StudyMed医師国家試験

母子の健康は仕事より優先―出産・育児と働き方を支える3つの法律

第108回医師国家試験 E問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第12問

出産,育児と就労について正しいのはどれか。

  1. a.妊婦健康診査は就業に差し支えない範囲で行う。
  2. b.産前休暇は任意の時期に取得できる。
  3. c.育児休業制度は女性のみが対象である。
  4. d.育児のために就業時間を短縮することができる。
  5. e.ほとんどの女性が出産後も就労を継続している。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、出産・育児と就労をめぐる制度の問題だ。関係する法律は主に労働基準法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の3つ。考え方の軸は「母体と子の健康が就業より優先される」「育児は男女がともに担う」の2点で、これに沿っているかどうかで選択肢を見ていくといい。
医学生医学生
公衆衛生の講義で母子保健や労働衛生は習いましたが、どの法律に何が書いてあるのかがごちゃごちゃになりがちです。
ドクタードクター
大まかに分けると、産前産後休業や妊産婦の就業制限は労働基準法、妊婦健診を受ける時間の確保や妊娠を理由にした不利益取扱いの禁止は男女雇用機会均等法、育児休業や短時間勤務は育児・介護休業法、と整理できる。では最初に、妊婦健康診査は就業に差し支えない範囲で行う、という記述はどうかな。
医学生医学生
仕事を休みにくい人も多いでしょうし、現実的な話のようにも聞こえます。
ドクタードクター
そう感じるかもしれないけれど、優先関係が逆なんだ。男女雇用機会均等法では、事業主は妊娠中や出産後の女性が健康診査や保健指導を受けるための時間を確保しなければならない。さらに医師から指導があれば、通勤緩和や休憩の延長、勤務時間の短縮、休業などの措置を講じる義務もある。仕事のほうが、母体の健康に支障のない範囲で行われるべきものなんだ。
医学生医学生
産婦人科の実習で、妊婦健診の外来に仕事帰りの方が多かったのを覚えていますが、本来は勤務時間中でも受診できるよう配慮されるべき、ということですね。
ドクタードクター
その通り。次に産前休暇。任意の時期に取れると思う?
医学生医学生
労働基準法で期間が決まっていた気がします。たしか産前6週間でしょうか。
ドクタードクター
正解。産前休業は出産予定日の6週間前、多胎妊娠なら14週間前から、本人が請求した場合に取得できる。任意の時期ではないね。一方、産後休業は産後8週間で、本人が請求しなくても就業させてはならない強制休業だ。ただし産後6週間を過ぎて本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務なら就くことができる。
医学生医学生
産前は「請求すれば休める」、産後は「原則働かせてはいけない」という違いがポイントですね。
ドクタードクター
よく押さえている。では育児休業は女性だけが対象かな。
医学生医学生
最近は男性の育休取得がニュースになっているので、男性も取れるはずです。
ドクタードクター
そう、育児休業は原則として1歳未満の子を養育する男女の労働者が取得できる。保育所に入れないなどの事情があれば最長2歳まで延長でき、父母がともに取るなら1歳2か月まで延びるパパ・ママ育休プラスもある。さらに子の出生後8週間以内に最大4週間取れる産後パパ育休も設けられた。女性のみが対象というのは誤りだ。
医学生医学生
では、育児のために就業時間を短縮できる、というのが正解でしょうか。
ドクタードクター
その通り。育児・介護休業法は、3歳未満の子を養育する労働者が希望すれば使える短時間勤務制度、原則1日6時間の措置を設けることを事業主に義務づけている。近年の改正で、3歳から小学校就学前の子についても、短時間勤務やテレワーク、始業時刻の変更などから選べる措置が事業主に求められるようになった。
医学生医学生
最後の、ほとんどの女性が出産後も働き続けている、というのはどうですか。共働き家庭は多い印象があります。
ドクタードクター
印象としてはそうかもしれないね。でも出生動向基本調査では、出題当時、第1子出産前に働いていた女性の約6割が出産を機に退職していた。制度の普及で継続就業の割合は上がってきているけれど、「ほとんど」とまではいえない。だからこそ、こうした支援制度が重要なんだ。
医学生医学生
制度があっても使いにくい職場もありそうです。医師の働き方でも同じ課題がありますよね。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。医療現場でも、産休・育休や短時間勤務を取りやすい体制づくりは大きな課題だ。補足すると、労働基準法には生後1年未満の子を育てる女性が1日2回、各30分以上の育児時間を請求できる規定や、妊産婦が請求すれば時間外労働や深夜業を制限する規定もある。また妊娠・出産や育休の取得を理由とした解雇などの不利益取扱いは禁止されている。臨床医としては、妊娠中の患者さんに母性健康管理指導事項連絡カードなどを活用して、職場での配慮につなげる視点も持っておきたい。

まとめ

働く女性の妊娠・出産と男女の育児は、労働基準法(産前6週・多胎14週の請求による休業、産後8週の原則強制休業、育児時間など)、男女雇用機会均等法(妊婦健診の受診時間確保、医師の指導に基づく勤務軽減、不利益取扱いの禁止)、育児・介護休業法(育児休業、短時間勤務など)によって支えられています。育児・介護休業法では3歳未満の子を養育する労働者に原則1日6時間の短時間勤務制度が義務づけられており、育児のために就業時間を短縮することができます。母体の健康管理は就業より優先され、育児休業は男女とも取得可能で、産後パパ育休などの制度も整備されています。一方で出産を機に退職する女性はなお少なくなく、制度の理解と活用の促進は母子保健上の重要な課題です。医師として患者の就労と健康を両立させる支援を行うためにも、これらの制度の基本を押さえておくことが大切です。

