StudyMed医師国家試験

赤ちゃんはなぜ脱水になりやすい?―新生児の「水の出入り」を読み解く

第108回医師国家試験 E問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第11問

新生児の体液生理について正しいのはどれか。

  1. a.尿濃縮力は成人と同程度である。
  2. b.細胞内液量は細胞外液量より多い。
  3. c.尿細管のNa再吸収能は成人より低い。
  4. d.体重当たりの不感蒸泄量は成人より多い。
  5. e.出生後の生理的体重減少は15%程度である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児の体液生理の問題だ。キーワードは「水分が多い」「細胞外液が多い」「水の出入りが速い」「腎臓が未熟」の4つ。この4つを軸に、各選択肢が成人と比べてどうかを考えていこう。
医学生医学生
小児科の講義で「子どもは小さな大人ではない」と何度も言われました。でも具体的に体液がどう違うのか、いまひとつ整理できていません。
ドクタードクター
まず全体像からいこう。体内の総水分量は成人で体重の約60%だけど、正期産の新生児では約75〜80%もある。そしてその内訳が成人とは逆なんだ。
医学生医学生
逆というと、細胞内液より細胞外液のほうが多いということですか。生理学では「細胞内液が体重の40%、細胞外液が20%」と習ったので、てっきり新生児も同じかと思っていました。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だね。新生児では細胞外液が体重の約40〜45%、細胞内液が約35%で、細胞外液のほうが多い。成長とともに筋肉などの細胞量が増えて細胞内液の割合が上がり、1歳頃には成人と同じく細胞内液が上回るようになる。だから「細胞内液量は細胞外液量より多い」は誤りだ。
医学生医学生
胎内で多かった細胞外液が出生後に出ていくのが、生理的体重減少ですか。
ドクタードクター
その通り。余分な細胞外液が尿や不感蒸泄で失われ、さらに哺乳量がまだ少ないこともあって一時的に体重が減る。ではその程度はどれくらいだと思う?
医学生医学生
選択肢には15%とありますが、それはさすがに多すぎる気がします。
ドクタードクター
いい感覚だね。生理的体重減少は出生体重の5〜10%程度で、生後3〜5日頃に最低となり、1〜2週で出生体重に戻る。10%を超えるようなら哺乳不良や脱水など病的な状態を疑う目安になるから、15%は過大だ。
医学生医学生
産婦人科の実習で、毎朝の新生児の体重測定で減少率を計算していたのを思い出しました。
ドクタードクター
臨床ではまさにそれが大事な観察項目なんだ。次は正解の不感蒸泄。新生児は体重の割に体表面積が大きく、成人の2〜3倍にもなる。皮膚は薄くて角質層のバリアも未熟、呼吸数も多い。だから皮膚と呼気から失われる水分、つまり不感蒸泄は体重当たりで成人より多い。これが正しい選択肢だ。
医学生医学生
体が小さいほど表面積の比率が大きくなる、ということですね。早産児だとさらに多くなりそうです。
ドクタードクター
そう、早産児ではもっと著しい。光線療法や開放型保育器を使うときも増えるから、NICUでは輸液量の設定で必ず考慮する。では腎臓の話に移ろう。尿濃縮力は成人と同程度だと思うかな。
医学生医学生
腎臓が未熟なので、濃縮力は低いと思います。
ドクタードクター
正解。ヘンレループが短く、髄質の浸透圧勾配が十分にできないうえ、ADHへの反応性も低い。最大尿浸透圧は成人の約1,200mOsm/kgに対して新生児では600〜800mOsm/kg程度にとどまり、成人並みになるのは1〜2歳頃だ。水が足りなくても尿を濃くして水を保持することが苦手なんだ。
医学生医学生
それならNaの再吸収能も未熟で低い、というのが正しいように見えてしまいます。
ドクタードクター
そこがこの問題の引っかけだね。正期産新生児はGFRこそ低いけれど、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性が高く、濾過されたNaを再吸収する割合は成人と同程度に保たれている。むしろNaを排泄するのが苦手で、Naを負荷すると浮腫や高Na血症をきたしやすい。だから一般的な新生児の記述としては誤りになる。ただし在胎週数の短い早産児では尿細管が未熟で、逆にNaを失って低Na血症が問題になることがある。
医学生医学生
正期産児と早産児で話が変わるんですね。正期産児は「Naを捨てられない」、早産児は「Naを保てない」と分けて覚えておきます。
ドクタードクター
いい整理だ。最後に臨床でのまとめをしておこう。体重当たりの水分必要量と代謝回転が大きい、不感蒸泄が多い、尿濃縮力が低い、そして口渇を自分で訴えられない。これらが重なるから、新生児や乳児は脱水に陥りやすい。下痢や発熱、哺乳不良があれば、成人よりずっと早く脱水が進むと考えておく必要がある。
医学生医学生
小児科外来で、胃腸炎の乳児の脱水評価を急いでいた理由がよくわかりました。
ドクタードクター
加えて、新生児は酸排泄能や重炭酸の再吸収閾値も低く、代謝性アシドーシスになりやすい。体液と腎機能の未熟さはセットで理解しておくと、輸液や電解質管理の判断に役立つよ。

