StudyMed医師国家試験

学校健診に腹囲と血圧がない理由―子どもの健康診断は「何を見逃したくないか」で決まる

第103回医師国家試験 E問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第36問

学校保健法で定められている健康診断の項目はどれか。3つ選べ。

  1. a.腹囲
  2. b.血圧
  3. c.検尿
  4. d.視力
  5. e.心電図

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、学校で行う児童生徒の定期健康診断の項目を問う問題だ。丸暗記で挑むより、「成長期の子どもで、見逃すと学業や生活に支障が出る異常」「突然死につながりうる異常」を拾い上げるための項目が選ばれている、という視点で考えるとわかりやすい。まず、自分が受けてきた学校健診を思い出してみようか。
医学生医学生
身長・体重、視力、聴力、それから毎年朝に尿を持っていった記憶があります。心電図は毎年ではなかったような……。
ドクタードクター
よく覚えているね。その記憶はかなり正確なんだ。前提として、学校の健康診断は出題当時は学校保健法、2009年以降は名前を変えた学校保健安全法とその施行規則に基づいて行われている。では一つずつ見ていこう。まず視力はどうかな。
医学生医学生
黒板の字が見えないと授業についていけないので、学習に直結しますよね。
ドクタードクター
その通り。視力検査は幼稚園から高校まで毎年行われる。近視などの屈折異常や弱視を早く見つけて、眼科受診や眼鏡による矯正につなげるのが目的だ。学校ではA〜Dの区分で判定する方法が一般的だね。次に検尿の意味は?
医学生医学生
腎臓の講義で、IgA腎症は検尿異常で偶然見つかることが多いと習いました。それを拾うためでしょうか。
ドクタードクター
まさにそれ。尿蛋白・尿潜血・尿糖を試験紙で調べて、自覚症状に乏しい慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群、さらに小児の2型糖尿病などを早期に見つける。日本の学校検尿は、小児腎疾患の早期発見に大きく貢献してきた仕組みなんだ。幼稚園から高校まで毎年行う。
医学生医学生
心電図は、毎年ではないけれど学校健診の項目に入っている、ということですか。
ドクタードクター
そう。心臓の検診として、小学校・中学校・高校の各1年生で心電図検査を行う。狙いは突然死の予防だ。肥大型心筋症、QT延長症候群、WPW症候群、Brugada症候群などは、ふだんは無症状でも運動中の失神や突然死の原因になりうる。
医学生医学生
循環器内科の実習で、部活中に倒れた高校生の話を聞きました。心電図で事前に拾えれば、運動制限で防げることもあるんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。異常があれば精密検査を行い、学校生活管理指導表を使って運動の可否や程度を学校と共有する。では残りの腹囲と血圧。こちらはなぜ入っていないと思う?
医学生医学生
メタボ健診で測る項目なので……でも、小児肥満も問題になっているし、測ってもいい気がします。
ドクタードクター
その疑問はもっともだね。ただ、腹囲は内臓脂肪型肥満の指標で、メタボリックシンドロームの診断や中高年対象の特定健康診査で使われるもの。児童生徒では身長・体重から栄養状態や肥満を評価していて、腹囲測定は定められていない。血圧も、小児では本態性高血圧の頻度が低いため全員に測る規定の項目にはなっていない。もちろん心疾患や腎疾患が疑われれば個別に測ることはある。
医学生医学生
つまり、生活習慣病のスクリーニングは大人向け、子どもは成長期特有の異常を拾う、という役割分担ですね。
ドクタードクター
いいまとめだ。ひとつ引っかけに注意してほしいのが、学校の健康診断には児童生徒向けのほかに職員の健康診断もあること。教職員の健診は労働安全衛生法の一般健康診断に準じていて、腹囲や血圧、血液検査、心電図などが含まれる。「学校の健診に腹囲がある」と覚えてしまうと混乱するから、対象を必ず確認しよう。
医学生医学生
他にも児童生徒の項目で覚えておくべきものはありますか。CBTの勉強で座高が出てきた気がするんですが。
ドクタードクター
鋭いね。座高測定と寄生虫卵検査は、2016年度からの施行規則改正で必須項目から外れた。代わりに四肢の状態、つまり運動器の検診が加わっている。ほかにも脊柱・胸郭の異常として側弯症のチェック、聴力、歯科、耳鼻咽喉や皮膚の診察、結核の有無などがある。結核は小・中学校では問診が中心で、高校・大学の1年生では胸部X線検査を行う。
医学生医学生
古い問題集だと座高が入っているかもしれないので、改正の時期も意識して読みます。
ドクタードクター
それが大事だね。学校医として健診に関わる機会は、どの診療科に進んでも意外と多い。項目の背景にある目的を理解していれば、異常を見つけたときにどこへつなぐべきかも自然に判断できるよ。

まとめ

学校保健安全法(出題当時は学校保健法)に基づく児童生徒の定期健康診断は、成長期の子どもに特有で見逃すと学業や生活に影響する異常や、突然死につながる心疾患の早期発見を目的としています。視力と尿検査は幼稚園から高校まで毎年行われ、近視・弱視、無症候性の糸球体腎炎やネフローゼ症候群、小児糖尿病を拾い上げます。心電図は小・中・高の各1年生で実施され、肥大型心筋症やQT延長症候群、WPW症候群などを見つけて運動管理につなげます。腹囲や血圧は特定健診や職員の健康診断の項目であり、児童生徒の必須項目ではありません。2016年度から座高・寄生虫卵検査が削除され運動器検診が加わった変遷も含め、各項目の目的とともに理解しておくと、学校医としての実務にも役立ちます。

