StudyMed医師国家試験

背中のゆがみは「形」で見る―叩いて痛む側弯症は要注意

第119回医師国家試験 B問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第119回 B問題 第12問

思春期の脊柱側弯症の身体診察でみられないのはどれか。

  1. a.肋骨隆起
  2. b.胸椎の叩打痛
  3. c.片側肩甲骨の突出
  4. d.肩の高さの左右差
  5. e.ウエストラインの非対称

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は思春期の脊柱側弯症で、身体診察で何が見えるかを問う問題だ。「みられないのはどれか」という否定型なので、側弯症の本質を押さえたうえで、仲間外れの所見を一つ探すことになる。まず、側弯症ってどんな変形だと理解しているかな。
医学生医学生
脊柱が横に曲がる病気、というイメージです。
ドクタードクター
半分正解。実は横に曲がるだけでなく、椎体がねじれる「回旋」を伴う三次元的な変形なんだ。この側方弯曲と回旋によって体幹の左右対称性が崩れ、体の表面の形に左右差が出てくる。だから診察の中心は視診になる。
医学生医学生
回旋があると、肋骨も一緒にねじれるんでしょうか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。胸椎が凸側へ回旋すると、付着している肋骨が後方に押し出される。膝を伸ばしたまま前屈させて背中を後ろから見ると、凸側の肋骨部分が盛り上がって見える。これが肋骨隆起で、前屈テスト(Adams test)で最も重要な所見なんだ。
医学生医学生
学校検診で前かがみになって背中を見られたのは、それを確認していたんですね。
ドクタードクター
その通り。同じく胸郭が凸側で後方に張り出すので、上に乗る肩甲骨も片側だけ突出して見える。ちなみに前鋸筋麻痺で肩甲骨の内側縁が浮き上がる翼状肩甲とは、成り立ちが違う所見だから混同しないようにね。
医学生医学生
立った姿勢で後ろから見ると、肩の高さも違ってくるんですか。
ドクタードクター
そう。胸椎カーブの凸側の肩が高くなることが多い。さらに、腕を下ろして立ったときに腕と体幹の間にできる三角形、いわゆるウエスト三角の大きさや腰のくびれも左右で違ってくる。腰椎や胸腰椎のカーブでは特に目立ち、前屈すると腰部隆起もみられるよ。
医学生医学生
ということは、肋骨隆起、肩甲骨の突出、肩の高さの差、ウエストラインの非対称はどれも「形の左右差」ですね。残る胸椎の叩打痛だけが「痛み」の所見です。
ドクタードクター
そこが正解を導く視点だ。思春期特発性側弯症は脊柱の形の変化であって、骨に骨折や炎症、腫瘍があるわけではない。だから原則として痛みを伴わず、叩打痛もみられない。
医学生医学生
整形外科の実習で、圧迫骨折の高齢の患者さんの背中を叩いて痛みを確認していたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそういう場面で使う所見だね。胸椎の叩打痛は、椎体骨折、化膿性脊椎炎や脊椎カリエスなどの感染、転移性脊椎腫瘍で出てくる。だから痛みを伴う側弯をみたら、特発性と決めつけてはいけないんだ。
医学生医学生
痛みのある側弯は、別の原因を探すべきということですか。
ドクタードクター
その通り。類骨骨腫などの骨腫瘍や感染、脊髄空洞症などによる二次性側弯を疑って精査する。ほかにも、左凸の胸椎カーブ、急速な進行、神経症状を伴う場合は、Chiari奇形・脊髄空洞症などを考えてMRIを検討する警告サインになる。思春期特発性側弯症は女子に多く、右凸の胸椎カーブが典型だから、そこから外れるときは要注意だ。
医学生医学生
診断は視診だけで決めるんですか。
ドクタードクター
視診や前屈テストはスクリーニングで、確定には立位の全脊柱X線正面像でCobb角を測る。10°以上で側弯症とする。骨の成熟度は腸骨稜の骨端核の骨化で評価するRisser分類で見て、値が小さい、つまり成長の余地が大きいほど進行しやすい。
医学生医学生
初潮前後の急に背が伸びる時期は、特に進行に気をつけないといけないんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。治療の目安としては、軽度なら経過観察、成長期でおおむね25〜40°台なら装具療法、おおむね45〜50°以上なら矯正固定術などの手術を検討する。数値は文献によって幅があるけれど、「角度」と「残りの成長」の両方で判断する、という考え方を押さえておこう。

まとめ

思春期特発性側弯症は、脊柱の側方弯曲に椎体の回旋を伴う三次元的な変形で、原則として痛みを伴いません。そのため身体診察では、肩の高さの左右差、片側肩甲骨の突出、ウエストラインの非対称、前屈テストでの肋骨隆起といった「体表の形の左右差」が中心となり、胸椎の叩打痛は典型的な所見ではありません。叩打痛は椎体骨折、化膿性脊椎炎、転移性腫瘍などで認められるもので、痛み・神経症状・左凸胸椎カーブ・急速な進行を伴う側弯は、腫瘍や感染、脊髄空洞症などによる二次性側弯を疑う警告サインです。診断は立位全脊柱X線のCobb角(10°以上)で行い、Risser分類で残りの成長を評価して、経過観察・装具・手術を選択します。「形の異常か、痛みを伴う病変か」を区別する視点は、学校検診から整形外科の日常診療まで役立つ基本です。

解答・解説

正解はbです

問われていること

思春期にみられる脊柱側弯症(多くは思春期特発性側弯症)で、身体診察によって確認できる所見を問う問題である。「みられないのはどれか」という否定型の設問なので、側弯症に典型的でない所見を一つ選ぶ。

