背中のゆがみは「形」で見る―叩いて痛む側弯症は要注意
第119回医師国家試験 B問題 第12問
国試問題にチャレンジ
思春期の脊柱側弯症の身体診察でみられないのはどれか。
- a.肋骨隆起
- b.胸椎の叩打痛
- c.片側肩甲骨の突出
- d.肩の高さの左右差
- e.ウエストラインの非対称
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
思春期特発性側弯症は、脊柱の側方弯曲に椎体の回旋を伴う三次元的な変形で、原則として痛みを伴いません。そのため身体診察では、肩の高さの左右差、片側肩甲骨の突出、ウエストラインの非対称、前屈テストでの肋骨隆起といった「体表の形の左右差」が中心となり、胸椎の叩打痛は典型的な所見ではありません。叩打痛は椎体骨折、化膿性脊椎炎、転移性腫瘍などで認められるもので、痛み・神経症状・左凸胸椎カーブ・急速な進行を伴う側弯は、腫瘍や感染、脊髄空洞症などによる二次性側弯を疑う警告サインです。診断は立位全脊柱X線のCobb角(10°以上)で行い、Risser分類で残りの成長を評価して、経過観察・装具・手術を選択します。「形の異常か、痛みを伴う病変か」を区別する視点は、学校検診から整形外科の日常診療まで役立つ基本です。
解答・解説
正解はbです
問われていること
思春期にみられる脊柱側弯症(多くは思春期特発性側弯症)で、身体診察によって確認できる所見を問う問題である。「みられないのはどれか」という否定型の設問なので、側弯症に典型的でない所見を一つ選ぶ。
考え方
脊柱側弯症は、脊柱が正面から見て側方へ弯曲するだけでなく、椎体が回旋(ねじれ)を伴う三次元的な変形である。この「側方弯曲+回旋」によって体幹の左右対称性が崩れ、肩・肩甲骨・肋骨・腰のくびれといった体表の形に左右差が生じる。診察の中心は視診であり、立位で背部を後方から観察する方法と、前屈させて背部の隆起を見る方法(前屈テスト)が基本となる。 一方、思春期特発性側弯症は原則として痛みを伴わない変形である。したがって、骨そのものの損傷や炎症で生じる叩打痛(棘突起を軽くたたいたときに響く痛み)は側弯症の典型的所見ではない。むしろ痛みを伴う側弯は、腫瘍・感染・骨折などの二次的原因を疑う警告サインとして扱う。 以上から、体表の左右非対称を表す所見(a, c, d, e)は側弯症でみられ、痛みの所見である胸椎の叩打痛(b)がみられないものとなる。
選択肢考察
- ×a. 肋骨隆起
側弯症でみられる所見である。胸椎で側弯が生じると椎体が凸側へ回旋し、それに付着する肋骨も後方へ押し出される。その結果、前屈位で背部を観察すると凸側の肋骨部分が盛り上がって見える(肋骨隆起、rib hump)。前屈テストで最も重要な所見であり、学校検診でも用いられる。
- ○b. 胸椎の叩打痛
思春期の側弯症ではみられない所見であり、これが正解である。思春期特発性側弯症は脊柱の形の変化であって、骨に骨折・炎症・腫瘍などの病変があるわけではないため、通常は圧痛や叩打痛を生じない。胸椎の叩打痛は、圧迫骨折などの椎体骨折、化膿性脊椎炎・脊椎カリエス(結核性脊椎炎)などの感染、転移性脊椎腫瘍などで認められる所見である。側弯に強い痛みや叩打痛を伴う場合は、特発性と決めつけず、類骨骨腫などの骨腫瘍、感染、脊髄空洞症などによる二次性側弯を疑って精査する必要がある。
- ×c. 片側肩甲骨の突出
側弯症でみられる所見である。胸椎の回旋に伴って凸側の胸郭が後方へ張り出すため、その上に乗る肩甲骨も凸側で後方に突出し、左右の肩甲骨の位置や高さに差が生じる。なお、前鋸筋麻痺などで肩甲骨の内側縁が浮き上がる「翼状肩甲」とは成因の異なる所見である。
- ×d. 肩の高さの左右差
側弯症でみられる所見である。立位で後方から観察すると、胸椎カーブの凸側の肩が高くなることが多く、両肩の高さに差が生じる。体幹のバランスの崩れを示す基本的な視診所見である。
- ×e. ウエストラインの非対称
側弯症でみられる所見である。体幹が側方へ偏位すると、腕を下ろして立ったときに腕と体幹の間にできる三角形(ウエスト三角)の大きさや、腰のくびれの形が左右で異なってくる。腰椎・胸腰椎カーブでは特に目立ち、前屈位では凸側の腰部が盛り上がる腰部隆起(lumbar hump)もみられる。
側弯症の分類
・機能性(非構築性)側弯症:疼痛による逃避姿勢(腰椎椎間板ヘルニアなど)や脚長差などが原因の一時的な側弯で、原因を取り除くと消失する。椎体の回旋を伴わず、前屈で肋骨隆起は目立たない。 ・構築性側弯症:椎体の回旋を伴い、自分の力で完全には矯正できない側弯。特発性(原因不明)、先天性(椎体の形成・分節異常)、神経・筋原性(脳性麻痺、筋ジストロフィーなど)、神経線維腫症1型やMarfan症候群に伴うものなどがある。
思春期特発性側弯症
・側弯症全体の大部分(約7〜8割)を占める特発性側弯症のうち、10歳以降に発症するもの。 ・女子に多く(男女比はおよそ1:4以上)、右凸の胸椎カーブが典型的である。左凸胸椎カーブや急速な進行、神経症状、痛みを伴う場合は、Chiari奇形・脊髄空洞症や腫瘍などによる二次性側弯を疑う。 ・成長が残っている時期ほど進行しやすく、初潮前後の急速成長期は特に注意が必要である。
診察と検査
・立位視診:肩の高さ、肩甲骨の位置、ウエストラインの左右差を後方から観察する。 ・前屈テスト(Adams test):膝を伸ばしたまま前屈させ、背部の高さの左右差(肋骨隆起・腰部隆起)を見る。学校検診で用いられる。 ・立位全脊柱単純X線正面像でCobb角(カーブの上下端の椎体終板がなす角度)を測定し、10°以上を側弯症とする。 ・骨成熟度は腸骨稜骨端核の骨化の程度で示すRisser分類(0〜5)で評価し、Risserの値が小さい(成長の余地が大きい)ほど進行リスクが高い。
治療の目安
・Cobb角が軽度(おおむね25°未満):定期的な経過観察。 ・成長期でCobb角おおむね25〜40°台、Risser 0〜2程度:装具療法で進行を抑える。 ・Cobb角がおおむね45〜50°以上:成長終了後も進行しうるため、矯正固定術などの手術を検討する。
POINT
・思春期特発性側弯症は、側方弯曲と椎体回旋を伴う三次元変形で、通常は痛みを伴わない。 ・視診所見:肩の高さの左右差、肩甲骨の突出、ウエストラインの非対称、前屈時の肋骨隆起・腰部隆起。 ・前屈テストでの肋骨隆起が最重要の検診所見である。 ・痛み・叩打痛・神経症状・左凸胸椎カーブを伴う側弯は二次性(腫瘍、感染、脊髄空洞症など)を疑う。 ・評価はCobb角(10°以上で側弯症)とRisser分類で行う。
