7か月の赤ちゃんは「消える反射」より「現れる反射」で診る―原始反射から姿勢反射へのバトンタッチ
第103回医師国家試験 H問題 第10問
国試問題にチャレンジ
7か月乳児の発達評価に有用なのはどれか。
- a.深部反射
- b.病的反射
- c.表在反射
- d.原始反射
- e.姿勢反射
対話形式の解説
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ドクターまとめ
乳児の神経発達は、脊髄・脳幹に中枢をもつ原始反射が上位中枢の成熟とともに消えていき、それと入れ替わるように姿勢反射(姿勢反応)が出現するという流れで進みます。Moro反射や非対称性緊張性頸反射は4〜6か月ごろに消失し、Landau反射は6か月ごろ、前方パラシュート反射は6〜9か月ごろに出現するため、7か月児の発達評価には姿勢反射の確認が最も有用です。深部反射・表在反射は神経障害の局在診断に用いるもので月齢とともに変化する指標ではなく、Babinski反射は1〜2歳ごろまで陽性でも正常とされます。パラシュート反射は終生持続し、1歳前後でも出ない場合や左右差がある場合は異常を疑います。「消えるべき反射」と「現れるべき反射」の両面から月齢を読む視点は、乳児健診や脳性麻痺の早期発見に直結する基本です。
解答・解説
正解はeです
乳児の神経学的な発達を評価するときに、どの反射(反応)に注目するかを問う問題である。
乳児の反射の発達の流れ
新生児期には、脊髄や脳幹に反射中枢をもつ原始反射(Moro反射、把握反射、非対称性緊張性頸反射など)が優位である。脳の成熟(大脳皮質・中脳レベルの統御の発達)に伴い、原始反射は生後2〜6か月ごろから順に抑制されて消えていき、代わって、体の姿勢を保ったり、倒れそうなときに身を守ったりする姿勢反射(姿勢反応)が出現してくる。姿勢反射には、立ち直り反応、Landau反射、パラシュート反射、平衡反応(傾斜反応など)がある。姿勢反射の出現は、寝返り・お座り・つかまり立ちといった粗大運動の獲得の土台となる。
7か月という時期の意味
7か月児ではMoro反射や非対称性緊張性頸反射などの主な原始反射はすでに消失しているのが正常であり、この時期はむしろ姿勢反射が次々に出現してくる段階である。Landau反射はおおむね生後6か月ごろ、前方パラシュート反射は生後6〜9か月ごろに出現してくる。したがって、7か月児の発達を評価するには「年齢相応の姿勢反射が出現しているか」を確認することが最も有用である。 発達評価に使われるのは、発達の段階に応じて出現・消失する反射であり、成人と同様の意味で評価する深部反射・表在反射や、中枢神経障害を示す病的反射は、発達の指標としては中心的ではない。
選択肢考察
- ×a. 深部反射
深部反射(腱反射)は、打腱器で腱を叩いて筋を急に伸ばしたときの筋収縮をみる反射で、膝蓋腱反射やアキレス腱反射などがある。亢進は上位運動ニューロン障害、低下・消失は下位運動ニューロン・末梢神経・筋の障害を示唆し、左右差や経時的変化が重要である。神経障害の有無や局在を調べるには有用だが、月齢によって出現・消失する性質のものではないため、発達段階の評価には向かない。
- ×b. 病的反射
病的反射は、錐体路(大脳皮質運動野から脊髄へ下行する皮質脊髄路)の障害で現れる反射で、Babinski反射が代表である。乳児では錐体路の髄鞘化が未完成なため、Babinski反射は1〜2歳ごろまでは陽性でも正常範囲とされる。したがって7か月児で陽性でも異常とはいえず、発達の評価に用いる指標としては適切でない。
- ×c. 表在反射
表在反射は、皮膚や粘膜への刺激で起こる反射で、腹壁反射(腹部の皮膚をこすると腹筋が収縮する)や挙睾筋反射(大腿内側をこすると精巣が挙上する)、角膜反射などがある。錐体路障害や脊髄の髄節レベルの評価に使われるが、乳児ではもともと出にくいことも多く、月齢に沿った発達の評価には用いない。
- ×d. 原始反射
原始反射は脊髄・脳幹に中枢をもち、胎生期から出現して、脳の成熟とともに生後数か月で消失していく反射である。消失時期の目安は、手掌把握反射が生後3〜4か月ごろ、Moro反射と非対称性緊張性頸反射が4〜6か月ごろ、足底把握反射が9〜10か月ごろである。出るべき時期に出ない、左右差がある、消えるべき時期を過ぎても残存する、といった場合には中枢神経の異常(脳性麻痺など)を疑う手がかりとなる。しかし7か月児では主な原始反射はすでに消失しているのが正常であり、この月齢の発達を積極的に評価する指標としては、新たに出現してくる姿勢反射のほうが適している。
- ○e. 姿勢反射
姿勢反射(姿勢反応)は、体の位置や傾きの変化に対して姿勢を立て直し、身を守る反応で、原始反射が消えていくのと入れ替わるように乳児期中期以降に出現する。Landau反射(腹臥位で水平に抱き上げると頭・体幹・下肢を伸展する)は生後6か月ごろから、前方パラシュート反射(抱いた乳児を急に前方へ傾けると両上肢を伸ばし手を開いて体を支えようとする)は生後6〜9か月ごろから出現する。7か月児はまさにこれらが出そろってくる時期であり、出現の有無や左右差を確認することで運動発達の評価ができる。パラシュート反射は一度出現すると終生持続し、1歳前後になっても出ない場合や左右差がある場合は異常を疑う。
主な原始反射と消失時期(目安)
・探索反射・吸啜反射:生後4〜6か月ごろ ・手掌把握反射:生後3〜4か月ごろ ・Moro反射:生後4〜6か月ごろ ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):生後4〜6か月ごろ ・足底把握反射:生後9〜10か月ごろ(独り立ちの前後) ・Babinski反射:1〜2歳ごろまでは陽性でも正常
主な姿勢反射(姿勢反応)と出現時期(目安)
・立ち直り反応(頸・体の立ち直り、迷路性立ち直りなど):生後数か月から順次 ・Landau反射:生後6か月ごろ出現し、2歳前後で目立たなくなる ・パラシュート反射:前方が生後6〜9か月ごろ、側方・後方はそれに続いて出現し、終生持続 ・平衡反応(傾斜反応など):生後6か月以降に座位、立位と順に獲得
7か月前後の発達の目安
・粗大運動:寝返りができる、支えなしのお座りが可能になり始める ・微細運動:物を手のひら全体でつかみ、一方の手から他方へ持ち替える ・社会性:人見知りが始まる ・その他:顔に掛けた布を手で取り払う
発達評価における反射の考え方
乳児の神経発達は「原始反射の消失」と「姿勢反射の出現」が表裏一体で進む。原始反射の残存と姿勢反射の出現遅延は、ともに脳性麻痺など中枢神経障害の早期発見の手がかりとなる。
POINT
・乳児では原始反射が消えるのと入れ替わりに姿勢反射が出現する。 ・7か月児では主な原始反射は消失しているのが正常で、発達評価には姿勢反射(Landau反射、パラシュート反射など)が有用。 ・Babinski反射は1〜2歳ごろまで陽性でも正常。 ・パラシュート反射は一度出現すると終生持続する。
