「熱が下がったら」ではない―水痘の登校再開は「すべてかさぶた」が合図
第107回医師国家試験 G問題 第41問
国試問題にチャレンジ
7歳の女児。顔面と頭部の皮疹を主訴に来院した。2日前から顔面,頭部および体幹に数mm大の多数の皮疹が出現してきた。体温38.0℃。児の前胸部の皮疹の写真を別に示す。 保護者に対する説明で適切なのはどれか。

- a.「3日後から登校してください」
- b.「解熱した翌日から登校してください」
- c.「解熱して3日たったら登校してください」
- d.「かさぶたが全てとれてから登校してください」
- e.「皮疹が全てかさぶたになってから登校してください」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
頭皮・顔面・体幹に紅斑、丘疹、臍窩をもつ水疱、痂皮といった新旧の皮疹が混在し、発熱を伴う学童では水痘を考えます。水痘は学校保健安全法の第二種感染症で、出席停止期間は日数や解熱ではなく「すべての発しんが痂皮化するまで」と定められており、すべてが痂皮になれば感染性はほぼ消失するため、かさぶたの脱落まで待つ必要はありません。麻疹の「解熱後3日」、風疹の「発しんが消失するまで」、インフルエンザの「発症後5日かつ解熱後2日(幼児3日)」など、他疾患の基準と区別して覚えることが重要です。水痘は空気感染する感染力の強い疾患で、免疫不全者や妊婦では重症化しうるため、外来での隔離、ワクチン定期接種や曝露後の緊急接種、アスピリンを避けた解熱といった周辺知識もあわせて押さえましょう。保護者に根拠をもって登校の目安を説明できることは、小児科診療に限らず地域の感染拡大を防ぐうえで医師に求められる基本的な役割です。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・7歳の学童:水痘、風疹、麻疹など発疹を伴うウイルス感染症が多い年齢である。 ・2日前から顔面、頭部(頭皮)、体幹に数mm大の皮疹が多発している。水痘の皮疹は頭皮・顔面や体幹から始まり、体幹に最も密に分布し、四肢では比較的少ない(求心性分布)。 ・体温38.0℃:水痘では38℃前後の発熱が2〜3日続く程度で、全身状態は比較的保たれることが多い。 ・前胸部の写真:紅斑、丘疹、中心に臍窩をもつ小水疱、痂皮といった異なる段階の皮疹が同じ部位に混在している。これは皮疹が数日にわたって次々と新しく出現するためで、水痘に特徴的な所見である。
診断
以上から水痘(varicella)と診断する。鑑別として、水疱を形成する疾患には単純ヘルペスウイルス感染症、Kaposi水痘様発疹症(アトピー性皮膚炎などの皮膚病変部に単純ヘルペスが広がったもの)、手足口病などがあるが、頭皮を含む全身に新旧の皮疹が混在して散在する点は水痘に典型的である。風疹や麻疹は水疱を作らない。
設問の考え方
診断がつけば、問われているのは学校保健安全法に定められた出席停止の基準である。水痘は第二種の学校感染症に分類され、「すべての発しんが痂皮化するまで」が出席停止期間とされている(病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めたときはこの限りでない)。水痘ウイルスは水疱内容に大量に含まれ、新しい水疱が存在する間は感染力が続くが、すべての皮疹が乾いてかさぶたになればウイルスの排出はほぼ終わる。したがって「かさぶたがとれるまで」待つ必要はなく、「すべてがかさぶたになった時点」が登校可能の目安となる。
選択肢考察
- ×a. 「3日後から登校してください」
水痘の出席停止は日数ではなく皮疹の状態で決められている。皮疹は発症から数日間は新たに出現し続け、全て痂皮化するまでには通常1週間前後かかる。3日後の時点では新しい水疱が残っている可能性が高く、感染源となりうるため不適切である。
- ×b. 「解熱した翌日から登校してください」
水痘では解熱しても水疱が残っていれば感染力がある。熱の経過を基準にするのは誤りである。なお、解熱を基準に含む出席停止期間は、インフルエンザ(発症後5日を経過し、かつ解熱後2日〈幼児は3日〉を経過するまで)や麻疹などで用いられる。
