StudyMed医師国家試験

年間たった「約50人」―世界トップクラスに安全な日本のお産を数字で知る

第108回医師国家試験 B問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第108回 B問題 第6問

最近5年間の我が国の年間妊産婦死亡数はどれか。

  1. a.約50人/年
  2. b.約100人/年
  3. c.約200人/年
  4. d.約500人/年
  5. e.約1,000人/年

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、我が国の妊産婦死亡数がどのくらいの規模かを問う、人口動態統計の問題だ。細かい数字の暗記よりも、「日本の妊産婦死亡はどれくらい少ないのか」という桁の感覚を持っているかがポイントになる。まず、どのくらいだと思う?
医学生医学生
お産で亡くなる方は今でもそれなりにいる印象があって、年間数百人くらいかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも実際はずっと少ない。本問の出題時点の直近5年間、つまり2008〜2012年の妊産婦死亡数は39〜53人で、年間40〜50人前後だった。だから約50人が正解になる。
医学生医学生
そんなに少ないんですね。年間の出生数が約100万人だから、10万人あたりだと4〜5人くらいですか。
ドクタードクター
その計算の仕方がとても大事。妊産婦死亡率はおよそ4前後で、世界的に見ても最も低い水準の一つなんだ。世界全体では出生10万対200を超えるから、桁がまったく違う。この感覚があれば、選択肢の中で一番小さい値を選べるよね。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、妊産婦死亡率の分母は出生数じゃなくて出産数だと習った気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。妊産婦死亡率は、妊産婦死亡数を出産数、つまり出生数に妊娠満12週以後の死産数を加えたもので割って10万をかける。国際比較では出生10万対で出すことも多いから、資料を読むときは分母を確認しよう。
医学生医学生
では約100人や約200人という選択肢は、昔の数字なんでしょうか。
ドクタードクター
その通り。年間100人前後だったのは1990年代前半ごろ、200人規模はさらに前の1980年代ごろだ。どちらも出題時点の数値ではない。
医学生医学生
約500人や約1,000人はさすがに多すぎますよね。
ドクタードクター
出生100万人で500人なら死亡率は約50で、先進国の水準を大きく上回ってしまう。ただ、1950年ごろの日本は年間4,000人を超えていたんだ。施設分娩の普及や周産期医療の進歩で、ここまで劇的に減ってきたというわけ。
医学生医学生
そもそも「妊産婦死亡」の定義はどうなっていましたか。CBTの過去問で迷った記憶があります。
ドクタードクター
妊娠中または妊娠終了後満42日未満の女性の死亡で、妊娠やその管理に関連した原因、またはそれらで悪化した原因によるものを指す。交通事故のような不慮・偶発的な原因による死亡は含まない。さらに、分娩後出血や妊娠高血圧症候群のような産科合併症による直接産科的死亡と、もともとの心疾患などが妊娠で悪化した間接産科的死亡に分けられる。満42日以後1年未満の産科的原因による死亡は後発妊産婦死亡と呼ぶよ。
医学生医学生
産婦人科の実習で弛緩出血の症例を見学しましたが、死因として多いのはやはり出血ですか。
ドクタードクター
そう、我が国で最も多いのは産科危機的出血だ。分娩後出血、弛緩出血、前置胎盤、常位胎盤早期剝離、子宮破裂などが含まれる。ほかに脳出血などの脳血管障害、羊水塞栓症、心・大血管疾患、肺血栓塞栓症も重要だね。輸血を中心とする抗ショック療法やDICへの治療、周産期母子医療センターの整備が死亡の減少に寄与してきた。
医学生医学生
数が少ないからこそ、一例一例が重い意味を持つんですね。
ドクタードクター
まさにそう。その後も減少傾向は続いて、近年は年間20〜30人台で推移している。数字が小さいほど年ごとの変動も出やすいから、最新の人口動態統計にも目を通しておくといい。そして臨床では、分娩は今でも急変しうるイベントだという意識を持って、出血への備えやチーム対応を怠らないことが大切だ。

まとめ

我が国の妊産婦死亡数は、出題時点の直近5年間(2008〜2012年)で年間40〜50人前後であり、近年はさらに減って20〜30人台で推移しています。出生数約100万人に対して妊産婦死亡率はおよそ4(出産10万対)と、世界でも最も低い水準の一つで、1950年ごろの年間4,000人超から施設分娩の普及や周産期医療の進歩によって劇的に減少しました。妊産婦死亡は妊娠中または妊娠終了後満42日未満の、妊娠に関連した原因による死亡と定義され、不慮・偶発的な原因は含まず、死亡率の分母は出生数ではなく出産数(出生数+妊娠満12週以後の死産数)です。主な死因は産科危機的出血で、脳血管障害、羊水塞栓症、心血管疾患、肺血栓塞栓症なども重要です。統計の桁の感覚と定義を押さえておくことは、国試対策だけでなく、母子保健の現状と課題を理解する土台になります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

