StudyMed医師国家試験

がん検診の「スタート年齢」―なぜ子宮頸がんだけが20歳から始まるのか

第105回医師国家試験 G問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第105回 G問題 第2問

一般住民において最も若い年齢でがん検診を受けるべきなのはどれか。

  1. a.肺癌
  2. b.胃癌
  3. c.乳癌
  4. d.大腸癌
  5. e.子宮頸癌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、市町村が住民に向けて行うがん検診の対象年齢を問う問題だ。着眼点は「その癌がどの年代から増えてくるのか」。検診の開始年齢は、癌の好発年齢と原因をふまえて決められているんだ。
医学生医学生
がん検診って、だいたいみんな40歳からというイメージがあります。
ドクタードクター
多くはそうだね。わが国では厚生労働省の指針に基づいて、胃・肺・大腸・乳房・子宮頸部の5つのがん検診が対策型検診として行われている。対策型というのは、集団全体の死亡率を下げることを目的に、有効性が科学的に確かめられた方法を公費で行う検診のことだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、人間ドックみたいに個人で受けるものは任意型検診と習いました。
ドクタードクター
その区別が大切だよ。では、それぞれの対象年齢を確認していこう。まず肺がん検診は?
医学生医学生
40歳以上で年1回、胸部X線でしたっけ。喫煙者だと喀痰細胞診も追加されると覚えています。
ドクタードクター
正確だね。50歳以上で喫煙指数600以上の重喫煙者には喀痰細胞診を併用する。大腸がん検診も40歳以上で年1回、免疫法の便潜血検査2日法だ。陽性なら全大腸内視鏡で精査する。
医学生医学生
胃がんも40歳からですか?若い人のスキルス胃癌の話を消化器内科の実習で聞いて、もっと若いのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。胃がん検診は現在、原則50歳以上で2年に1回、胃X線か胃内視鏡を行う。胃X線は当分の間40歳以上・年1回も可とされている。若年のスキルス胃癌は確かにあるけれど、集団として見れば胃癌は中高年に多いから、検診の対象も中高年なんだ。
医学生医学生
乳がんはどうでしょう。昔は30歳から視触診をしていたと聞いたことがあります。
ドクタードクター
それは旧来の方式だね。今の指針では視触診は推奨されず、40歳以上の女性に2年に1回マンモグラフィを行う。ここまでの4つはいずれも40歳以上、胃は原則50歳以上が対象だ。
医学生医学生
となると、残る子宮頸がんが一番若いわけですね。20歳からでしたか。
ドクタードクター
正解。子宮頸がん検診は20歳以上の女性が対象で、2年に1回、問診・視診・子宮頸部細胞診などを行う。5つの中で最も若い年齢から始まるんだ。なぜだと思う?
医学生医学生
HPVが原因だからですか。産婦人科の講義で、性交渉で感染するウイルスと習いました。
ドクタードクター
その通り。高リスク型HPV、特に16型や18型の持続感染が原因で、多くの感染は自然に排除されるけれど、一部が持続感染して子宮頸部上皮内腫瘍、つまりCIN1から3の異形成を経て、数年以上かけて浸潤癌に進む。若いうちに感染しうるから20歳代後半から30歳代で発症が増え、若年化も指摘されている。
医学生医学生
前癌病変の段階で見つけられるから、若いうちから検診する意味が大きいんですね。
ドクタードクター
まさにそこが検診の価値だ。CINの段階で見つけて治療すれば、癌への進行を防げる。だから子宮頸癌の対策は、一次予防のHPVワクチンと、二次予防の検診の2本立てになっている。ワクチンは小学校6年から高校1年相当の女子が定期接種の対象だね。
医学生医学生
最近は検査方法も変わったと聞きました。
ドクタードクター
2024年の指針改正で、30〜60歳では5年に1回のHPV検査単独法も、体制が整った市町村で選べるようになった。それと、検診には偽陽性や過剰診断、偶発症といった不利益もあることを忘れないでほしい。だから利益が不利益を上回る年齢と方法が選ばれていて、若ければ若いほどよいというものではないんだ。
医学生医学生
年齢の根拠を「その癌が増える時期」と「利益と不利益のバランス」で考えれば、丸暗記しなくても整理できそうです。

まとめ

わが国の対策型がん検診は胃・肺・大腸・乳房・子宮頸部の5つで、対象年齢は肺・大腸・乳がんが40歳以上、胃がんが原則50歳以上(胃X線は40歳以上も可)、子宮頸がんが20歳以上の女性です。子宮頸癌は高リスク型HPVの持続感染を原因とし、CINという前癌病変を経て進行するうえ若年女性にも発症するため、5つの中で最も若い年齢から検診が勧められます。予防はHPVワクチンによる一次予防と細胞診などの検診による二次予防の2本立てで、2024年からは30〜60歳でHPV検査単独法も選択可能になりました。検診の開始年齢は癌の好発年齢と利益・不利益のバランスで決まるという考え方を押さえると、受診間隔も含めて体系的に理解でき、住民への受診勧奨にも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

