日光が引き金になる病気たち―ペラグラとSLEに共通する「光線過敏」を読み解く
第110回医師国家試験 I問題 第35問
国試問題にチャレンジ
光線過敏がみられるのはどれか。2つ選べ。
- a.ペラグラ
- b.扁平苔癬
- c.Darier病〈毛包性角化症〉
- d.Gibertばら色粃糠疹
- e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
光線過敏とは、通常では問題にならない程度の日光で露光部に紅斑や水疱などの異常反応が生じる状態で、上眼瞼や顎の下など日陰になる部位が保たれる分布が手がかりになります。ペラグラはナイアシン欠乏により皮膚炎・下痢・認知症の3Dをきたし、露光部の皮膚炎やCasal頸飾りが特徴で、アルコール依存症やイソニアジド、カルチノイド症候群などが原因となります。SLEでは紫外線が皮疹だけでなく全身の再燃の誘因にもなるため、遮光指導が重要です。扁平苔癬、Darier病、ばら色粃糠疹は日光で修飾されることはあっても、光線過敏を本態とする疾患ではありません。代謝・自己免疫・遺伝性・薬剤性と原因別に整理しておくと、ポルフィリン症、皮膚筋炎、色素性乾皮症、薬剤性光線過敏症まで含めて鑑別でき、日常診療で露光部の皮疹に出会ったときの見落とし防止につながります。
解答・解説
正解はa, eです
光線過敏(光線過敏症)とは、健常人では問題とならない程度の日光(主に紫外線、ときに可視光)を浴びただけで、皮膚に異常な反応が生じる状態である。顔面、項部(うなじ)、前胸部のV字領域、手背、前腕伸側などの露光部に紅斑、浮腫、水疱、色素沈着などが現れ、衣服で覆われた部分や、日陰になりやすい上眼瞼・鼻の下・顎の下は皮疹が出にくいことが特徴である。 光線過敏をきたす原因は大きく次のように整理できる。 ・代謝異常・栄養障害:ペラグラ(ナイアシン欠乏)、ポルフィリン症など ・自己免疫疾患:全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎など ・遺伝性疾患(DNA修復異常など):色素性乾皮症、Bloom症候群、Cockayne症候群など ・薬剤性:チアジド系利尿薬、ニューキノロン系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬、ピロキシカムなどによる光毒性・光アレルギー性反応 ・原因不明のもの:多形日光疹、日光蕁麻疹、慢性光線性皮膚炎など 本問では、この分類に含まれるペラグラとSLEが該当する。扁平苔癬、Darier病、ばら色粃糠疹は、いずれも光線過敏を基本的な病態とする疾患ではない。
選択肢考察
- ○a. ペラグラ
ペラグラは、ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミド;ビタミンB3)またはその前駆体であるトリプトファンの欠乏によって生じる疾患である。皮膚炎(dermatitis)、下痢(diarrhea)、認知症・精神症状(dementia)の3徴(3D)が知られ、放置すると死(death)に至るため4Dともいう。皮膚炎は光線過敏によるもので、露光部に日焼けに似た紅斑が生じ、水疱、びらん、落屑を経て褐色の色素沈着と皮膚の粗糙化を残す。頸部を首飾り状に囲む皮疹はCasal頸飾りと呼ばれる。原因はアルコール依存症(慢性アルコール中毒)、偏食・低栄養、胃切除後や吸収不良、イソニアジドの長期内服(ビタミンB6拮抗によりトリプトファンからのナイアシン合成が障害される)、カルチノイド症候群(トリプトファンがセロトニン合成に消費される)、Hartnup病(トリプトファンの吸収障害)などである。
- ×b. 扁平苔癬
扁平苔癬は、皮膚・粘膜に生じる慢性炎症性疾患で、表皮基底層を標的とするT細胞を主体とした反応(苔癬型反応)が病態である。四肢屈側や手関節部などに、紫紅色で扁平に隆起し表面に光沢のある多角形の丘疹が生じ、表面に白色の網目状の線条(Wickham線条)がみられる。口腔粘膜にはレース状の白斑を生じる。C型肝炎、金属アレルギー、薬剤(降圧薬など)との関連が知られる。日光が誘因となる特殊な病型(光線性扁平苔癬)や、光線過敏型の薬疹として苔癬型の皮疹が出る場合はあるが、扁平苔癬そのものは光線過敏を特徴とする疾患ではない。
