流れ着いて沈着する免疫複合体―IgA血管炎で整理するアレルギーⅠ〜Ⅳ型
第110回医師国家試験 E問題 第20問
国試問題にチャレンジ
Ⅲ型アレルギーによる疾患はどれか。
- a.蕁麻疹
- b.水疱性類天疱瘡
- c.アトピー性皮膚炎
- d.アレルギー性接触皮膚炎
- e.IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
アレルギーのGell & Coombs分類では、Ⅰ型(IgE・肥満細胞)、Ⅱ型(組織固有の抗原に対する抗体)、Ⅲ型(免疫複合体の沈着)、Ⅳ型(感作T細胞)と、組織傷害の主役で型を判定します。Ⅲ型では可溶性抗原と抗体の免疫複合体が血管壁や糸球体に沈着し、補体と好中球によって傷害が起こり、IgA血管炎、血清病、SLE、溶連菌感染後急性糸球体腎炎が代表例です。蕁麻疹はⅠ型、アトピー性皮膚炎はⅠ型を中心にⅣ型も関与、水疱性類天疱瘡はⅡ型、アレルギー性接触皮膚炎はⅣ型に当たり、蛍光抗体法で線状沈着ならⅡ型、顆粒状沈着ならⅢ型と見分けられます。IgA血管炎は小児に多く、触知可能な紫斑・関節痛・腹痛・腎炎を呈し、予後を左右する腎炎の経過観察が重要です。病態の主役から型を考える習慣は、皮膚科・腎臓内科・膠原病など多くの領域の理解を支える基盤になります。
解答・解説
正解はeです
アレルギー(過敏反応)は、組織を傷害する仕組みによってGell & Coombs分類でⅠ~Ⅳ型に分けられる。Ⅰ~Ⅲ型は抗体(液性免疫)が主役であり、Ⅳ型だけは感作T細胞(細胞性免疫)が主役である。 本問はⅢ型、すなわち「免疫複合体型」を選ぶ問題である。Ⅲ型では、血中に溶けている可溶性抗原と抗体(主にIgG、ほかにIgMやIgA)が結合して免疫複合体をつくり、それが血管壁や腎糸球体などに沈着する。沈着部位で補体が活性化され、好中球が集まって組織が傷害される。したがって病変は血管炎・糸球体腎炎・関節炎のように「免疫複合体が流れ着いて沈着しやすい場所」に生じやすい。 各選択肢の疾患がどの型に当たるかを、病態の主役(IgE・肥満細胞か、組織抗原に対する自己抗体か、免疫複合体か、T細胞か)で判定していけばよい。IgA血管炎は、IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着して起こる血管炎であり、Ⅲ型アレルギーの代表である。
選択肢考察
- ×a. 蕁麻疹
蕁麻疹は皮膚の肥満細胞からヒスタミンなどが放出され、真皮の浮腫(膨疹)とかゆみが一過性に出現する疾患である。食物や薬剤によるアレルギー性蕁麻疹は、抗原が肥満細胞表面のIgEを架橋して脱顆粒を起こすⅠ型(即時型)アレルギーである。ただし蕁麻疹の多くは原因の特定できない特発性であり、物理的刺激などIgEを介さない機序もある。いずれにしても免疫複合体沈着を主体とするⅢ型ではない。
- ×b. 水疱性類天疱瘡
水疱性類天疱瘡は、表皮と真皮をつなぐ基底膜部のヘミデスモソーム構成蛋白(BP180=ⅩⅦ型コラーゲン、BP230)に対する自己抗体(主にIgG)によって表皮下水疱を生じる自己免疫性水疱症である。組織に固定された抗原に抗体が直接結合して傷害を起こすため、Ⅱ型(細胞傷害型)アレルギーに分類される。蛍光抗体直接法では基底膜部にIgGやC3が線状に沈着するのが特徴であり、免疫複合体の顆粒状沈着とは異なる。高齢者に多く、緊満性水疱とかゆみを伴う浮腫性紅斑がみられる。
- ×c. アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の低下とアトピー素因(IgEを産生しやすい体質)を背景に、かゆみを伴う湿疹が慢性に再燃・寛解を繰り返す疾患である。血清総IgE高値や好酸球増多を伴うことが多く、Ⅰ型アレルギーの関与が中心とされる。さらに慢性病変ではT細胞(Th2優位、慢性期にはTh1なども)が関与するため、Ⅳ型の要素も併せもつと考えられている。Ⅲ型ではない。
