、色で中身の性状がわかる。まずは図のマークを見て、何を連想するかな。
医学生医学生
赤い丸から三日月みたいな弧が3つ広がっている形ですね。放射線のマークにも少し似ている気がして、一瞬迷いました。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。放射性物質を示すのは、中心の円のまわりに扇形の羽根を3枚配した「三葉マーク」。羽根が平たい扇形で、弧が絡み合うような形ではない。図のように中心の小円から三つの三日月状の弧が放射状に広がるマークは「バイオハザードマーク」なんだ。
医学生医学生
バイオハザード、つまり生物学的な危険ということですね。臨床実習で採血をしたとき、使った針を捨てる箱にこのマークがついていました。
ドクタードクター
よく見ていたね。バイオハザードマークは、病原体などによって人に感染を起こすおそれのあるものを示している。医療機関では、感染性廃棄物を入れた容器にこのマークを付けることが、環境省の感染性廃棄物処理マニュアルで推奨されているんだ。だから正解は感染性廃棄物になる。
医学生医学生
針の箱は黄色だった気がしますが、今回のマークは赤ですよね。色に意味があるんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。色は内容物の性状を表している。赤は血液や体液など液状・泥状のもので、密閉できる容器に入れる。橙は血液が付いたガーゼや手袋など固形状のもの。黄は注射針やメスなど鋭利なもので、針が突き抜けない堅牢な容器に入れる。つまり今回の赤いマークは、液状・泥状の感染性廃棄物用ということになる。
医学生医学生
「赤は血液、黄は鋭利」と覚えればよさそうですね。ほかの選択肢の標示はどう違うんでしょうか。劇薬は薬理学の講義で習った記憶があります。
ドクタードクター
劇薬は医薬品医療機器等法で表示が決められていて、容器に白地に赤枠・赤字で品名と「劇」の文字を書く。毒薬は黒地に白枠・白字で「毒」、しかも鍵をかけて保管する必要がある。いずれも文字による表示で、図のようなマークではないよ。
医学生医学生
爆発物や有毒ガスはどうですか。化学系の実験室でひし形のマークを見たことがあります。
ドクタードクター
それがGHS、つまり化学品の分類および表示に関する世界調和システムの絵表示だね。赤枠のひし形の中に、爆発物なら爆発する物体、急性毒性ならどくろが描かれる。毒性のある高圧ガスは高圧ガス保安法などで規制され、容器に「毒」の文字やガス名が表示される。どれもバイオハザードマークとは形がまったく違う。
医学生医学生
形を知っていれば一目で区別できる問題なんですね。三葉マークとバイオハザードマークだけは混同しないように気をつけます。
ドクタードクター
その通り。ここからは臨床で大事な話をしよう。感染性廃棄物は廃棄物処理法で「特別管理廃棄物」に分類されていて、処理の責任は排出事業者、つまり医療機関側にある。業者に渡せば終わり、ではないんだ。
医学生医学生
病院が最後まで責任を持つということですね。分別を間違えると問題になりそうです。
ドクタードクター
そうなんだ。特に注意したいのが鋭利なもの。注射針は血液が付いていなくても感染性廃棄物として扱う。そして針刺し事故は、リキャップのときや、廃棄容器に捨てるまでの間に起こりやすい。使った針はリキャップせず、その場ですぐ専用容器に捨てるのが基本だよ。
医学生医学生
OSCEの練習でも「リキャップ禁止」と何度も言われました。容器がいっぱいになる前に交換することも大切ですね。
ドクタードクター
よく理解しているね。マークの意味を知ることは、自分と周囲のスタッフ、そして廃棄物を扱う人たちを感染から守ることにつながる。小さな標示だけれど、医療安全の基本なんだ。

まとめ

中心の小円から三つの三日月状の弧が放射状に広がるマークはバイオハザードマークで、感染性廃棄物を示します。色は内容物の性状を表し、赤は血液などの液状・泥状、橙は血液付着ガーゼなどの固形状、黄は注射針などの鋭利なものに用いられます。放射性物質は扇形の羽根を持つ三葉マーク、劇薬は白地に赤枠赤字の「劇」、毒薬は黒地に白枠白字の「毒」、化学品の危険性はGHSの赤枠ひし形の絵表示で示され、形の違いで区別できます。感染性廃棄物は廃棄物処理法の特別管理廃棄物であり、排出者である医療機関に処理責任があります。標示の意味を正しく理解し、針のリキャップをせず適切に分別することは、針刺し事故の防止と医療安全の基本となります。

