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かゆくない皮膚病はどれ?―「自覚症状のなさ」が語る皮膚結核の顔

第115回医師国家試験 C問題 第18問

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第115回 C問題 第18問

瘙痒を伴わないのはどれか。

  1. a.疥癬
  2. b.扁平苔癬
  3. c.尋常性狼瘡
  4. d.疱疹状皮膚炎
  5. e.水疱性類天疱瘡

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、皮膚疾患の自覚症状、特に「かゆみがあるかどうか」を問う問題だ。皮膚科の外来では、患者さんが最初に口にするのはたいてい「かゆい」か「痛い」か。逆に、何も感じないのに皮疹だけがゆっくり広がる病気もあって、それ自体が診断のヒントになる。選択肢を「かゆみの強い病気」と「自覚症状に乏しい病気」に仕分けしながら考えてみよう。
医学生医学生
皮膚の病気ってほとんどかゆいイメージなので、むしろかゆくないものを探すほうが難しそうです。
ドクタードクター
その感覚は正しいよ。湿疹・皮膚炎群、蕁麻疹、痒疹など、皮膚疾患の多くは瘙痒を伴う。だからこそ「かゆくない」グループを知っておくと武器になる。代表的なのは、皮膚結核やハンセン病のような感染性肉芽腫、梅毒の皮疹、そして多くの皮膚腫瘍だ。
医学生医学生
感染性肉芽腫ということは、結核菌が皮膚に病変を作る尋常性狼瘡が当てはまりそうですね。
ドクタードクター
正解。尋常性狼瘡は、病変部で結核菌が増殖している真性皮膚結核の代表的な病型だ。肺などの病巣から血行性・リンパ行性に皮膚へ広がって生じることが多く、顔面、特に頰や鼻に好発する。赤褐色の小結節が集まって融合し、年単位でじわじわ拡大していくけれど、かゆみや痛みはほとんどない。
医学生医学生
病理実習で、乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を見たのを思い出しました。肉芽腫性の病変はかゆみが出にくいんですね。
ドクタードクター
そう理解しておくといい。診察のコツとしてはガラス圧法がある。ガラス板で病変を圧迫して血液を押し出すと、淡い黄褐色の結節が透けて見える。いわゆるリンゴジャム様の色調だ。サルコイドーシスの皮膚病変でも似た所見がみられるので、肉芽腫を疑うサインとして覚えておこう。
医学生医学生
では、ほかの選択肢を確認させてください。疥癬は高齢者施設で集団発生するかゆい病気、という印象です。
ドクタードクター
その通り。疥癬はヒゼンダニが角層に寄生する感染症で、虫体や排泄物へのアレルギー反応によって非常に強いかゆみが出る。体が温まる夜間に増強するのが特徴だ。指間や手首の屈側に疥癬トンネルという線状の皮疹がみられ、陰部や腋窩には丘疹や結節ができる。
医学生医学生
扁平苔癬は、角化症というくくりなのでかゆみは少ないのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだね。扁平苔癬は表皮の基底層をT細胞が攻撃する炎症性角化症で、かゆみを伴うのが一般的だ。紫紅色で表面が平らな多角形の丘疹ができて、表面に白い網目状のWickham線条がみられる。口腔粘膜にもレース状の白色病変を作りやすく、薬剤やC型肝炎ウイルス感染、歯科金属が誘因になることもある。
医学生医学生
残りの2つは自己免疫性水疱症ですね。水疱というと痛そうですが、かゆいんでしょうか。
ドクタードクター
どちらも強いかゆみが特徴だ。水疱性類天疱瘡は、ヘミデスモソームのBP180やBP230に対するIgG自己抗体で表皮下水疱ができる高齢者に多い病気で、かゆみの強い浮腫性紅斑の上に破れにくい緊満性水疱が生じる。水疱が出る前に、かゆみと紅斑だけが先行する時期があるのも重要だ。DPP-4阻害薬が誘因になることも知られている。
医学生医学生
高齢者が「ずっとかゆい」と言っていたら、湿疹だけでなく類天疱瘡の前駆期も考えるべきなんですね。疱疹状皮膚炎はどうですか。
ドクタードクター
疱疹状皮膚炎は表皮トランスグルタミナーゼに対するIgA抗体が関与する病気で、肘や膝、殿部の伸側に小水疱が群がって左右対称に出る。焼けるような強いかゆみがあり、掻破で水疱が破れてびらんや痂皮として見つかることが多い。蛍光抗体直接法で真皮乳頭部に顆粒状のIgA沈着を認め、治療にはジアフェニルスルホンが有効だ。欧米ではセリアック病との関連が強いけれど、日本では腸病変を伴わないことが多い。
医学生医学生
整理すると、寄生虫、炎症性角化症、自己免疫性水疱症はかゆく、感染性肉芽腫の尋常性狼瘡だけが自覚症状に乏しい、ということですね。
ドクタードクター
その通り。発展として、「かゆくない」グループの仲間も押さえておこう。ハンセン病はかゆくないどころか知覚低下を伴うし、梅毒の硬性下疳やバラ疹も自覚症状に乏しい。基底細胞癌などの皮膚腫瘍も同様だ。痛くもかゆくもないから受診が遅れやすい、という点が臨床では怖いところなんだ。
医学生医学生
逆に、皮疹がないのにかゆいと訴える患者さんはどう考えればいいでしょうか。
ドクタードクター
いい質問だ。その場合は皮膚瘙痒症として全身疾患を探す。透析中の慢性腎臓病、原発性胆汁性胆管炎などの胆汁うっ滞、糖尿病、甲状腺機能異常、真性多血症、Hodgkinリンパ腫、鉄欠乏などが代表的だ。かゆみの有無と皮疹の有無を組み合わせると、皮膚の外の病気にまで目が届くようになるよ。