- ×c. Darier病〈毛包性角化症〉
Darier病は、小胞体のカルシウムポンプであるSERCA2をコードするATP2A2遺伝子の変異による常染色体顕性(優性)遺伝の角化異常症である。表皮細胞どうしの接着が障害されて棘融解と異常角化が起こり、脂漏部位(頭部、顔面、前胸部、背部、腋窩など)に褐色調で角化性の小丘疹が多発・融合する。爪の縦の線条や切れ込み、手掌の点状陥凹も特徴である。夏季の高温・発汗や日光曝露で増悪しやすいが、これは悪化因子の一つであり、光線過敏を本態とする疾患としては扱われない。
- ×d. Gibertばら色粃糠疹
Gibertばら色粃糠疹は、10〜30歳代に多い急性の炎症性皮膚疾患である。体幹にまず初発疹(ヘラルドパッチ)と呼ばれる比較的大きな楕円形の紅斑が出現し、1〜2週後に体幹・四肢近位部に小型の楕円形紅斑が多発する。紅斑の長軸が皮膚割線に沿って並ぶため、背部ではクリスマスツリー様の配列を示し、辺縁に襟飾り状の鱗屑(細かい粃糠様の鱗屑)を伴う。ヒトヘルペスウイルス6型・7型の再活性化との関連が示唆されている。通常1〜2か月で自然に治癒し、光線過敏はみられない。
- ○e. 全身性エリテマトーデス〈SLE〉
SLEは、抗核抗体、抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などの自己抗体と免疫複合体により多臓器が障害される自己免疫疾患で、若年女性に多い。紫外線により表皮角化細胞のアポトーシスが誘導され、自己抗原が露出して炎症が増強されるため、光線過敏が高頻度にみられる。日光曝露後に露光部に紅斑や水疱が出現し、頬部の蝶形紅斑の増悪や全身症状の再燃(発熱、関節痛、腎症の悪化など)の誘因にもなる。光線過敏は1997年改訂のACR分類基準の項目の一つであり、診療上も重要な所見である。そのため患者には遮光(日焼け止め、衣服や帽子による防護)を指導する。
光線過敏の機序
・光毒性反応:皮膚に存在する光感受性物質(薬剤、ポルフィリンなど)が光を吸収して活性酸素などを生じ、直接細胞を傷害する。量が多ければ誰にでも起こり、日焼けを強めたような反応となる。 ・光アレルギー性反応:光によって変化した物質が抗原となり、Ⅳ型アレルギーとして湿疹様の皮疹を起こす。感作された人にのみ起こる。
光線過敏をきたす代表的疾患
・ペラグラ:ナイアシン欠乏。3D(皮膚炎・下痢・認知症)。 ・ポルフィリン症:ヘム合成酵素の異常でポルフィリンが蓄積する。晩発性皮膚ポルフィリン症では露光部の水疱・瘢痕・多毛、赤芽球性プロトポルフィリン症では露光直後の灼熱感・疼痛がみられる。 ・色素性乾皮症:ヌクレオチド除去修復の遺伝的異常。少量の日光で強い日焼け反応を起こし、若年から露光部に皮膚癌が多発する。常染色体潜性(劣性)遺伝。 ・SLE:蝶形紅斑、円板状皮疹、光線過敏。 ・皮膚筋炎:ヘリオトロープ疹、Gottron丘疹、露光部のV徴候・ショール徴候など。 ・薬剤性光線過敏症:チアジド系利尿薬、ニューキノロン系・テトラサイクリン系抗菌薬、ピロキシカム、ケトプロフェン(貼付剤)など。 ・その他:多形日光疹、日光蕁麻疹、種痘様水疱症、慢性光線性皮膚炎など。
光線過敏の検査
最少紅斑量(MED:minimal erythema dose)の測定、光パッチテスト(光アレルギーの原因物質の同定)、光内服試験などが行われる。
POINT
・光線過敏をきたす代表疾患:ペラグラ、ポルフィリン症、色素性乾皮症、SLE、皮膚筋炎、薬剤性。 ・ペラグラ:ナイアシン欠乏、3D(皮膚炎・下痢・認知症)、Casal頸飾り。原因はアルコール依存症、イソニアジド、カルチノイド症候群、Hartnup病など。 ・SLE:光線過敏は重要な皮膚症状で、日光曝露は病勢増悪の誘因となる。 ・扁平苔癬(Wickham線条)、Darier病(ATP2A2変異の角化異常症)、ばら色粃糠疹(ヘラルドパッチ、クリスマスツリー様配列)は光線過敏を特徴としない。