考え方

脊柱側弯症は、脊柱が正面から見て側方へ弯曲するだけでなく、椎体が回旋(ねじれ)を伴う三次元的な変形である。この「側方弯曲+回旋」によって体幹の左右対称性が崩れ、肩・肩甲骨・肋骨・腰のくびれといった体表の形に左右差が生じる。診察の中心は視診であり、立位で背部を後方から観察する方法と、前屈させて背部の隆起を見る方法(前屈テスト)が基本となる。 一方、思春期特発性側弯症は原則として痛みを伴わない変形である。したがって、骨そのものの損傷や炎症で生じる叩打痛(棘突起を軽くたたいたときに響く痛み)は側弯症の典型的所見ではない。むしろ痛みを伴う側弯は、腫瘍・感染・骨折などの二次的原因を疑う警告サインとして扱う。 以上から、体表の左右非対称を表す所見(a, c, d, e)は側弯症でみられ、痛みの所見である胸椎の叩打痛(b)がみられないものとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  肋骨隆起

    側弯症でみられる所見である。胸椎で側弯が生じると椎体が凸側へ回旋し、それに付着する肋骨も後方へ押し出される。その結果、前屈位で背部を観察すると凸側の肋骨部分が盛り上がって見える(肋骨隆起、rib hump)。前屈テストで最も重要な所見であり、学校検診でも用いられる。

  2. ○b.  胸椎の叩打痛

    思春期の側弯症ではみられない所見であり、これが正解である。思春期特発性側弯症は脊柱の形の変化であって、骨に骨折・炎症・腫瘍などの病変があるわけではないため、通常は圧痛や叩打痛を生じない。胸椎の叩打痛は、圧迫骨折などの椎体骨折、化膿性脊椎炎・脊椎カリエス(結核性脊椎炎)などの感染、転移性脊椎腫瘍などで認められる所見である。側弯に強い痛みや叩打痛を伴う場合は、特発性と決めつけず、類骨骨腫などの骨腫瘍、感染、脊髄空洞症などによる二次性側弯を疑って精査する必要がある。

  3. ×c.  片側肩甲骨の突出

    側弯症でみられる所見である。胸椎の回旋に伴って凸側の胸郭が後方へ張り出すため、その上に乗る肩甲骨も凸側で後方に突出し、左右の肩甲骨の位置や高さに差が生じる。なお、前鋸筋麻痺などで肩甲骨の内側縁が浮き上がる「翼状肩甲」とは成因の異なる所見である。

  4. ×d.  肩の高さの左右差

    側弯症でみられる所見である。立位で後方から観察すると、胸椎カーブの凸側の肩が高くなることが多く、両肩の高さに差が生じる。体幹のバランスの崩れを示す基本的な視診所見である。

  5. ×e.  ウエストラインの非対称

    側弯症でみられる所見である。体幹が側方へ偏位すると、腕を下ろして立ったときに腕と体幹の間にできる三角形(ウエスト三角)の大きさや、腰のくびれの形が左右で異なってくる。腰椎・胸腰椎カーブでは特に目立ち、前屈位では凸側の腰部が盛り上がる腰部隆起(lumbar hump)もみられる。

側弯症の分類

・機能性(非構築性)側弯症:疼痛による逃避姿勢(腰椎椎間板ヘルニアなど)や脚長差などが原因の一時的な側弯で、原因を取り除くと消失する。椎体の回旋を伴わず、前屈で肋骨隆起は目立たない。 ・構築性側弯症:椎体の回旋を伴い、自分の力で完全には矯正できない側弯。特発性(原因不明)、先天性(椎体の形成・分節異常)、神経・筋原性(脳性麻痺、筋ジストロフィーなど)、神経線維腫症1型やMarfan症候群に伴うものなどがある。

思春期特発性側弯症

・側弯症全体の大部分(約7〜8割)を占める特発性側弯症のうち、10歳以降に発症するもの。 ・女子に多く(男女比はおよそ1:4以上)、右凸の胸椎カーブが典型的である。左凸胸椎カーブや急速な進行、神経症状、痛みを伴う場合は、Chiari奇形・脊髄空洞症や腫瘍などによる二次性側弯を疑う。 ・成長が残っている時期ほど進行しやすく、初潮前後の急速成長期は特に注意が必要である。

診察と検査

・立位視診:肩の高さ、肩甲骨の位置、ウエストラインの左右差を後方から観察する。 ・前屈テスト(Adams test):膝を伸ばしたまま前屈させ、背部の高さの左右差(肋骨隆起・腰部隆起)を見る。学校検診で用いられる。 ・立位全脊柱単純X線正面像でCobb角(カーブの上下端の椎体終板がなす角度)を測定し、10°以上を側弯症とする。 ・骨成熟度は腸骨稜骨端核の骨化の程度で示すRisser分類(0〜5)で評価し、Risserの値が小さい(成長の余地が大きい)ほど進行リスクが高い。

治療の目安

・Cobb角が軽度(おおむね25°未満):定期的な経過観察。 ・成長期でCobb角おおむね25〜40°台、Risser 0〜2程度:装具療法で進行を抑える。 ・Cobb角がおおむね45〜50°以上:成長終了後も進行しうるため、矯正固定術などの手術を検討する。

POINT

・思春期特発性側弯症は、側方弯曲と椎体回旋を伴う三次元変形で、通常は痛みを伴わない。 ・視診所見:肩の高さの左右差、肩甲骨の突出、ウエストラインの非対称、前屈時の肋骨隆起・腰部隆起。 ・前屈テストでの肋骨隆起が最重要の検診所見である。 ・痛み・叩打痛・神経症状・左凸胸椎カーブを伴う側弯は二次性(腫瘍、感染、脊髄空洞症など)を疑う。 ・評価はCobb角(10°以上で側弯症)とRisser分類で行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。