StudyMed医師国家試験

片側か、両側か―副鼻腔病変の「左右」が教えてくれること

第120回医師国家試験 D問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第120回 D問題 第3問

両側性に出現することが最も多い副鼻腔疾患はどれか。

  1. a.乳頭腫
  2. b.上顎洞癌
  3. c.歯性上顎洞炎
  4. d.副鼻腔真菌症
  5. e.好酸球性副鼻腔炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、副鼻腔疾患を「片側性になりやすいか、両側性になりやすいか」で整理する問題だ。耳鼻咽喉科では、CTで副鼻腔の陰影を見たときにまず左右どちらか、あるいは両方かを確認する。それだけで鑑別がぐっと絞れるんだ。なぜ左右差が生まれるのか、原因の性質から考えてみよう。
医学生医学生
全身的な原因なら両側、局所的な原因なら片側、ということでしょうか。
ドクタードクター
まさにその発想が核心だ。粘膜全体に及ぶ体質的な炎症、たとえば慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎は、左右同じように起こりやすい。一方、腫瘍や歯が原因の炎症、真菌の塊のように、一か所に原因があるものは基本的に片側になる。
医学生医学生
そうすると、腫瘍の乳頭腫と上顎洞癌はまず片側ですね。
ドクタードクター
その通り。乳頭腫、特に内反性乳頭腫は鼻腔側壁や上顎洞・篩骨洞の上皮から発生する良性腫瘍で、ほぼ全例が片側性だ。再発しやすく、一部で癌化することもあるから、片側に鼻茸のような腫瘤を見たら生検が必要になる。
医学生医学生
鼻茸っていうと両側の慢性副鼻腔炎のイメージでしたが、片側だと話が変わるんですね。
ドクタードクター
そこは臨床でとても大事なポイントだよ。片側だけの鼻茸様腫瘤は「ただのポリープ」と決めつけない。上顎洞癌も同様で、副鼻腔の悪性腫瘍では最も多く、組織型は扁平上皮癌が主体。片側の鼻閉、血性鼻漏、頬の腫れ、歯痛、眼球突出などを起こし、CTでは骨破壊を伴う片側の腫瘤影を示す。
医学生医学生
歯性上顎洞炎は、歯学部との合同講義で上顎の臼歯の根っこが上顎洞の底に近いと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。う歯の根尖病巣や抜歯、根管治療に伴う感染が上顎洞に波及するから、原因歯のある側に起こる。両側に原因歯があれば両側にもなりうるけれど、例外的だ。悪臭のある膿性鼻漏が特徴で、原因歯の治療をしないと治らない。
医学生医学生
副鼻腔真菌症はどうでしょう。真菌なら免疫の弱い人で広がりそうなので、両側もありうるかなと思ったんですが。
ドクタードクター
鋭いけれど、頻度の高い非浸潤型は上顎洞に真菌塊をつくるタイプで、ほとんどが片側性だ。CTでは片側の上顎洞陰影の中に石灰化のような高吸収域が見えることが多く、手術で真菌塊を除去する。きみが想像したのは、糖尿病や免疫不全の人に起こる浸潤型で、ムコール症などは急速に周囲へ広がる重篤な病型だから別に押さえておこう。
医学生医学生
となると、残る好酸球性副鼻腔炎が両側性ということですね。
ドクタードクター
正解。好酸球性副鼻腔炎は、好酸球が主体の2型炎症という気道全体の体質的な炎症が原因だから、両側の鼻腔に多発性の鼻茸ができる。CTでは両側の篩骨洞優位の陰影が特徴だ。両側性であること自体が診断基準のJESRECスコアの項目に入っているほどなんだ。
医学生医学生
JESRECスコアには、ほかにどんな項目がありましたか。
ドクタードクター
両側性が3点、鼻茸ありが2点、CTで篩骨洞優位の陰影が2点、それに末梢血の好酸球比率で点数が加わり、合計11点以上が目安。確定診断は鼻茸組織の好酸球数で、400倍視野で70個以上が基準だ。成人発症で、気管支喘息、特にアスピリン喘息を合併しやすく、早い時期から嗅覚障害が出るのも特徴だね。
医学生医学生
呼吸器内科の実習で、喘息の患者さんが「においがわからない」と言っていたのを思い出しました。従来型の慢性副鼻腔炎とは治療も違うんですか。
ドクタードクター
違う。従来型は細菌感染を背景とした好中球主体の炎症で、上顎洞優位の陰影と膿性鼻漏を呈し、マクロライド少量長期療法が効く。好酸球性はマクロライドが効きにくく、ステロイドが有効だ。内視鏡下副鼻腔手術をしても再発しやすく、難治例ではIL-4受容体αに対する抗体のデュピルマブなどの生物学的製剤を使う。指定難病でもある。
医学生医学生
両側なら炎症性の病気、片側なら腫瘍・歯性・真菌症をまず考える、と整理しておきます。
ドクタードクター
それでいい。ただし両側性の慢性副鼻腔炎の患者でも、片側だけ所見が強い、血性鼻漏がある、といった違和感があれば腫瘍の合併を疑う目は持っておこう。左右差は、見逃してはいけない病気を拾い上げる最初の手がかりなんだ。

