StudyMed医師国家試験

「○○先生は外出しておられます」はなぜNG?―患者の前で問われる医師の接遇と敬語

第107回医師国家試験 F問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第107回 F問題 第4問

医師の振舞いとして適切でないのはどれか。

  1. a.院内PHSで話すときは,周囲に十分配慮して話す。
  2. b.面談室で患者に病状説明した後は,患者より後に退室する。
  3. c.患者と話をするときは,できるだけ目線の高さを同じにする。
  4. d.エレベーターを使用するときは,緊急時以外は患者を優先する。
  5. e.上司が外出中であることを患者に伝える場合は「○○先生は外出しておられます」と言う。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医学知識ではなく、医師としての振る舞い、いわゆる接遇とプロフェッショナリズムを問う問題だよ。判断の軸は「プライバシーへの配慮」「患者への敬意と安心感」「正しい言葉遣い」の3つ。そして問われているのは「適切でないもの」だという点に注意しよう。
医学生医学生
どれも常識的に見えて、逆に迷いました。臨床実習の初日オリエンテーションで接遇の話を聞いたのを思い出します。
ドクタードクター
そう、一見どれももっともらしいのがこの問題のポイントだね。まず院内PHSの話から。病院でPHSに出るとき、どんな内容を話すことが多いと思う?
医学生医学生
病棟から「○○さんの検査結果が出ました」みたいな連絡ですよね。患者さんの名前や病状がそのまま出てきます。
ドクタードクター
その通り。だから廊下やエレベーター、待合室で大声で話すと守秘義務や個人情報保護の点で問題になるし、周囲の患者さんを不安にさせることもある。場所を選び、声の大きさや内容に気を配るのは当然の振る舞いだ。
医学生医学生
面談室で病状説明した後に患者さんより後に退室する、というのは少し意外でした。医師のほうが忙しいので先に出てもいいのかなと。
ドクタードクター
そこは大事なところだよ。病状説明の直後の患者さんは、動揺していたり、聞きそびれたことがあったりすることが多い。医師が先に出てしまうと、患者さんは取り残された気持ちになり、質問の機会も失ってしまう。患者さんが席を立つまで待って、最後に「ほかに気になることはありませんか」と確認してから見送るのが望ましいんだ。
医学生医学生
OSCEの医療面接でも、最後に質問がないか確認して締めくくるように練習しました。それと同じ発想ですね。
ドクタードクター
まさにそう。目線の高さを合わせるのも同じ考え方だ。ベッドに寝ている患者さんを立ったまま見下ろして話すと、それだけで威圧感を与えてしまう。椅子に座ったり腰をかがめたりして目線をそろえると、患者さんは不安や疑問を口にしやすくなる。視線や姿勢、距離といった非言語的コミュニケーションは、医師患者関係の土台なんだ。
医学生医学生
エレベーターで患者さんを優先するのも適切ですよね。ただ、急変の呼び出しで急いでいるときはどうなるんでしょう。
ドクタードクター
いい疑問だね。車椅子やストレッチャー、点滴をつけた患者さんが利用するので、普段は患者さんを優先するのが基本。ただ、急変した患者さんのもとへ駆けつけるような緊急時には医療者が優先することもありうる。だから「緊急時以外は」という条件付きで適切な振る舞いなんだ。
医学生医学生
となると、残るのは上司の不在を伝える言い方ですね。「先生」と付けて「おられます」と言うのは、丁寧で正しいように感じてしまいました。
ドクタードクター
そこが落とし穴。敬語には「ウチ」と「ソト」の区別があって、外部の人、ここでは患者さんに対して話すときは、自分の組織の人は上司や院長であっても「ウチ」として扱う。だから敬称の「先生」を付けず、尊敬語の「おられます」も使わない。正しくは「○○はただいま外出しております」と、謙譲語・丁寧語で伝えるんだ。
医学生医学生
会社で取引先からの電話に「部長の○○は席を外しております」と答えるのと同じ原則ということですね。
ドクタードクター
その通り。病院だと医師同士は普段「先生」と呼び合うから、つい患者さんの前でもそのまま使ってしまいがち。でも患者さんから見れば、身内を自分より高めて話されることになるんだ。一方、院内の職員同士で話すときは上司に尊敬語を使うので、相手が誰かによって使い分けることが大切だよ。
医学生医学生
尊敬語は相手の動作を高める、謙譲語は自分側の動作をへりくだる、丁寧語は「です・ます」と、国語の授業以来の整理ですが、医療現場でも必要なんですね。
ドクタードクター
そう。ほかにも、清潔な身だしなみと名札の着用、初対面での自己紹介、フルネームでの本人確認、専門用語を避けた説明と理解の確認など、接遇の基本はたくさんある。実習中の学生も患者さんから見れば医療チームの一員だから、今日から意識してほしいね。

まとめ

医師の振る舞いは「患者への敬意」「プライバシーへの配慮」「正しい言葉遣い」の3つの軸で判断できます。院内PHSで周囲に配慮して話すこと、病状説明後に患者より先に退室しないこと、目線の高さを合わせること、緊急時以外はエレベーターで患者を優先することは、いずれも患者中心の適切な振る舞いです。一方、患者に上司の不在を伝える際は、身内を「ウチ」として扱い敬称や尊敬語を使わず、「○○は外出しております」と表現するのが正しい敬語です。院内の職員同士では上司に尊敬語を用いるため、相手によって使い分ける意識が求められます。こうした接遇の基本は、患者との信頼関係を築き、医療安全や満足度を高める土台となるため、実習の段階から身につけておくことが大切です。