まとめ

皮膚疾患の多くは瘙痒を伴い、疥癬(夜間に増強する激しいかゆみ)、扁平苔癬(紫紅色扁平丘疹とWickham線条)、水疱性類天疱瘡(BP180/BP230に対するIgG、緊満性水疱)、疱疹状皮膚炎(IgA沈着、小水疱)はいずれもかゆみが目立ちます。一方、真性皮膚結核の代表である尋常性狼瘡は顔面に好発し、ガラス圧法でリンゴジャム様の黄褐色結節が透見される慢性肉芽腫性病変で、かゆみや痛みに乏しいのが特徴です。皮膚結核やハンセン病、梅毒の皮疹、多くの皮膚腫瘍は自覚症状が少ないため受診が遅れやすく、皮疹がないのにかゆみがある場合は腎・肝・血液・内分泌疾患などの全身疾患を考えます。「かゆみの有無」という一見素朴な情報を鑑別の軸にすることは、皮膚科診療の基本的な思考法です。

解答・解説

正解はcです

皮膚疾患の自覚症状、特に瘙痒(かゆみ)の有無を問う一般問題である。 皮膚疾患の多くは瘙痒を伴うが、かゆみの程度は疾患ごとに異なり、診断の手がかりになる。かゆみを強く訴える代表的な疾患には、疥癬、蕁麻疹、痒疹、アトピー性皮膚炎、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎などがある。一方、感染性肉芽腫(皮膚結核、ハンセン病など)、梅毒の皮疹、多くの皮膚腫瘍などは、自覚症状に乏しいことが特徴である。 選択肢のうち、疥癬は寄生虫感染症、扁平苔癬は炎症性角化症、疱疹状皮膚炎と水疱性類天疱瘡は自己免疫性水疱症で、いずれも瘙痒を伴う。尋常性狼瘡は結核菌による真性皮膚結核であり、慢性の肉芽腫性病変として進行するが、かゆみや痛みなどの自覚症状はほとんどない。

選択肢考察

  1. ×a.  疥癬

    瘙痒を伴う。疥癬はヒゼンダニ(疥癬虫)が皮膚の角層に寄生して起こる感染症で、ダニの虫体や排泄物に対するアレルギー反応によって非常に強いかゆみが生じる。かゆみは体が温まる夜間に強くなるのが特徴である。指間や手首の屈側などに疥癬トンネル(雌成虫が角層内を掘り進んだ線状の皮疹)がみられ、陰部や腋窩に丘疹・結節が生じる。高齢者施設などで集団発生しやすい。

  2. ×b.  扁平苔癬

    瘙痒を伴う。扁平苔癬は、表皮の基底層をT細胞が攻撃する後天性の炎症性角化症である。原因不明のことが多いが、薬剤、C型肝炎ウイルス感染、歯科金属などが誘因となることがある。手背、前腕屈側、下腿などに紫紅色で表面が平らな多角形の丘疹が生じ、表面に白い網目状の線条(Wickham線条)がみられる。口腔粘膜にもレース状の白色病変を作りやすい。かゆみを伴うのが一般的である。

