StudyMed医師国家試験

8か月の赤ちゃんに「残る反射」「現れる反射」―原始反射と姿勢反応の時間軸

第102回医師国家試験 G問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第102回 G問題 第11問

8か月児に認められる反射はどれか。

  1. a.背反射
  2. b.Moro反射
  3. c.手掌把握反射
  4. d.パラシュート反射
  5. e.非対称性緊張性頸反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳児の反射の問題だ。ポイントは、反射を「原始反射」と「姿勢反応」の2つのグループに分けて、それぞれがいつ出ていつ消えるかという時間軸で整理すること。8か月という月齢が、そのどちらの時期に当たるかを考えてみよう。
医学生医学生
反射といえばMoro反射が真っ先に浮かびますけど、8か月だとさすがにもう消えていますよね。
ドクタードクター
その通り。そもそも原始反射とはどういうものか、説明できるかな。
医学生医学生
小児科の講義では、脳幹や脊髄レベルで起こる反射で、大脳が成熟すると抑制されて消える、と習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。新生児期には上位中枢がまだ未熟なので、脳幹・脊髄レベルの反射がむき出しで見える。大脳皮質などが成熟して随意運動が育ってくると、それらは抑え込まれて、生後数か月のうちに消えていくんだ。だからMoro反射は通常4か月頃、遅くとも6か月頃までには見られなくなる。
医学生医学生
手掌把握反射も原始反射ですよね。8か月の子でも物はぎゅっと握れる気がして、少し迷いました。
ドクタードクター
そこは大事な引っかけだね。8か月児が物を握るのは、反射ではなく自分の意思でつかむ随意運動なんだ。手のひらに指を入れると反射的に握りしめる手掌把握反射は、3~4か月頃から弱まって6か月頃までに消え、随意的なつかみ動作に置き換わる。反射が消えたあとに随意運動が育つ、という関係だ。
医学生医学生
非対称性緊張性頸反射は、顔を向けた側の手足が伸びるフェンシングのような姿勢でしたね。
ドクタードクター
そう。これも原始反射で、4~6か月頃までに消える。首の向きに手足が引っ張られたままでは寝返りや正中での手遊びがしにくいから、消えることが運動発達の前提になるんだ。背反射、つまりGalant反射も、腹臥位で脊柱の脇をこすると刺激側に体幹が曲がる原始反射で、2~4か月頃には消える。
医学生医学生
となると、残るのはパラシュート反射ですね。これは原始反射ではないんですか。
ドクタードクター
そこが核心。パラシュート反射は姿勢反応の一つで、保護伸展反応とも呼ぶ。体を支えて空中に持ち上げ、頭から急に落とすようにすると、両腕を前に伸ばして手を開き、体を支えようとする。新生児にはなく、6~7か月頃から出始め、9~10か月頃にはほぼ全員で見られ、その後は生涯続くんだ。
医学生医学生
原始反射は「最初からあって消えていく」、姿勢反応は「途中から現れて一生残る」という逆向きの関係なんですね。
ドクタードクター
まさにそう。だから8か月児で認められるのはパラシュート反射が正解だ。転んだときに手をつくのも、大人になっても残るこの反応の延長だと思えばイメージしやすい。
医学生医学生
OSCEの小児診察の練習では、反射は見るだけで終わっていましたが、臨床ではどう使うんですか。
ドクタードクター
乳幼児健診で、発達の遅れや神経の異常を拾う手がかりになる。原始反射が消えるべき時期を過ぎても残っている、左右差がある、あるいは姿勢反応の出現が遅れている、といった場合は脳性麻痺などの中枢神経障害を疑うきっかけになる。Moro反射の左右差なら、分娩時の腕神経叢麻痺や鎖骨骨折も考える。
医学生医学生
パラシュート反射の左右差なら、片麻痺を疑うということですか。
ドクタードクター
そう、片側だけ手が出ないなら片麻痺の可能性を考えて詳しく評価する。もう一つ覚えておきたいのは、原始反射の中でも足底把握反射は遅くまで残り、9~10か月頃まで見られること。つかまり立ちや歩行の準備と関連していると言われる。ほかにLandau反射という姿勢反応も5~6か月頃に出て2歳前後で消えるなど、例外的な動きをするものもあるから、主要な反射の出現と消失の時期は表にして整理しておくといい。なお、消失時期は文献によって幅があるから、数字は目安として覚えておこう。
医学生医学生
反射を時間軸で並べると、発達のマイルストーンと一緒に覚えられそうです。

まとめ

乳児の反射は、新生児期から存在して生後数か月で消える原始反射と、乳児期の途中から現れて生涯持続する姿勢反応に分けて理解します。Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射、背反射(Galant反射)は原始反射で、いずれも生後6か月頃までには消失するため、8か月児ではみられません。一方、パラシュート反射(保護伸展反応)は姿勢反応で、生後6~7か月頃に出現し9~10か月頃にはほぼ全員で認められるため、8か月児で認められる反射に当たります。なお、足底把握反射は例外的に9~10か月頃まで残ります。原始反射の残存や左右差、姿勢反応の出現遅延は脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う手がかりとなるため、各反射の出現・消失時期を押さえることは乳幼児健診での発達評価の基礎になります。

