StudyMed医師国家試験

学校医は「助言役」、現場の要は保健室―学校保健のチームと権限を整理する

第110回医師国家試験 B問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第24問

学校保健について正しいのはどれか。

  1. a.学級閉鎖は学校医が命ずる。
  2. b.学校医は養護教諭と密に連携する。
  3. c.養護教諭は看護師資格が必要である。
  4. d.学校保健委員会は避難訓練を指揮する。
  5. e.健康診査後の二次診査は学校医の業務である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は学校保健の問題だ。学校医、養護教諭、校長、学校の設置者、学校保健委員会と、関わる人や組織がたくさん出てくる。着眼点は「誰が何を決め、誰が何をするのか」。権限と役割を整理できれば迷わないよ。
医学生医学生
医師が関わるので、学校医がいちばん権限をもっているように感じてしまいます。
ドクタードクター
そう考える人は多いけれど、そこが落とし穴なんだ。学校医は医学的な立場から助言する役割で、何かを命じる立場ではない。まず感染症対策の例から考えよう。学級閉鎖は誰が決めると思う?
医学生医学生
インフルエンザが流行ると学級閉鎖になりますよね……学校医の判断ではないんですか。
ドクタードクター
学校保健安全法では、感染症予防のために学校の全部または一部を臨時休業させるのは学校の設置者、公立なら教育委員会などとされている。実際には校長が学校医の意見を聞いたうえで設置者と協議することが多いけれど、学校医自身に休業を命じる権限はないんだ。
医学生医学生
では、個々の生徒の出席停止はどうなりますか。
ドクタードクター
出席停止を命じるのは校長だ。臨時休業は設置者、出席停止は校長、学校医はどちらにも助言する立場。この三者の関係はセットで覚えておこう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、学校医の多くは地域の開業医が非常勤で務めていると聞きました。
ドクタードクター
その通り。学校医は健康診断、健康相談、保健指導、感染症予防への助言などを担うけれど、学校に常駐していない。日頃から子どもたちの体調や様子を一番よく知っているのは、保健室に常勤している養護教諭なんだ。だから学校医と養護教諭が密に連携することが欠かせない。これが今回の正解だね。法律でも、健康相談や保健指導は養護教諭などの職員と学校医が連携して行うよう求められている。
医学生医学生
養護教諭は保健室の先生ですよね。てっきり看護師さんだと思っていました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。養護教諭に必要なのは教育職員免許法に基づく養護教諭免許状で、看護師資格は必須ではない。大学の養成課程で単位を修得すれば免許を取得できる。保健師免許をもつ人が一定の条件で二種免許状を取る経路もあるけれど、それは取得方法の一つにすぎないんだ。
医学生医学生
学校保健委員会というのは、避難訓練も仕切る組織なんでしょうか。
ドクタードクター
学校保健委員会は、校長、教職員、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、保護者や児童生徒の代表などで構成され、学校の健康課題を協議して健康づくりを推進する場だ。指揮命令を行う組織ではない。避難訓練は学校安全計画などに基づいて、校長の責任のもとで実施されるよ。
医学生医学生
健康診断で引っかかった子の二次診査は、学校医がやるのかと思っていました。
ドクタードクター
学校の健康診断はあくまでスクリーニングなんだ。異常が疑われたら保護者に結果を通知し、専門の医療機関での精密検査や治療を勧める。これが事後措置で、二次診査そのものは地域の医療機関で行う。学校医は健診の実施と、事後措置への関与・指導が役割だね。
医学生医学生
臨床実習で小児科外来を回ったとき、学校心臓検診で引っかかった子が紹介されてきていました。あれが二次診査なんですね。
ドクタードクター
まさにそれだ。少し発展知識も押さえておこう。学校医、学校歯科医、学校薬剤師をあわせて学校三師と呼ぶ。学校薬剤師は教室の換気や照度、飲料水やプールの水質など学校環境衛生の検査・助言を担う。児童生徒の定期健康診断は毎年6月30日までに行い、結果は21日以内に通知する。職員の健康診断は設置者が実施するよ。
医学生医学生
学校医は決定権者ではなく専門家として助言し、日常は養護教諭が支える、という構図ですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。将来、開業医として学校医を委嘱されることもあるかもしれない。そのときは自分の役割の範囲を理解したうえで、養護教諭や校長と顔の見える関係をつくっておくと、感染症の流行時や子どもの健康問題に素早く対応できるよ。

まとめ

学校保健では、関わる人や組織の権限と役割を区別することが重要です。感染症予防のための臨時休業(学級閉鎖など)は学校の設置者、個々の児童生徒の出席停止は校長が行い、学校医はいずれにも医学的立場から助言する役割を担います。学校医の多くは非常勤の開業医であるため、保健室に常勤し日頃の健康状態を把握している養護教諭との密な連携が欠かせません。養護教諭に必要なのは養護教諭免許状で看護師資格は必須ではなく、学校保健委員会は健康課題を協議・推進する組織で指揮命令は行わず、健康診断はスクリーニングのため二次診査は専門医療機関で行われます。学校三師の役割や健康診断の流れも含めて整理しておくことは、将来学校医として地域の子どもの健康を支えるうえでの基盤になります。

