リンゴで口がイガイガ―生の果物を刺して皮膚を刺す「プリック・トゥ・プリック」の理由
第120回医師国家試験 D問題 第66問
国試問題にチャレンジ
24歳の女性。リンゴを食べた直後に口腔内の違和感と咽頭搔痒感を訴えて受診した。症状は数分以内に消失し,全身症状は認めなかった。 診断に最も有用な検査はどれか。
- a.口腔粘膜生検
- b.パッチテスト
- c.プリックテスト
- d.血清総IgE抗体測定
- e.末梢血好酸球数測定
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
果物を食べた直後に口腔・咽頭に限局した一過性のかゆみや違和感が出る場合は、口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群)を考え、リンゴではカバノキ科花粉との交差反応が代表的です。原因となる蛋白質は熱や消化酵素に弱く、市販抽出液や血中特異的IgEでは偽陰性になりやすいため、生の果物を用いたプリック・トゥ・プリックテストが最も有用です。パッチテストは遅延型(IV型)アレルギーの検査であり、総IgEや好酸球数では原因抗原を特定できません。まれにアナフィラキシーに至ることもあり、特に豆乳には注意が必要です。アレルギーの型に応じて検査を選び分ける考え方は、食物・薬剤・接触アレルギーすべての診療の基本になります。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・24歳女性。リンゴを食べた直後に、口腔内の違和感と咽頭のかゆみが出現した。 ・症状は数分以内に自然に消え、蕁麻疹・呼吸困難・血圧低下などの全身症状はない。
診断へのプロセス
特定の食物を食べた直後(数分以内)に症状が出ていることから、IgE(免疫グロブリンE)を介する即時型(I型)アレルギーを考える。症状が食物の触れた口腔・咽頭粘膜に限られ、短時間で消える経過は、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に典型的である。 成人のOASの多くは、花粉症の原因となる花粉にまず感作され(IgEが作られ)、その花粉の抗原とよく似た構造の蛋白質を含む果物・野菜を食べたときに交差反応で症状が出るもので、花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)とも呼ばれる。リンゴはバラ科の果物で、シラカンバ(シラカバ)・ハンノキなどカバノキ科花粉との交差反応が代表的である。
検査の考え方
即時型アレルギーの原因を確かめるには、原因と疑われる抗原に対する特異的IgEの存在を示す検査(皮膚テスト・血中特異的IgE)を行う。OASの原因となる果物の抗原蛋白質(PR-10蛋白など)は熱や消化酵素に弱く、加工の過程で壊れやすいため、市販の抽出液や血中特異的IgE検査では陰性(偽陰性)になりやすい。そこで、生の果物に刺した針で、そのまま皮膚を刺す「プリック・トゥ・プリックテスト」(プリックテストの一種)が最も感度が高く、診断に有用である。
選択肢考察
- ×a. 口腔粘膜生検
口腔粘膜生検は、治りにくい潰瘍、白板症・紅板症などの白色・紅色病変、悪性腫瘍や前癌病変が疑われる場合に、組織診断のために行う。本例の症状は数分で消える一過性のもので、生検しても特異的な所見は得られず、アレルギーの原因も分からない。侵襲もあり、診断的な意義は乏しい。
- ×b. パッチテスト
パッチテストは、疑わしい物質を皮膚に48時間貼り、48時間後・72時間後・1週間後などに判定する検査で、T細胞が関与する遅延型(IV型)アレルギーを調べる。金属、化粧品、ヘアカラー、外用薬などによるアレルギー性接触皮膚炎や、遅れて出る薬疹の原因検索に用いる。本例のような食べた直後に出るIgE介在性の即時型反応の診断には適さない。
- ○c. プリックテスト
プリックテストは、前腕などの皮膚に抗原液を1滴置き、専用の針で皮膚の表面を軽く刺して抗原を入れ、約15分後に膨疹(ぷっくりとした腫れ)と紅斑の大きさを判定する即時型アレルギーの皮膚テストである。皮膚のマスト細胞に結合している特異的IgEを直接みる検査で、短時間で結果が出る。OASでは原因の蛋白質が壊れやすく市販の抽出液では反応が出にくいため、生のリンゴに刺した針で皮膚を刺すプリック・トゥ・プリックテストを行うと感度が高い。陽性対照(ヒスタミン)と陰性対照(生理食塩水)を同時に置き、抗ヒスタミン薬は事前に中止しておく。