【テーマ】市町村が住民を対象に行う対策型がん検診の対象年齢 わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づき、市町村が胃・肺・大腸・乳房・子宮頸部の5つのがん検診を実施している。この指針は、死亡率を減らす効果が科学的に確かめられた方法について、対象年齢・検査方法・受診間隔を定めている。 対象年齢は、その癌の発生が増え始める年齢を目安に決められている。胃癌・肺癌・大腸癌・乳癌は中高年で増える癌であり、検診は40歳以上(胃癌は原則50歳以上)が対象である。これに対し子宮頸癌は、主に性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因で、20歳代後半から30歳代にかけて発症が増える。若年期に感染し、前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)を経て癌に進むため、20歳以上の女性が検診の対象となっており、5つのがん検診の中で最も若い年齢から受けるべきものである。

選択肢考察

  1. ×a.  肺癌

    肺がん検診の対象は40歳以上で、年1回、問診と胸部X線検査を行う。50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の重喫煙者には喀痰細胞診を併用する。子宮頸がん検診(20歳以上)より対象年齢が高い。

  2. ×b.  胃癌

    胃がん検診の対象は原則として50歳以上で、2年に1回、胃X線検査または胃内視鏡検査を行う(胃X線検査は当分の間40歳以上に年1回の実施も可とされている)。スキルス胃癌のように若い世代にみられる胃癌もあるが、検診の対象は中高年であり、最も若い年齢から受ける検診ではない。

  3. ×c.  乳癌

    乳がん検診の対象は40歳以上の女性で、2年に1回、問診とマンモグラフィ(乳房X線検査)を行う。かつては30歳以上を対象に視触診を中心とした検診が行われていたが、現在の指針では視触診は推奨されず、対象は40歳以上とされている。子宮頸がん検診より対象年齢が高い。

  4. ×d.  大腸癌

    大腸がん検診の対象は40歳以上で、年1回、問診と便潜血検査(免疫法、2日法)を行う。陽性者には精密検査として全大腸内視鏡検査を行う。子宮頸がん検診より対象年齢が高い。

  5. ○e.  子宮頸癌

    子宮頸がん検診の対象は20歳以上の女性で、2年に1回、問診・視診・子宮頸部の細胞診(および内診)を行う。子宮頸癌は高リスク型HPVの持続感染が原因で、初交年齢の低下に伴い若年化が進み、20〜30歳代の女性でも発症が少なくない。前癌病変の段階で見つけて治療すれば癌への進行を防げるため、5つのがん検診の中で最も若い20歳から受診が勧められている。

対策型がん検診(厚生労働省の指針による)

・胃がん:50歳以上、2年に1回、胃X線検査または胃内視鏡検査(胃X線検査は当分の間40歳以上に年1回実施も可) ・肺がん:40歳以上、年1回、胸部X線検査(50歳以上の重喫煙者は喀痰細胞診を併用) ・大腸がん:40歳以上、年1回、便潜血検査(免疫法) ・乳がん:40歳以上の女性、2年に1回、マンモグラフィ ・子宮頸がん:20歳以上の女性、2年に1回、子宮頸部細胞診。2024年の指針改正により、30〜60歳では5年に1回のHPV検査単独法も選択できるようになった(実施体制が整った市町村で導入)。

子宮頸癌とHPV

子宮頸癌の大部分は高リスク型HPV(特に16型、18型)の持続感染によって起こる。HPVは性交渉で感染するありふれたウイルスで、多くは自然に排除されるが、一部で持続感染が起こり、軽度から高度の異形成(CIN1〜3)を経て数年以上かけて浸潤癌に至る。予防は、一次予防としてのHPVワクチン接種(わが国では小学校6年〜高校1年相当の女子が定期接種の対象)と、二次予防としての検診による早期発見の2本立てである。

がん検診の考え方

対策型検診は集団全体の死亡率を減らすことを目的とし、有効性が科学的に確認された方法を公費で行う。これに対し、人間ドックなど個人の判断で受ける検診は任意型検診とよばれる。検診には偽陽性・過剰診断・偶発症などの不利益もあるため、利益が不利益を上回る年齢と方法が選ばれている。

POINT

・対策型がん検診の対象年齢:子宮頸がん20歳以上、肺・大腸・乳がん40歳以上、胃がん50歳以上(胃X線は40歳以上も可)。 ・受診間隔:肺・大腸は年1回、胃・乳・子宮頸は2年に1回。 ・子宮頸癌はHPV持続感染が原因で若年女性にも多く、最も若い年齢から検診を受ける。 ・乳がん検診はマンモグラフィが基本で、視触診は推奨されない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。