届出先はどこ?―保健所長・都道府県知事・警察署を法律で仕分ける医師の届出義務
第103回医師国家試験 E問題 第37問
国試問題にチャレンジ
診断後,医師が保健所長に届け出なければならないのはどれか。3つ選べ。
- a.梅毒
- b.がん
- c.肺結核
- d.食中毒
- e.麻薬中毒
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
医師の届出義務は、根拠となる法律・届出先・期限の3点をセットで整理すると混乱しません。感染症法の対象である結核(2類)は直ちに、梅毒(5類全数把握)は7日以内に、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ届け出ます。梅毒は無症状病原体保有者も届出対象です。食品衛生法に基づく食中毒は直ちに保健所長へ届け出、電話でも構いません。一方、麻薬中毒者の届出先は都道府県知事、がん登録推進法による届出は医療機関から都道府県知事へ、異状死体は24時間以内に所轄警察署へと、届出先がそれぞれ異なります。届出は感染拡大や被害の防止に直結する医師の重要な責務であり、国家試験だけでなく日常診療でも欠かせない知識です。
解答・解説
正解はa, c, dです
医師に課されている届出義務について、根拠となる法律と届出先を正しく結び付けられるかを問う問題である。 届出を整理するときは「どの法律に基づくか」「届出先はどこか」「期限はいつか」の3点をセットで覚えるとよい。 ・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)の届出:最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ届け出る。医師が実際に届出書を提出する窓口は保健所長である。 ・食品衛生法の食中毒の届出:最寄りの保健所長へ直ちに届け出る。 ・麻薬及び向精神薬取締法の麻薬中毒者の届出:保健所長ではなく、患者の居住地の都道府県知事へ届け出る。 ・がん登録等の推進に関する法律(がん登録推進法)による届出:病院などの医療機関が都道府県知事へ届け出るもので、医師個人が保健所長に届け出るものではない。 したがって、診断後に医師が保健所長(あるいは保健所長を経由)に届け出るのは、感染症法の対象となる梅毒と肺結核、食品衛生法の対象となる食中毒である。
選択肢考察
- ○a. 梅毒
梅毒は感染症法の5類感染症のうち全数把握対象疾患である。診断した医師は7日以内に、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出る。症状のある患者だけでなく、無症候梅毒(無症状病原体保有者)も届出の対象となる点が特徴である(5類で無症状病原体保有者も届出対象となるのは、梅毒と後天性免疫不全症候群(AIDS)のHIV感染者などに限られる)。近年は国内の報告数が大きく増加しており、届出データは流行の把握に活用されている。
- ×b. がん
がんは感染症ではないため感染症法の届出対象ではなく、保健所長への届出義務はない。出題当時はがんの届出を義務づける法律はなかったが、2016年1月に施行されたがん登録推進法により、病院(および都道府県知事が指定した診療所)はがんと診断した患者の情報を都道府県知事に届け出ることが義務づけられた(全国がん登録)。これは医療機関の義務で届出先は都道府県知事であり、医師が保健所長に届け出るものではない点で本問の条件に当てはまらない。
- ○c. 肺結核
結核は感染症法の2類感染症である。診断した医師は直ちに、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。結核は旧結核予防法で扱われていたが、2007年に同法が廃止され感染症法に統合された。届出を受けた保健所は、接触者健診による感染拡大の防止や、服薬を確実に継続させるための直接服薬確認療法(DOTS)の支援などを行う。
- ○d. 食中毒
食品衛生法により、食品・添加物・器具・容器包装に起因する中毒の患者またはその疑いのある者を診断し、あるいはその死体を検案した医師は、直ちに最寄りの保健所長に届け出なければならない。届出の方法は文書に限らず、電話や口頭でもよい。保健所は届出を受けて原因食品や施設の調査を行い、被害の拡大を防ぐ。ノロウイルスや腸管出血性大腸菌など感染症法の対象病原体による場合は、感染症法の届出も併せて必要になることがある。
- ×e. 麻薬中毒
麻薬及び向精神薬取締法により、麻薬中毒者(モルヒネ、ヘロイン、コカインなどに加え、あへんや大麻の中毒者も含む)と診断した医師は、速やかにその者の居住地の都道府県知事に届け出る義務がある。届出先は法律上都道府県知事であり、保健所長ではないため本問の答えには含まれない。なお、覚醒剤の中毒者については、麻薬のような医師の届出義務は法律上定められていない。
感染症法による届出の整理
・1〜4類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症:診断後直ちに届出。 ・5類感染症のうち全数把握対象疾患:原則として診断後7日以内に届出(麻疹・風疹・侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに)。 ・5類感染症のうち定点把握対象疾患:指定届出機関(定点医療機関)が週単位または月単位で報告する。 ・届出経路はいずれも、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ。知事から厚生労働大臣へ報告される。
その他の主な医師の届出
・食中毒(食品衛生法):直ちに保健所長へ。 ・麻薬中毒者(麻薬及び向精神薬取締法):速やかに都道府県知事へ。 ・異状死体(医師法第21条):死体を検案して異状があると認めたとき、24時間以内に所轄警察署へ。 ・出生・死亡:届出義務者は原則として家族などであり、医師は出生証明書・死亡診断書(死体検案書)を作成する。 ・がん(がん登録推進法):病院・指定診療所が都道府県知事へ。
麻薬と向精神薬
麻薬にはモルヒネ、コデイン、フェンタニル、ヘロイン、コカイン、LSD、MDMAなどが含まれ、向精神薬にはジアゼパム、ニトラゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬などが含まれる。
POINT
・保健所長(経由)への届出:感染症法(1〜5類の全数把握)と食品衛生法の食中毒。 ・結核(2類)は直ちに、梅毒(5類全数把握)は7日以内。梅毒は無症状病原体保有者も届出対象。 ・麻薬中毒者の届出先は都道府県知事。 ・がんはがん登録推進法(2016年施行)で病院などが都道府県知事へ届け出る。 ・異状死体は24時間以内に所轄警察署へ。
