StudyMed医師国家試験

紹介・共同利用・救急・研修―「地域を支える病院」の4つの役割を整理する

第118回医師国家試験 C問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第15問

地域医療支援病院に求められる機能はどれか。

  1. a.高度医療技術の開発
  2. b.地域住民の栄養改善
  3. c.質の高い臨床研究の主導
  4. d.難病患者の療養生活支援
  5. e.地域の医療従事者に対する研修

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療法で定められた特別な病院のうち、地域医療支援病院の役割を問う問題だ。似た名前の制度がいくつかあるから、それぞれの病院が「誰のために、何をする病院か」を区別できるかが着眼点になる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、特定機能病院と地域医療支援病院をセットで習いました。でも正直、役割の違いがあいまいです。
ドクタードクター
よくある悩みだね。まず全体像からいこう。医療法には一般の病院とは別に、特定機能病院、地域医療支援病院、臨床研究中核病院の3つが定められている。特定機能病院は高度医療の担い手、臨床研究中核病院は臨床研究・治験の司令塔、そして地域医療支援病院は、かかりつけ医などの地域の診療所や中小病院を後ろから支える拠点、と考えると整理しやすい。
医学生医学生
地域医療支援病院は、診療所の先生を支えるための病院ということですね。
ドクタードクター
そう。1997年の第3次医療法改正で、病院と診療所の機能分化と連携、いわゆる病診連携を進めるために創設された。求められる機能は主に、紹介患者への医療提供、医療機器や病床の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者に対する研修の4つだ。
医学生医学生
そうすると、地域の医療従事者に対する研修がそのまま当てはまりますね。
ドクタードクター
正解。地域の診療所の医師や看護師を対象に症例検討会や講習会を開き、地域全体の医療水準を引き上げる役割を担っている。では、ほかの選択肢がどの制度の役割かも確認しよう。高度医療技術の開発はどうかな。
医学生医学生
大学病院のイメージなので、特定機能病院でしょうか。
ドクタードクター
その通り。特定機能病院は1992年の第2次医療法改正で創設され、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発・評価、高度の医療に関する研修が役割だ。大学病院の本院などが該当し、厚生労働大臣が承認する。
医学生医学生
質の高い臨床研究の主導は、名前からして臨床研究中核病院ですね。
ドクタードクター
そう。2014年の医療法改正で創設された制度で、日本発の医薬品や医療機器の開発に向けて、質の高い臨床研究や治験の中心となる。こちらも厚生労働大臣の承認だ。
医学生医学生
地域住民の栄養改善は「地域」という言葉が入っているので、少し引っかかりそうになりました。
ドクタードクター
そこが引っかけポイントだね。栄養改善は病院の医療機能ではなく保健活動で、健康増進法などに基づいて保健所や市町村保健センターが担う。管理栄養士による栄養指導や食生活改善の普及啓発がその例だ。
医学生医学生
難病患者の療養生活支援も地域医療支援病院らしく聞こえますが、違うんですか。
ドクタードクター
難病患者の支援は難病法に基づき、都道府県などが設置する難病相談支援センターや保健所が中心となり、かかりつけ医や訪問看護、福祉サービスなどが連携して担う。地域医療支援病院に固有の要件として定められたものではないんだ。
医学生医学生
地域実習で訪問看護に同行したとき、保健師さんが難病の方の相談に乗っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験だね。最後に頻出事項をまとめておこう。承認者は、地域医療支援病院が都道府県知事、特定機能病院と臨床研究中核病院が厚生労働大臣。病床数の目安は、地域医療支援病院が原則200床以上、ほかの2つは原則400床以上だ。地域医療支援病院には一定以上の紹介率・逆紹介率も求められる。
医学生医学生
地域のことは都道府県知事、全国レベルの高度医療や研究は大臣、と覚えればいいですね。
ドクタードクター
その覚え方でいい。臨床では、かかりつけ医から紹介を受けて精密検査や入院治療を行い、落ち着いたらかかりつけ医へ逆紹介する、という流れの中で地域医療支援病院が機能している。研修医として紹介状や逆紹介の返書を書く機会も多いから、制度の意味を理解しておくと実務にも役立つよ。

まとめ

地域医療支援病院は1997年の第3次医療法改正で創設され、都道府県知事が承認する病院で、かかりつけ医など地域の医療機関を支える拠点として、紹介患者への医療提供、医療機器・病床の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者に対する研修を担います。高度医療技術の開発は特定機能病院(厚生労働大臣承認)、質の高い臨床研究の主導は臨床研究中核病院(厚生労働大臣承認)の役割であり、住民の栄養改善は保健所・市町村保健センターの保健活動、難病患者の療養生活支援は難病相談支援センターや保健所を中心とした多機関連携が担います。承認者や病床数の目安(地域医療支援病院は原則200床以上、他の2つは原則400床以上)も頻出です。病診連携の仕組みを理解することは、紹介・逆紹介を日常的に行う臨床現場でも欠かせない知識です。

