「針を刺す深さ」が危険度を決める―皮膚テストとアナフィラキシーの関係
第105回医師国家試験 I問題 第20問
国試問題にチャレンジ
アナフィラキシーを誘発する頻度が最も高いのはどれか。
- a.針反応
- b.皮内テスト
- c.パッチテスト
- d.プリックテスト
- e.スクラッチテスト
対話形式の解説
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ドクターまとめ
皮膚テストのうち、アナフィラキシーを誘発する危険性が最も高いのは、アレルゲンを真皮内へ直接注入する皮内テストです。スクラッチテストやプリックテストも同じくⅠ型(即時型)アレルギーを15〜20分後の膨疹・紅斑で判定しますが、表皮にごく微量を入れるだけなので安全性が高く、特にプリックテストは再現性にも優れた第一選択です。パッチテストはⅣ型(遅延型)アレルギーを48時間貼付で調べる接触皮膚炎の検査で、針反応はBehçet病でみられる皮膚の過敏性を確かめる検査であり、どちらもアナフィラキシーとはほぼ無関係です。実際の検査では、安全な方法から段階的に進め、抗ヒスタミン薬の休薬、陽性・陰性対照の設置、アドレナリンなど救急処置の準備を徹底します。「どの型を見ているか」「抗原がどれだけ入るか」で皮膚テストを整理すると、検査の選び方と安全管理の両方が理解しやすくなります。
解答・解説
正解はbです
皮膚を用いた各種検査の原理と、アナフィラキシーを誘発する危険性を問う問題である。 アナフィラキシーは、IgE抗体を介するⅠ型(即時型)アレルギー反応などにより、皮膚・呼吸器・循環器・消化器など複数の臓器に急速に症状が出現する重篤な全身反応である。原因物質(アレルゲン)が体内に入る量が多く、入り方が確実であるほど、全身性の反応を誘発しやすい。 皮膚でアレルゲンを調べる検査は、大きく次の2つに分けて整理するとわかりやすい。 ・即時型(Ⅰ型)アレルギーを調べる検査:スクラッチテスト、プリックテスト、皮内テスト。アレルゲンを皮膚に入れ、15~20分後の膨疹(みみず腫れ状のふくらみ)と紅斑を判定する。 ・遅延型(Ⅳ型)アレルギーを調べる検査:パッチテスト。接触皮膚炎の原因検索に用い、48時間以降に判定する。 即時型の検査のうち、アレルゲンが体内に入る量は、スクラッチテスト・プリックテスト(表皮に浅い傷をつけてごく微量を浸透させる)より、皮内テスト(注射針で真皮内に一定量を直接注入する)の方がはるかに多い。そのため感度は高いが、アナフィラキシーなどの全身反応を誘発する危険性も最も高い。よって正解は皮内テストである。 実際の臨床では、重篤なアレルギーの既往がある患者ほど、危険性の低い検査から段階的に行う(健常皮膚にアレルゲンを載せるだけのオープンテスト→スクラッチテスト・プリックテスト→必要な場合に限り希釈した抗原による皮内テスト)。
選択肢考察
- ×a. 針反応
誤り。針反応(パテルギー反応)はBehçet病の診断の参考となる検査で、滅菌した注射針で前腕の皮膚を穿刺し(生理食塩水を少量皮内注射する方法もある)、24~48時間後に穿刺部位に紅斑を伴う丘疹や無菌性の膿疱が生じれば陽性とする。これは好中球の機能亢進による皮膚の過敏性をみるもので、アレルゲンを投与する検査ではない。したがってアナフィラキシーを誘発することは基本的にない。Behçet病では採血部位の化膿様変化として日常診療でも気づかれることがある。
- ○b. 皮内テスト
正しい。皮内テストは、希釈したアレルゲン液(通常0.02mL程度)を注射針で真皮内に直接注入し、15~20分後に膨疹と紅斑の大きさを陰性対照(生理食塩水)と比較して判定する即時型アレルギーの検査である。アレルゲンが確実かつ比較的多量に体内へ入るため感度は高いが、偽陽性が多く、またアナフィラキシーなどの全身反応を誘発する危険性が皮膚テストの中で最も高い。このため、プリックテストなどで陰性だった場合に限って行う、濃度の薄い液から始める、救急処置(アドレナリン筋注など)の準備をしたうえで実施する、といった配慮が必要である。