まとめ

副鼻腔疾患では、病変が片側か両側かが鑑別の出発点になります。気道全体の体質的な炎症による慢性副鼻腔炎は両側性に生じやすく、なかでも好酸球性副鼻腔炎は2型炎症を背景に両側の多発鼻茸と篩骨洞優位の陰影を示し、両側性であることがJESRECスコアの項目に含まれるほど特徴的です。一方、内反性乳頭腫や上顎洞癌などの腫瘍、原因歯側に起こる歯性上顎洞炎、真菌塊を形成する非浸潤型の副鼻腔真菌症は、局所に原因があるため片側性が基本です。好酸球性副鼻腔炎は喘息(特にアスピリン喘息)の合併や早期の嗅覚障害、ステロイドの有効性、術後の再発しやすさが従来型との違いで、難治例には生物学的製剤が用いられます。「片側病変を見たら腫瘍・歯性・真菌症を考える」という原則は、悪性腫瘍の見逃しを防ぐうえで臨床的に重要です。

解答・解説

正解はeです

【テーマ】副鼻腔疾患の「片側性か両側性か」 副鼻腔疾患を考えるうえで、病変が片側か両側かは鑑別の出発点となる重要な情報である。 ・両側性になりやすいもの:鼻・副鼻腔の粘膜全体に及ぶ炎症、すなわち慢性副鼻腔炎(感染型・好酸球性ともに)やアレルギー性鼻炎など。原因が全身的な体質や気道全体の炎症にあるため、左右両側に同じように病変が生じる。 ・片側性になりやすいもの:局所に原因があるもの、すなわち腫瘍(乳頭腫、上顎洞癌など)、歯が原因の炎症(歯性上顎洞炎)、副鼻腔真菌症など。 臨床では「片側だけの副鼻腔病変を見たら、腫瘍・歯性・真菌症を必ず考える」というのが鉄則である。

正解を導く考え方

選択肢のうち、局所の原因でなく、2型炎症(好酸球が主体となるアレルギー型の炎症)という気道全体の体質的な炎症によって起こるのは好酸球性副鼻腔炎のみである。好酸球性副鼻腔炎は両側性病変が診断基準の項目に含まれるほど、両側性であることが特徴的な疾患である。

選択肢考察

  1. ×a.  乳頭腫

    鼻・副鼻腔に生じる代表的な良性腫瘍で、特に内反性乳頭腫が重要である。腫瘍は局所の上皮から発生するため、ほぼ全例で片側性である。内反性乳頭腫は鼻腔側壁や上顎洞・篩骨洞から発生し、再発しやすく、一部(数%程度)で癌化することがある。片側性の鼻茸様腫瘤を見たら本症を疑い、生検を行う。

  2. ×b.  上顎洞癌

    副鼻腔の悪性腫瘍で最も多く、組織型は扁平上皮癌が主体である。悪性腫瘍は一か所から発生して広がるため、基本的に片側性である。片側の鼻閉、血性鼻漏、頬部腫脹、歯痛、眼球突出などを呈し、CTで骨破壊を伴う片側の腫瘤影を認める。