解答・解説

正解はeです

本問は、医師に求められる接遇(患者や家族への応対のマナー)とプロフェッショナリズムを問う問題である。医学知識そのものではなく、社会人としての常識と、患者中心の姿勢にもとづいて判断すればよい。 考え方の軸は次の3つである。 ・プライバシーへの配慮:病院内では患者の個人情報に触れる会話が多いため、話す場所や声の大きさに注意する。 ・患者への敬意と安心感:患者を優先し、威圧感を与えない態度をとり、話し合いの場では患者を置き去りにしない。 ・言葉遣い:敬語の使い分け、とくに「ウチ(自分の側)」と「ソト(相手の側)」の区別を正しく行う。 問われているのは「適切でないもの」である点に注意する。a~dはいずれも患者に配慮した適切な振舞いであり、eだけが敬語の使い方を誤っている。

選択肢考察

  1. ×a.  院内PHSで話すときは,周囲に十分配慮して話す。

    適切な振舞いである。院内PHSでの通話には、患者の氏名や病状、検査結果など個人情報が含まれることが多い。廊下やエレベーター、待合室など他の患者や面会者がいる場所で大きな声で話すと、守秘義務や個人情報保護の観点から問題になるうえ、周囲の患者に不快感や不安を与えかねない。通話する場所を選び、声の大きさや話す内容に配慮するのは当然である。

  2. ×b.  面談室で患者に病状説明した後は,患者より後に退室する。

    適切な振舞いである。病状説明の後、患者は動揺していたり、聞き漏らした点を尋ねたかったりすることが多い。医師が先に部屋を出ると、患者は取り残されたように感じ、質問する機会も失われる。患者が席を立つまで待ち、最後に質問がないかを確かめてから見送るのが望ましい。医療面接でも、患者を部屋に残して医師が先に立ち去ることはしないのが基本である。

  3. ×c.  患者と話をするときは,できるだけ目線の高さを同じにする。

    適切な振舞いである。ベッドに横になっている患者や座っている患者に対して医師が立ったまま見下ろして話すと、患者は威圧感を覚え、話しにくくなる。椅子に座る、腰をかがめるなどして目線の高さをそろえることで、対等で話しやすい雰囲気が生まれ、患者は不安や疑問を打ち明けやすくなる。こうした非言語的コミュニケーション(視線、姿勢、表情、距離など)は、良好な医師患者関係を築くうえで重要である。

  4. ×d.  エレベーターを使用するときは,緊急時以外は患者を優先する。

    適切な振舞いである。病院のエレベーターは、車椅子やストレッチャーで移動する患者、歩行が不自由な患者、点滴をつけた患者などが利用する。緊急の対応が必要な場合を除き、患者を優先して乗降させるのが医療者としての基本的なマナーである。一方、急変した患者のもとへ向かうなど緊急時には、医療者が優先して利用することもありうる。

  5. ○e.  上司が外出中であることを患者に伝える場合は「○○先生は外出しておられます」と言う。

    適切でない振舞いであり、これが正解である。敬語では、外部の人(ここでは患者)に対して話すとき、自分の所属する組織の人(身内)は、たとえ上司や院長であっても「ウチ」の人として扱い、尊敬語を使わない。「先生」という敬称を付け、「おられます」という尊敬表現を用いた「○○先生は外出しておられます」は、身内を患者より高める言い方になり誤りである。正しくは、敬称を付けずに謙譲語・丁寧語を用いて「○○は外出しております」「○○はただいま外出しております」などと伝える。これは企業などで社外の人に自社の上司の不在を伝える場合と同じ原則である。

敬語の基本(3分類)

・尊敬語:相手や第三者の動作を高めて敬意を示す(例:いらっしゃる、おっしゃる、おられる、ご覧になる) ・謙譲語:自分や身内の動作をへりくだって表現し、相手を立てる(例:参る、申す、伺う、おる〈「~しております」〉) ・丁寧語:「です」「ます」「ございます」など、聞き手に対して丁寧に述べる

ウチとソトの区別

外部の人に対して話すときは、自分の組織の人は上司であっても「ウチ」として扱い、敬称(先生・部長など)を付けず、尊敬語を使わない。 ・誤:「○○先生は外出しておられます」「○○部長はいらっしゃいません」 ・正:「○○は外出しております」「○○は席を外しております」 一方、院内の職員同士で話す場合は、上司に対して尊敬語を用いる。

医療者に求められる接遇の例

・身だしなみを清潔に保ち、名札を着用し、初対面では自己紹介をする ・患者をフルネームで確認し、「さん」付けで呼ぶ ・廊下・エレベーター・食堂などの公共の場では、患者の個人情報に関する会話を控える ・説明は専門用語を避けてわかりやすく行い、理解を確認し、質問の機会を設ける ・目線の高さ、うなずき、視線などの非言語的コミュニケーションに気を配る

POINT

・医師の振舞いは「患者への敬意」「プライバシーへの配慮」「正しい言葉遣い」で判断する ・患者に対して身内(上司・同僚)のことを話すときは尊敬語を使わず、敬称も付けない:「○○は外出しております」 ・院内PHSの通話やエレベーター内などでは周囲の患者への配慮と守秘義務を意識する ・病状説明後は患者を置き去りにせず、患者より先に退室しない ・目線の高さを合わせて、威圧感を与えずに話す

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。