解答・解説

正解はeです

医療法では、一般の病院とは別に、特別な役割を担う病院として「特定機能病院」「地域医療支援病院」「臨床研究中核病院」が定められている。それぞれ担う役割と承認者が異なるため、混同しないよう整理して覚えることが本問のテーマである。 地域医療支援病院は、1997年の第3次医療法改正で創設された制度で、都道府県知事が承認する。かかりつけ医など地域の診療所・中小病院を後方から支える「地域医療の拠点」として位置づけられ、次の機能が求められる。 ・紹介患者に対する医療の提供(他の医療機関から紹介された患者を受け入れ、治療後は地域の医療機関へ逆紹介する) ・医療機器・病床の共同利用(地域の医師が自院の患者を地域医療支援病院の設備を使って診療できる体制) ・救急医療の提供 ・地域の医療従事者に対する研修の実施 ・在宅医療の推進など、地域の医療確保に向けた支援 したがって、選択肢の中から「地域の医療機関を支える機能」に当たるものを選べばよく、他の選択肢は特定機能病院・臨床研究中核病院・保健所や難病支援の機関など、別の主体の役割である。

選択肢考察

  1. ×a.  高度医療技術の開発

    高度の医療の提供、高度の医療技術の開発・評価、高度の医療に関する研修は、特定機能病院に求められる機能である。特定機能病院は1992年の第2次医療法改正で創設され、厚生労働大臣が承認する。大学病院本院や国立がん研究センター中央病院など、原則400床以上の高度医療機関が該当する。地域医療支援病院の承認要件には含まれない。

  2. ×b.  地域住民の栄養改善

    地域住民の栄養改善は、病院の医療機能ではなく公衆衛生(保健)活動に属する。健康増進法などに基づき、保健所や市町村保健センターが、管理栄養士による栄養指導・食生活改善の普及啓発などとして実施する。地域医療支援病院に求められる機能ではない。

  3. ×c.  質の高い臨床研究の主導

    日本発の革新的な医薬品・医療機器の開発などに必要な、質の高い臨床研究や治験を中心となって推進する役割は、臨床研究中核病院に求められる機能である。臨床研究中核病院は2014年の医療法改正で創設(2015年施行)され、厚生労働大臣が承認する。地域医療支援病院の要件ではない。

  4. ×d.  難病患者の療養生活支援

    難病患者の療養生活の支援は、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)に基づき、都道府県などが設置する難病相談支援センターや保健所が中心となって相談・支援を行い、さらにかかりつけ医や訪問看護、福祉サービスなど多くの機関が連携して担うものである。地域医療支援病院に固有に求められる機能として定められたものではない。

  5. ○e.  地域の医療従事者に対する研修

    地域医療支援病院の承認要件の一つに、地域の医療従事者の資質向上を図るための研修を行わせる能力を有することが定められている。地域の診療所の医師や看護師などを対象に、症例検討会や講習会などの生涯教育の場を提供することで、地域全体の医療水準を引き上げる役割を担う。これは紹介患者への医療提供、共同利用、救急医療と並ぶ主要な機能であり、正解である。

医療法上の特別な病院の比較

・特定機能病院  創設:1992年(第2次医療法改正)  承認:厚生労働大臣  主な役割:高度の医療の提供、高度の医療技術の開発・評価、高度の医療に関する研修  主な要件:原則400床以上、定められた診療科の標榜、紹介患者中心の診療など ・地域医療支援病院  創設:1997年(第3次医療法改正)  承認:都道府県知事  主な役割:紹介患者に対する医療の提供、医療機器・病床の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者に対する研修  主な要件:原則200床以上、一定以上の紹介率・逆紹介率など ・臨床研究中核病院  創設:2014年医療法改正(2015年施行)  承認:厚生労働大臣  主な役割:質の高い臨床研究・治験の計画立案・実施の中心、他施設の臨床研究の支援、臨床研究に関わる人材の育成  主な要件:原則400床以上、臨床研究支援体制の整備など

背景

地域医療支援病院は、病院と診療所の機能分化と連携(病診連携)を進める目的で導入された。患者はまずかかりつけ医を受診し、精密検査や入院が必要な場合に地域医療支援病院へ紹介され、治療後は再びかかりつけ医へ戻るという流れを支える仕組みである。

保健活動の担い手

・保健所:都道府県・政令指定都市・中核市などが設置し、広域的・専門的な保健業務(感染症対策、精神保健、難病対策、食品衛生など)を担う。 ・市町村保健センター:住民に身近な対人保健サービス(健康相談、乳幼児健診、栄養指導など)を担う。

POINT

・地域医療支援病院(都道府県知事承認、原則200床以上):紹介患者への医療、共同利用、救急医療、地域の医療従事者への研修。 ・特定機能病院(厚生労働大臣承認、原則400床以上):高度医療の提供・開発・評価・研修。 ・臨床研究中核病院(厚生労働大臣承認):質の高い臨床研究・治験の中心的役割。 ・承認者の違い(知事か大臣か)も頻出である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。