- ×c. 「解熱して3日たったら登校してください」
「解熱した後3日を経過するまで」は麻疹の出席停止期間である。水痘の基準ではない。水痘では発熱の有無と関係なく、すべての皮疹の痂皮化が条件となる。
- ×d. 「かさぶたが全てとれてから登校してください」
すべての皮疹が痂皮化した段階で感染性はほぼ消失しており、かさぶたが脱落するまで待つ必要はない。痂皮の脱落には1〜2週間程度を要することもあり、この基準では必要以上に長く欠席させることになるため不適切である。
- ○e. 「皮疹が全てかさぶたになってから登校してください」
学校保健安全法施行規則で、水痘の出席停止期間は「すべての発しんが痂皮化するまで」と定められている。水疱の中にはウイルスが多量に含まれており、新しい水疱が出なくなり、全ての皮疹が乾燥して痂皮となれば感染源となる可能性はほぼなくなる。保護者への説明として適切である。
水痘の概要
・病原体:水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV、ヘルペスウイルス科)。 ・感染経路:空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染。感染力は非常に強い。 ・潜伏期間:約2週間(10〜21日)。 ・感染可能期間:発疹出現の1〜2日前から、すべての皮疹が痂皮化するまで。 ・症状:発熱と、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→痂皮と進む発疹。新旧の皮疹が混在し、頭皮や口腔粘膜にも出現する。瘙痒感が強い。 ・合併症:皮膚の二次性細菌感染、肺炎(成人に多い)、小脳失調・脳炎など。免疫不全者(白血病治療中、ステロイド投与中など)では重症化しうる。妊婦の初感染は重症化しやすく、妊娠初期では先天性水痘症候群、分娩前後では新生児の重症水痘のリスクがある。 ・治療:抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)。解熱にはアセトアミノフェンを用い、アスピリンはReye症候群(急性脳症と肝障害)との関連から避ける。 ・予防:水痘ワクチン(弱毒生ワクチン)は2014年から定期接種となり、1〜3歳未満に2回接種する。曝露後早期(72時間以内)の緊急ワクチン接種も発症予防・軽症化に有効とされる。 ・回復後もウイルスは脊髄後根神経節や脳神経の知覚神経節に潜伏し、再活性化すると帯状疱疹を起こす。 ・感染症法では5類感染症で、小児科定点からの定点把握疾患である(入院例は全数把握)。
学校保健安全法の主な第二種感染症の出席停止期間
・インフルエンザ:発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで ・百日咳:特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで ・麻疹:解熱後3日を経過するまで ・流行性耳下腺炎:耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで ・風疹:発しんが消失するまで ・水痘:すべての発しんが痂皮化するまで ・咽頭結膜熱:主要症状が消退した後2日を経過するまで ・新型コロナウイルス感染症:発症後5日を経過し、かつ症状軽快後1日を経過するまで ・結核、髄膜炎菌性髄膜炎:病状により学校医等が感染のおそれがないと認めるまで いずれも、学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めたときはこの限りではない(結核・髄膜炎菌性髄膜炎は上記のとおり医師の判断が基準そのもの)。
POINT
・新旧の皮疹(丘疹・水疱・痂皮)が混在し、頭皮にも出る発疹+発熱は水痘。 ・水痘は学校保健安全法の第二種感染症で、出席停止は「すべての発しんが痂皮化するまで」。痂皮の脱落まで待つ必要はない。 ・麻疹は「解熱後3日」、風疹は「発しんが消失するまで」、インフルエンザは「発症後5日かつ解熱後2日(幼児3日)」と区別して覚える。
