シュレッダーくずは「産業廃棄物」じゃない?―材質と感染性で読み解く医療廃棄物の分類
第117回医師国家試験 C問題 第7問
国試問題にチャレンジ
医療機関における産業廃棄物でないのはどれか。
- a.使用済みメス
- b.未使用注射針
- c.アルコール試薬
- d.使用済みゴム手袋
- e.シュレッダー処理された書類
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
医療機関から出る廃棄物は、まず材質から産業廃棄物の種類(金属くず、廃プラスチック類、ゴムくず、廃油など)に当たるかを判断し、次に感染性の有無で特別管理廃棄物かどうかを判断します。メスや注射針は金属くず、ゴム手袋はゴムくずや廃プラスチック類、アルコール試薬は廃油として産業廃棄物になり、注射針は未使用でも感染性廃棄物と同様に扱います。一方、医療機関の書類やシュレッダーくずなどの紙くずは産業廃棄物の種類に含まれず、事業系一般廃棄物として医療機関自身が処理の責任を負います。感染性廃棄物は液状が赤、固形が橙、鋭利なものが黄のバイオハザードマークで区別し、委託時にはマニフェストで最終処分まで確認します。廃棄物の正しい分類と分別は、針刺し事故の予防や環境保全に直結する、医療者にとって欠かせない基本知識です。
解答・解説
正解はeです
医療機関から出る廃棄物が、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)でどう分類されるかを問う問題である。
廃棄物の基本的な分類
廃棄物は、まず産業廃棄物と一般廃棄物に分かれる。 ・産業廃棄物: 事業活動に伴って出る廃棄物のうち、法令で定められた種類のもの。燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・陶磁器くずなどである。処理の責任は排出した事業者にある。 ・一般廃棄物: 産業廃棄物以外の廃棄物。出どころによってさらに二つに分かれ、処理の責任の主体が異なる。 - 家庭系一般廃棄物: 家庭の日常生活から出るごみ。市町村が処理の責任を負う。 - 事業系一般廃棄物: 事業活動に伴って出るが、産業廃棄物の種類に当たらないもの(医療機関の紙くずなど)。排出した事業者が自らの責任で処理しなければならない。自ら処理するほか、一般廃棄物収集運搬の許可業者に委託したり、市町村の処理施設へ持ち込んだりすることもできる。 どちらの中でも、爆発性・毒性・感染性などで人の健康や生活環境に被害を与えるおそれがあるものは、特別管理一般廃棄物または特別管理産業廃棄物として扱われ、より厳しく管理される。医療機関から出る感染性廃棄物はこの特別管理廃棄物に当たる。
考え方
各選択肢について、二つのことを順に確認する。(1) 材質から見て産業廃棄物の種類(金属くず、廃プラスチック類、廃油など)に当たるか。(2) 感染性があるか。医療機関から出る紙くずは、産業廃棄物の種類に含まれない。そのため、シュレッダーくずを含む紙くずは事業系一般廃棄物となり、市町村ではなく排出事業者である医療機関が処理の責任を負う。
選択肢考察
- ×a. 使用済みメス
産業廃棄物である。メスの刃は材質としては金属くずにあたるので、産業廃棄物に分類される。さらに、医療行為に使ったメスには血液などが付いている可能性があり、刺したり切ったりすることで感染を広げるおそれのある鋭利なものである。このため、感染性産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)として扱う。耐貫通性のある専用容器に入れ、黄色のバイオハザードマークを付けて処理する。
- ×b. 未使用注射針
産業廃棄物である。注射針は金属くずにあたるので、使ったかどうかに関係なく産業廃棄物である。未使用の針は病原体が付いていないので、本来は感染性ではない。しかし、外見から使用済みのものと区別できないこと、刺さってけがをする危険(メカニカルハザード)があることから、環境省の感染性廃棄物処理マニュアルでは、未使用の針も感染性廃棄物と同じように扱うこととされている。
