StudyMed医師国家試験

糖を飲むと沈黙するホルモン―ブドウ糖負荷で抑えられる成長ホルモンと先端巨大症の診断

第105回医師国家試験 G問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第105回 G問題 第3問

ブドウ糖負荷によって血中濃度が影響を受けるのはどれか。

  1. a.プロラクチン
  2. b.成長ホルモン
  3. c.甲状腺刺激ホルモン
  4. d.ノルアドレナリン
  5. e.プロゲステロン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ブドウ糖を負荷して血糖が上がったときに、血中濃度がはっきり変わるホルモンを選ぶ問題だ。ポイントは「血糖に反応して分泌が調節されるホルモンはどれか」という視点。血糖を下げるホルモンと上げるホルモンに分けて考えると整理しやすいよ。
医学生医学生
血糖を下げるのはインスリンだけですよね。上げる側はグルカゴン、コルチゾール、カテコールアミン、成長ホルモンあたりでしょうか。
ドクタードクター
よく覚えているね。血糖を上げる方向に働くものはインスリン拮抗ホルモンとまとめて呼ばれる。これらは低血糖で分泌が高まり、逆に高血糖では抑えられる傾向がある。その中で、ブドウ糖負荷による抑制が臨床検査として確立しているのはどれかな。
医学生医学生
内分泌の講義で、先端巨大症の診断に75gOGTTを使うと習いました。成長ホルモンですか。
ドクタードクター
正解。健常者に75gのブドウ糖を飲ませると、血中の成長ホルモンは低値まで抑えられる。高血糖で視床下部からのソマトスタチン分泌が増えることが主な機序と考えられている。ところが先端巨大症ではGH産生下垂体腺腫が自律的にGHを分泌するから、ブドウ糖を負荷しても十分に下がらない。むしろ逆に上がる例もある。
医学生医学生
腫瘍が勝手に出しているから、血糖の信号を無視するということですね。
ドクタードクター
そういうこと。では他の選択肢も見ていこう。プロラクチンはどうだろう。
医学生医学生
プロラクチンも下垂体前葉ホルモンなので、もしかしたら一緒に動くかもと迷いました。
ドクタードクター
迷うのは無理もない。でもプロラクチンは、視床下部からのドパミンで常に抑えられているのが特徴だ。増えるのは授乳時の乳頭刺激、妊娠、ストレス、TRH、それにスルピリドやメトクロプラミドのようなドパミン拮抗薬。インスリン低血糖試験では低血糖ストレスで上がるけれど、高血糖で意味のある変化は起こさない。
医学生医学生
甲状腺刺激ホルモンは、TRHと甲状腺ホルモンのフィードバックで調節されているので、血糖は関係なさそうです。
ドクタードクター
その理解でいい。TSHはTRHで促され、T3・T4の負のフィードバックで抑えられる。ブドウ糖負荷の影響は受けない。ノルアドレナリンはどう考える?
医学生医学生
カテコールアミンもインスリン拮抗ホルモンですよね。それなら高血糖で下がるのでは、と思ってしまいます。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。確かに低血糖では急速に上昇する。ただ、主な調節は寒冷・運動・精神的ストレス・循環血液量減少といった交感神経の緊張で、ブドウ糖負荷で診断上意味のある変化を示すわけではないし、負荷試験で評価する対象でもない。だから本問では選ばない。プロゲステロンは主に排卵後の黄体から、妊娠中は胎盤から出る性ステロイドで、LHやhCGの影響を受け、月経周期や妊娠で変動する。血糖とは無関係だ。
医学生医学生
成長ホルモンの過剰をみるときは抑制試験、ということは、不足をみるときは逆に刺激試験ですか。
ドクタードクター
その通り。過剰を疑えば抑えてみる、不足を疑えば刺激してみる、が負荷試験の基本だ。GH分泌不全症ではインスリン低血糖試験、アルギニン負荷、グルカゴン負荷、GHRP-2負荷などで分泌が十分に出るかを確かめる。インスリン低血糖試験は、低血糖でGHが上がる性質をそのまま使っているわけだね。
医学生医学生
臨床実習の内分泌内科で、先端巨大症の患者さんはIGF-Iも測っていました。
ドクタードクター
大事なポイントだよ。GHは脈動的に分泌されるし、睡眠や運動、ストレスでも上がるから、1回の採血値では判断しにくい。そこで、GHの作用で肝臓から作られ血中濃度が安定しているIGF-Iの高値と、OGTTでGHが抑制されないことを組み合わせて診断する。現行の国内基準ではGH底値が0.4ng/mL未満まで下がらなければ抑制されないと判定する。さらに先端巨大症では、健常者では反応しないTRHやLHRHの負荷でGHが上がる奇異反応がみられることもある。
医学生医学生
ブドウ糖で下がるはずのものが下がらない、反応しないはずの刺激で上がる、という異常の出方で腫瘍の自律性を見抜くんですね。
ドクタードクター
その通り。ホルモンの正常な調節を知っていれば、その破綻として病気の検査が理解できる。それと、先端巨大症ではGHのインスリン拮抗作用で耐糖能異常や糖尿病を合併しやすいことも、臨床では見逃さないようにしよう。

