StudyMed医師国家試験

全員に撮るのは1枚の写真から―じん肺健康診断の「必須」と「追加」を見分ける

第113回医師国家試験 F問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第31問

じん肺法に基づく健康診断で必ず実施されるのはどれか。

  1. a.喀痰細胞診
  2. b.動脈血ガス分析
  3. c.スパイロメトリー
  4. d.ツベルクリン反応検査
  5. e.胸部エックス線直接撮影

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は産業保健の法律、じん肺法に基づく健康診断の問題だ。着眼点はシンプルで、「全員に必ずやる検査」と「所見があった人にだけ追加する検査」を区別できるかどうか。じん肺健診はこの二段構えになっているんだ。
医学生医学生
じん肺というと、公衆衛生の講義で珪肺や石綿肺を習いました。粉じんを吸って肺が線維化する病気ですよね。
ドクタードクター
その通り。粉じんの吸入で肺に線維増殖性の変化が起こる疾患の総称だ。一度線維化すると元に戻りにくいから、法律で定期的に健診を行い、早めに見つけて就業上の措置につなげる仕組みになっている。では、その健診で全員に必ずやる検査は何だと思う?
医学生医学生
肺の病気なので、肺機能を見るスパイロメトリーかなと思いました。呼吸器内科の実習でもよく測っていましたし。
ドクタードクター
直感としては自然だけど、ここが引っかけどころ。じん肺の診断と管理区分の決定は、胸部エックス線写真の像が中心なんだ。粒状影や不整形陰影の程度、大陰影の有無で第1型から第4型に分類する。だから全員に必須なのは、粉じん作業の職歴調査と胸部エックス線直接撮影の2つだけなんだよ。
医学生医学生
写真で型を決めるから、写真が全員必須なんですね。間接撮影ではだめなんですか。
ドクタードクター
いい質問だね。細かな粒状影を正確に読影して型分類する必要があるから、法令上も直接撮影による胸部全域の撮影が求められている。ここも押さえておきたいポイントだ。では他の選択肢を見ていこう。スパイロメトリーはどう位置づけられると思う?
医学生医学生
エックス線でじん肺の所見があった人に追加で行う、ということでしょうか。
ドクタードクター
正解。肺機能検査は、エックス線でじん肺所見がある人などを対象にする。一次検査がスパイロメトリーなどで、そこで異常がある人や、呼吸困難から肺機能障害が疑われる人には二次検査として動脈血ガス分析を行う。著しい肺機能障害があるかどうかは管理区分の判断にも関わるんだ。
医学生医学生
動脈血ガスは侵襲的な検査なので、全員にやるのは現実的じゃないですよね。救急の実習で採血させてもらいましたが、けっこう痛そうでした。
ドクタードクター
そういう感覚も大事だね。健診はスクリーニングだから、負担の少ない検査で全員をふるい分けて、必要な人に精密な検査を重ねていく。次は喀痰細胞診とツベルクリン反応検査。この2つは何のための検査だろう?
医学生医学生
喀痰細胞診は肺がん、ツベルクリン反応は結核ですよね。じん肺の合併症を見るためでしょうか。
ドクタードクター
その通り。じん肺には肺結核や原発性肺がんなどが合併しやすく、法令上の合併症として定められている。だから所見のある人を対象に、肺がんについては胸部CTや喀痰細胞診、結核の合併が疑われる人には結核精密検査を行う。ただ、どれも所見に応じて行う検査で、全員に必須ではないんだ。
医学生医学生
つまり、職歴とエックス線で全員をふるい分けて、所見のある人に肺機能と合併症の検査を足していく流れですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。発展知識も少し加えておこう。所見がなければ管理区分1。所見がある場合は事業者がエックス線写真などを都道府県労働局長に提出し、地方じん肺診査医の診断・審査を経て管理区分が決定される。管理区分4は療養が必要だ。
医学生医学生
健診の頻度も区分で変わるんでしたっけ。CBTの問題集で見た気がします。
ドクタードクター
そう。常時粉じん作業に従事している人なら、管理区分1は3年以内ごとに1回、管理区分2・3は1年以内ごとに1回が目安だ。臨床で注意したいのは、粉じん作業を辞めた後も病変が進行しうるし、結核や肺がんの合併リスクも残ること。職歴を丁寧に聴き取る習慣が、思わぬ診断の手がかりになるよ。
医学生医学生
問診で職歴を聞く意味が、OSCEの練習のときよりずっと実感できました。

まとめ

じん肺法に基づく健康診断では、粉じん作業の職歴調査と胸部エックス線直接撮影の2つが全員に必須の項目です。じん肺の診断と管理区分は、エックス線写真での粒状影・不整形陰影や大陰影の程度による型分類を軸に決まるため、詳細な読影ができる直接撮影が求められます。スパイロメトリーや動脈血ガス分析といった肺機能検査、喀痰細胞診や結核精密検査などの合併症の検査は、じん肺所見がある人などを対象に追加で行われます。管理区分は都道府県労働局長が決定し、区分に応じて定期健診の頻度や療養の要否が定まります。「全員に行うスクリーニング」と「所見に応じた精密検査」を分けて捉えることは、他の健診制度を理解するうえでも役立つ考え方です。

