三つの弧が告げる「生物学的危険」―バイオハザードマークと医療廃棄物の色分け
第109回医師国家試験 H問題 第3問
国試問題にチャレンジ
容器に付された標示を別に示す。 正しいのはどれか。

- a.劇薬
- b.爆発物
- c.有毒ガス
- d.感染性廃棄物
- e.放射性廃棄物
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
中心の小円から三つの三日月状の弧が放射状に広がるマークはバイオハザードマークで、感染性廃棄物を示します。色は内容物の性状を表し、赤は血液などの液状・泥状、橙は血液付着ガーゼなどの固形状、黄は注射針などの鋭利なものに用いられます。放射性物質は扇形の羽根を持つ三葉マーク、劇薬は白地に赤枠赤字の「劇」、毒薬は黒地に白枠白字の「毒」、化学品の危険性はGHSの赤枠ひし形の絵表示で示され、形の違いで区別できます。感染性廃棄物は廃棄物処理法の特別管理廃棄物であり、排出者である医療機関に処理責任があります。標示の意味を正しく理解し、針のリキャップをせず適切に分別することは、針刺し事故の防止と医療安全の基本となります。
解答・解説
正解はdです
本問は、医療現場で日常的に目にする標示(マーク)の意味を問う問題である。 図の標示は、中心の小さな円から三つの三日月状の弧が放射状に広がる赤色のマークであり、これは「バイオハザードマーク」である。バイオハザード(biohazard)とは「生物学的な危険」を意味し、病原体などによって人に感染を起こすおそれのあるものであることを示す。医療機関では、感染性廃棄物を収納した容器にこのマークを付けることが、環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」で推奨されている。 さらにこのマークは色によって廃棄物の性状を区別しており、本問の赤色は血液などの液状・泥状の感染性廃棄物を表す。 他の選択肢の標示(劇薬の表示、放射性物質を示す三葉マークなど)はいずれも形が全く異なるため、マークの形を知っていれば容易に判別できる。
選択肢考察
- ×a. 劇薬
誤り。劇薬は医薬品医療機器等法(旧薬事法)で規定され、容器や被包に「白地に赤枠、赤字」で品名と「劇」の文字を表示することが義務づけられている。また、劇薬は他の医薬品と区別して貯蔵しなければならない。図のようなマークではない。なお、毒薬は「黒地に白枠、白字」で品名と「毒」の文字を表示し、他と区別したうえで鍵をかけて保管する必要がある。
- ×b. 爆発物
誤り。爆発のおそれのある物質の表示には、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の「爆弾の爆発」の絵表示(赤枠のひし形の中に爆発する物体を描いたもの)などが用いられる。火薬類は火薬類取締法により製造・保管・取り扱いが規制されている。図のバイオハザードマークとは無関係である。
- ×c. 有毒ガス
誤り。毒性のある高圧ガスは高圧ガス保安法などによって規制されており、容器には「毒」の文字やガスの名称の表示が求められる。化学品としての急性毒性はGHSの「どくろ」の絵表示で示される。図のマークは有毒ガスを示すものではない。
- ○d. 感染性廃棄物
正しい。図はバイオハザードマークであり、感染性廃棄物であることを示す。感染性廃棄物とは、医療機関などで発生し、人が感染するおそれのある病原体が含まれたり付着したりしている、またはそのおそれのある廃棄物であり、廃棄物処理法では「特別管理廃棄物」として扱われる。マークの色は内容物の性状で区別され、赤色は血液などの液状・泥状のもの、橙色は血液の付着したガーゼなどの固形状のもの、黄色は注射針やメスなど鋭利なものを表す。本問の図は赤色であり、液状・泥状の感染性廃棄物に用いられるものである。
- ×e. 放射性廃棄物
誤り。放射性物質や放射線の存在を示す標識は、中心の円の周りに3枚の羽根を配した「三葉マーク(放射能標識)」であり、図のマークとは形が異なる。放射性同位元素を含む廃棄物の保管・廃棄は、放射性同位元素等の規制に関する法律(旧放射線障害防止法)や医療法施行規則などで定められている。
感染性廃棄物とバイオハザードマーク
感染性廃棄物は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)において特別管理廃棄物に分類され、排出事業者(医療機関など)が責任をもって処理する。処理にあたっては、他の廃棄物と分別し、内容物が飛散・流出しない容器に収納して、バイオハザードマークを付けることが推奨されている。マークの色による区別は以下のとおりである。 ・赤色:液状または泥状のもの(血液、体液など)→ 密閉できる容器に収納 ・橙色:固形状のもの(血液が付着したガーゼ、手袋など)→ 丈夫なプラスチック袋を二重にして使用するか、堅牢な容器に収納 ・黄色:鋭利なもの(注射針、メス、ガラス片など)→ 耐貫通性のある堅牢な容器に収納 なお、注射針などの鋭利なものは、血液が付着していなくても感染性廃棄物として扱う。
医療現場で知っておくべき主な標示
・毒薬:黒地に白枠、白字で品名と「毒」。他と区別し、鍵をかけて保管 ・劇薬:白地に赤枠、赤字で品名と「劇」。他と区別して保管 ・麻薬:容器に「麻」の記号。鍵をかけた堅固な設備内に保管 ・放射性物質:三葉マーク(放射能標識) ・化学品の危険有害性:GHS絵表示(炎、どくろ、爆弾の爆発、腐食性、健康有害性など、赤枠のひし形)
POINT
・三つの弧が組み合わさったマークはバイオハザードマークで、感染性廃棄物を示す。 ・色の区別:赤=液状・泥状(血液など)、橙=固形状(血液付着ガーゼなど)、黄=鋭利なもの(注射針など)。 ・放射性物質は三葉マーク、劇薬は白地に赤枠赤字の「劇」、毒薬は黒地に白枠白字の「毒」。 ・感染性廃棄物は廃棄物処理法の特別管理廃棄物であり、排出者である医療機関に処理責任がある。
