「手を使う」だけでは微細運動じゃない―ガラガラで学ぶ乳児発達の4領域
第119回医師国家試験 C問題 第12問
国試問題にチャレンジ
乳児の運動発達評価のうち,微細運動を評価する所見はどれか。
- a.首がすわる。
- b.手をみつめる。
- c.寝返りをする。
- d.バイバイをする。
- e.ガラガラをつかむ。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
乳児の発達は粗大運動・微細運動・言語・社会性などの領域に分けて評価し、微細運動は手指の小さな筋群を使って目で見た物を操作する運動を指します。首のすわりや寝返りは姿勢保持や移動にかかわる粗大運動、手をみつめる(ハンドリガード)やバイバイは手が関わっていても社会性や認知の指標であり、ガラガラをつかむことが微細運動の所見です。把握反射が3~4か月ころに消退すると随意的な把握が現れ、リーチング、持ち替え、はさみ持ち、ピンセットつまみへと手指の操作は段階的に発達します。DENVER IIや母子健康手帳もこうした領域別の考え方に基づいており、所見がどの領域を評価しているかを理解することが、発達の遅れを適切に見つけて評価する基盤になります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
乳児の発達は、粗大運動・微細運動・言語・社会性(個人-社会)・認知などの領域に分けて評価する。本問は、挙げられた発達所見のうち「微細運動」に分類されるものを選ぶ問題である。
粗大運動と微細運動の違い
粗大運動(gross motor)は、頸部・体幹・四肢の大きな筋群を使い、姿勢を保ったり移動したりする運動である。首のすわり、寝返り、お座り、はいはい、つかまり立ち、ひとり歩きがその代表である。 微細運動(fine motor)は、主に手指の小さな筋群を使い、目で見た対象に合わせて手を動かす運動(目と手の協調)である。物を握る、手を伸ばしてつかむ、持ち替える、指先でつまむ、積み木を積む、なぐり書きをする、などが該当する。
考え方
各選択肢について「身体全体の姿勢・移動の運動か」「手指で物を操作する運動か」「運動以外の領域(社会性・認知)の指標か」を判断すればよい。手を使う動作であっても、バイバイのように他者とのやりとりを示す身ぶりは社会性の指標として扱われる点に注意する。物(ガラガラ)を手でつかむ動作が、手指の操作そのものを評価する微細運動の所見である。
選択肢考察
- ×a. 首がすわる。
首のすわり(定頸)は、頸部と体幹の筋で頭を支える能力であり、粗大運動の指標である。おおむね生後3~4か月で完成し、4か月健診での重要な確認項目である。生後4~5か月を過ぎても定頸がみられなければ、運動発達の遅れとして精査を考える。
- ×b. 手をみつめる。
自分の手をじっと見つめる行動はハンドリガード(hand regard)と呼ばれ、生後2~3か月ころにみられる。自分の身体を認識していく過程を示す行動であり、視覚認知・知的発達や社会性(個人-社会)の領域の指標とされる。DENVER II(日本版デンバー式発達スクリーニング検査)でも「自分の手を見つめる」は個人-社会領域の項目に含まれており、手で物を操作する微細運動の指標ではない。
- ×c. 寝返りをする。
寝返りは、体幹をひねって仰臥位から腹臥位(またはその逆)に体位を変える動作で、全身の大きな筋群を使う粗大運動の指標である。生後5~6か月ころにでき始め、6~7か月ころまでに多くの乳児が可能となる。
- ×d. バイバイをする。
バイバイ(手を振る身ぶり)は1歳前後にみられる。手を動かす動作ではあるが、評価しているのは他者の動作を模倣し、場面に応じた身ぶりでやりとりする能力であり、社会性および言語(身ぶりによる前言語的コミュニケーション)・知的発達の指標とされる。DENVER IIでも「バイバイをする」は個人-社会領域の項目である。
- ○e. ガラガラをつかむ。
ガラガラなどの玩具を手で握る・つかむ動作は、手指の筋を使って物を操作する運動であり、微細運動の指標である。新生児期の把握反射(手掌に触れた物を反射的に握る原始反射)は生後3~4か月ころに消退し、それに代わって随意的な把握が出現する。手に持たせたガラガラを握っていられるのは3~4か月ころ、さらに身体のそばにある玩具へ自分で手を伸ばしてつかめるようになるのは5~7か月ころである。
微細運動の発達のおおよその目安
・3~4か月:持たせたガラガラを握る。両手を体の正中で合わせる ・5~6か月:見た物に手を伸ばしてつかむ(リーチング)。手のひら全体で握る(手掌把握) ・6~7か月:物を一方の手から他方の手に持ち替える ・9~10か月:親指と他の指で小さい物をつまみ始める(はさみ持ち) ・12か月ころ:親指と人差し指の先で小さい物をつまむ(ピンセットつまみ) ・1歳半ころ:積み木を2~3個積む。なぐり書きをする。コップを持って飲む ・2歳ころ:スプーンを使って自分で食べる ・3歳ころ:円(丸)を模写する ・4歳ころ:十字を模写する
粗大運動の発達のおおよその目安
・3~4か月:首がすわる ・5~6か月:寝返りをする ・7~8か月:支えなしでお座りをする ・8~9か月:はいはいをする ・9~10か月:つかまり立ちをする ・1歳~1歳半:ひとり歩きをする
社会性・言語の主な指標
・2~3か月:あやすと笑う(社会的微笑)、手をみつめる(ハンドリガード) ・6~7か月:人見知りが始まる ・9~10か月:バイバイ・パチパチなどの模倣 ・1歳ころ:意味のある単語(有意語)を話す ・2歳ころ:二語文を話す
発達評価の道具
DENVER II は、個人-社会、微細運動-適応、言語、粗大運動の4領域で乳幼児の発達をスクリーニングする検査である。母子健康手帳の月齢ごとの質問項目も、同様の領域の到達目安に基づいて構成されている。
POINT
・粗大運動=姿勢保持と移動(首のすわり、寝返り、お座り、つかまり立ち、歩行) ・微細運動=手指による物の操作(握る、手を伸ばしてつかむ、持ち替える、つまむ、積む、描く) ・手をみつめる(2~3か月)、バイバイ(1歳前後)は社会性・知的発達の指標であり、運動の指標ではない ・把握反射の消退(3~4か月)とともに随意的な把握が始まり、持たせたガラガラを握れるようになる