我が国の妊産婦死亡数のおおよその規模を問う、人口動態統計の知識問題である。

考え方

人口動態統計によると、本問出題時点の直近5年間(2008〜2012年)の妊産婦死亡数は、2008年39人、2009年53人、2010年45人、2011年41人、2012年42人と推移しており、おおむね年間40〜50人前後であった。したがって「約50人/年」が最も近い。 日本の年間出生数は当時約100万人であり、妊産婦死亡率(出産10万あたり)はおよそ4前後となる。日本の妊産婦死亡率は世界的にみて最も低い水準にあり、この大きさの感覚を持っていれば、選択肢の中で最小の値を選ぶことができる。 なお、その後も減少傾向は続き、2010年代後半以降は年間20〜30人台で推移している。

選択肢考察

  1. ○a.  約50人/年

    2008〜2012年の妊産婦死亡数は39〜53人で、年間およそ40〜50人であった。出生数約100万人に対して妊産婦死亡率はおよそ4(出産10万対)となり、国際的に最も低い水準の一つである。したがって本問の答えである。

  2. ×b.  約100人/年

    実際の約2倍にあたる。我が国の妊産婦死亡数が年間100人前後だったのは1990年代前半頃であり、出題時点の水準ではない。

  3. ×c.  約200人/年

    実際の約4倍にあたる。妊産婦死亡数は戦後一貫して大きく減少しており、年間200人規模だったのはさらに前の時代(1980年代頃)であって、出題時点の数値とはかけ離れている。

  4. ×d.  約500人/年

    実際の約10倍にあたる。仮に出生数約100万人で500人が死亡すると、妊産婦死亡率はおよそ50(出産10万対)となり、先進国の水準を大きく上回る。日本の現状とは合わない。

  5. ×e.  約1,000人/年

    実際の約20倍にあたる。1950年頃の我が国では妊産婦死亡数は年間4,000人を超えていたが、その後の施設分娩の普及や周産期医療の進歩により大幅に減少した。年間1,000人という水準は出題時点の数値ではない。

妊産婦死亡の定義

妊娠中または妊娠終了後満42日未満の女性の死亡で、妊娠の期間や部位を問わず、妊娠もしくはその管理に関連した原因、またはそれらによって悪化した原因によるものをいう。事故などの不慮または偶発的な原因による死亡は含まない。 ・直接産科的死亡:妊娠・分娩・産褥の産科的合併症や、それに対する治療・処置などによる死亡(例:分娩後出血、妊娠高血圧症候群) ・間接産科的死亡:妊娠前から存在した疾患、または妊娠中に発症した非産科的疾患が妊娠の生理的影響で悪化したことによる死亡(例:心疾患の悪化) ・後発妊産婦死亡:妊娠終了後満42日以後1年未満の、直接・間接の産科的原因による死亡

妊産婦死亡率

妊産婦死亡率 = 妊産婦死亡数 ÷ 出産数(出生数+妊娠満12週以後の死産数)× 100,000 分母は出生数ではなく「出産数」である点に注意する。国際比較では出生10万対で算出されることも多い。

主な死因

我が国では、産科危機的出血(分娩後出血、弛緩出血、前置胎盤、常位胎盤早期剝離、子宮破裂など)が最も多く、ほかに脳出血などの脳血管障害、羊水塞栓症、心・大血管疾患、肺血栓塞栓症、妊娠高血圧症候群関連疾患などが重要である。輸血を中心とする抗ショック療法や播種性血管内凝固(DIC)に対する治療の普及、周産期母子医療センターの整備などが死亡の減少に寄与してきた。

推移の目安

1950年頃は年間4,000人以上であったが、その後大きく減少し、2000年代後半〜2010年代前半は年間40〜50人前後、近年は年間20〜30人台となっている。世界全体の妊産婦死亡率は出生10万対200を超えており、日本との差は非常に大きい。

POINT

・我が国の妊産婦死亡数は出題当時で年間約40〜50人(近年は20〜30人台)。 ・妊産婦死亡率は出産10万対でおよそ3〜4と、世界で最も低い水準にある。 ・妊産婦死亡率の分母は「出産数」(出生数+妊娠満12週以後の死産数)。 ・定義は妊娠中または妊娠終了後満42日未満の死亡で、不慮・偶発的な原因によるものは除く。 ・主な死因は産科危機的出血で、ほかに脳血管障害、羊水塞栓症、心血管疾患、肺血栓塞栓症などがある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。