ゲーム時間は測らない?―「健やか親子21(第2次)」の課題と指標を地図にする
第118回医師国家試験 F問題 第5問
国試問題にチャレンジ
健やか親子21(第2次)の指標でないのはどれか。
- a.十代の飲酒率
- b.妊婦の喫煙率
- c.低出生体重児の割合
- d.中高生の1日のゲームの使用時間
- e.積極的に育児をしている父親の割合
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
健やか親子21(第2次)は2015年度に始まった母子保健の国民運動計画で、3つの基盤課題(A:妊産婦・乳幼児、B:学童期・思春期、C:地域づくり)と2つの重点課題(育てにくさを感じる親への支援、妊娠期からの児童虐待防止)から構成されます。妊婦の喫煙率や低出生体重児の割合は基盤課題A、十代の飲酒率・喫煙率は基盤課題B、積極的に育児をしている父親の割合は基盤課題Cの指標であり、中高生のゲームの使用時間は指標に含まれていません。国民全体の健康づくりを目指す健康日本21とは対象・目的が異なり、飲酒・喫煙など重なる領域もあるため区別して整理することが大切です。課題の枠組みから指標を位置づけて理解すると暗記に頼らず判断でき、乳幼児健診などの臨床現場が母子保健施策とどうつながるかも見えてきます。
解答・解説
正解はdです
「健やか親子21」は、母子保健に関する取り組みを関係機関・団体が一体となって推進する国民運動計画である。第1次(2001〜2014年)に続き、第2次は2015年度から開始され、「すべての子どもが健やかに育つ社会」の実現を目指している。 第2次では、3つの基盤課題と2つの重点課題が設定されている。 ・基盤課題A:切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策 ・基盤課題B:学童期・思春期から成人期に向けた保健対策 ・基盤課題C:子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり ・重点課題①:育てにくさを感じる親に寄り添う支援 ・重点課題②:妊娠期からの児童虐待防止対策 それぞれの課題について、「健康水準の指標」「健康行動の指標」「環境整備の指標」が設けられ、数値目標が定められている。 本問では、各選択肢がどの課題に対応する指標かを思い浮かべるとよい。妊婦の喫煙や低出生体重児は基盤課題A、十代の飲酒は基盤課題B、父親の育児参加は基盤課題Cに対応する指標である。一方、中高生のゲーム使用時間は、ゲームの長時間利用による健康影響が問題視されてはいるものの、第2次の指標としては採用されていない。
選択肢考察
- ×a. 十代の飲酒率
基盤課題B(学童期・思春期から成人期に向けた保健対策)の健康行動の指標であり、目標は男女とも0%である。未成年者の飲酒は法律で禁止されており、脳の発達への悪影響やアルコール依存のリスクを高めることから、なくすことが目標とされている。同じ課題には十代の喫煙率(目標0%)も含まれる。
- ×b. 妊婦の喫煙率
基盤課題A(切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策)の健康行動の指標であり、目標は0%である。妊娠中の喫煙は胎児発育不全による低出生体重、早産、常位胎盤早期剝離などのリスクを高め、出生後の乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険因子にもなる。関連して育児期間中の両親の喫煙率も指標となっている。
- ×c. 低出生体重児の割合
基盤課題Aの健康水準の指標であり、全出生数中の低出生体重児(出生体重2,500g未満)の割合の「減少」が目標とされている。日本では低出生体重児の割合が1980年代から上昇し、近年は約9%台で推移している。低出生体重は新生児期の合併症に加え、成人後の生活習慣病リスクとも関連するとされる(DOHaD説:胎児期・乳幼児期の環境が将来の健康や疾患リスクに影響するという考え方)。
- ○d. 中高生の1日のゲームの使用時間
健やか親子21(第2次)の指標には含まれていない。ゲームの長時間利用は睡眠不足や視力低下、学業・生活への支障と関連し、WHOのICD-11では「ゲーム行動症(ゲーム障害)」が疾患として収載されるなど関心が高まっているが、第2次の策定時点ではこれに関する指標は設定されなかった。
- ×e. 積極的に育児をしている父親の割合
基盤課題C(子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり)の健康行動の指標であり、割合の増加が目標とされている。乳幼児健康診査の際の問診で把握される。父親の育児参加は母親の育児負担や産後うつの軽減、子どもの健やかな発達につながり、地域・家庭ぐるみで子育てを支える観点から重視されている。
健やか親子21の経緯
・第1次:2001年から開始(当初2010年までの計画を2014年まで延長)。21世紀の母子保健の主要な取り組みを示すビジョンとして策定された。 ・第2次:2015年度から開始。最終評価が行われ、2023年度からは成育基本法に基づく「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(成育医療等基本方針)」を推進するための国民運動として位置づけられている。
第2次の主な指標の例
・基盤課題A:妊産婦死亡率、全出生数中の低出生体重児の割合、妊娠中の妊婦の喫煙率・飲酒率、育児期間中の両親の喫煙率、乳幼児健康診査の受診率、むし歯のない3歳児の割合など ・基盤課題B:十代の自殺死亡率、十代の人工妊娠中絶率、十代の性感染症罹患率、十代の喫煙率・飲酒率、児童・生徒における痩身傾向児・肥満傾向児の割合、朝食を欠食する子どもの割合など ・基盤課題C:妊娠中・子育て中に周囲から温かく見守られていると感じる母親の割合、積極的に育児をしている父親の割合など ・重点課題①:ゆったりとした気分で子どもと過ごせる時間がある母親の割合、育てにくさを感じたときに対処できる親の割合など ・重点課題②:児童虐待による死亡数、乳幼児期に体罰や暴言など子どもの心の安定に悪影響を及ぼす育児をしていない親の割合など
関連する施策との区別
・健康日本21:国民全体の生活習慣病予防などを目的とする国民健康づくり運動(健康増進法に基づく)。現在は2024年度からの第三次。 ・健やか親子21:母子保健を中心とした国民運動。 両者は飲酒・喫煙など重なる領域があるため、混同しないよう対象と目的を整理しておく。
POINT
・健やか親子21(第2次)は2015年度開始の母子保健の国民運動計画で、目標は「すべての子どもが健やかに育つ社会」である。 ・3つの基盤課題(A妊産婦・乳幼児、B学童期・思春期、C地域づくり)と2つの重点課題(育てにくさを感じる親への支援、妊娠期からの児童虐待防止)からなる。 ・十代の飲酒率・喫煙率、妊婦の喫煙率(いずれも目標0%)、低出生体重児の割合、積極的に育児をしている父親の割合は指標に含まれる。 ・中高生のゲーム使用時間は指標に含まれない。