- ×c. アルコール試薬
産業廃棄物である。検査や消毒に使ったアルコールなどの有機溶剤を捨てる場合、産業廃棄物の廃油(溶剤)に分類される。病原体が付いていなければ感染性廃棄物ではない。ただし、アルコールなどの引火性の高い廃油は、火災の危険があるため、特別管理産業廃棄物(引火性廃油)として扱われることがある。いずれにしても、一般廃棄物として処理することはできない。
- ×d. 使用済みゴム手袋
産業廃棄物である。医療用手袋は、合成ゴムや塩化ビニル製なら廃プラスチック類、天然ゴム(ラテックス)製ならゴムくずにあたる。どちらも産業廃棄物である。血液や体液が付いた、または付いているおそれのある手袋は、感染性産業廃棄物として扱う。付着がなく感染性がない場合も、非感染性の産業廃棄物であることは変わらない。
- ○e. シュレッダー処理された書類
産業廃棄物ではなく一般廃棄物(事業系一般廃棄物)なので、これが正解である。紙くずが産業廃棄物になるのは、建設業、パルプ・紙製造業、印刷・出版業など、法令で定められた業種から出る場合に限られる。医療機関は該当しない。そのため、診察室や事務室から出る書類、紙くず、待合室の雑誌などは一般廃棄物として扱われる。細かく裁断しても材質は紙のままなので、分類は変わらない。事業系一般廃棄物であるため、処理の責任は医療機関自身にあり、許可業者への委託などで処理する。ただし、診療録など個人情報を含む書類は、裁断や溶解などで情報が漏れないように処理する必要がある。
廃棄物の分類の全体像
・一般廃棄物(家庭系は市町村、事業系は排出事業者が処理の責任を負う) - 事業系一般廃棄物: 医療機関の書類・シュレッダーくず・雑誌などの紙くず、感染のおそれがない生ごみなど。 - 特別管理一般廃棄物(医療機関から出るものは排出事業者である医療機関が処理の責任を負い、許可業者に委託して処理する): 感染性一般廃棄物(血液の付いたガーゼ・脱脂綿などの紙くず・繊維くず)、PCBを使った部品など。 ・産業廃棄物(排出事業者が処理の責任を負う) - 特別管理産業廃棄物(排出事業者が処理の責任を負う): 感染性産業廃棄物(血液、使用済みの注射針・メス、血液の付いたプラスチック製品など)、引火性廃油、強酸・強アルカリ、特定有害物質を含むものなど。
感染性廃棄物の判断基準(環境省 感染性廃棄物処理マニュアル)
次の順で判断する。 1. 形状: 血液・血清・血漿・体液、病理廃棄物(臓器・組織など)、病原微生物に関連した試験や検査に使ったもの、血液などが付いた鋭利なもの。 2. 排出場所: 感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来、集中治療室、検査室で治療や検査などに使った後に出たもの。 3. 感染症の種類: 感染症法の一類〜五類感染症などの治療や検査に使った後に出たもの。 これらに当たらなくても、鋭利なもの(未使用の注射針なども含む)は感染性廃棄物と同じように扱う。
バイオハザードマークの色分け
・赤: 液状・泥状のもの(血液など) ・橙: 固形のもの(血液の付いたガーゼなど) ・黄: 鋭利なもの(注射針、メスなど)
処理の流れ
排出事業者である医療機関は、処理を許可業者に委託する。委託するときは産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、廃棄物が最終処分まで適正に処理されたことを確認する義務がある。
POINT
・医療機関から出る紙くず(書類、シュレッダーくずなど)は事業系一般廃棄物であり、産業廃棄物ではない。処理の責任は市町村ではなく排出事業者(医療機関)にある。 ・メスや注射針(金属くず)、手袋(廃プラスチック類やゴムくず)、アルコール(廃油)は産業廃棄物である。 ・鋭利なものは、未使用でも感染性廃棄物と同じように扱う(黄色のバイオハザードマーク)。 ・感染性廃棄物は特別管理廃棄物の一つで、マークは赤(液状)、橙(固形)、黄(鋭利)に色分けされる。
