「アレルギーか」と「何のアレルギーか」は別の問い―原因抗原を突き止める検査
第117回医師国家試験 A問題 第2問
国試問題にチャレンジ
アレルギー性鼻炎の診断で原因抗原を特定するために行う検査はどれか。2つ選べ。
- a.プリックテスト
- b.鼻汁好酸球検査
- c.血清総IgE検査
- d.末梢血好酸球数測定
- e.血清特異的IgE検査
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
アレルギー性鼻炎の検査は、アレルギー性炎症の有無を確かめる検査と、原因抗原を特定する検査に分けて理解することが大切です。プリックテストなどの皮膚テストと血清特異的IgE検査は、抗原ごとに感作の有無を調べられるため原因抗原の特定に用いられ、皮膚テストは迅速・高感度だが抗ヒスタミン薬の休薬が必要、特異的IgE検査は薬剤の影響を受けないが結果判明に時間がかかるという特徴があります。一方、鼻汁好酸球検査、血清総IgE、末梢血好酸球数はアレルギー性炎症やアトピー素因を示すだけで、何に対するアレルギーかは分かりません。検査陽性は感作を示すにすぎないため、問診や鼻誘発テストと合わせて原因抗原を判断します。原因抗原の特定は、抗原回避の指導や舌下免疫療法の適応判断に直結するため、臨床で欠かせない考え方です。
解答・解説
正解はa, eです
アレルギー性鼻炎の検査は、目的によって大きく2群に分けて理解するとよい。 1. 「アレルギー性の炎症があるか」を確かめる検査(アレルギー素因・2型炎症の存在診断) 鼻汁好酸球検査、末梢血好酸球数、血清総IgE値などがこれにあたる。アレルギー性鼻炎らしさを裏づけるが、何に対するアレルギーかは分からない。 2. 「何が原因抗原(アレルゲン)か」を特定する検査 ある特定の抗原に対するIgE抗体の存在を調べる検査であり、皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)、血清特異的IgE抗体検査、鼻誘発テストがこれにあたる。皮膚テストと特異的IgE検査は、患者が感作されている(その抗原に対するIgEをもつ)ことを示し、鼻誘発テストは実際に鼻粘膜で症状が誘発されるかを確認する。 設問は「原因抗原を特定するため」の検査を問うているので、抗原ごとに結果が得られる2の群を選べばよい。なお、感作されていても症状を起こさない例があるため、最終的な原因抗原の判断は問診(症状の季節性、生活環境、ペット飼育など)と検査結果を総合して行う。
選択肢考察
- ○a. プリックテスト
原因抗原の特定に用いる皮膚テストである。前腕屈側などの皮膚に、候補となる抗原液(アレルゲンエキス)を数cm間隔で滴下し、その部分を細い針で浅く刺して表皮をわずかに持ち上げ、抗原を皮内に入れる。皮膚の肥満細胞上の特異的IgEに抗原が結合すると、ヒスタミンなどが放出されて膨疹・紅斑が生じる(I型・即時型反応)。15〜20分後に、陰性対照(生理食塩液)・陽性対照(ヒスタミン)と比較して膨疹・紅斑の大きさで判定する。結果がその場で分かり、複数の抗原を同時に調べられ、感度が高く、侵襲が小さいため小児にも行える。抗ヒスタミン薬は反応を抑えるため、検査前には休薬が必要である。
- ×b. 鼻汁好酸球検査
原因抗原は特定できない。鼻汁を採取して染色し、好酸球の増加を確認する検査で、鼻粘膜局所の好酸球性炎症を反映する。アレルギー性鼻炎のほとんどの症例で陽性となり、末梢血好酸球数よりも感度・特異度に優れるため、アレルギー性鼻炎と非アレルギー性鼻炎(感染性鼻炎、血管運動性鼻炎など)の鑑別には有用である。しかし、どの抗原による炎症かは分からない。
- ×c. 血清総IgE検査
原因抗原は特定できない。血清中のIgEの総量を測る検査で、アトピー素因の目安となる。成人の基準上限はおおむね170 IU/mL前後であり、アレルギー疾患や寄生虫感染症で上昇する。ただしアレルギー性鼻炎では上昇しない例も多く、通年性でも約3分の1は基準範囲内、スギ花粉症のような季節性では大部分が基準範囲内にとどまる。抗原ごとの情報は得られない。
- ×d. 末梢血好酸球数測定
原因抗原は特定できない。末梢血好酸球はアレルギー疾患や寄生虫感染症で増加するが、アレルギー性鼻炎では正常範囲から軽度増加にとどまることが多く、鼻汁好酸球検査と比べて感度・特異度も劣る。好酸球性副鼻腔炎や気管支喘息の評価ではより重視される指標である。
- ○e. 血清特異的IgE検査
原因抗原の特定に用いる検査である。スギ、ヒノキ、ダニ、ハウスダスト、イヌ・ネコの上皮など、個々の抗原に結合するIgE抗体の量を血液で測定する。採血だけで複数の抗原を同時に調べられ、抗ヒスタミン薬など内服薬の影響を受けず、皮膚の状態にも左右されない利点がある。一方、結果判明までに日数がかかり、費用は皮膚テストより高い。陽性は感作を示すものであり、臨床症状との整合性を確認して原因抗原と判断する。
アレルギー性鼻炎の概要
鼻粘膜のI型アレルギー疾患で、くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉が3主徴である。ハウスダスト・ダニなどが原因となる通年性アレルギー性鼻炎と、スギ・ヒノキなどの花粉が原因となる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に分けられる。
診断の流れ
1. 問診:症状、発症時期・季節性、生活環境、家族歴、他のアレルギー疾患の合併など 2. 鼻鏡検査:鼻粘膜の蒼白・浮腫状腫脹、水様性鼻汁(季節性では発赤を示すこともある) 3. アレルギー性炎症の確認:鼻汁好酸球検査(必要に応じて血清総IgE、末梢血好酸球数) 4. 原因抗原の検索:皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)、血清特異的IgE抗体検査 5. 鼻誘発テスト:抗原ディスクを鼻粘膜に置き、くしゃみ・鼻汁・鼻粘膜腫脹が誘発されるかをみる。感作が実際の症状に結びつくかを直接確かめられる。 一般に、典型的症状に加えて鼻汁好酸球検査、皮膚テスト(または血清特異的IgE検査)、鼻誘発テストのうち2つ以上が陽性であればアレルギー性鼻炎と確定診断する。
皮膚テストと血清特異的IgE検査の比較
・皮膚テスト:結果が15〜20分で分かる、感度が高い、安価。抗ヒスタミン薬内服中は偽陰性になりうる、皮膚疾患がある部位では行えない、まれにアナフィラキシーの危険がある。 ・血清特異的IgE検査:採血のみで安全、薬剤の影響を受けない。結果が出るまで時間がかかり、費用が高い。
原因抗原特定の意義
抗原の除去・回避の指導や、アレルゲン免疫療法(スギ花粉・ダニに対する舌下免疫療法など)の適応判断に不可欠である。
POINT
・原因抗原を特定する検査:皮膚テスト(プリック・スクラッチ・皮内)、血清特異的IgE検査、鼻誘発テスト。 ・鼻汁好酸球、血清総IgE、末梢血好酸球はアレルギー性炎症の有無を示すだけで、抗原は特定できない。 ・鼻汁好酸球検査は末梢血好酸球数よりアレルギー性鼻炎の診断に有用。 ・皮膚テスト前は抗ヒスタミン薬を休薬する。
