StudyMed医師国家試験

「使い終わったら捨てる」記録はない―カルテ・処方箋・諸記録の法律と保存期間

第110回医師国家試験 C問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第110回 C問題 第12問

診療に関する諸記録について誤っているのはどれか。

  1. a.検査所見記録は医療法に定められている。
  2. b.退院時要約は外来診療との連携に活用される。
  3. c.処方箋は調剤済みとなった時点で破棄される。
  4. d.診療録は電子カルテとして保存することも可能である。
  5. e.入院診療計画書には予定する検査,手術および投薬を記載する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療現場で作られるさまざまな記録の法的な位置づけと保存、活用のされ方を問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式なので注意しよう。コツは、記録を根拠となる法律ごとに整理すること。診療録は医師法、病院の諸記録は医療法、薬局の処方箋は薬剤師法、という3本柱で考えるとすっきりするよ。
医学生医学生
診療録は医師法で5年保存、というのは医療概論の講義で習いました。でも諸記録は何年でしたっけ。
ドクタードクター
医療法施行規則で、病院が備える「診療に関する諸記録」は過去2年間分の保存とされている。中身は病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院・外来患者数の帳簿、入院診療計画書だ。
医学生医学生
ということは、検査所見記録が医療法に定められているという記述は正しいですね。
ドクタードクター
その通り。諸記録のリストにはっきり入っている。次は退院時要約、いわゆる退院サマリーだ。
医学生医学生
臨床実習で内科を回ったとき、退院サマリーを書くのが大変でした。入院中の経過を全部まとめないといけなくて。
ドクタードクター
大変だけれど大事な書類なんだ。入院の経緯、診断・検査・治療経過、退院時の状態や処方、今後の方針を簡潔にまとめることで、外来で引き継ぐ医師や紹介元・逆紹介先の医療機関、訪問看護のスタッフが短時間で経過をつかめる。入院と外来・地域の医療をつなぐ役割があるから、外来診療との連携に活用されるという記述は正しい。
医学生医学生
電子カルテで保存してよい、というのも今では当たり前な気がします。病院実習でも紙カルテはほとんど見ませんでした。
ドクタードクター
そうだね。1999年の通知で診療録の電子保存が認められた。ただし条件があって、改ざんや消去がなく責任の所在が明確な真正性、必要なときにすぐ表示・印刷できる見読性、保存期間中きちんと復元できる保存性、この電子保存の3原則を満たす必要がある。
医学生医学生
真正性・見読性・保存性、CBTの直前に語呂で覚えた記憶があります。
ドクタードクター
国試でも狙われやすいから、しっかり定着させておこう。では入院診療計画書はどうかな。
医学生医学生
入院したときに患者さんに渡す書類ですよね。予定する検査や手術、投薬が書いてあったと思います。
ドクタードクター
正しい。医療法で、入院させたときは入院診療計画書を作成して患者や家族に交付し、説明することが求められていて、入院日から7日以内が目安だ。傷病名と主要な症状、主治医の氏名、検査・手術・投薬その他の治療計画、推定される入院期間などを記載する。
医学生医学生
残るのは、処方箋は調剤済みになった時点で破棄される、ですね。薬を渡したらもう役目は終わり、という気もしてしまうのですが。
ドクタードクター
そこが落とし穴。薬剤師法で、薬局は調剤済みとなった処方箋を、調剤済みとなった日から3年間保存しなければならない。院内処方なら、処方箋は医療法上の諸記録として病院に2年間の保存義務がある。だから「調剤済みで破棄」は誤りで、これが正解だよ。
医学生医学生
調剤したあとに、何のために取っておくんでしょうか。
ドクタードクター
たとえば後から副作用が起きたとき、何がどれだけ処方されていたかを調べる必要がある。疑義照会の内容を確認したり、診療報酬請求が正しいかを確かめたりするのにも使う。記録は、診療の継続性、医療の質の確保、法的な証拠、請求の根拠として後から参照されるものなんだ。
医学生医学生
だから「使い終わったらすぐ捨ててよい記録」は基本的にない、と考えればいいんですね。
ドクタードクター
その発想が一番の武器になる。最後に保存期間を整理しておこう。診療録は医師法で5年、病院の諸記録は医療法で2年、薬局の調剤済み処方箋は薬剤師法で3年、保険診療に関する帳簿・書類は療養担当規則で3年、ただし診療録は5年だ。助産録も5年保存とされている。
医学生医学生
診療録の5年は、勤務医が書いたものは病院の管理者が保存するんでしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。病院や診療所の勤務医が記載したものは管理者が、それ以外は医師本人が保存する。研修医になれば毎日カルテを書くことになるけれど、記録は患者さんを守り、同時に自分の診療を証明するものだという意識を持って、遅滞なく正確に書く習慣をつけよう。

まとめ

診療に関する記録は根拠法ごとに整理すると理解しやすく、診療録は医師法で5年間、病院の診療に関する諸記録(検査所見記録、処方箋、手術記録、看護記録、エックス線写真、入院診療計画書など)は医療法で2年間、薬局の調剤済み処方箋は薬剤師法で3年間の保存が義務づけられています。処方箋は副作用調査や疑義照会の確認、診療報酬請求の確認に必要なため、調剤済みとなった時点で破棄することは認められません。退院時要約は入院診療と外来・地域医療をつなぐ文書であり、入院診療計画書には検査・手術・投薬などの計画や推定入院期間を記載して入院後7日以内に交付・説明します。電子カルテは真正性・見読性・保存性の3原則を満たせば認められており、「使い終わったら捨ててよい記録はない」という視点は、医師として適切な記録管理を行ううえでの基本となります。

