StudyMed医師国家試験

ふくらはぎに潜む結核の影―「場所」で見抜く硬結性紅斑

第111回医師国家試験 A問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第111回 A問題 第6問

下腿に好発する皮膚疾患はどれか。

  1. a.血管肉腫
  2. b.硬結性紅斑
  3. c.脂漏性皮膚炎
  4. d.ケラトアカントーマ
  5. e.血管性浮腫〈Quincke浮腫〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚疾患の好発部位を問う知識問題だ。皮膚科では「どこに」「誰に」できるかが診断の大きな手がかりになる。選択肢の疾患がそれぞれ体のどこに出やすいか、頭の中で地図を描きながら考えてみよう。
医学生医学生
下腿と聞くと、まず結節性紅斑が思い浮かびます。でも選択肢にはないので、似た名前の硬結性紅斑でしょうか。
ドクタードクター
いい連想だね。正解は硬結性紅斑だ。中年女性の下腿、特にふくらはぎ、つまり下腿後面に好発する。下腿が太めで血行がうっ滞しやすい人に多いと言われているよ。
医学生医学生
皮膚科の講義で、硬結性紅斑は結核と関係があると習った気がします。
ドクタードクター
その通り。硬結性紅斑は結核疹の代表で、Bazin硬結性紅斑とも呼ばれる。結核疹というのは、体内の結核病巣に由来する菌体成分などに対する過敏反応として出る皮疹で、皮疹そのものからは通常結核菌は検出されないのが特徴だ。
医学生医学生
菌がいないのに結核と関係がある、というのが少しややこしいですね。どうやって結核との関連を確かめるんですか。
ドクタードクター
インターフェロンγ遊離試験、いわゆるIGRAが陽性になることが多いし、抗結核薬がよく効くことも裏付けになる。臨床的には、圧痛のある暗紅色の皮下硬結が多発し、しばしば潰瘍化して瘢痕を残す。病理は血管炎を伴う小葉性脂肪織炎で、類上皮細胞肉芽腫や乾酪壊死を伴うこともあるんだ。
医学生医学生
病理実習で、結節性紅斑は隔壁性脂肪織炎と教わりました。そこが対になっているんですね。
ドクタードクター
まさにそこが鑑別の要点だ。結節性紅斑は下腿前面の脛骨部に多く、潰瘍化せず数週で消えて瘢痕を残さない。一方、硬結性紅斑は後面に多く、潰瘍化して慢性に再発しやすい。前と後ろ、潰瘍の有無、隔壁か小葉か、とセットで覚えるといい。では他の選択肢も見ていこう。血管肉腫はどうかな。
医学生医学生
血管の腫瘍なので、足にもできそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そう思いがちだけど、典型は高齢者の頭部から顔面だ。最初は打撲痕のような紫斑で始まるから、ぶつけただけと見過ごされやすい。進行が速く、肺転移から血胸や気胸を起こすこともあり、予後はきわめて不良だ。乳癌術後のリンパ浮腫のある腕に生じるStewart-Treves症候群も有名だね。
医学生医学生
脂漏性皮膚炎は名前の通り、皮脂の多いところですよね。
ドクタードクター
正解。頭部、眉間や鼻翼周囲、耳の周り、腋窩、胸背部の正中など脂漏部位に、黄色調の脂っぽい鱗屑を伴う紅斑が出る。常在真菌のマラセチアが関与していて、抗真菌外用薬が効く。成人ではパーキンソン病やHIV感染症で悪化しやすいことも知っておこう。
医学生医学生
ケラトアカントーマは、CBTの問題集で噴火口のような写真を見ました。
ドクタードクター
中央に角栓をもつ噴火口状の結節で、数週間で急に大きくなるのが特徴だね。好発部位は高齢者の顔面などの露光部だ。自然消退することもあるけれど、有棘細胞癌との区別が難しく、その一型とみなす考え方もあるから通常は切除する。最後に血管性浮腫は?
医学生医学生
眼瞼や口唇がぷっくり腫れるイメージです。救急で喉が腫れると危ないと聞きました。
ドクタードクター
その通り。真皮深層から皮下の限局性浮腫で、かゆみに乏しく数日で跡を残さず消える。蕁麻疹に伴うヒスタミン型のほか、ACE阻害薬によるものや、C1インヒビターの異常による遺伝性血管性浮腫といったブラジキニン型がある。喉頭浮腫は窒息の危険があるから要注意だ。
医学生医学生
整理すると、頭・顔に出るものが多くて、下腿に出るのは硬結性紅斑だけ、ということですね。
ドクタードクター
そう。せっかくだから下腿に好発する他の疾患も押さえておこう。静脈瘤に伴ううっ滞性皮膚炎や下腿潰瘍、IgA血管炎の触知可能な紫斑、皮膚型結節性多発動脈炎、Basedow病の脛骨前粘液水腫、糖尿病のリポイド類壊死などがある。臨床では、下腿の有痛性結節を見たら、前か後ろか、潰瘍があるかをまず確認し、硬結性紅斑を疑えば結核の検索を忘れないことが大切だ。

