StudyMed医師国家試験

その場所には理由がある―露光部・張力・皮下組織で解く皮膚疾患の好発部位

第119回医師国家試験 A問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第119回 A問題 第4問

疾患と好発部位の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.疥癬 ―― 外陰部
  2. b.ケロイド ―― 耳介
  3. c.脂腺母斑 ―― 頭部
  4. d.血管性浮腫 ―― 口唇
  5. e.ケラトアカントーマ ―― 臍部

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的な皮膚疾患とその好発部位の組合せから、誤りを1つ見つける問題だ。好発部位は丸暗記しがちだけれど、「なぜそこにできるのか」という病態と結びつけると忘れにくい。原因がダニなのか、紫外線なのか、皮膚の張力なのか、組織の構造なのか、という視点で一つずつ見ていこう。
医学生医学生
皮膚科の講義で好発部位の図をたくさん見ましたが、正直、覚えきれていないものもあります。
ドクタードクター
それが普通だよ。だからこそ理屈で整理しよう。まず疥癬から。原因は何だったかな。
医学生医学生
ヒゼンダニが角層に寄生する感染症で、夜にかゆみが強くなるんでしたよね。
ドクタードクター
その通り。ダニは皮膚が薄くて柔らかく、温かい部位を好む。雌成虫が角層に掘り進んだ線状の疥癬トンネルは指間や手掌、手首に多く、診断の決め手になる。そして外陰部、特に男性の陰茎や陰嚢には、かゆみの強い赤褐色の疥癬結節ができやすい。だから疥癬と外陰部の組合せは正しい。
医学生医学生
臨床実習で皮膚科を回ったとき、施設入所中の高齢の方で指の間から虫体を確認する場面を見学しました。
ドクタードクター
貴重な経験だね。疥癬は高齢者施設での集団発生が問題になる。特に免疫が落ちた人で多数のダニが寄生する角化型疥癬は感染力が強く、個室管理が必要になる。次はケロイドだ。
医学生医学生
ピアスの穴のあとに耳たぶが盛り上がる、というのは聞いたことがあります。耳介は正しそうです。
ドクタードクター
正解。ケロイドは外傷や手術、ざ瘡、ピアス穴などをきっかけに膠原線維が過剰に増え、もとの創の範囲を越えて広がる病変だ。前胸部、肩、上腕、恥骨上部も好発部位で、これらは体の動きで皮膚が常に引っ張られる場所。張力が発症や悪化に関わると考えられている。
医学生医学生
創の範囲内にとどまるものは肥厚性瘢痕と区別するんでしたね。
ドクタードクター
そう。肥厚性瘢痕は時間とともに平坦化しやすいのに対し、ケロイドは自然に消えにくく、体質も関与する。続いて脂腺母斑。
医学生医学生
生まれつきの母斑で、頭部に髪の生えない黄色っぽい斑として気づかれる、というイメージです。
ドクタードクター
よく覚えているね。表皮・毛包・脂腺などが混ざった過誤腫的な器官母斑で、頭部や顔面に好発する。思春期以降にホルモンの影響で隆起してきて、成人以降に二次性腫瘍が生じることがある。ただ、その多くは毛芽腫などの良性腫瘍で、基底細胞癌のような悪性腫瘍はまれとされている。
医学生医学生
昔の教科書には基底細胞癌が出やすいと書いてあった気がしますが、今はそうでもないんですね。
ドクタードクター
そこは知見が更新された点だね。整容面や二次性腫瘍の可能性を考えて切除が検討される。では血管性浮腫はどうだろう。
医学生医学生
蕁麻疹の深いバージョンで、口唇やまぶたがぼってり腫れるもの、と習いました。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。真皮深層から皮下組織、粘膜下で血管透過性が高まって起こる限局性の浮腫だ。口唇や眼瞼は皮下組織が疎で、浮腫液がたまりやすいから好発部位になる。だからこの組合せも正しい。注意したいのは喉頭や咽頭に起きた場合で、気道閉塞による窒息の危険がある。
医学生医学生
ACE阻害薬で起きることもあると薬理学で習いました。
ドクタードクター
大事なポイントだ。ブラジキニンが関与する型で、遺伝性血管性浮腫も同じ仲間。こちらは抗ヒスタミン薬やステロイドが効きにくいから、ヒスタミン型と区別して考える必要がある。さて、残るのはケラトアカントーマと臍部の組合せだ。
医学生医学生
ケラトアカントーマは有棘細胞癌に似た腫瘍でしたよね。だとすると紫外線が関係しそうなので、臍はおかしい気がします。
ドクタードクター
その推論で正解。ケラトアカントーマは中高年の顔面、特に鼻や頬、手背といった日光露光部に好発する。衣服で覆われて日光を浴びにくい臍部は好発部位ではない。だから誤っている組合せはこれだ。
医学生医学生
臍は汗や垢がたまるイメージなので、むしろ疥癬のほうが関係ありそうですね。
ドクタードクター
いい気づきだね。実際、臍周囲は疥癬の皮疹が出やすい部位の一つだ。ケラトアカントーマの特徴も押さえておこう。数週間で急速に大きくなり、中央に角栓がつまった噴火口状のドーム状結節になる。多くは数か月で自然に消退するけれど、臨床的にも組織学的にも高分化型の有棘細胞癌との区別が難しく、有棘細胞癌の一型とみなす考え方もある。
医学生医学生
自然に消えるなら様子を見てもよさそうに思えてしまいますが……。
ドクタードクター
そこが臨床での落とし穴だ。目の前の結節がケラトアカントーマなのか有棘細胞癌なのかは見た目だけでは判断しきれないから、診断を兼ねて切除するのが勧められる。有棘細胞癌は自然消退せず、日光角化症や熱傷瘢痕、慢性潰瘍などを前駆病変にすることがある、という違いも覚えておこう。
医学生医学生
好発部位を「露光部」「張力」「ダニの好む場所」「皮下組織が疎」と理由で分けると、他の疾患にも応用できそうです。
ドクタードクター
まさにそれが狙い。たとえば脂漏性皮膚炎は脂腺の多い頭部や鼻翼周囲、尋常性乾癬は外的刺激を受けやすい肘頭や膝蓋、基底細胞癌は顔面の正中部に多い。どれも成り立ちと結びつけると記憶が定着しやすいよ。