解答・解説

正解はcです

医療現場で作成される記録類について、法的な位置づけ、保存義務、活用のされ方を問う問題である。「誤っているのはどれか」を選ぶ形式であることに注意する。

整理の枠組み

記録類は、根拠となる法律ごとに整理すると覚えやすい。 ・診療録(カルテ): 医師法第24条。医師は診療したら遅滞なく記載し、5年間保存する。 ・診療に関する諸記録: 医療法(および医療法施行規則)。病院は、病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院・外来患者数を明らかにする帳簿、入院診療計画書を備え、過去2年間分を保存する。 ・薬局での処方箋: 薬剤師法第27条。調剤済みとなった処方箋は、調剤済みとなった日から3年間保存する。

考え方

記録は診療の継続性・医療の質の確保・法的証拠・診療報酬請求の根拠として後から参照されるため、法令に保存期間が定められているのが原則である。「使い終わったらすぐ破棄してよい」という記録は基本的に存在しない、と考えれば誤りの選択肢を見抜ける。処方箋は調剤後も、疑義照会の記録や保険請求の確認などのために一定期間保存しなければならない。

選択肢考察

  1. ×a.  検査所見記録は医療法に定められている。

    正しい記述(本問では選ばない)。医療法第21条および医療法施行規則第20条は、病院が備えるべき「診療に関する諸記録」として、病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者および外来患者の数を明らかにする帳簿、入院診療計画書を挙げており、過去2年間分の保存が求められる。検査所見記録はこの中に明記されている。

  2. ×b.  退院時要約は外来診療との連携に活用される。

    正しい記述(本問では選ばない)。退院時要約(退院時サマリー)は、入院の経緯、入院中の診断・検査・治療経過、退院時の状態、退院時処方、今後の方針などを簡潔にまとめた文書である。退院後に外来で診療を引き継ぐ医師や、紹介元・逆紹介先の医療機関、訪問看護などが入院中の経過を短時間で把握するのに用いられ、入院診療と外来・地域の医療をつなぐ役割をもつ。なお特定機能病院や地域医療支援病院では、退院患者の入院期間中の診療経過の要約が、備えるべき諸記録として規定されている。

  3. ○c.  処方箋は調剤済みとなった時点で破棄される。

    誤った記述であり、これが正解である。薬剤師法第27条により、薬局開設者は、その薬局で調剤済みとなった処方箋を調剤済みとなった日から3年間保存しなければならない。保険調剤では、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則でも、処方箋と調剤録を完結の日から3年間保存することが定められている。また院内処方の場合は、処方箋は医療法上の「診療に関する諸記録」として病院に2年間の保存義務がある。調剤後も、疑義照会の内容確認、副作用発生時の調査、診療報酬請求の確認などに必要となるため、調剤済みとなった時点で破棄することは認められない。

  4. ×d.  診療録は電子カルテとして保存することも可能である。

    正しい記述(本問では選ばない)。1999年の厚生省(当時)通知により、診療録などを電子媒体で保存することが認められた。その条件として、記録が改ざん・消去されず作成者と責任の所在が明確であること(真正性)、必要時に直ちに読める状態で表示・印刷できること(見読性)、法定の保存期間中に復元可能な状態で保たれること(保存性)の「電子保存の3原則」を満たす必要がある。その後のe-文書法(2005年施行)や「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」により運用が整備され、現在は多くの医療機関が電子カルテを導入している。

  5. ×e.  入院診療計画書には予定する検査,手術および投薬を記載する。

    正しい記述(本問では選ばない)。医療法第6条の4により、病院・診療所の管理者は、患者を入院させたときは入院診療計画書を作成して患者または家族に交付し、適切に説明しなければならない(入院日から起算して7日以内)。記載事項として、患者の氏名・生年月日・性別、主治医の氏名、傷病名と主要な症状、入院中に行われる検査・手術・投薬その他の治療(看護・栄養管理を含む)に関する計画、推定される入院期間などが定められている。

主な記録と保存期間

・診療録: 医師法第24条により5年間(病院・診療所の勤務医が記載したものは管理者が、それ以外は医師本人が保存)。 ・診療に関する諸記録(病院): 医療法施行規則により過去2年間。病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院・外来患者数の帳簿、入院診療計画書。 ・特定機能病院・地域医療支援病院では、上記に加え紹介状や退院患者の入院中の診療経過の要約なども諸記録に含まれる。 ・調剤済み処方箋(薬局): 薬剤師法第27条により3年間。 ・保険診療に関する帳簿・書類: 保険医療機関及び保険医療養担当規則により完結の日から3年間(ただし診療録は5年間)。 ・助産録: 保健師助産師看護師法により5年間。

電子保存の3原則

真正性(改ざん防止・責任の明確化)、見読性(すぐに見られる)、保存性(保存期間中は復元可能)。

入院診療計画書

入院後7日以内に作成・交付・説明する。診療報酬上も、計画書の作成・説明は入院基本料の算定要件とされている。

POINT

・調剤済み処方箋は破棄せず、薬局では調剤済みとなった日から3年間保存する(薬剤師法第27条)。 ・診療録は医師法により5年間保存。 ・検査所見記録、処方箋、手術記録、看護記録、エックス線写真、入院診療計画書などは医療法上の「診療に関する諸記録」で2年間保存。 ・電子カルテは真正性・見読性・保存性の3原則を満たせば認められる。 ・入院診療計画書には検査・手術・投薬などの治療計画や推定入院期間を記載し、入院後7日以内に交付・説明する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。