解答・解説

正解はc, d, eです

学校で行う児童生徒の定期健康診断の検査項目を問う問題である。学校の健康診断は、出題当時は学校保健法、2009年の改正以降は学校保健安全法とその施行規則に基づいて行われている。 考え方のポイントは、「成長期の子どもに特有の、見逃すと学業や生活に支障が出る異常」あるいは「突然死につながりうる異常」を早期に拾い上げる項目が選ばれている、という点である。視力低下(近視など)は学習に直結し、尿検査は無症状の腎炎・ネフローゼなどの腎疾患や糖尿病を、心電図は運動中の突然死の原因となりうる心筋症・QT延長症候群・Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群などの不整脈を見つける目的で行われる。 一方、腹囲や血圧は内臓脂肪型肥満や高血圧といった生活習慣病のスクリーニング指標であり、中高年を対象とする特定健康診査(メタボ健診)や職員の健康診断では重要だが、児童生徒の定期健康診断の必須項目には含まれていない。この区別がつけば、自分が受けてきた学校健診を思い出すことでも正答できる。

選択肢考察

  1. ×a.  腹囲

    腹囲は内臓脂肪蓄積の指標であり、メタボリックシンドロームの診断や特定健康診査で測定される項目である。児童生徒の定期健康診断では身長・体重などで栄養状態や肥満を評価するが、腹囲測定は定められていない。なお、学校の教職員を対象とする職員の健康診断には腹囲が含まれており、児童生徒の健診と混同しないよう注意する。

  2. ×b.  血圧

    血圧測定は高血圧のスクリーニングとして成人の健診では基本項目であるが、小児では本態性高血圧の頻度が低く、児童生徒の定期健康診断の必須項目にはなっていない。職員の健康診断には血圧測定が含まれる。心疾患や腎疾患の疑いがある場合に個別に測定されることはあるが、全員に行う規定の項目ではない。

  3. ○c.  検尿

    尿検査は幼稚園から高等学校まで毎年実施される項目である。試験紙法で尿蛋白・尿潜血・尿糖などを調べ、自覚症状の乏しい慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)やネフローゼ症候群、糖尿病(特に小児2型糖尿病)を早期に発見することを目的とする。日本の学校検尿は小児腎疾患の早期発見に大きく貢献してきた。

  4. ○d.  視力

    視力検査は幼稚園から高等学校まで毎年行われる。近視をはじめとする屈折異常や弱視は、学習(黒板の文字が見えにくいなど)や日常生活に直接影響するため、早期に発見して眼科受診や矯正につなげることが目的である。学校では通常、裸眼視力(眼鏡使用者は矯正視力も)をA〜Dの区分で判定する方法が用いられる。

  5. ○e.  心電図

    心臓の検診として、小学校・中学校・高等学校の各1年生(入学時の学年)に心電図検査が行われる。肥大型心筋症、QT延長症候群、WPW症候群、Brugada症候群などは運動中の失神や突然死の原因となりうるが、無症状のことが多い。心電図でこれらを拾い上げ、精密検査と学校生活管理指導表による運動制限の指導につなげることが目的である。

学校で行われる健康診断の種類

学校保健安全法(旧学校保健法)に基づく健康診断には、次の3つがある。 ・就学時の健康診断:小学校入学前に市町村の教育委員会が実施する。 ・児童生徒等の健康診断:毎学年定期(6月30日まで)に行うものと、感染症の流行時などに必要に応じて行う臨時のものがある。学校医・学校歯科医が関与する。 ・職員の健康診断:学校の設置者が教職員に対して行う。

児童生徒の定期健康診断の主な項目

・身長、体重、栄養状態 ・脊柱・胸郭の疾病や異常の有無(側弯症の発見など)、四肢の状態 ・視力、聴力 ・眼の疾病・異常の有無 ・耳鼻咽喉疾患、皮膚疾患の有無 ・歯および口腔の疾病・異常の有無 ・結核の有無(小・中学校は問診を中心とし必要に応じて精密検査、高校・大学の1年生は胸部X線検査) ・心臓の疾病・異常の有無(臨床医学的検査、心電図は小・中・高の1年生) ・尿(幼稚園〜高校で毎年) ・その他の疾病・異常の有無

制度の変遷

2009年に学校保健法は学校保健安全法に改称された。さらに2016年度からの施行規則改正で、座高の測定と寄生虫卵検査が必須項目から削除され、運動器(四肢の状態)の検査が加えられた。古い資料では座高や寄生虫卵検査が項目に挙がっていることがあるが、現在は必須ではない。

職員の健康診断との違い

職員の健康診断は労働安全衛生法の一般健康診断に準じた内容であり、腹囲、血圧、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図などが含まれる。腹囲や血圧が「学校の健診」に含まれるのはこちらである。

POINT

・児童生徒の定期健康診断で毎年行う:視力、尿検査(幼稚園〜高校)など。 ・心電図は小・中・高の各1年生で実施し、突然死の原因となる心疾患を拾い上げる。 ・腹囲・血圧は児童生徒の必須項目ではない(職員の健康診断や特定健診の項目)。 ・学校保健法は2009年に学校保健安全法へ改称。2016年度から座高・寄生虫卵検査は必須項目から削除された。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。