解答・解説

正解はeです

じん肺法は、粉じん作業に従事する労働者のじん肺(粉じんの吸入によって肺に線維増殖性変化が生じる疾患)を早期に把握し、適切な就業上の措置につなげることを目的とした法律である。同法に基づく健康診断(じん肺健康診断)は、全員に行う基本の検査と、その結果に応じて対象者を絞って行う追加の検査という二段構えになっている。

全員に必ず行う検査

・粉じん作業についての職歴の調査 ・胸部エックス線写真(直接撮影による胸部全域の撮影)による検査

所見に応じて行う検査

・胸部に関する臨床検査(既往歴、咳・痰・息切れなどの自覚症状、他覚所見の確認) ・肺機能検査(一次検査としてスパイロメトリーなど、二次検査として動脈血ガス分析) ・結核精密検査や肺がんに関する検査など、合併症に関する検査 じん肺の診断と管理区分の決定は胸部エックス線写真の所見(粒状影・不整形陰影の程度や大陰影の有無による型分類)を中心に行われる。そのため、エックス線直接撮影は全員に必須であり、肺機能検査や合併症の検査はエックス線でじん肺所見が認められた者などを対象に追加される、という流れを理解しておけば正解を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  喀痰細胞診

    喀痰細胞診は、じん肺の合併症である肺がんに関する検査の一つである。肺がんに関する検査はじん肺所見のある者(管理区分2・3の者など)を対象に、胸部らせんCTとともに行われるもので、全員に必ず実施する項目ではない。

  2. ×b.  動脈血ガス分析

    動脈血ガス分析は肺機能検査のうちの二次検査にあたる。エックス線写真でじん肺所見が認められ、一次検査(スパイロメトリーなど)で異常があった者や、呼吸困難などから肺機能障害が疑われる者に行うもので、必須項目ではない。

  3. ×c.  スパイロメトリー

    スパイロメトリー(肺活量や1秒量などを測定する検査)は肺機能検査の一次検査である。対象は胸部エックス線写真でじん肺所見があると判断された者などであり、全員に必ず行う検査ではない。管理区分の決定において、著しい肺機能障害の有無を判断するために用いられる。

  4. ×d.  ツベルクリン反応検査

    ツベルクリン反応検査は全員に行う検査ではない。じん肺には肺結核が合併しやすいため、結核の合併が疑われる者には結核精密検査(結核菌検査、エックス線特殊撮影など)が行われ、その項目に含まれることはあるが、あくまで所見に応じて行う検査である。

  5. ○e.  胸部エックス線直接撮影

    じん肺の診断と管理区分の決定は胸部エックス線写真の像(第1型〜第4型)に基づいて行われるため、直接撮影による胸部全域のエックス線検査は、粉じん作業の職歴調査とともにすべての受診者に必ず実施される。間接撮影ではなく、詳細な読影が可能な直接撮影であることが求められる点も押さえておきたい。

じん肺健康診断の種類

・就業時健康診断:新たに常時粉じん作業に従事することになった労働者に行う。 ・定期健康診断:粉じん作業に従事している者、または従事したことがある者に一定期間ごとに行う。 ・定期外健康診断:一般健康診断などでじん肺の疑いがあるとされた場合や、合併症で休業した者が復帰する場合などに行う。 ・離職時健康診断:離職の際に労働者の求めに応じて行う。

定期健康診断の頻度

・常時粉じん作業に従事している者:管理区分1は3年以内ごとに1回、管理区分2・3は1年以内ごとに1回。 ・過去に常時粉じん作業に従事し、現在は非粉じん作業に従事している者:管理区分2は3年以内ごとに1回、管理区分3は1年以内ごとに1回。

じん肺管理区分の決定

健康診断でじん肺所見がない者は管理区分1となる。所見がある場合、事業者は胸部エックス線写真とじん肺健康診断の結果を証明する書面を都道府県労働局長に提出し、地方じん肺診査医の診断・審査に基づいて管理区分(1、2、3イ・3ロ、4)が決定され、事業者に通知される。管理区分4(大陰影が大きいもの、または著しい肺機能障害を伴うものなど)は療養を要する。

じん肺の合併症

肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺がんが法令上の合併症とされ、管理区分2・3の者がこれらを合併した場合は療養の対象となる。

POINT

・じん肺健康診断で全員に必須なのは「粉じん作業の職歴調査」と「胸部エックス線直接撮影」の2つ。 ・肺機能検査(スパイロメトリー→動脈血ガス分析)や合併症の検査(結核精密検査、喀痰細胞診・胸部CTなど)は所見に応じて追加される。 ・管理区分はエックス線像と肺機能障害の有無で決まり、都道府県労働局長が決定する。 ・定期健診の頻度:粉じん作業従事中なら管理1は3年以内ごと、管理2・3は1年以内ごと。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。