StudyMed医師国家試験

感染対策は「起きてから」では遅い―院内感染対策チーム〈ICT〉の素顔

第110回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第110回 C問題 第11問

院内感染対策チーム〈ICT〉で正しいのはどれか。

  1. a.薬剤師はチームに入らない。
  2. b.専従医師の配置が必須である。
  3. c.感染患者の治療に強制介入する。
  4. d.院内の感染症サーベイランスを行う。
  5. e.感染症アウトブレイクに際して結成される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は院内感染対策チーム、いわゆるICTの構成と役割を問う問題だ。ポイントは「誰が入るチームか」「いつ存在するチームか」「主治医とどういう関係か」「普段何をしているか」の4つ。この軸で選択肢を見ていくと迷わないよ。まず、ICTと聞いてどんなイメージを持っているかな。
医学生医学生
臨床実習中に、病棟に感染対策の先生や看護師さんが回ってきて、手指衛生のチェックをしていたのを見ました。あれがICTですか。
ドクタードクター
そう、それが病棟ラウンドで、ICTの代表的な業務の一つだ。ICTは病院内で起こる医療関連感染を予防し、起きたときに拡大を食い止める実働部隊なんだ。病院の方針を決める院内感染対策委員会があって、その方針を現場で実行するのがICT、という位置づけで覚えるといい。
医学生医学生
構成員は医師と看護師が中心で、薬剤師は関係ないのかと思っていました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。ICTは多職種チームで、感染症に詳しい医師、感染管理を専門とする看護師、薬剤師、臨床検査技師が中心になる。薬剤師は抗菌薬の使用状況の把握、届出制や許可制による使用管理、TDMに基づく投与設計の支援、消毒薬の適正使用の指導など、欠かせない役割を担っているんだ。だから薬剤師が入らないという記述は誤りだよ。
医学生医学生
臨床検査技師は、耐性菌が検出されたことをいち早く知らせる役ですね。微生物学の実習で培養や感受性検査をやったのを思い出しました。
ドクタードクター
その通り。検査室は耐性菌の「最初の目撃者」になることが多いからね。では、医師は感染対策業務だけに従事する専従でなければならない、という記述はどうだろう。
医学生医学生
チームの中心は医師だから、専従が必須なのかなと思いました。
ドクタードクター
医師の参加は重要だけれど、専従である必要はない。診療報酬の施設基準でも、医師か看護師のどちらか1名が専従であればよいとされていて、実際には感染管理を専門とする看護師が専従となり、医師は他の診療と兼ねる専任として関わる形が多いんだ。
医学生医学生
では、感染患者の治療にICTが強制的に介入するというのは?耐性菌が出たら、ICTが治療を決めてしまうのかと思っていました。
ドクタードクター
治療方針を決めて責任を負うのはあくまで主治医だ。ICTは主治医からのコンサルテーションに応じたり、サーベイランスや抗菌薬の使用状況から問題を見つけたときに助言や推奨をしたりする立場で、強制的に介入する権限はもたない。教育・助言・支援を通して感染対策を進めるのがICTのスタイルなんだ。
医学生医学生
アウトブレイクが起きたときに結成される、という選択肢も、なんとなくそれっぽく見えました。
ドクタードクター
ひっかかりやすいところだね。ICTは平時から常設されている組織だ。普段から感染症の発生状況を把握しておかないと、どこからが「いつもより多い」のか判断できない。起きてから集めても、比較の基準がないし初動も遅れる。アウトブレイク時には、常設のICTが中心になって原因調査や拡大防止策を指揮するんだ。
医学生医学生
ということは、正解は院内の感染症サーベイランスを行う、ですね。
ドクタードクター
正解。サーベイランスは、感染症の発生状況のデータを継続的・系統的に集めて分析し、その結果を現場に還元する活動だ。MRSAなどの耐性菌の検出状況や、カテーテル関連血流感染、人工呼吸器関連肺炎、手術部位感染の発生率などを監視する。平常時のベースラインを知っているからこそ、増加をアウトブレイクとして早く察知できるし、対策の効果も評価できるんだ。
医学生医学生
整理すると、多職種で、平時から常設、主治医には助言で支援、中核業務がサーベイランス、ということですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。発展として、ASTも押さえておこう。抗菌薬適正使用支援チームのことで、抗菌薬の適正使用を推進して耐性菌の出現を抑えるのが目的だ。感染症専門医、薬剤師、臨床検査技師、看護師などで構成され、ICTと連携したり構成員が重なったりして活動している。
医学生医学生
ICTが感染の広がりを防ぎ、ASTが耐性菌を生まないように抗菌薬を見張る、という役割分担でしょうか。
ドクタードクター
イメージとしてはそれでいい。そして現場で一番大切なのは、ICTが指導する基本、つまりすべての患者の血液・体液・排泄物を感染性ありとして扱う標準予防策と、病原体に応じた接触・飛沫・空気予防策だ。研修医になったら、ICTに相談するのをためらわないこと、そして自分自身が手指衛生を徹底することが、何よりの感染対策になるよ。

まとめ

院内感染対策チーム(ICT)は、医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師などで構成される多職種の常設チームで、院内感染対策委員会の方針を現場で実行する役割を担います。主な業務は院内の感染症サーベイランス、病棟ラウンド、マニュアル整備、職員教育、抗菌薬適正使用の推進、コンサルテーション対応であり、平時のベースライン把握がアウトブレイクの早期探知につながります。医師の専従は必須ではなく、主治医の治療に強制介入するのではなく助言・支援する立場である点も重要です。抗菌薬適正使用支援チーム(AST)との連携や、標準予防策・感染経路別予防策の理解とあわせて押さえておくと、研修医として感染対策に主体的に関わる土台になります。