まとめ

硬結性紅斑(Bazin硬結性紅斑)は結核疹の代表で、中年女性の下腿、とくにふくらはぎ(後面)に圧痛を伴う暗紅色の皮下硬結が多発し、潰瘍化して瘢痕を残しやすい疾患です。病理は血管炎を伴う小葉性脂肪織炎で、IGRA陽性となることが多く、抗結核薬が有効です。下腿前面に好発し潰瘍化しない隔壁性脂肪織炎の結節性紅斑との対比が重要です。一方、血管肉腫は高齢者の頭部、ケラトアカントーマは顔面の露光部、脂漏性皮膚炎は脂漏部位、血管性浮腫は眼瞼・口唇に好発します。好発部位を体の地図として整理しておくことは、皮膚疾患の鑑別を素早く進めるための基本となります。

解答・解説

正解はbです

皮膚疾患の多くには「どこにできやすいか(好発部位)」と「どんな人にできやすいか(好発年齢・性別)」の特徴があり、診断の大きな手がかりになる。本問は各疾患の好発部位を問う知識問題である。 選択肢を好発部位で整理すると次のようになる。 ・血管肉腫:高齢者の頭部・顔面 ・硬結性紅斑:中年女性の下腿(特に後面) ・脂漏性皮膚炎:頭部・顔面・腋窩・胸背部などの脂漏部位 ・ケラトアカントーマ:高齢者の顔面などの露光部 ・血管性浮腫:眼瞼・口唇などの顔面、口腔・咽喉頭 下腿を好発部位とするのは硬結性紅斑である。下腿に生じる結節・紅斑としては結節性紅斑との鑑別が重要で、硬結性紅斑は下腿後面(ふくらはぎ)に多く潰瘍化しうるのに対し、結節性紅斑は下腿前面(脛骨部)に多く潰瘍化しない点が区別のポイントになる。

選択肢考察

  1. ×a.  血管肉腫

    下腿ではなく、高齢者の頭部(被髪頭部)から顔面に好発する。血管内皮細胞由来の悪性腫瘍で、初期は打撲痕のような紫斑や暗赤色斑として現れ、易出血性の結節や潰瘍へ進行する。進行が速く肺転移(血胸・気胸の原因となる)をきたしやすく、予後はきわめて不良である。なお、乳癌術後のリンパ浮腫のある上肢に生じるもの(Stewart-Treves症候群)や、放射線照射部位に生じるものもある。

  2. ○b.  硬結性紅斑

    下腿、特にふくらはぎ(下腿後面)に好発するため正しい。中年女性、とくに下腿が太めで血行がうっ滞しやすい人に多い。結核疹(体内の結核病巣に由来する結核菌やその成分に対する過敏反応として生じる皮疹で、病変部から結核菌は通常検出されない)の代表であり、Bazin硬結性紅斑とも呼ばれる。圧痛を伴う暗紅色の皮下硬結が多発し、しばしば潰瘍化して瘢痕を残す。病理は血管炎を伴う小葉性脂肪織炎で、類上皮細胞肉芽腫や乾酪壊死を伴うことがある。インターフェロンγ遊離試験(IGRA)が陽性となることが多く、抗結核薬が有効である。

