3か月で寝返りは早すぎる?―「消える反射」と「現れる反射」で読み解く乳児の発達カレンダー
第118回医師国家試験 C問題 第14問
国試問題にチャレンジ
児の神経学的発達段階で誤っているのはどれか。
- a.1か月でMoro反射が認められる。
- b.3か月で寝返りをする。
- c.7か月で顔にタオルをかけるとすぐにタオルを取り除く。
- d.10か月でパラシュート反射が認められる。
- e.12か月で抱き上げて立位にし,前後左右に倒すと足を出して体を支えようとする。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
乳児の神経学的発達は、「原始反射の消失」「姿勢反射の出現」「粗大運動の獲得」の3つの軸で整理すると理解しやすくなります。Moro反射は出生時からみられ3〜4か月で消失し、定頸もこの時期に獲得されますが、寝返りは非対称性緊張性頸反射(ATNR)が消える5〜6か月以降であり、3か月での寝返りは早すぎます。布かけテストで顔の布を払いのけるのは5〜6か月頃から、パラシュート反射は7〜9か月頃、ホッピング反応は1歳前後から出現し、姿勢反射は生涯持続します。原始反射の残存や姿勢反射の欠如、左右差は脳性麻痺などの神経障害を疑う手がかりとなるため、月齢ごとの発達の流れを仕組みとともに身につけておくことが、乳幼児健診や小児診療の基本となります。
解答・解説
正解はbです
乳幼児の神経学的発達を、月齢ごとの「原始反射の消失」「姿勢反射(立ち直り反応・保護伸展反応など)の出現」「粗大運動・行動の獲得」という3つの軸で整理できているかを問う問題である。 原始反射(新生児反射)は、大脳皮質などの上位中枢が未熟な時期に脳幹・脊髄レベルで起こる反射で、中枢神経が成熟すると上位からの抑制を受けて消えていく。原始反射が消えることと入れ替わるように随意運動ができるようになり、さらに転倒から身を守るための姿勢反射(パラシュート反射やホッピング反応など)が現れ、こちらは生涯残る。 したがって各選択肢は「その月齢でその反射・行動がみられるか」を、出現時期と消失時期から判断すればよい。目安は、Moro反射が生後3〜4か月頃に消失、定頸(首すわり)が3〜4か月、寝返りが5〜6か月、お座りが7か月前後、パラシュート反射が7〜9か月頃に出現、つかまり立ちが9〜10か月、ひとり歩きが1歳〜1歳3か月頃である。この流れから外れているものを探す。
選択肢考察
- ×a. 1か月でMoro反射が認められる。
記述は正しい。Moro反射は、仰臥位の児の頭部を支えて少し持ち上げ、急に支えを緩めて頭を落とすような刺激を与えると、両上肢を伸展・外転して開き、続いて抱きつくように体の前で閉じる原始反射である。出生時から認められ、生後3〜4か月頃に消失する。したがって生後1か月で認められるのは正常である。なお、消えるべき時期を過ぎても残存する場合や、新生児期に左右差がある場合(分娩麻痺、鎖骨骨折など)、あるいは新生児期に誘発できない場合は異常を疑う。Moro反射の消失は定頸の獲得とほぼ同時期である。
- ○b. 3か月で寝返りをする。
記述が誤っているため、これが正解である。寝返りは通常、生後5〜6か月頃にできるようになる。生後3か月はようやく首がすわり始める時期であり、寝返りには早い。寝返りの獲得には、非対称性緊張性頸反射(ATNR:顔を向けた側の上下肢が伸展し、反対側の上下肢が屈曲する原始反射)が消えていることが必要である。ATNRが残っている間は顔を向けた側の腕が突っ張ってしまうため、体幹を回旋して転がることができない。ATNRは生後4〜6か月頃に消えるので、寝返りはそれ以降に可能となる。
- ×c. 7か月で顔にタオルをかけるとすぐにタオルを取り除く。