解答・解説

正解はdです

本問は、医療現場で日常的に目にする標示(マーク)の意味を問う問題である。 図の標示は、中心の小さな円から三つの三日月状の弧が放射状に広がる赤色のマークであり、これは「バイオハザードマーク」である。バイオハザード(biohazard)とは「生物学的な危険」を意味し、病原体などによって人に感染を起こすおそれのあるものであることを示す。医療機関では、感染性廃棄物を収納した容器にこのマークを付けることが、環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」で推奨されている。 さらにこのマークは色によって廃棄物の性状を区別しており、本問の赤色は血液などの液状・泥状の感染性廃棄物を表す。 他の選択肢の標示(劇薬の表示、放射性物質を示す三葉マークなど)はいずれも形が全く異なるため、マークの形を知っていれば容易に判別できる。

選択肢考察

  1. ×a.  劇薬

    誤り。劇薬は医薬品医療機器等法(旧薬事法)で規定され、容器や被包に「白地に赤枠、赤字」で品名と「劇」の文字を表示することが義務づけられている。また、劇薬は他の医薬品と区別して貯蔵しなければならない。図のようなマークではない。なお、毒薬は「黒地に白枠、白字」で品名と「毒」の文字を表示し、他と区別したうえで鍵をかけて保管する必要がある。

  2. ×b.  爆発物

    誤り。爆発のおそれのある物質の表示には、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の「爆弾の爆発」の絵表示(赤枠のひし形の中に爆発する物体を描いたもの)などが用いられる。火薬類は火薬類取締法により製造・保管・取り扱いが規制されている。図のバイオハザードマークとは無関係である。

  3. ×c.  有毒ガス

    誤り。毒性のある高圧ガスは高圧ガス保安法などによって規制されており、容器には「毒」の文字やガスの名称の表示が求められる。化学品としての急性毒性はGHSの「どくろ」の絵表示で示される。図のマークは有毒ガスを示すものではない。

  4. ○d.  感染性廃棄物

    正しい。図はバイオハザードマークであり、感染性廃棄物であることを示す。感染性廃棄物とは、医療機関などで発生し、人が感染するおそれのある病原体が含まれたり付着したりしている、またはそのおそれのある廃棄物であり、廃棄物処理法では「特別管理廃棄物」として扱われる。マークの色は内容物の性状で区別され、赤色は血液などの液状・泥状のもの、橙色は血液の付着したガーゼなどの固形状のもの、黄色は注射針やメスなど鋭利なものを表す。本問の図は赤色であり、液状・泥状の感染性廃棄物に用いられるものである。

  5. ×e.  放射性廃棄物

    誤り。放射性物質や放射線の存在を示す標識は、中心の円の周りに3枚の羽根を配した「三葉マーク(放射能標識)」であり、図のマークとは形が異なる。放射性同位元素を含む廃棄物の保管・廃棄は、放射性同位元素等の規制に関する法律(旧放射線障害防止法)や医療法施行規則などで定められている。

感染性廃棄物とバイオハザードマーク

感染性廃棄物は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)において特別管理廃棄物に分類され、排出事業者(医療機関など)が責任をもって処理する。処理にあたっては、他の廃棄物と分別し、内容物が飛散・流出しない容器に収納して、バイオハザードマークを付けることが推奨されている。マークの色による区別は以下のとおりである。 ・赤色:液状または泥状のもの(血液、体液など)→ 密閉できる容器に収納 ・橙色:固形状のもの(血液が付着したガーゼ、手袋など)→ 丈夫なプラスチック袋を二重にして使用するか、堅牢な容器に収納 ・黄色:鋭利なもの(注射針、メス、ガラス片など)→ 耐貫通性のある堅牢な容器に収納 なお、注射針などの鋭利なものは、血液が付着していなくても感染性廃棄物として扱う。

医療現場で知っておくべき主な標示

・毒薬:黒地に白枠、白字で品名と「毒」。他と区別し、鍵をかけて保管 ・劇薬:白地に赤枠、赤字で品名と「劇」。他と区別して保管 ・麻薬:容器に「麻」の記号。鍵をかけた堅固な設備内に保管 ・放射性物質:三葉マーク(放射能標識) ・化学品の危険有害性:GHS絵表示(炎、どくろ、爆弾の爆発、腐食性、健康有害性など、赤枠のひし形)

POINT

・三つの弧が組み合わさったマークはバイオハザードマークで、感染性廃棄物を示す。 ・色の区別:赤=液状・泥状(血液など)、橙=固形状(血液付着ガーゼなど)、黄=鋭利なもの(注射針など)。 ・放射性物質は三葉マーク、劇薬は白地に赤枠赤字の「劇」、毒薬は黒地に白枠白字の「毒」。 ・感染性廃棄物は廃棄物処理法の特別管理廃棄物であり、排出者である医療機関に処理責任がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。