むくんだ幼児の9割は「微小変化」―小児ネフローゼ症候群は組織型から全部つながる
第104回医師国家試験 I問題 第37問
国試問題にチャレンジ
小児の特発性ネフローゼ症候群について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.5歳までに好発する。
- b.組織病型は巣状分節状糸球体硬化症が多い。
- c.第一選択薬は副腎皮質ステロイドである。
- d.約9割が再発する。
- e.成人まで持ち越す。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
小児の特発性ネフローゼ症候群は2~6歳ごろの幼児期、特に男児に好発し、組織型の約8割は光顕でほぼ正常、電顕で足突起の消失を示す微小変化型です。微小変化型はステロイド感受性が高いため、小児では初発時に腎生検を行わず副腎皮質ステロイドで治療を開始し、8~9割が寛解に至ります。巣状分節性糸球体硬化症は少数派でステロイド抵抗性・腎予後不良となりやすく、抵抗例で腎生検が行われます。再発は多いものの「約9割」は過大で、成人まで持ち越すのは1~2割程度にとどまり、多くは成長とともに再発しなくなります。「小児では微小変化型が多数派」という骨格から年齢・治療・予後を導く考え方は、成人例との違いや頻回再発例の管理、血栓症や感染症などの合併症対応を理解する土台になります。
解答・解説
正解はa, cです
ネフローゼ症候群は、糸球体からの大量の蛋白尿により低アルブミン血症をきたし、浮腫や脂質異常症を伴う症候群である。全身性疾患(ループス腎炎、紫斑病性腎炎など)や感染・薬剤に続発しないものを特発性(一次性)と呼び、小児のネフローゼ症候群の約90%は特発性である。 小児の特発性ネフローゼ症候群を理解する鍵は「組織型の大部分が微小変化型(微小変化群)である」という点にある。ここから次の特徴が導かれる。 ・発症年齢:幼児期(2~6歳ごろ)に好発し、男児に多い。 ・治療反応性:微小変化型はステロイドによく反応するため、第一選択は副腎皮質ステロイドであり、約80~90%が寛解に至る(ステロイド感受性)。 ・経過:寛解後の再発は多いが、腎機能は長期的に保たれることがほとんどで、多くは成長とともに再発しなくなる。 一方で、巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)はステロイド抵抗性を示すことが多く、腎予後が不良である。小児では少数派であり、ステロイドが効かない例で腎生検により見いだされることが多い。 このように「多数派=微小変化型=ステロイド感受性で予後良好」という骨格を押さえておけば、好発年齢・組織型・治療・再発率・長期予後の各選択肢の正誤を判断できる。
選択肢考察
- ○a. 5歳までに好発する。
正しい。小児特発性ネフローゼ症候群は2~6歳ごろの幼児期に発症のピークがあり、5歳以下の発症が多数を占める。男女比はおよそ2:1で男児に多い。年長児(特に思春期)の発症例では、微小変化型以外の組織型(FSGSや膜性増殖性糸球体腎炎など)や二次性の可能性が相対的に高くなるため、腎生検を考慮する根拠となる。
- ×b. 組織病型は巣状分節状糸球体硬化症が多い。
誤り。小児特発性ネフローゼ症候群の組織型は約80%が微小変化型であり、FSGSは約10%前後と少数である。微小変化型は光学顕微鏡ではほぼ正常な糸球体で、電子顕微鏡で足細胞(ポドサイト)の足突起の消失(癒合)がみられるのが特徴である。FSGSは一部の糸球体の一部分に硬化病変を認め、ステロイド抵抗性を示すことが多く、長期的には末期腎不全に進行しうる。なお、当初微小変化型と判断された例が、治療抵抗性となって再生検でFSGSと判明することもある。
- ○c. 第一選択薬は副腎皮質ステロイドである。
正しい。多数を占める微小変化型はステロイドに非常によく反応するため、初発時は腎生検を行わずにプレドニゾロン(経口)による治療を開始するのが原則である。約80~90%が数週以内に尿蛋白陰性化(寛解)に至る。ステロイド感受性かどうかは予後を最もよく反映する指標であり、ステロイド抵抗性の場合には腎生検で組織型を確認し、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンなど)を中心とした治療に移行する。
- ×d. 約9割が再発する。
誤り。再発しやすいことは本症の大きな特徴であるが、「約9割」は過大である。報告により幅があるものの、再発をきたすのは概ね半数前後から多くても7~8割程度とされ、再発を繰り返す頻回再発型やステロイド依存性となるのはさらにその一部である。頻回再発型・ステロイド依存性の例では、ステロイドの副作用(成長障害、肥満、骨粗鬆症、白内障など)を避けるため、シクロスポリン、シクロホスファミド、リツキシマブなどの免疫抑制療法が用いられる。
- ×e. 成人まで持ち越す。
誤り。多くの症例は成長とともに再発しなくなり、成人期まで再発が続く(キャリーオーバー)のは約10~20%程度にとどまる。したがって「成人まで持ち越す」と一般化するのは誤りである。ただし、頻回再発型や小児期に再発を繰り返した例では成人期まで持ち越すリスクが高く、長期のフォローアップが必要になる。
ネフローゼ症候群の診断基準(小児)
高度蛋白尿(夜間蓄尿で40 mg/時/m2以上、または早朝尿で尿蛋白/クレアチニン比2.0 g/gCr以上)と、低アルブミン血症(血清アルブミン2.5 g/dL以下)を満たすものをネフローゼ症候群とする。浮腫や脂質異常症(高LDLコレステロール血症)は診断の必須条件ではないが、高頻度に伴う。
ステロイド反応性による分類(小児)
・ステロイド感受性:ステロイド連日投与開始後4週以内に寛解するもの。 ・ステロイド抵抗性:4週以上の連日投与でも寛解しないもの。 ・頻回再発型:初回寛解後6か月以内に2回以上、または任意の12か月以内に4回以上再発するもの。 ・ステロイド依存性:ステロイド減量中または中止後14日以内に2回連続して再発するもの。
合併症
低アルブミン血症による循環血漿量減少、凝固因子の変化(アンチトロンビンの尿中喪失、フィブリノゲン増加)による血栓症、免疫グロブリンの尿中喪失による感染症(特に肺炎球菌による腹膜炎など)、急性腎障害などに注意が必要である。
成人との違い
成人の一次性ネフローゼ症候群では、微小変化型に加え膜性腎症が多く(特に中高年)、FSGSや膜性増殖性糸球体腎炎も含め組織型が多彩である。そのため成人では原則として腎生検で組織型を確認してから治療方針を決める。
POINT
・小児特発性ネフローゼ症候群は2~6歳に好発し、男児に多い。 ・組織型の約80%は微小変化型。FSGSは少数で、ステロイド抵抗性・腎予後不良。 ・第一選択は副腎皮質ステロイドで、約80~90%が寛解する(初発時は腎生検なしで治療開始)。 ・再発は多いが「約9割」ではない。頻回再発型・ステロイド依存性には免疫抑制薬を用いる。 ・成人まで持ち越すのは約10~20%で、多くは成長とともに治癒する。