- ×d. アレルギー性接触皮膚炎
アレルギー性接触皮膚炎(いわゆる「かぶれ」の一部)は、ニッケルなどの金属、ウルシ(ウルシオール)、化粧品成分などの低分子物質(ハプテン)が皮膚蛋白と結合して抗原となり、これに感作されたT細胞が再接触時に反応して起こる。抗原接触から24~48時間ほどたって症状が強くなる遅延型反応であり、Ⅳ型(遅延型・細胞性免疫型)アレルギーの代表である。原因物質の同定にはパッチテストが用いられる。
- ○e. IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉
IgA血管炎は、IgA(特にIgA1)を含む免疫複合体が皮膚・消化管・腎臓などの小血管壁に沈着し、補体活性化と好中球浸潤により白血球破砕性血管炎を起こす疾患である。免疫複合体による組織傷害であるためⅢ型アレルギーに分類される。病理組織では血管壁にIgAと補体(C3)の顆粒状沈着がみられる。小児に多く、上気道感染に続いて発症することが多い。下肢を中心とした触知可能な紫斑、関節痛、腹痛(腸管の血管炎による)、腎炎(IgA血管炎腎炎)が主な症状である。旧名称はアレルギー性紫斑病、Schönlein-Henoch紫斑病である。
Gell & Coombs分類の整理
Ⅰ型(即時型・アナフィラキシー型):IgEが肥満細胞・好塩基球に結合し、抗原による架橋で化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が放出される。数分~数十分で発症する。例:アナフィラキシー、気管支喘息(アトピー型)、アレルギー性鼻炎、花粉症、蕁麻疹(アレルギー性)、アトピー性皮膚炎(Ⅳ型の関与も含む)。 Ⅱ型(細胞傷害型):細胞表面や基底膜などに存在する抗原にIgG・IgMが結合し、補体活性化、貪食、抗体依存性細胞傷害(ADCC)で細胞・組織が傷害される。例:自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)、Goodpasture症候群(抗GBM抗体病)、天疱瘡、水疱性類天疱瘡。受容体に対する抗体が機能を刺激・阻害するBasedow病や重症筋無力症をⅤ型として分けることもある。 Ⅲ型(免疫複合体型・Arthus型):可溶性抗原と抗体の免疫複合体が組織に沈着し、補体と好中球が組織を傷害する。例:血清病、全身性エリテマトーデス(SLE)、IgA血管炎、溶連菌感染後急性糸球体腎炎、クリオグロブリン血症性血管炎、過敏性肺炎(Ⅳ型の関与も含む)、関節リウマチの一部の病態。 Ⅳ型(遅延型・細胞性免疫型):感作T細胞とそれが放出するサイトカイン、活性化マクロファージが組織を傷害する。24~72時間で反応が最大になる。例:アレルギー性接触皮膚炎、ツベルクリン反応、移植片拒絶反応、結核の肉芽腫形成。
蛍光抗体法での見分け方
抗体が組織固有の抗原に結合するⅡ型(抗GBM抗体病、水疱性類天疱瘡など)では線状沈着、免疫複合体が流れ着いて沈着するⅢ型(ループス腎炎、IgA血管炎など)では顆粒状沈着となるのが典型である。
IgA血管炎の補足
2012年のChapel Hill分類改訂で、Henoch-Schönlein紫斑病からIgA血管炎へと名称が変更された。血小板数や凝固系は正常であり、紫斑は血管炎による「触知可能な紫斑」である点が、血小板減少による紫斑との鑑別点となる。予後は腎炎の程度で左右される。
POINT
・Ⅰ~Ⅲ型は抗体、Ⅳ型はT細胞が主役である。 ・Ⅲ型=免疫複合体型:血清病、SLE、IgA血管炎、溶連菌感染後急性糸球体腎炎が代表である。 ・蕁麻疹=Ⅰ型、アトピー性皮膚炎=Ⅰ型(+Ⅳ型)、水疱性類天疱瘡=Ⅱ型、アレルギー性接触皮膚炎=Ⅳ型。 ・蛍光抗体法で線状沈着ならⅡ型、顆粒状沈着ならⅢ型を考える。