記述は正しい。仰臥位の乳児の顔に布やハンカチをかぶせ、児がそれを手で払いのけるかをみる検査を布かけテスト(ハンカチーフテスト)という。顔にかかった物を不快と認識し、目的をもって手を伸ばして取り除くという、視覚・触覚と上肢の随意運動の協調を評価する。生後5〜6か月頃からできるようになり、6〜7か月児健康診査の発達チェック項目として用いられる。したがって7か月ですぐに取り除くことは正常な発達である。
- ×d. 10か月でパラシュート反射が認められる。
記述は正しい。パラシュート反射(保護伸展反応)は、児の体幹を支えて腹臥位の姿勢で持ち上げ、急に頭から前下方へ落とすようにすると、両上肢を伸ばして手指を開き、床に手をついて体を支えようとする反応である。座位で前方・側方・後方へ倒したときに上肢を伸ばして支えるのも同じ系統の反応で、方向によって出現時期がやや異なる(前方が早く、後方が遅い)。前下方へのパラシュート反射はおおむね生後7〜9か月頃に出現し、その後消えずに生涯持続する。したがって10か月で認められるのは正常である。この時期に出現しない場合や左右差がある場合は、脳性麻痺や片麻痺などの運動発達の異常を疑う。
- ×e. 12か月で抱き上げて立位にし,前後左右に倒すと足を出して体を支えようとする。
記述は正しい。これはホッピング反応(跳び直り反応)と呼ばれる立位での平衡反応で、体が傾いて重心がずれたときに、倒れる方向へ足を踏み出して体を支えようとするものである。ひとり立ち・ひとり歩きができるようになる1歳前後から出現し始め、前方への反応が先に、後方への反応は遅れて1歳半頃までに出そろう。生涯持続する姿勢反射であり、12か月でみられるのは正常な発達である。
主な原始反射と消失時期の目安
・吸啜反射・探索反射:出生時〜生後4〜6か月頃 ・Moro反射:出生時〜生後3〜4か月頃(消失と定頸がほぼ同時期) ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):出生時〜生後4〜6か月頃(消失後に寝返りが可能となる) ・手掌把握反射:出生時〜生後3〜4か月頃(消失後に自分の意思で物をつかめるようになる) ・足底把握反射:出生時〜生後9〜10か月頃(消失後に立位で体重を支え、歩行が可能となる) ・自動歩行(原始歩行):出生時〜生後1〜2か月頃 ・Babinski反射(足底をこすると母趾が背屈し他趾が扇状に開く):1〜2歳頃まで陽性でも正常
生涯持続する姿勢反射(出現時期の目安)
・Landau反射:生後5〜6か月頃に出現(腹臥位で水平に支えると頭・体幹・下肢を伸展する)。1〜2歳頃にはみられにくくなる ・パラシュート反射:生後7〜9か月頃に出現し生涯持続 ・座位での側方・後方の保護伸展反応:お座りの安定とともに順次出現 ・ホッピング反応:1歳前後〜1歳半頃に出現し生涯持続
粗大運動発達の目安(約90%の児が達成する時期の感覚で覚える)
・定頸:3〜4か月 ・寝返り:5〜6か月 ・ひとり座り:6〜8か月 ・はいはい:8〜9か月 ・つかまり立ち:9〜10か月 ・ひとり立ち:11〜12か月 ・ひとり歩き:12〜15か月
臨床的意義
原始反射が本来の消失時期を過ぎても残存している場合や、出るべき時期に姿勢反射が出現しない場合、また反射に明らかな左右差がある場合は、脳性麻痺などの中枢神経障害や末梢神経障害を疑う手がかりとなる。乳幼児健康診査ではこれらを組み合わせて発達を評価する。
POINT
・寝返りは5〜6か月。3か月は定頸の時期であり、寝返りには早い。 ・寝返りが可能になるには非対称性緊張性頸反射(ATNR)の消失が前提となる。 ・Moro反射は出生時からあり、3〜4か月で消失する(定頸の時期と一致)。 ・布かけテストで布を取り除くのは6〜7か月児健診の確認項目である。 ・パラシュート反射は7〜9か月で出現し、ホッピング反応は1歳前後から出現する。いずれも生涯消えない。 ・原始反射は「消える時期」、姿勢反射は「出る時期」で覚える。
