前かがみで浮かび上がる「ねじれ」―側弯症検診の肋骨隆起を読み解く
第113回医師国家試験 E問題 第15問
国試問題にチャレンジ
脊柱側弯症の検診で体幹を前屈させて観察するのはどれか。
- a.背筋力
- b.肋骨隆起
- c.呼吸障害
- d.脊椎の柔軟性
- e.下肢への放散痛
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
脊柱側弯症の学校検診では、立位で肩や肩甲骨の高さ、ウエストラインの左右差を見たうえで、体幹を前屈させるAdams前屈テストで肋骨隆起(腰椎部では腰部隆起)を観察します。特発性側弯症などの構築性側弯では椎体が凸側へ回旋し、胸椎に付く肋骨が背側へ押し出されるため、背部が水平に近づく前屈位でその左右差が明瞭になります。脊椎の柔軟性はベンディング撮影、呼吸障害は呼吸機能検査で評価するもので、前屈で見る項目ではありません。また特発性側弯症は通常無痛であり、痛みを伴う側弯では腫瘍や感染、椎間板ヘルニアなどを疑います。「側弯はねじれを伴う」という病態を理解しておくと、検診の手技の意味から機能性側弯との区別、成長期の治療方針まで一貫して整理できます。
解答・解説
正解はbです
脊柱側弯症の検診の目的
脊柱側弯症は、脊柱が前額面(正面から見た面)で側方に曲がった状態で、立位脊柱全長エックス線正面像のCobb角(弯曲の上端と下端の椎体のなす角度)が10°以上のものをいう。最も多いのは思春期の女子に好発する特発性側弯症で、成長期に進行しやすい。軽度のうちは痛みなどの自覚症状に乏しいため、学校検診で早期に発見し、経過観察や装具治療につなげることが重要である。
構築性側弯の特徴:椎体の回旋
特発性側弯症などの構築性側弯では、脊柱が横に曲がるだけでなく、椎体が弯曲の凸側へ回旋(ねじれ)している。胸椎には肋骨が付着しているため、椎体が回旋すると凸側の肋骨が背側へ押し出され、背中の左右差として現れる。
前屈テスト(Adams前屈テスト)
検診では、被検者に両手のひらを合わせて膝を伸ばしたまま体幹をゆっくり前屈させ、背後(または頭側)から背部の高さの左右差を観察する。前屈すると背部の輪郭が水平に近づき、回旋による凸側の盛り上がりがはっきりする。胸椎部では肋骨隆起(rib hump)、腰椎部では腰部隆起(lumbar hump)として認められる。必要に応じて、背部の傾き(体幹回旋角)を測るスコリオメーターや、等高線で背部の凹凸を写すモアレ法も用いられる。 したがって、前屈させて観察するのは肋骨隆起である。立位では肩の高さ、肩甲骨の高さや突出、ウエストライン(腰の三角形)の左右差もあわせて観察する。
選択肢考察
- ×a. 背筋力
誤り。背筋力は筋力計などで測定するもので、前屈姿勢を見ただけでは判定できない。筋ジストロフィーなどの神経筋疾患では体幹筋力低下に伴う側弯(神経筋性側弯症)を生じるが、検診で前屈させて評価する項目ではない。
- ○b. 肋骨隆起
正しい。構築性側弯では椎体が弯曲の凸側へ回旋し、胸椎に付着する肋骨も一緒にねじれて、凸側の肋骨が背側に突出する。体幹を前屈させると背部の輪郭が水平に近づくため、この左右差が肋骨隆起として明瞭になる。これがAdams前屈テストであり、側弯症のスクリーニングで最も重要な所見である。腰椎部の側弯では同様に腰部隆起がみられる。
- ×c. 呼吸障害
誤り。高度の胸椎側弯では胸郭の変形により肺の拡張が制限され、肺活量が低下する拘束性換気障害を生じることがある。しかし、その評価は呼吸機能検査(スパイロメトリー)などで行うもので、前屈姿勢で観察するものではない。検診の対象となる軽度の側弯では通常、呼吸障害はみられない。
- ×d. 脊椎の柔軟性
誤り。側弯がどの程度矯正可能か(柔軟性)は、側屈位(ベンディング)や臥位で撮影した脊柱エックス線正面像のCobb角を、立位像と比べて評価する。手術や装具の計画に用いる精密検査の項目であり、検診で前屈させて観察するものではない。
- ×e. 下肢への放散痛
誤り。下肢への放散痛は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などによる神経根の圧迫で生じることが多く、下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)などで評価する。思春期の特発性側弯症は通常、痛みを伴わない。痛みを伴う側弯では、腫瘍(類骨骨腫など)や感染、椎間板ヘルニアによる疼痛性側弯などを疑う。
側弯症の分類
①機能性側弯:椎体の回旋や変形がなく、原因を除けば消失する一時的な側弯。脚長差、疼痛(椎間板ヘルニアによる疼痛性側弯など)、不良姿勢などによる。前屈すると側弯が消失し、肋骨隆起はみられない。 ②構築性側弯:椎体の回旋・楔状変形を伴い、自力では矯正できない側弯。 ・特発性側弯症:原因不明で最も多い(全体の約8割)。思春期に好発し女子に多い。 ・先天性側弯症:半椎や癒合椎など椎体の形成異常による。 ・神経筋性側弯症:脳性麻痺、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症など。 ・症候性側弯症:神経線維腫症1型、Marfan症候群など。
学校検診で観察する主な所見
立位(背面から):肩の高さの左右差、肩甲骨の高さ・突出の左右差、ウエストライン(腰の三角形)の非対称。 前屈位:肋骨隆起・腰部隆起。
治療の目安(特発性側弯症、成長期)
・Cobb角が軽度(おおむね25°未満):経過観察(定期的なエックス線撮影) ・おおむね25°〜40°程度で成長が残っている:装具療法 ・おおむね45°〜50°以上:手術(矯正固定術)を検討 成長期は進行しやすく、骨成熟(Risser徴候などで評価)が進むと進行は緩やかになる。
POINT
・脊柱側弯症の検診:前屈テスト(Adams前屈テスト)で肋骨隆起・腰部隆起を観察する。 ・肋骨隆起は椎体の回旋による。回旋を伴うのは構築性側弯で、機能性側弯では前屈で消失する。 ・立位では肩・肩甲骨の高さ、ウエストラインの左右差を見る。 ・診断はCobb角10°以上(立位脊柱全長エックス線正面像)。 ・特発性側弯症は思春期女子に多く、通常は無痛。痛みを伴えば他の原因を疑う。