解答・解説

正解はbです

学校保健に関わる人(学校医・養護教諭・学校の設置者・校長)と組織(学校保健委員会)が、それぞれどのような役割と権限をもつかを問う問題である。 学校保健の法的な枠組みは主に学校保健安全法とその施行規則で定められている。押さえるべきは「誰が何を決めるか」である。感染症対策を例にとると、個々の児童生徒の出席停止は校長が、学校全体や一部(学級など)の臨時休業は学校の設置者が行い、学校医はそのいずれに対しても医学的な立場から助言する役割である。また学校医の多くは地域の開業医が非常勤で務めており、学校に常駐していない。そのため、日常的に保健室で児童生徒の健康に対応している養護教諭が学校医と情報を共有し、両者が連携して学校保健を進めることが不可欠となる。 このように各職種・組織の権限と役割を整理すれば、学校医と養護教諭の連携を述べた選択肢が正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  学級閉鎖は学校医が命ずる。

    誤り。学校保健安全法第20条により、感染症の予防上必要があるときに学校の全部または一部(学級閉鎖・学年閉鎖・休校)を臨時に休業させるのは学校の設置者(公立学校なら教育委員会など)である。実際には校長が学校医の意見を聞いたうえで設置者と協議して決めることが多いが、学校医自身に休業を命ずる権限はない。なお個々の児童生徒の出席停止を命ずるのは校長である(同法第19条)。

  2. ○b.  学校医は養護教諭と密に連携する。

    正しい。学校医は健康診断、健康相談、保健指導、感染症の予防措置への助言などを担うが、多くは非常勤であり、日頃の児童生徒の健康状態を最もよく把握しているのは保健室に常勤する養護教諭である。学校保健安全法でも、健康相談や保健指導は養護教諭その他の職員と学校医などが相互に連携して行うことが求められている。両者が密に連携することで、健康問題の早期発見や適切な事後措置が可能になる。

  3. ×c.  養護教諭は看護師資格が必要である。

    誤り。養護教諭になるのに必要なのは教育職員免許法に基づく養護教諭免許状であり、看護師資格は必須ではない。大学などの養護教諭養成課程で所定の単位を修得すれば、看護師資格がなくても免許状を取得できる。なお保健師免許をもつ者は、一定の条件のもとで養護教諭二種免許状を取得できる経路があるが、これはあくまで取得方法の一つにすぎない。

  4. ×d.  学校保健委員会は避難訓練を指揮する。

    誤り。学校保健委員会は、校長・教職員・学校医・学校歯科医・学校薬剤師・保護者代表・児童生徒代表などで構成され、学校における健康課題を研究・協議し、健康づくりを推進するための組織である。協議・推進の場であって、実働の指揮命令系統をもつ組織ではない。避難訓練は学校安全計画などに基づき、校長の責任のもとで実施される。

  5. ×e.  健康診査後の二次診査は学校医の業務である。

    誤り。学校の健康診断はスクリーニング(ふるい分け)であり、異常の疑いがあれば保護者に結果を通知し、専門の医療機関での精密検査(二次診査)や治療を勧めるのが事後措置である。二次診査そのものは学校医の職務ではなく、地域の専門医療機関で行われる。学校医の役割は健康診断の実施と、その結果に基づく事後措置への関与・指導である。

学校保健の主な担い手と役割

・学校の設置者(教育委員会、学校法人など): 感染症予防のための臨時休業(学級閉鎖・学年閉鎖・休校)を行う。職員の健康診断も設置者が実施する。 ・校長: 感染症にかかっている、またはその疑いのある児童生徒の出席停止を命ずる。学校保健計画・学校安全計画の実施責任者である。 ・学校医(学校歯科医・学校薬剤師とあわせて学校三師と呼ばれる): 学校保健計画の立案への参与、健康診断、健康相談、保健指導、感染症・食中毒の予防処置への従事や助言などを行う。多くは地域医師会を通じて委嘱された開業医の非常勤である。 ・学校薬剤師: 学校環境衛生(教室の換気・照度、飲料水やプールの水質など)の検査・助言を担う。 ・養護教諭: 保健室に常勤し、児童生徒のけがや体調不良への対応、健康観察、健康相談、保健教育などに当たる教諭である。教育職員免許法に基づく養護教諭免許状が必要で、看護師や医師の資格は通常もっていない。

学校保健委員会

学校の健康課題を協議し、家庭・地域と連携して健康づくりを推進する組織である。法律上の必置機関ではないが、設置と活性化が国から求められている。

学校の健康診断

就学時健康診断(市町村教育委員会)、児童生徒等の定期健康診断(毎年6月30日までに実施)、職員の健康診断などがある。結果は21日以内に通知し、治療勧告などの事後措置をとる。健康診断はスクリーニングであり、確定診断や精密検査は医療機関で行う。

POINT

・学級閉鎖・休校などの臨時休業は「学校の設置者」、出席停止は「校長」が行う。学校医は助言の立場である。 ・学校医は非常勤が多く、常勤の養護教諭との連携が重要である。 ・養護教諭に必要なのは養護教諭免許状であり、看護師資格は必須ではない。 ・学校保健委員会は健康課題を協議・推進する組織で、指揮命令は行わない。 ・健康診断はスクリーニングであり、二次診査(精密検査)は専門医療機関で行う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。