解答・解説

正解はdです

働く女性の妊娠・出産と、男女労働者の育児を支える制度は、主に次の3つの法律で定められている。 ①労働基準法:産前・産後休業、妊産婦の危険有害業務の制限、時間外労働・深夜業の制限、育児時間など。 ②男女雇用機会均等法:妊娠中・出産後の健康管理(妊婦健康診査や保健指導を受けるための時間の確保、医師等の指導に基づく勤務軽減など)、妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止。 ③育児・介護休業法:育児休業、短時間勤務制度、所定外労働の制限、子の看護等休暇など。 本問では、各選択肢がこれらの制度の趣旨に合っているかを判断する。基本的な考え方は「母体と子の健康が就業より優先される」「育児は男女がともに担うものとして制度が設計されている」という点である。育児・介護休業法は、3歳未満の子を養育する労働者について短時間勤務制度を設けることを事業主に義務づけており、「育児のために就業時間を短縮することができる」が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  妊婦健康診査は就業に差し支えない範囲で行う。

    優先関係が逆である。男女雇用機会均等法では、事業主は妊娠中・出産後の女性労働者が母子保健法に基づく保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保しなければならず、さらに医師等の指導事項を守れるよう、通勤緩和、休憩の延長、勤務時間の短縮、休業などの措置を講じる義務がある。就業の方が妊婦健康診査や母体の健康に支障のない範囲で行われるべきものである。

  2. ×b.  産前休暇は任意の時期に取得できる。

    労働基準法により、産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠では14週間前)から、本人が請求した場合に取得できると期間が定められており、任意の時期に取れるわけではない。一方、産後休業は産後8週間で、本人の請求の有無にかかわらず就業させてはならない(強制休業)。ただし産後6週間を経過し、本人が請求して医師が支障ないと認めた業務には就かせることができる。

  3. ×c.  育児休業制度は女性のみが対象である。

    育児休業は、原則として1歳に満たない子を養育する男女の労働者が取得できる。保育所に入れない等の事情があれば最長2歳まで延長でき、父母がともに取得する場合は1歳2か月まで延長される(パパ・ママ育休プラス)。さらに2022年からは、子の出生後8週間以内に最大4週間、父親などが通常の育休とは別に取得できる産後パパ育休(出生時育児休業)も設けられている。したがって女性のみが対象というのは誤り。

  4. ○d.  育児のために就業時間を短縮することができる。

    育児・介護休業法は、3歳に満たない子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度(1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む)を設けることを事業主に義務づけている。さらに2025年の改正施行により、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者についても、短時間勤務やテレワーク、始業時刻の変更などから複数の措置を選べるようにすることが事業主に求められている。国家公務員などでは小学校就学前の子を養育するための育児短時間勤務制度もある。したがって正しい。

  5. ×e.  ほとんどの女性が出産後も就労を継続している。

    国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によれば、出題当時は第1子出産前に就業していた女性のうち約6割が出産を機に退職しており、出産後も就業を続ける女性は半数に満たなかった。育児休業制度の普及により継続就業の割合は近年上昇しているものの、「ほとんど」とまではいえない。

労働基準法による母性保護

・産前休業:出産予定日前6週間(多胎14週間)、本人の請求による。 ・産後休業:産後8週間は就業禁止(産後6週経過後、本人請求かつ医師が認めた業務は可)。 ・妊婦の軽易業務への転換(請求時)、妊産婦の危険有害業務の就業制限。 ・妊産婦が請求した場合の時間外労働・休日労働・深夜業の制限。 ・育児時間:生後1年未満の子を育てる女性は、1日2回各30分以上の育児時間を請求できる。

男女雇用機会均等法

・妊婦健康診査・保健指導の受診時間の確保、医師等の指導に基づく勤務時間の変更や勤務軽減の措置。 ・妊娠・出産・産前産後休業取得などを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止。

育児・介護休業法

・育児休業:原則子が1歳まで(延長最長2歳、パパ・ママ育休プラスで1歳2か月まで)。 ・産後パパ育休(出生時育児休業):出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割可。 ・短時間勤務制度:3歳未満の子の養育者(原則1日6時間)。 ・所定外労働の制限、時間外労働・深夜業の制限、子の看護等休暇。 ・育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止。

関連:母子保健法

妊娠の届出により母子健康手帳が交付され、市町村が妊婦健康診査を実施する(公費助成あり)。

POINT

・母体の健康管理(妊婦健診受診など)は就業より優先され、事業主は受診時間を確保する義務がある(男女雇用機会均等法)。 ・産前休業は予定日前6週間(多胎14週間)で本人請求、産後休業は8週間で原則強制。 ・育児休業は男女とも取得可能(原則子が1歳まで)。 ・3歳未満の子を養育する労働者には短時間勤務制度がある(育児・介護休業法)。 ・出産を機に退職する女性はなお少なくなく、「ほとんどが就労継続」は誤り。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。