  3. ○c.  尋常性狼瘡

    瘙痒を伴わない疾患であり、正解である。尋常性狼瘡は、結核菌が皮膚で増殖して病変を作る真性皮膚結核の代表的な病型で、多くは肺などの病巣から血行性・リンパ行性に皮膚へ広がって生じる。顔面(特に頰部や鼻)に好発し、赤褐色の小結節が集まって融合し、ゆっくりと拡大して局面となる。病変をガラス板で圧迫すると黄褐色に透けて見える(ガラス圧法で淡黄褐色の結節が透見される、いわゆるリンゴジャム様の色調)。経過は年単位で慢性に進み、潰瘍化や瘢痕を残すことがあるが、かゆみや痛みといった自覚症状に乏しい。

  4. ×d.  疱疹状皮膚炎

    瘙痒を伴う。疱疹状皮膚炎(Duhring疱疹状皮膚炎)は、表皮トランスグルタミナーゼに対するIgA抗体が関与する自己免疫性水疱症である。欧米ではグルテン過敏性腸症(セリアック病)と強く関連するが、日本では患者数が少なく腸病変を伴わないことが多い。肘、膝、殿部などの伸側に、紅斑・丘疹・小水疱が群がって左右対称に生じ、再発を繰り返す。焼けるような強いかゆみが特徴で、掻破によって水疱が破れてびらんや痂皮として観察されることも多い。蛍光抗体直接法で真皮乳頭部に顆粒状のIgA沈着を認める。治療にはジアフェニルスルホン(DDS)が有効である。

  5. ×e.  水疱性類天疱瘡

    瘙痒を伴う。水疱性類天疱瘡は、表皮基底膜部のヘミデスモソーム構成蛋白(BP180、BP230)に対するIgG自己抗体によって表皮下水疱が生じる自己免疫性水疱症で、高齢者に多い。全身に強いかゆみを伴う浮腫性紅斑が出現し、その上や正常皮膚に破れにくい緊満性水疱ができる。水疱が出る前にかゆみや紅斑だけが先行する時期もある。糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬が発症の誘因となることが知られている。

瘙痒の強い主な皮膚疾患

・疥癬(夜間に増強) ・蕁麻疹 ・痒疹 ・アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎などの湿疹・皮膚炎群 ・水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎 ・扁平苔癬、皮膚瘙痒症

自覚症状に乏しい主な皮膚疾患

・皮膚結核(尋常性狼瘡、皮膚腺病など) ・ハンセン病(むしろ知覚低下を伴う) ・梅毒の皮疹(硬性下疳、梅毒性バラ疹など) ・多くの皮膚腫瘍(基底細胞癌、悪性黒色腫の初期など)

皮膚結核の分類

・真性皮膚結核:病変部で結核菌が増殖しているもの。尋常性狼瘡、皮膚腺病(皮下のリンパ節などの結核病巣が皮膚に及んだもの)、皮膚疣状結核など。 ・結核疹:別の部位の結核に対する免疫反応として生じ、病変部から菌は通常検出されないもの。Bazin硬結性紅斑、丘疹壊死性結核疹など。

全身疾患による皮膚瘙痒症

皮疹がないのにかゆみを訴える場合は、慢性腎臓病(透析患者)、胆汁うっ滞性肝疾患(原発性胆汁性胆管炎など)、糖尿病、甲状腺機能異常、真性多血症、Hodgkinリンパ腫、鉄欠乏などの全身疾患を考える。

POINT

・尋常性狼瘡は真性皮膚結核の代表で、顔面に好発し、自覚症状に乏しい。ガラス圧法で淡黄褐色の結節が透見される。 ・疥癬は夜間に増強する激しい瘙痒。 ・水疱性類天疱瘡(緊満性水疱、BP180/BP230)と疱疹状皮膚炎(IgA、小水疱)は強い瘙痒を伴う。 ・扁平苔癬は紫紅色の扁平丘疹とWickham線条、口腔病変、瘙痒を伴う。 ・皮疹のない瘙痒では腎不全・胆汁うっ滞・血液疾患などの全身疾患を考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。