まとめ

皮膚疾患の好発部位は、その成り立ちと結びつけて理解すると整理しやすくなります。疥癬はダニが好む柔らかく温かい部位に生じ、指間・手首の疥癬トンネルや外陰部の疥癬結節が特徴的で、ケロイドは前胸部・肩など張力のかかる部位やピアス後の耳介に好発します。脂腺母斑は頭部・顔面の先天性病変で成人後に主に良性の二次性腫瘍を生じることがあり、血管性浮腫は皮下組織が疎な口唇や眼瞼に起こり、喉頭浮腫による窒息に注意が必要です。ケラトアカントーマは中高年の顔面・手背などの露光部に好発し、急速増大と自然消退を示しますが、有棘細胞癌との鑑別が難しいため切除して組織を確認することが勧められ、臍部は好発部位ではありません。「なぜそこにできるのか」を考える習慣は、暗記の負担を減らすだけでなく、実際の診察で皮疹の分布から疾患を推定する力にもつながります。

解答・解説

正解はeです

代表的な皮膚疾患の好発部位を問う問題である。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、典型的な好発部位と合わない組合せを探す。 好発部位は、その疾患の成り立ちと結びつけると覚えやすい。 ・疥癬:ダニが好む、皮膚が薄く温かい部位(指間、手首、腋窩、外陰部など)。 ・ケロイド:皮膚に張力がかかりやすい部位や、ピアスなどの外傷を受ける部位(前胸部、肩、耳介など)。 ・脂腺母斑:毛包脂腺系が発達した頭部・顔面に生まれつき存在する。 ・血管性浮腫:皮下組織が疎で、浮腫液がたまりやすい部位(口唇、眼瞼など)。 ・ケラトアカントーマ:紫外線曝露を受ける顔面などの露光部。 ケラトアカントーマは日光への曝露と関係が深く、顔面や手背などの露光部に生じる。衣服に覆われ日光を浴びにくい臍部は好発部位ではないため、誤っているのはeである。

選択肢考察

  1. ×a.  疥癬 ―― 外陰部

    正しい組合せである。疥癬はヒゼンダニ(疥癬虫)が角層に寄生して起こる感染症で、夜間に強まる激しい瘙痒が特徴である。雌成虫が角層内に掘り進んだ線状の皮疹(疥癬トンネル)は指間・手掌・手首に多く、診断価値が高い。外陰部(特に男性の陰茎・陰嚢)には、瘙痒の強い赤褐色の結節(疥癬結節)がみられやすい。そのほか腋窩、臍周囲、腹部、大腿内側など、皮膚が柔らかく温かい部位に生じやすい。なお通常型疥癬では頭部・顔面は侵されにくい(高齢者や角化型疥癬では例外がある)。

  2. ×b.  ケロイド ―― 耳介

    正しい組合せである。ケロイドは、外傷・手術・ざ瘡・ピアス穴などをきっかけに膠原線維が過剰に増生し、元の創の範囲を越えて周囲へ広がる赤い隆起性病変である。痛みやかゆみを伴うことが多い。好発部位は前胸部、肩、上腕、下顎部、恥骨上部、そして耳介(ピアスケロイド)である。前胸部や肩は体の動きによって皮膚が常に引っ張られる部位であり、張力が発生・増悪に関わると考えられている。創の範囲内にとどまり、時間とともに平坦化しやすいものは肥厚性瘢痕として区別する。