まとめ

新生児は体内総水分量が体重の約75〜80%と多く、成人とは逆に細胞外液が細胞内液を上回ります。体重当たりの体表面積が大きく皮膚のバリア機能も未熟なため、体重当たりの不感蒸泄量は成人より多く、早産児や光線療法中はさらに増加します。腎臓は尿濃縮力が低く(成人並みになるのは1〜2歳頃)、一方で正期産児の尿細管Na再吸収能は成人と同程度に保たれ、むしろNa排泄が苦手です(早産児ではNa喪失が問題になりうる)。出生後の生理的体重減少は出生体重の5〜10%で、生後3〜5日に最低となり1〜2週で回復し、10%を超える減少は病的状態を疑う目安です。こうした特徴が新生児・乳児の脱水のなりやすさにつながるため、輸液や水分管理を考えるうえでの基礎知識として重要です。

解答・解説

正解はdです

新生児の体液生理は、成人と比べて「体重当たりの水分量が多い」「細胞外液の割合が大きい」「水の出入り(代謝回転)が速い」「腎臓の調節能が未熟」という特徴でまとめられる。 体内総水分量は成人で体重の約60%であるのに対し、正期産新生児では約75〜80%に達し、その内訳は細胞外液が細胞内液を上回る。体表面積が体重の割に大きく、皮膚の角質層も薄いため、皮膚や呼気から失われる水分(不感蒸泄)が体重当たりで多い。さらに腎臓の尿濃縮力が低いので、水分摂取が不足しても尿を濃くして水を保持することが難しい。これらの理由から新生児・乳児は脱水に陥りやすい。 出生後は、胎内で多かった細胞外液が尿や不感蒸泄として排出され、哺乳量がまだ少ないこともあって一時的に体重が減る(生理的体重減少)。本問はこれらの基本的な数値・傾向を正しく押さえているかを問うものであり、正しいのは「体重当たりの不感蒸泄量は成人より多い」である。

選択肢考察

  1. ×a.  尿濃縮力は成人と同程度である。

    新生児は尿細管(特にヘンレループ)が短く未熟で、髄質の浸透圧勾配が十分に形成されず、抗利尿ホルモン(ADH)への反応性も低い。最大尿浸透圧は成人の約1,200mOsm/kgに対し、新生児では約600〜800mOsm/kg程度にとどまる。尿濃縮力が成人と同程度になるのは1〜2歳頃である。したがって誤り。

  2. ×b.  細胞内液量は細胞外液量より多い。

    新生児では体重の約40〜45%が細胞外液、約35%が細胞内液であり、細胞外液の方が多い。成長とともに細胞外液の割合は減り、細胞内液(主に筋肉などの細胞量)の割合が増えて、1歳頃には成人と同様に細胞内液が細胞外液を上回るようになる(成人では細胞内液約40%、細胞外液約20%)。したがって誤り。

  3. ×c.  尿細管のNa再吸収能は成人より低い。

    正期産の新生児では糸球体濾過量(GFR)は成人の体表面積換算で数分の一と低いが、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性が高く、濾過されたNaに対する尿細管での再吸収の割合は成人と同程度に保たれている。このため新生児はむしろNaの排泄が苦手で、Na負荷で浮腫や高Na血症をきたしやすい。なお在胎週数の短い早産児では尿細管が未熟でNaの喪失(低Na血症)が問題になることがあるが、一般的な新生児の記述としては誤りである。

  4. ○d.  体重当たりの不感蒸泄量は成人より多い。

    新生児は体重当たりの体表面積が成人の2〜3倍と大きく、皮膚が薄く角質層のバリア機能が未熟であり、呼吸数も多い。そのため皮膚と呼気から失われる不感蒸泄量は体重当たりで成人(約15mL/kg/日)より多い。早産児ではさらに著しく、光線療法や開放型保育器(ラジアントウォーマー)の使用でも増加するため、輸液量の設定で考慮が必要である。

  5. ×e.  出生後の生理的体重減少は15%程度である。

    生理的体重減少は出生体重の5〜10%程度で、生後3〜5日頃に最低となり、生後1〜2週(おおむね7〜14日)で出生体重に戻る。10%を超える減少は哺乳不良や脱水など病的な状態を疑う目安であり、15%は過大である。したがって誤り。

年齢別の体液分布(体重に対する割合の目安)

正期産新生児:総水分量約75〜80%(細胞外液約40〜45%、細胞内液約35%) 乳児:約70% 成人:約60%(細胞内液約40%、細胞外液約20%) 高齢者:約50〜55% 在胎週数が短いほど総水分量と細胞外液の割合は大きい。

新生児腎機能の特徴

・GFRは低く、生後急速に増加して1〜2歳頃に成人値(体表面積補正)に達する。 ・尿濃縮力が低い(最大尿浸透圧約600〜800mOsm/kg)。尿希釈能は比較的保たれる。 ・酸排泄能、重炭酸の再吸収閾値が低く、代謝性アシドーシスになりやすい。 ・Na排泄能が低く、Na負荷に弱い(早産児では逆にNa喪失をきたしやすい)。

新生児・乳児が脱水になりやすい理由

体重当たりの水分必要量と水の代謝回転が大きい、不感蒸泄が多い、尿濃縮力が低い、口渇を自ら訴えられない、など。

POINT

・新生児は体内水分が多く(約75〜80%)、細胞外液>細胞内液。 ・体重当たりの不感蒸泄は成人より多い。 ・尿濃縮力は低く、成人並みになるのは1〜2歳頃。 ・正期産新生児の尿細管Na再吸収能は成人と同程度(むしろNa排泄が苦手)。 ・生理的体重減少は出生体重の5〜10%、生後3〜5日で最低、1〜2週で回復。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。