- ×d. 血清総IgE抗体測定
血清総IgEは、体内のIgEの総量を示す。アトピー性皮膚炎、気管支喘息、寄生虫感染、高IgE症候群、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などで上昇するが、何に対するアレルギーかは分からないため、原因食物の特定には役立たない。原因を調べるには、リンゴやシラカンバ花粉に対する特異的IgE(さらに個々の抗原成分〈コンポーネント〉に対する特異的IgE)を測定する。ただしOASでは、リンゴの抽出抗原を用いた特異的IgEは偽陰性になりやすく、プリックテストに比べて感度が低い。
- ×e. 末梢血好酸球数測定
末梢血好酸球数は、アレルギー疾患の一部(気管支喘息などの2型炎症)、寄生虫感染、薬剤アレルギー、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、血液腫瘍などで増加する。しかし原因抗原を特定できず、口腔内に限られた一過性の反応であるOASでは増加しないことも多い。診断には役立たない。
口腔アレルギー症候群(OAS)/花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)
・機序:花粉に経気道的に感作された後、花粉の抗原とよく似た構造の蛋白質を含む果物・野菜を食べると、IgEを介した交差反応で口腔・咽頭に症状が出る(クラス2食物アレルギー)。食物そのものに消化管から感作される乳幼児の典型的な食物アレルギー(クラス1)とは区別される。 ・症状:食べて数分以内に、口唇・口腔・咽頭のかゆみ、ピリピリ感、腫れ。多くは数十分以内に自然に治る。まれに、蕁麻疹、腹痛などの消化器症状、さらにアナフィラキシーに進む。 ・原因抗原は熱や消化酵素に弱い(PR-10蛋白、プロフィリンなど)。そのため、加熱したもの(ジャム、焼きリンゴ、缶詰など)では症状が出にくく、全身症状にも至りにくい。
代表的な花粉と交差反応する食物
・カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ):バラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボ、イチゴ、ナシ)、大豆(特に豆乳)、ヘーゼルナッツ、キウイなど。豆乳は加工度が低いうえ一度に大量に摂取しやすく、全身症状やアナフィラキシーを起こすことがある(大豆のPR-10蛋白:Gly m 4)。 ・イネ科、キク科(ブタクサ):ウリ科(メロン、スイカ)、トマト、バナナ、キウイなど。 ・キク科(ヨモギ):セリ科(セロリ、ニンジン)、スパイスなど。
I型アレルギーの検査の整理
・皮膚テスト:プリックテスト(安全性が高く、第一選択の皮膚テスト)、皮内テスト(感度は高いが全身反応の危険がある)。判定は約15~20分後。 ・血液検査:特異的IgE(抗原ごと、コンポーネント別:リンゴのMal d 1、シラカンバのBet v 1など)、好塩基球活性化試験・ヒスタミン遊離試験。 ・確定診断:食物経口負荷試験(アナフィラキシーに対応できる体制で行う)。 ・IV型アレルギーの検査:パッチテスト、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)。
管理
原因食物を生で食べないようにし(加熱したものは食べられることが多い)、症状が出たら抗ヒスタミン薬を内服する。全身症状の既往がある場合はアドレナリン自己注射薬の携帯を検討する。
POINT
・特定の果物を食べた直後に口腔・咽頭に限られた一過性のかゆみ・違和感が出たら、口腔アレルギー症候群(花粉-食物アレルギー症候群)を考える。 ・リンゴ(バラ科)はカバノキ科(シラカンバ・ハンノキ)花粉との交差反応が代表的である。 ・診断には、生の食物を用いたプリック・トゥ・プリックテストが最も有用である(原因の蛋白質が壊れやすく、市販の抽出液や特異的IgEでは偽陰性になりやすい)。 ・パッチテストは遅延型(IV型)アレルギーの検査であり、即時型には使わない。 ・総IgEや好酸球数では原因抗原を特定できない。
