赤ちゃんはなぜ脱水になりやすい?―新生児の「水の出入り」を読み解く
第108回医師国家試験 E問題 第11問
国試問題にチャレンジ
新生児の体液生理について正しいのはどれか。
- a.尿濃縮力は成人と同程度である。
- b.細胞内液量は細胞外液量より多い。
- c.尿細管のNa再吸収能は成人より低い。
- d.体重当たりの不感蒸泄量は成人より多い。
- e.出生後の生理的体重減少は15%程度である。
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
新生児は体内総水分量が体重の約75〜80%と多く、成人とは逆に細胞外液が細胞内液を上回ります。体重当たりの体表面積が大きく皮膚のバリア機能も未熟なため、体重当たりの不感蒸泄量は成人より多く、早産児や光線療法中はさらに増加します。腎臓は尿濃縮力が低く(成人並みになるのは1〜2歳頃)、一方で正期産児の尿細管Na再吸収能は成人と同程度に保たれ、むしろNa排泄が苦手です(早産児ではNa喪失が問題になりうる)。出生後の生理的体重減少は出生体重の5〜10%で、生後3〜5日に最低となり1〜2週で回復し、10%を超える減少は病的状態を疑う目安です。こうした特徴が新生児・乳児の脱水のなりやすさにつながるため、輸液や水分管理を考えるうえでの基礎知識として重要です。
解答・解説
正解はdです
新生児の体液生理は、成人と比べて「体重当たりの水分量が多い」「細胞外液の割合が大きい」「水の出入り(代謝回転)が速い」「腎臓の調節能が未熟」という特徴でまとめられる。 体内総水分量は成人で体重の約60%であるのに対し、正期産新生児では約75〜80%に達し、その内訳は細胞外液が細胞内液を上回る。体表面積が体重の割に大きく、皮膚の角質層も薄いため、皮膚や呼気から失われる水分(不感蒸泄)が体重当たりで多い。さらに腎臓の尿濃縮力が低いので、水分摂取が不足しても尿を濃くして水を保持することが難しい。これらの理由から新生児・乳児は脱水に陥りやすい。 出生後は、胎内で多かった細胞外液が尿や不感蒸泄として排出され、哺乳量がまだ少ないこともあって一時的に体重が減る(生理的体重減少)。本問はこれらの基本的な数値・傾向を正しく押さえているかを問うものであり、正しいのは「体重当たりの不感蒸泄量は成人より多い」である。
選択肢考察
- ×a. 尿濃縮力は成人と同程度である。
新生児は尿細管(特にヘンレループ)が短く未熟で、髄質の浸透圧勾配が十分に形成されず、抗利尿ホルモン(ADH)への反応性も低い。最大尿浸透圧は成人の約1,200mOsm/kgに対し、新生児では約600〜800mOsm/kg程度にとどまる。尿濃縮力が成人と同程度になるのは1〜2歳頃である。したがって誤り。
- ×b. 細胞内液量は細胞外液量より多い。
新生児では体重の約40〜45%が細胞外液、約35%が細胞内液であり、細胞外液の方が多い。成長とともに細胞外液の割合は減り、細胞内液(主に筋肉などの細胞量)の割合が増えて、1歳頃には成人と同様に細胞内液が細胞外液を上回るようになる(成人では細胞内液約40%、細胞外液約20%)。したがって誤り。
- ×c. 尿細管のNa再吸収能は成人より低い。
正期産の新生児では糸球体濾過量(GFR)は成人の体表面積換算で数分の一と低いが、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性が高く、濾過されたNaに対する尿細管での再吸収の割合は成人と同程度に保たれている。このため新生児はむしろNaの排泄が苦手で、Na負荷で浮腫や高Na血症をきたしやすい。なお在胎週数の短い早産児では尿細管が未熟でNaの喪失(低Na血症)が問題になることがあるが、一般的な新生児の記述としては誤りである。
- ○d. 体重当たりの不感蒸泄量は成人より多い。
新生児は体重当たりの体表面積が成人の2〜3倍と大きく、皮膚が薄く角質層のバリア機能が未熟であり、呼吸数も多い。そのため皮膚と呼気から失われる不感蒸泄量は体重当たりで成人(約15mL/kg/日)より多い。早産児ではさらに著しく、光線療法や開放型保育器(ラジアントウォーマー)の使用でも増加するため、輸液量の設定で考慮が必要である。
- ×e. 出生後の生理的体重減少は15%程度である。
生理的体重減少は出生体重の5〜10%程度で、生後3〜5日頃に最低となり、生後1〜2週(おおむね7〜14日)で出生体重に戻る。10%を超える減少は哺乳不良や脱水など病的な状態を疑う目安であり、15%は過大である。したがって誤り。
年齢別の体液分布(体重に対する割合の目安)
正期産新生児:総水分量約75〜80%(細胞外液約40〜45%、細胞内液約35%) 乳児:約70% 成人:約60%(細胞内液約40%、細胞外液約20%) 高齢者:約50〜55% 在胎週数が短いほど総水分量と細胞外液の割合は大きい。
新生児腎機能の特徴
・GFRは低く、生後急速に増加して1〜2歳頃に成人値(体表面積補正)に達する。 ・尿濃縮力が低い(最大尿浸透圧約600〜800mOsm/kg)。尿希釈能は比較的保たれる。 ・酸排泄能、重炭酸の再吸収閾値が低く、代謝性アシドーシスになりやすい。 ・Na排泄能が低く、Na負荷に弱い(早産児では逆にNa喪失をきたしやすい)。
新生児・乳児が脱水になりやすい理由
体重当たりの水分必要量と水の代謝回転が大きい、不感蒸泄が多い、尿濃縮力が低い、口渇を自ら訴えられない、など。
POINT
・新生児は体内水分が多く(約75〜80%)、細胞外液>細胞内液。 ・体重当たりの不感蒸泄は成人より多い。 ・尿濃縮力は低く、成人並みになるのは1〜2歳頃。 ・正期産新生児の尿細管Na再吸収能は成人と同程度(むしろNa排泄が苦手)。 ・生理的体重減少は出生体重の5〜10%、生後3〜5日で最低、1〜2週で回復。