  3. ×c.  脂漏性皮膚炎

    皮脂の分泌が多い脂漏部位、すなわち頭部、顔面(眉間、鼻翼周囲、耳介周囲)、腋窩、前胸部・背部正中などに好発し、下腿は好発部位ではない。黄色調の脂っぽい鱗屑を伴う紅斑が特徴で、皮膚の常在真菌であるマラセチアの関与が考えられており、抗真菌外用薬が有効である。乳児期と思春期以降の成人に多く、成人ではパーキンソン病やHIV感染症で増悪・多発しやすい。

  4. ×d.  ケラトアカントーマ

    高齢者の顔面など日光にさらされる露光部に好発し、下腿は典型的な部位ではない。数週間で急速に増大する半球状の結節で、中央に角栓をいれた噴火口状の陥凹をもつのが特徴である。数か月で自然に消退することがあるが、臨床・病理ともに有棘細胞癌との区別が難しく、有棘細胞癌の一型(高分化型)とみなす考え方もあるため、通常は切除される。

  5. ×e.  血管性浮腫〈Quincke浮腫〉

    眼瞼や口唇などの顔面に好発し、口腔・咽喉頭にも生じる。真皮深層から皮下組織にかけての限局性浮腫で、かゆみに乏しく、数日で跡を残さずに消退する。蕁麻疹に合併するヒスタミン介在性のもののほか、ACE阻害薬によるものや、C1インヒビター(C1-INH)の欠損・機能異常による遺伝性血管性浮腫(ブラジキニン介在性)がある。喉頭浮腫は窒息の危険があり注意を要する。

硬結性紅斑と結節性紅斑の比較

下腿に有痛性の皮下結節を生じる代表的な疾患であり、対比して覚えるとよい。 ・硬結性紅斑:下腿後面に多い/中年女性/潰瘍化しやすく瘢痕を残す/経過は慢性で再発しやすい/病理は血管炎を伴う小葉性脂肪織炎/結核との関連(結核疹) ・結節性紅斑:下腿前面(伸側)に多い/若年〜中年女性/潰瘍化せず瘢痕を残さない/数週で消退する/病理は隔壁性脂肪織炎/原因は溶連菌感染、サルコイドーシス、Behçet病、炎症性腸疾患、薬剤、妊娠など

結核疹とは

結核病巣に由来する結核菌の菌体成分などに対する過敏反応として生じる皮疹で、皮疹自体から菌は通常証明されない。硬結性紅斑のほか、丘疹壊死性結核疹、腺病性苔癬などがある。なお結核との関連が明らかでない同様の病変を結節性血管炎と呼ぶことがある。

下腿に好発するその他の皮膚疾患

うっ滞性皮膚炎・静脈性下腿潰瘍(下肢静脈瘤に伴う)、IgA血管炎(下腿〜殿部の触知可能な紫斑)、皮膚型結節性多発動脈炎、リベド血管症、脛骨前粘液水腫(Basedow病)、リポイド類壊死(糖尿病)、古典型Kaposi肉腫、Schamberg病などがある。

頭頸部・顔面に好発する疾患

血管肉腫(高齢者頭部)、基底細胞癌(顔面正中部)、日光角化症・ケラトアカントーマ(露光部)、脂漏性皮膚炎(脂漏部位)、血管性浮腫(眼瞼・口唇)など。

POINT

・硬結性紅斑は結核疹の代表で、中年女性の下腿(特に後面)に好発し、潰瘍化しうる。 ・結節性紅斑は下腿前面に好発し、潰瘍化しない(隔壁性脂肪織炎)。 ・血管肉腫は高齢者の頭部、ケラトアカントーマは高齢者の顔面(露光部)、脂漏性皮膚炎は脂漏部位、血管性浮腫は眼瞼・口唇に好発する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。