光が届く場所に病気が生まれる―紫外線が狙う「皮膚」と「眼」
第113回医師国家試験 F問題 第36問
国試問題にチャレンジ
紫外線による健康影響と考えられるのはどれか。2つ選べ。
- a.花粉症
- b.白内障
- c.緑内障
- d.皮膚癌
- e.慢性気管支炎
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
紫外線は皮膚と眼の表層で吸収されるため、健康影響も光が当たる臓器に集中します。皮膚ではUVBによるピリミジン二量体などのDNA損傷と局所免疫抑制が蓄積し、日光角化症、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫などの皮膚癌のリスクが高まります。眼では水晶体が紫外線を吸収して蛋白が変性し、白内障が生じるほか、紫外線角膜炎や翼状片も起こります。一方、緑内障は眼圧などが関わる視神経症、花粉症はⅠ型アレルギー、慢性気管支炎は主に喫煙が原因で、紫外線とは関係しません。UVA・UVB・UVCの性質と曝露対策を理解しておくことは、患者指導や公衆衛生上の予防にも役立ちます。
解答・解説
正解はb, dです
問われていること
紫外線(ultraviolet:UV)が原因、または発症リスクを高める因子として確立している健康障害を選ぶ問題である。
考え方
紫外線は可視光より波長が短くエネルギーの高い電磁波で、主に皮膚と眼の表層で吸収される。体の奥まで届かないため、健康影響も「光が当たる臓器」すなわち皮膚と眼(角膜・結膜・水晶体)に集中する。 ・皮膚:DNA損傷(ピリミジン二量体の形成)の蓄積による皮膚癌、日焼け、光老化 ・眼:急性の紫外線角膜炎(雪眼炎)、慢性曝露による白内障、翼状片 したがって、皮膚癌と白内障が該当する。一方、花粉症(アレルギー)、緑内障(視神経症)、慢性気管支炎(気道の慢性炎症)は、いずれも紫外線曝露を主要な原因とする疾患ではない。
選択肢考察
- ×a. 花粉症
該当しない。花粉症はスギ・ヒノキなどの花粉を抗原とするⅠ型(即時型)アレルギーによる季節性アレルギー性鼻炎・結膜炎であり、紫外線は原因とならない。
- ○b. 白内障
該当する。水晶体は角膜を通過した紫外線(主にUVB)を吸収する。長年の曝露により水晶体蛋白が酸化・変性して凝集し、水晶体が混濁する。特に皮質白内障との関連が強いとされ、屋外作業者や日射の強い地域の住民で発症が多い。予防にはUV カット機能のある眼鏡やサングラス、つばの広い帽子が有効である。
- ×c. 緑内障
該当しない。緑内障は網膜神経節細胞とその軸索が障害され、視神経乳頭陥凹の拡大と特徴的な視野欠損が進行する視神経症である。眼圧上昇が最大の危険因子で、ほかに加齢、近視、家族歴などが挙げられるが、紫外線曝露は確立した原因ではない。
- ○d. 皮膚癌
該当する。UVBは表皮細胞のDNAに直接吸収されてシクロブタン型ピリミジン二量体などの損傷をつくり、修復されずに残ると p53 などの遺伝子に変異が蓄積する。UVAも活性酸素を介して間接的にDNAを傷害する。さらに紫外線は皮膚の局所免疫を抑制し、腫瘍細胞の排除を妨げる。これらにより日光角化症(前癌病変)、有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫などの発生リスクが高まる。DNA修復機構に先天的な異常のある色素性乾皮症では、若年から多発する。
- ×e. 慢性気管支炎
該当しない。慢性気管支炎は、喀痰を伴う咳が年に3か月以上、2年以上連続して続く状態で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一病型にあたる。最大の原因は長期の喫煙であり、ほかに大気汚染や職業性粉じん曝露などが関与する。紫外線は吸入されるものではなく、気道疾患の原因とはならない。
紫外線の分類
紫外線はおおむね波長100〜400nmの電磁波で、波長により3つに分けられる。 ・UVA(315〜400nm):地表に届く紫外線の大部分を占める。真皮まで達し、コラーゲン線維などを傷害してしわ・たるみ(光老化)を起こす。既存のメラニンを酸化して即時型の黒化をもたらす。 ・UVB(280〜315nm):多くはオゾン層で吸収されるが一部が地表に届く。表皮で吸収され、日焼け(サンバーン:紅斑・水疱)、DNA損傷、皮膚癌、白内障、紫外線角膜炎の主因となる。皮膚でのビタミンD合成にも必要である。 ・UVC(100〜280nm):オゾン層と大気でほぼ完全に吸収され、通常は地表に届かない。強い殺菌作用があり、殺菌灯に用いられる。
紫外線による主な健康影響
・急性:日焼け(サンバーン、サンタン)、紫外線角膜炎(雪眼炎、溶接作業での電気性眼炎)、光線過敏症の誘発 ・慢性:光老化、日光角化症、皮膚癌(有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫)、白内障、翼状片 ・有益な作用:ビタミンD合成。治療として乾癬やアトピー性皮膚炎に対する光線療法にも利用される。
対策
・オゾン層破壊により地表に届くUVBが増えると、皮膚癌・白内障の増加が懸念される(国際的にはモントリオール議定書でオゾン層破壊物質を規制)。 ・紫外線の強さの目安としてUVインデックスが用いられ、強い時間帯(正午前後)の外出を控える、帽子・衣類・日焼け止め・サングラスを使うことが推奨される。 ・日焼け止めの表示では、SPFがUVBに対する、PAがUVAに対する防御効果を示す。
POINT
・紫外線の健康影響は、光が届く皮膚と眼に集中する。 ・皮膚:日焼け、光老化、日光角化症、皮膚癌(有棘細胞癌、基底細胞癌、悪性黒色腫) ・眼:紫外線角膜炎(雪眼炎・電気性眼炎)、白内障、翼状片 ・UVBがDNA損傷の主因(ピリミジン二量体)、UVAは光老化の主因。UVCは地表にほぼ届かない。 ・緑内障、花粉症、慢性気管支炎は紫外線と関係しない。