- ×c. パッチテスト
誤り。パッチテストは、アレルギー性接触皮膚炎の原因物質を特定するための検査で、疑われる物質を適切な濃度で絆創膏様の器具に載せて背部などの皮膚に48時間貼付し、除去後(48時間、72時間または96時間、1週間後など)に紅斑・丘疹・小水疱などの反応を判定する。調べているのはT細胞を介するⅣ型(遅延型)アレルギーであり、アレルゲンは健常な皮膚の表面に置かれるだけで体内への吸収も少ない。したがってIgEを介するアナフィラキシーを誘発する頻度は極めて低い。
- ×d. プリックテスト
誤り。プリックテストは即時型アレルギーの原因検索に用いる検査で、前腕屈側などの皮膚にアレルゲン液を1滴置き、その上から専用の針(プリック針)や注射針で皮膚を出血しない程度に浅く刺して、表皮にごく微量の抗原を入れる。15~20分後に膨疹と紅斑の径を陽性対照(ヒスタミン)・陰性対照(生理食塩水)と比べて判定する。原理は皮内テストと同じⅠ型反応の検出であるが、入る抗原量がはるかに少ないため全身反応の危険性は低く、安全性と再現性に優れることから、皮膚テストの第一選択として広く用いられる。食物アレルギーでは、果物や野菜そのものを刺した針で皮膚を刺すprick-to-prick testも行われる。
- ×e. スクラッチテスト
誤り。スクラッチテスト(掻破試験)も即時型アレルギーの原因検索に用いる検査で、前腕屈側などの皮膚を注射針などで出血しない程度に数mm線状に軽くひっかき、その部位にアレルゲン液を滴下して、15~20分後に膨疹・紅斑で判定する。表皮の浅い傷から微量の抗原を浸透させるだけなので、皮内テストに比べて全身反応の危険性は低い。ただし、傷のつけ方によって入る抗原量がばらつきやすく、再現性はプリックテストに劣る。
皮膚テストの整理
・オープンテスト:健常皮膚にアレルゲンを載せる(塗る)だけ。最も安全。Ⅰ型の即時反応をみる場合は15~20分後に判定。 ・スクラッチテスト:皮膚を浅くひっかいて抗原を滴下。Ⅰ型。15~20分後判定。 ・プリックテスト:抗原液の上から浅く刺す。Ⅰ型。15~20分後判定。安全性と再現性に優れ第一選択。 ・皮内テスト:抗原を真皮内に注入。Ⅰ型。15~20分後判定。感度が高いが偽陽性が多く、全身反応の危険性が最も高い。 ・パッチテスト:48時間貼付。Ⅳ型。48時間後以降に判定。接触皮膚炎の原因検索。 ※入る抗原量(=全身反応の危険性)はおおむね「オープン<スクラッチ・プリック<皮内」の順。
皮膚テスト実施上の注意
・抗ヒスタミン薬はⅠ型の皮膚反応を抑えて偽陰性の原因となるため、検査前に一定期間休薬する。 ・陽性対照(ヒスタミン)と陰性対照(生理食塩水)を必ず同時に置いて判定する。 ・アナフィラキシーに備え、アドレナリン(0.01mg/kg、成人で最大0.5mgを大腿前外側に筋注)や酸素、輸液などの救急処置を準備する。
アナフィラキシーの主な原因
食物(鶏卵、牛乳、小麦、ソバ、ピーナッツ、甲殻類など)、薬剤(抗菌薬、造影剤、NSAIDs、筋弛緩薬など)、ハチ毒、ラテックスなど。なお、抗菌薬投与前にルーチンで行われていた皮内反応はアナフィラキシーの予知に有用でないとされ、現在は推奨されていない。
POINT
・皮膚テストで最もアナフィラキシーを誘発しやすいのは皮内テスト(抗原を真皮内に直接注入するため)。 ・Ⅰ型(即時型)の検索:スクラッチ・プリック・皮内テスト(15~20分後判定)。重症既往者では安全な検査から段階的に行う。 ・Ⅳ型(遅延型)の検索:パッチテスト(48時間貼付、接触皮膚炎の原因検索)。 ・針反応はBehçet病の診断の参考となる皮膚の過敏性の検査で、アレルゲン検索ではない。