まとめ

血糖を上げるインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン、成長ホルモン、コルチゾール、カテコールアミン)は低血糖で分泌が高まり、高血糖では抑えられる傾向があり、なかでも成長ホルモンはブドウ糖負荷で明確に抑制されます。この性質を利用した75gOGTTによるGH抑制試験では、健常者ではGHが低値まで下がるのに対し、自律的にGHを分泌する先端巨大症では抑制されず、IGF-I高値と組み合わせて診断に用います。プロラクチンはドパミンによる抑制、TSHは甲状腺ホルモンによるフィードバック、ノルアドレナリンは交感神経活動、プロゲステロンはLHやhCGが主な調節因子で、ブドウ糖負荷では意味のある変化を示しません。「過剰を疑えば抑制試験、不足を疑えば刺激試験」という負荷試験の原則とあわせて理解すると、内分泌疾患の検査全体を体系的に整理できます。

解答・解説

正解はbです

本問は、ブドウ糖を投与して血糖値を上げたときに、分泌が明確に変化するホルモンはどれかを問う問題である。 血糖値の変化に敏感に反応するホルモンは、大きく二つに分けて考えると整理しやすい。一つは血糖を下げるインスリンで、高血糖で分泌が増える。もう一つは血糖を上げる方向に働く「インスリン拮抗ホルモン(counter-regulatory hormone)」で、グルカゴン、成長ホルモン(growth hormone:GH)、コルチゾール、カテコールアミンなどがこれに当たる。これらは低血糖で分泌が高まり、逆に高血糖では抑えられる傾向がある。 なかでも成長ホルモンは、高血糖によって分泌がはっきり抑制されることが臨床検査に応用されている。視床下部からのソマトスタチン(GH分泌抑制ホルモン)の分泌が高血糖で増えることが、主な機序と考えられている。この性質を利用するのが75g経口ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test:OGTT)によるGH抑制試験で、先端巨大症(GH産生下垂体腺腫)の診断に用いられる。 したがって、選択肢の中で「ブドウ糖負荷で血中濃度が変わる」ものとして検査上の意義が確立しているのは成長ホルモンである。他の選択肢は、それぞれ別の因子(ドパミン、甲状腺ホルモン、交感神経活動、LHなど)で主に調節されており、ブドウ糖負荷で意味のある変化は示さない。

選択肢考察

  1. ×a.  プロラクチン

    プロラクチン(PRL)は下垂体前葉から分泌され、視床下部から放出されるドパミンによって常に抑えられている(抑制性調節が主体)。分泌を増やす要因は、授乳時の乳頭刺激、妊娠(エストロゲン増加)、ストレス、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、ドパミン拮抗作用をもつ薬剤(スルピリド、メトクロプラミドなど)である。ブドウ糖負荷で血中濃度が変化することはなく、誤りである。なお、インスリン低血糖試験では低血糖ストレスによりPRLが上昇するが、これは高血糖ではなく低血糖による反応である。