  3. ×c.  脂腺母斑 ―― 頭部

    正しい組合せである。脂腺母斑は、出生時から存在する表皮・毛包・脂腺などの過誤腫的な母斑(器官母斑)で、頭部・顔面に好発する。頭部では黄色調で表面がやや凹凸した脱毛斑として気づかれる。思春期以降、ホルモンの影響で隆起・顆粒状化が目立つようになり、成人以降に二次性腫瘍が生じることがある。二次性腫瘍の多くは毛芽腫や乳頭状汗管嚢胞腺腫などの良性腫瘍で、基底細胞癌などの悪性腫瘍はまれとされる。整容面や二次性腫瘍の可能性を考慮して切除が検討される。

  4. ×d.  血管性浮腫 ―― 口唇

    正しい組合せである。血管性浮腫(Quincke浮腫)は、真皮深層から皮下組織、あるいは粘膜下で血管透過性が亢進して生じる限局性の浮腫で、皮膚の深い部位に起こる蕁麻疹ととらえることもできる。口唇や眼瞼に好発し、舌、手足、外陰部にも生じる。境界がはっきりしない腫脹で、瘙痒は乏しく、数日持続することがある。喉頭・咽頭に生じると気道閉塞により窒息の危険があり、消化管粘膜に生じると腹痛をきたす。ヒスタミンが関与する型のほか、ブラジキニンが関与する型(遺伝性血管性浮腫やアンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬によるもの)があり、後者には抗ヒスタミン薬やステロイドが効きにくい。

  5. ○e.  ケラトアカントーマ ―― 臍部

    誤った組合せであり、本問の正解である。ケラトアカントーマは中高年の顔面(鼻、頬など)や手背といった日光露光部に好発する上皮系腫瘍である。数週間で急速に増大し、中央に角質がつまった噴火口状のくぼみ(角栓)をもつドーム状結節となる。多くは数か月で自然に消退し瘢痕を残すが、臨床的にも組織学的にも高分化型の有棘細胞癌との区別が難しく、有棘細胞癌の一型とみなす考え方もあるため、診断を兼ねて切除することが勧められる。臍部は露光部ではなく、好発部位ではない。

ケラトアカントーマと有棘細胞癌の比較

・共通点:高齢者の露光部に多い、角化傾向の強い結節。 ・ケラトアカントーマ:数週間で急速に増大 → 数か月で自然消退する経過。左右対称の噴火口状構造。 ・有棘細胞癌:増大は緩徐〜持続的で自然消退しない。日光角化症、熱傷瘢痕、慢性放射線皮膚炎、慢性潰瘍などを前駆病変とすることがある。 両者の鑑別が困難な場合は切除して組織を確認する。

疥癬の型

・通常疥癬:寄生数は少ない。瘙痒が強い。治療はイベルメクチン内服やフェノトリン外用など。 ・角化型疥癬(ノルウェー疥癬):免疫低下者や高齢者でダニが非常に多数寄生し、厚い灰白色の角質増殖を形成する。感染力が強く、施設内集団発生の原因となるため個室管理を要する。

ケロイドと肥厚性瘢痕

・ケロイド:元の創を越えて拡大、自然消退しにくい、体質(家族歴)が関与。 ・肥厚性瘢痕:創の範囲内にとどまり、数か月〜数年で平坦化しやすい。 治療はステロイド局所注射・テープ、圧迫、切除後の放射線照射などを組み合わせる。

その他の好発部位として問われやすいもの

・脂漏性皮膚炎:頭部、顔面(鼻翼周囲)、腋窩など脂腺の多い部位。 ・尋常性乾癬:肘頭・膝蓋など外的刺激を受けやすい伸側、頭部。 ・アトピー性皮膚炎(成人):顔面・頸部・肘窩・膝窩。 ・基底細胞癌:顔面の正中部(鼻、眼瞼周囲)。

POINT

・ケラトアカントーマは中高年の顔面・手背などの露光部に好発し、急速増大と自然消退が特徴。有棘細胞癌との鑑別のため切除が勧められる。 ・疥癬:疥癬トンネルは指間・手掌・手首、疥癬結節は外陰部に多い。 ・ケロイド:前胸部、肩、耳介(ピアス)などに好発し、創の範囲を越えて拡大する。 ・脂腺母斑:頭部・顔面の先天性病変。頭部では脱毛斑となり、成人後に二次性腫瘍が生じうる。 ・血管性浮腫:口唇・眼瞼に好発。喉頭浮腫による窒息に注意。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。