  3. ×c.  歯性上顎洞炎

    上顎の小臼歯・大臼歯の根尖は上顎洞底に近接しているため、う歯(虫歯)の根尖病巣、歯周病、根管治療、抜歯などに伴う感染が上顎洞へ波及して起こる。原因歯のある側に生じるため、通常は片側性である(両側に原因歯があれば両側に起こりうるが、例外的である)。悪臭のある膿性鼻漏が特徴で、原因歯の歯科治療が必要であり、難治例では内視鏡下副鼻腔手術を行う。

  4. ×d.  副鼻腔真菌症

    副鼻腔に真菌(多くはアスペルギルス)が感染・定着するもので、上顎洞に好発する。頻度の高い非浸潤型(真菌塊を形成するタイプ)はほとんどが片側性である。CTでは片側上顎洞の陰影の中に石灰化様の高吸収域を認めることが多い。治療は手術で副鼻腔を開放し真菌塊を除去する。なお、糖尿病や免疫不全患者に生じる浸潤型(ムコール症など)は急速に周囲組織へ広がる重篤な病型である。

  5. ○e.  好酸球性副鼻腔炎

    粘膜や鼻茸に著しい好酸球浸潤を伴う難治性の慢性副鼻腔炎である。2型炎症という気道全体の体質的な炎症が原因であるため、両側の鼻腔に多発性の鼻茸(鼻ポリープ)を生じ、CTでは両側の篩骨洞優位の陰影を示すのが特徴である。両側性であることは診断基準(JESRECスコア)の項目の一つでもあり、選択肢の中で最も両側性に出現しやすい疾患である。

好酸球性副鼻腔炎

・成人発症で、気管支喘息(特にアスピリン〈NSAIDs〉喘息)を合併しやすい。 ・症状:両側の鼻閉、粘稠な鼻漏(好酸球性ムチン)、早期からの嗅覚障害が特徴である。 ・検査:両側性の多発鼻茸、CTで篩骨洞優位の陰影(上顎洞より篩骨洞の陰影が強い)、末梢血好酸球増多、鼻茸組織中の好酸球浸潤。 ・診断:JESREC(Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis)スコアを用いる。項目は「両側性」3点、「鼻茸あり」2点、「CTで篩骨洞優位の陰影」2点、「末梢血好酸球比率」(2〜5%:4点、5〜10%:8点、10%超:10点)で、合計11点以上を好酸球性副鼻腔炎の目安とし、鼻茸組織の好酸球数(400倍視野で70個以上)で確定診断する。 ・治療:内視鏡下副鼻腔手術、経口・局所ステロイド。手術後も再発しやすく、難治例ではデュピルマブ(IL-4受容体αに対する抗体)などの生物学的製剤が用いられる。指定難病である。

従来型(好中球性)の慢性副鼻腔炎との違い

従来型は細菌感染を背景とする好中球主体の炎症で、上顎洞優位の陰影、膿性鼻漏を呈し、マクロライド少量長期療法が有効である。好酸球性副鼻腔炎は篩骨洞優位でマクロライドが効きにくく、ステロイドが有効な点が異なる。どちらも両側性に生じることが多い。

片側性副鼻腔病変の鑑別

腫瘍(内反性乳頭腫、上顎洞癌など)、歯性上顎洞炎、副鼻腔真菌症、術後性上顎嚢胞などを考える。

POINT

・慢性副鼻腔炎(特に好酸球性副鼻腔炎)は両側性に生じる。 ・片側性の副鼻腔病変では、腫瘍(乳頭腫・上顎洞癌)、歯性上顎洞炎、副鼻腔真菌症を鑑別する。 ・好酸球性副鼻腔炎:両側多発鼻茸、篩骨洞優位の陰影、末梢血好酸球増多、嗅覚障害、喘息(アスピリン喘息)合併。JESRECスコアで診断する。 ・内反性乳頭腫は片側性で再発しやすく、癌化することがある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。