「いつ・何で」見るかが勝負―出生前診断の時期と方法を整理する
第103回医師国家試験 E問題 第35問
国試問題にチャレンジ
先天異常の診断を行う妊娠時期と方法の組合せで正しいのはどれか。
- a.10週 ―― 羊水穿刺
- b.12週 ―― MRI
- c.14週 ―― 胎児血採取
- d.20週 ―― 超音波検査
- e.30週 ―― 絨毛採取
対話形式の解説
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ドクターまとめ
出生前診断の検査には実施に適した時期があり、侵襲的検査は絨毛採取(10〜14週ごろ)、羊水穿刺(15〜18週ごろ)、胎児血採取(18〜20週以降)の順に時期が遅くなります。胎児の形態異常のスクリーニングには、主要臓器を系統的に観察できる妊娠20週前後の超音波検査が適しており、28〜30週前後にも再評価が勧められます。胎児MRIは超音波で異常が疑われた際の精査として主に妊娠中期後半以降に用いられ、妊娠初期には原則行いません。NIPTや母体血清マーカーは非確定的検査であり、陽性時は確定的検査で確認し、全過程で遺伝カウンセリングと自己決定の尊重が求められます。各検査の時期を胎児や胎盤の発育と結びつけて理解することは、妊婦健診や出生前診断の説明を適切に行う土台となります。
解答・解説
正解はdです
本問は、出生前診断(胎児の先天異常を妊娠中に調べること)の各検査法が、妊娠何週ごろに行われるかを問う問題である。
検査の分類
出生前診断の方法は、胎児の形を見る「画像検査」(超音波検査、MRI)と、胎児由来の細胞・DNAを得て染色体や遺伝子を調べる「遺伝学的検査」に大別される。後者には、子宮内に針を入れて検体を採取する侵襲的検査(絨毛採取、羊水穿刺、胎児血採取)と、母体の採血のみで行う非侵襲的検査(母体血胎児染色体検査〈NIPT〉、母体血清マーカー)がある。
実施時期の目安
・絨毛採取:妊娠10〜14週ごろ(早い時期) ・羊水穿刺:妊娠15〜18週ごろ(15週以降) ・胎児血採取:妊娠18〜20週以降 ・超音波による胎児形態スクリーニング:妊娠18〜20週前後と28〜30週前後 ・胎児MRI:超音波で異常が疑われた場合の精査として、主に妊娠中期後半以降
考え方
侵襲的検査は、胎盤・羊水・胎児の大きさなどの条件から実施可能な時期が決まっており、「絨毛→羊水→胎児血」の順に時期が遅くなると覚えるとよい。画像検査は、胎児の臓器が十分に発達し形が判別できる時期に行う。妊娠20週前後は胎児の主要な臓器の形態がほぼ観察可能となり、羊水も適度にあるため、超音波で形態異常を系統的にスクリーニングするのに適した時期である。
選択肢考察
- ×a. 10週 ―― 羊水穿刺
誤り。羊水穿刺(羊水検査)は、経腹的に子宮内へ針を刺して羊水を採取し、羊水中の胎児由来細胞を培養して染色体などを調べる検査で、通常妊娠15〜18週ごろ(15週以降)に行う。妊娠10週では羊水量が少なく、羊膜と絨毛膜が癒合しておらず穿刺が困難である。15週未満で行う早期羊水穿刺は、流産や内反足の増加が報告されており推奨されない。妊娠15週以降の羊水穿刺でも、流産などの合併症は低頻度ながら(おおむね0.3%程度)起こりうる。
- ×b. 12週 ―― MRI
誤り。妊娠12週の胎児は頭殿長(CRL)が約5〜6cmと小さく、MRIで臓器の形態を詳細に評価することは難しい。また、器官形成期に近い妊娠初期は胎児へのMRIの安全性が十分に確立されておらず、臨床上の必要性が高い場合を除いて避けられる。胎児MRIは、超音波検査で中枢神経系の異常や胸腹部の腫瘤などが疑われたときの精査として、主に妊娠中期後半(20週前後)以降に行われる。なお、ガドリニウム造影剤は胎児への移行があるため原則として用いない。
- ×c. 14週 ―― 胎児血採取
誤り。胎児血採取(臍帯穿刺)は、超音波ガイド下に臍帯静脈を穿刺して胎児の血液を得る検査で、臍帯がある程度太くなる妊娠18〜20週以降に行う。胎児の血液型不適合妊娠による胎児貧血の評価・胎児輸血、胎児感染症や血液疾患の診断、迅速な染色体検査などに用いられる。妊娠14週では臍帯が細く技術的に困難で、流産や胎児死亡のリスクが高い。侵襲的検査の中では合併症の頻度が最も高く、実施施設は限られる。
- ○d. 20週 ―― 超音波検査
正しい。妊娠20週前後は胎児の心臓(四腔断面や大血管)、脳、顔面、脊椎、腹壁、腎、四肢などの形態を系統的に観察できるようになる時期であり、胎児の形態異常のスクリーニングとして超音波検査が行われる。胎児に対する侵襲がなく、繰り返し施行できるのも利点である。妊娠後期(30週前後)にも、遅れて明らかになる異常(水頭症、消化管閉鎖など)や胎児発育の評価のために再度スクリーニングを行うことが勧められている。
- ×e. 30週 ―― 絨毛採取
誤り。絨毛採取(絨毛検査)は、経腹的または経腟(経頸管)的に胎盤の元となる絨毛組織を採取し、染色体などを調べる検査で、妊娠10〜14週ごろという早い時期に行う。羊水穿刺より早く結果が得られる利点があるが、流産リスクは羊水穿刺よりやや高く、絨毛のみに染色体異常がある胎盤限局性モザイクによって胎児の核型と結果が食い違う場合がある。妊娠10週未満の施行は胎児の四肢欠損との関連が報告されている。妊娠30週では絨毛採取は行われない。
出生前診断の主な検査と時期
非侵襲的検査(確定診断ではなく非確定的検査) ・超音波検査:妊娠11〜13週の胎児後頸部透亮像(NT)計測、18〜20週前後・28〜30週前後の形態スクリーニング ・母体血胎児染色体検査(NIPT):妊娠10週以降。母体血中の胎児由来DNA断片を解析し、21・18・13トリソミーの可能性を調べる ・母体血清マーカー検査(クアトロテストなど):妊娠15〜18週ごろ。21・18トリソミーや開放性神経管欠損症の確率を推定する 侵襲的検査(確定的検査。流産などのリスクを伴う) ・絨毛採取:妊娠10〜14週ごろ ・羊水穿刺:妊娠15〜18週ごろ ・胎児血採取:妊娠18〜20週以降
臨床上の注意
・非確定的検査で陽性(高リスク)となった場合は、羊水検査などの確定的検査で確認する。 ・出生前診断は、実施前後に十分な遺伝カウンセリングを行い、妊婦とパートナーの自己決定を尊重して行う必要がある。 ・胎児MRIは超音波の補助的精査として位置づけられ、中枢神経系異常や先天性横隔膜ヘルニア、胸腹部腫瘤などの評価に有用である。
POINT
・侵襲的検査の時期は「絨毛採取(10〜14週)→羊水穿刺(15〜18週)→胎児血採取(18〜20週以降)」の順に遅くなる。 ・超音波による胎児形態異常のスクリーニングは妊娠20週前後(と30週前後)に行う。 ・胎児MRIは超音波で異常が疑われた場合の精査で、主に妊娠中期後半以降。妊娠初期には原則として行わない。 ・NIPT・母体血清マーカー・超音波は非確定的検査、絨毛・羊水・胎児血は確定的検査。