  2. ○b.  成長ホルモン

    成長ホルモンはインスリン拮抗ホルモンの一つで、低血糖で分泌が促され、高血糖では抑えられる。健常者に75gのブドウ糖を経口負荷すると、血中GHは低値まで抑制される。一方、先端巨大症では腫瘍がGHを自律的に分泌するため、ブドウ糖を負荷しても十分に抑制されない(むしろ逆説的に上昇する例もある)。この違いが先端巨大症の診断に使われており、ブドウ糖負荷で血中濃度が影響を受けるホルモンとして正しい。

  3. ×c.  甲状腺刺激ホルモン

    甲状腺刺激ホルモン(TSH)は視床下部のTRHで分泌が促され、甲状腺ホルモン(T3、T4)による負のフィードバックで抑えられる。ドパミンやソマトスタチンも抑制的に働く。血糖値によって分泌が変わることはなく、ブドウ糖負荷の影響は受けないため誤りである。

  4. ×d.  ノルアドレナリン

    ノルアドレナリンは主に交感神経終末と副腎髄質から放出されるカテコールアミンで、寒冷、運動、精神的ストレス、出血や脱水などの循環血液量減少、飢餓などの交感神経緊張で増加する。カテコールアミンもインスリン拮抗ホルモンに含まれ、低血糖では急速に上昇するが、ブドウ糖負荷(高血糖)で血中濃度が診断上意味のある変化を示すことはなく、ブドウ糖負荷試験で評価する対象でもない。したがって誤りである。

  5. ×e.  プロゲステロン

    プロゲステロンは主に排卵後の黄体(妊娠中は胎盤)から分泌される性ステロイドホルモンである。黄体形成ホルモン(LH)の刺激で黄体から分泌され、妊娠初期にはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が黄体を維持して分泌が続く。月経周期や妊娠に応じて変動し、血糖値による調節は受けないため誤りである。

血糖を上げるホルモン(インスリン拮抗ホルモン)

・グルカゴン:膵α細胞から分泌。肝でのグリコーゲン分解と糖新生を促す。低血糖で即座に分泌が増え、高血糖で抑制される。 ・カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン):グリコーゲン分解を促し、インスリン分泌を抑える。 ・成長ホルモン:末梢組織でインスリンの作用を弱め、脂肪分解を促進する。高血糖で抑えられ、低血糖で分泌が高まる。 ・コルチゾール:糖新生を促進し、インスリン抵抗性を高める。

GHの分泌調節

促進因子:GHRH(成長ホルモン放出ホルモン)、グレリン、低血糖、アルギニンなどのアミノ酸、睡眠(特に入眠後の深い睡眠)、運動、ストレス。 抑制因子:ソマトスタチン、高血糖、遊離脂肪酸の増加、IGF-I(インスリン様成長因子I)による負のフィードバック、肥満、グルココルチコイド過剰。

GH分泌を調べる負荷試験

・抑制試験(過剰を疑うとき):75g OGTT。先端巨大症・下垂体性巨人症の診断に用いる。現行の国内診断基準では、GHの底値が0.4 ng/mL未満に抑制されなければ「抑制されない」と判定する(かつては1 ng/mL未満を目安としていた)。 ・刺激試験(不足を疑うとき):インスリン低血糖試験、アルギニン負荷試験、グルカゴン負荷試験、GHRP-2(成長ホルモン放出ペプチド)負荷試験など。成長ホルモン分泌不全症の診断に用いる。

先端巨大症の検査の考え方

GHは脈動的に分泌され、1回の採血値だけでは過剰かどうか判断しにくい。そのため、GHの作用で肝臓から産生され血中濃度が安定しているIGF-Iの高値と、OGTTでGHが抑制されないことを組み合わせて診断する。先端巨大症では、TRH負荷やLHRH負荷に対してGHが反応する(健常者では反応しない)という奇異反応がみられることもある。

POINT

・ブドウ糖負荷(高血糖)で血中濃度が抑制されるホルモンの代表は成長ホルモンである。 ・75g OGTTでGHが抑制されないことは、先端巨大症の診断に用いられる。 ・GH過剰の診断には抑制試験(OGTT)、GH不足の診断には刺激試験(インスリン低血糖、アルギニン、グルカゴン、GHRP-2など)を用いる。 ・プロラクチンはドパミンによる抑制、TSHは甲状腺ホルモンによるフィードバックが主な調節であり、血糖の影響は受けない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。