解答・解説

正解はdです

院内感染対策チーム(ICT: infection control team)の構成と役割を問う問題である。

ICTとは

病院内で発生する感染症(医療関連感染)を予防し、発生時に拡大を抑えるため、病院長などの管理者のもとで実務を担う多職種の常設チームである。病院の意思決定機関である院内感染対策委員会が方針を決め、ICTがそれを現場で実行する、という位置づけで理解するとよい。

構成

感染症の経験をもつ医師、感染管理を専門とする看護師(感染管理認定看護師など)、薬剤師、臨床検査技師が中心となり、必要に応じて事務職員なども加わる。

主な業務

・院内の感染症サーベイランス(耐性菌の検出状況、血流感染・手術部位感染などの発生動向の継続的な監視) ・病棟ラウンド(定期的な巡回による感染対策の実施状況の確認と指導) ・感染対策マニュアルの作成・改訂 ・職員への教育・研修 ・抗菌薬の使用状況の把握と適正使用の推進 ・主治医からの感染症診療に関するコンサルテーションへの対応 ・アウトブレイク(集団発生)の早期探知と対応 これらを踏まえると、多職種で構成され、平時から常設され、主治医の診療に強制的に介入するのではなく助言・支援する立場で、サーベイランスを中核業務とする組織だと押さえれば正解を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  薬剤師はチームに入らない。

    誤り。ICTは多職種チームであり、薬剤師は重要な構成員である。抗菌薬の使用量・使用状況の把握、届出制・許可制などによる使用管理、薬物血中濃度モニタリング(TDM)に基づく投与設計の支援、消毒薬の適正使用の指導などを担う。診療報酬上の感染対策向上加算の施設基準でも、医師・看護師・臨床検査技師とともに薬剤師の配置が求められている。

  2. ×b.  専従医師の配置が必須である。

    誤り。ICTに感染症診療の経験をもつ医師が参加することは重要だが、医師が感染対策業務だけに従事する「専従」である必要はない。診療報酬の施設基準においても、構成員の医師・看護師のうちいずれか1名が専従であればよいとされ、実際には感染管理を専門とする看護師が専従となり、医師は他の診療業務と兼ねる「専任」として関わる形が多い。

  3. ×c.  感染患者の治療に強制介入する。

    誤り。患者の治療方針を決定し責任を負うのは主治医である。ICTは主治医からの相談(コンサルテーション)に応じたり、サーベイランスや抗菌薬使用状況の確認で問題を見つけた際に助言・推奨を行ったりするが、主治医の治療に強制的に介入する権限はもたない。治療への直接的な強制力ではなく、教育・助言・支援を通じて感染対策や抗菌薬適正使用を推進する。

  4. ○d.  院内の感染症サーベイランスを行う。

    正しい。サーベイランスとは、感染症の発生状況に関するデータを継続的・系統的に収集・分析し、その結果を現場に還元して対策に役立てる活動である。ICTは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの薬剤耐性菌の検出状況、カテーテル関連血流感染・人工呼吸器関連肺炎・手術部位感染などの発生率を監視する。平常時の発生水準(ベースライン)を把握しておくことで、増加をアウトブレイクとして早期に探知でき、対策の効果も評価できる。サーベイランスはICTの最も基本的な業務の一つである。

  5. ×e.  感染症アウトブレイクに際して結成される。

    誤り。ICTは平時から常設され、日常的にサーベイランス、病棟ラウンド、教育、マニュアル整備などを行うことで感染の発生を予防する組織である。アウトブレイクが起きてから結成するのでは、ベースラインの把握や早期探知ができない。アウトブレイク発生時には、常設のICTが中心となって原因調査や拡大防止策を指揮する。

院内感染対策の組織

・院内感染対策委員会: 病院の方針決定機関。医療法に基づき、病院には院内感染対策のための委員会の設置が求められている。 ・ICT(感染対策チーム): 委員会の方針を現場で実行する多職種の実働チーム。 ・AST(抗菌薬適正使用支援チーム, antimicrobial stewardship team): 抗菌薬の適正使用を推進し、薬剤耐性菌の出現を抑えることを目的とするチーム。感染症専門医、薬剤師、臨床検査技師、看護師などで構成され、ICTと連携、または構成員が重なって活動する。

診療報酬上の位置づけ

ICTの設置は、感染対策向上加算(2022年度改定前は感染防止対策加算)の施設基準に組み込まれている。上位の加算では、一定の経験・研修要件を満たす医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師でチームを構成し、医師または看護師のうち1名が専従であること、定期的な院内ラウンドを行うこと、地域の医療機関と連携してカンファレンスを行うことなどが求められる。

標準予防策と感染経路別予防策

ICTが現場で指導する基本は、すべての患者の血液・体液・排泄物などを感染性があるものとして扱う標準予防策(手指衛生、個人防護具の使用など)と、病原体に応じた接触予防策・飛沫予防策・空気予防策である。

POINT

・ICTは医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師などで構成される多職種チームである。 ・平時から常設され、アウトブレイク時だけ結成されるものではない。 ・医師の専従は必須ではない。 ・主治医の治療に強制介入せず、コンサルテーション・助言で支援する。 ・主な業務はサーベイランス、病棟ラウンド、マニュアル整備、職員教育、抗菌薬適正使用の推進。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。