解答・解説

正解はdです

乳児の反射は、大きく「原始反射」と「姿勢反応(立ち直り反応・平衡反応・保護伸展反応など)」の二群に分けて理解する。 原始反射は、脳幹や脊髄のレベルで統合される反射で、新生児期から認められ、大脳皮質などの上位中枢が成熟して随意運動が発達するにつれて抑制され、生後数か月のうちに消失していく。Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射、背反射(Galant反射)、吸啜反射、探索反射(rooting reflex)などがこれに当たる。 一方、姿勢反応は中脳や大脳皮質レベルの成熟に伴って乳児期の途中から出現し、多くは生涯にわたって持続する。パラシュート反射(保護伸展反応)はその代表で、生後6~7か月頃から出現しはじめ、9~10か月頃までにはほぼ全員で認められる。 したがって、8か月児では原始反射の多くがすでに消失している一方、パラシュート反射が出現している時期にあたる。各反射の「出現時期」と「消失時期」を押さえておくことが解答の鍵である。

選択肢考察

  1. ×a.  背反射

    背反射(Galant反射)は、児を腹臥位で支え、脊柱の外側の皮膚を上から下へこすると、刺激した側へ体幹が弯曲する原始反射である。新生児期から認められ、生後2~4か月頃までに消失するため、8か月児ではみられない。

  2. ×b.  Moro反射

    Moro反射は、仰臥位の児の頭部を検者の手で少し(30°程度)持ち上げてから急に支えを外すと、両上肢を外転・伸展して手指を開き(第1相)、続いて上肢を内転・屈曲して抱きつくような動きをする(第2相)原始反射である。通常は生後4か月頃までに消失し、遅くとも6か月頃にはみられなくなるため、8か月児では認められない。左右差がある場合は腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を、消失が遅れる場合は中枢神経障害を疑う。

  3. ×c.  手掌把握反射

    手掌把握反射は、児の手のひらに検者の指などを差し込むと反射的に強く握りしめる原始反射で、新生児ではそのまま体を持ち上げられるほど力強い。生後3~4か月頃から弱まり、遅くとも6か月頃までには消失して、随意的なつかみ動作に置き換わる。したがって8か月児では認められない。なお、足底把握反射は手掌把握反射より遅く、生後9~10か月頃まで残る。

  4. ○d.  パラシュート反射

    パラシュート反射(保護伸展反応)は、児の体幹を支えて空中に保持し、急に頭を下へ向けて落下させるようにすると、両上肢を前方に伸ばし手を開いて体を支えようとする姿勢反応である。新生児期には認められず、生後6~7か月頃に出現しはじめ、9~10か月頃にはほぼ全員でみられ、以後生涯持続する。8か月児で認められる反射として適切である。出現が遅れる場合や左右差がある場合は、運動発達の遅れや片麻痺などを疑う手がかりとなる。

  5. ×e.  非対称性緊張性頸反射

    非対称性緊張性頸反射(ATNR:asymmetric tonic neck reflex)は、仰臥位で頭部を一方に回旋させると、顔が向いた側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する原始反射で、フェンシングの構えに似た姿勢をとる。新生児期から認められ、生後4~6か月頃までに消失するため、8か月児ではみられない。残存する場合は脳性麻痺などの中枢神経障害が疑われる。

主な原始反射と消失時期の目安

・吸啜反射、探索反射(rooting reflex):生後4~6か月頃に消失 ・Moro反射:生後4か月頃(遅くとも6か月)に消失 ・手掌把握反射:生後3~4か月頃から弱まり、6か月頃までに消失 ・足底把握反射:生後9~10か月頃に消失(つかまり立ち・歩行の準備と関連) ・非対称性緊張性頸反射:生後4~6か月頃に消失 ・背反射(Galant反射):生後2~4か月頃に消失 ・自動歩行:生後1~2か月頃に消失 ※消失時期には文献によって幅がある。

主な姿勢反応と出現時期の目安

・Landau反射(腹臥位で水平に持ち上げると頭部・体幹・下肢を伸展する):生後5~6か月頃に出現し、2歳前後で消失 ・パラシュート反射(保護伸展反応):生後6~7か月頃に出現し、9~10か月頃にはほぼ全員でみられ、生涯持続 ・座位での側方保護伸展反応:生後6~8か月頃に出現 ・立ち直り反応、平衡反応:乳児期後半から順次出現し、生涯持続

臨床的意義

原始反射が本来出現すべき時期に出現しない、左右差がある、減弱・亢進している、あるいは消失すべき時期を過ぎても残存する場合は、中枢神経障害(脳性麻痺など)や末梢神経障害を疑う。逆に、姿勢反応の出現が遅れる場合も運動発達の遅れを示す所見となる。

POINT

・原始反射(Moro反射、手掌把握反射、ATNR、背反射など)は新生児期から存在し、生後数か月で消失する。 ・パラシュート反射は原始反射ではなく姿勢反応で、生後6~7か月頃に出現し、9~10か月でほぼ全員に認められ、生涯持続する。 ・8か月児で認められる反射としてはパラシュート反射が該当する(足底把握反射もまだ残る時期である)。 ・原始反射の残存・左右差、姿勢反応の出現遅延は中枢神経障害を疑う手がかりとなる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。