8か月の赤ちゃんに「残る反射」「現れる反射」―原始反射と姿勢反応の時間軸
第102回医師国家試験 G問題 第11問
国試問題にチャレンジ
8か月児に認められる反射はどれか。
- a.背反射
- b.Moro反射
- c.手掌把握反射
- d.パラシュート反射
- e.非対称性緊張性頸反射
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
乳児の反射は、新生児期から存在して生後数か月で消える原始反射と、乳児期の途中から現れて生涯持続する姿勢反応に分けて理解します。Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射、背反射(Galant反射)は原始反射で、いずれも生後6か月頃までには消失するため、8か月児ではみられません。一方、パラシュート反射(保護伸展反応)は姿勢反応で、生後6~7か月頃に出現し9~10か月頃にはほぼ全員で認められるため、8か月児で認められる反射に当たります。なお、足底把握反射は例外的に9~10か月頃まで残ります。原始反射の残存や左右差、姿勢反応の出現遅延は脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う手がかりとなるため、各反射の出現・消失時期を押さえることは乳幼児健診での発達評価の基礎になります。
解答・解説
正解はdです
乳児の反射は、大きく「原始反射」と「姿勢反応(立ち直り反応・平衡反応・保護伸展反応など)」の二群に分けて理解する。 原始反射は、脳幹や脊髄のレベルで統合される反射で、新生児期から認められ、大脳皮質などの上位中枢が成熟して随意運動が発達するにつれて抑制され、生後数か月のうちに消失していく。Moro反射、手掌把握反射、非対称性緊張性頸反射、背反射(Galant反射)、吸啜反射、探索反射(rooting reflex)などがこれに当たる。 一方、姿勢反応は中脳や大脳皮質レベルの成熟に伴って乳児期の途中から出現し、多くは生涯にわたって持続する。パラシュート反射(保護伸展反応)はその代表で、生後6~7か月頃から出現しはじめ、9~10か月頃までにはほぼ全員で認められる。 したがって、8か月児では原始反射の多くがすでに消失している一方、パラシュート反射が出現している時期にあたる。各反射の「出現時期」と「消失時期」を押さえておくことが解答の鍵である。
選択肢考察
- ×a. 背反射
背反射(Galant反射)は、児を腹臥位で支え、脊柱の外側の皮膚を上から下へこすると、刺激した側へ体幹が弯曲する原始反射である。新生児期から認められ、生後2~4か月頃までに消失するため、8か月児ではみられない。
- ×b. Moro反射
Moro反射は、仰臥位の児の頭部を検者の手で少し(30°程度)持ち上げてから急に支えを外すと、両上肢を外転・伸展して手指を開き(第1相)、続いて上肢を内転・屈曲して抱きつくような動きをする(第2相)原始反射である。通常は生後4か月頃までに消失し、遅くとも6か月頃にはみられなくなるため、8か月児では認められない。左右差がある場合は腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を、消失が遅れる場合は中枢神経障害を疑う。
- ×c. 手掌把握反射
手掌把握反射は、児の手のひらに検者の指などを差し込むと反射的に強く握りしめる原始反射で、新生児ではそのまま体を持ち上げられるほど力強い。生後3~4か月頃から弱まり、遅くとも6か月頃までには消失して、随意的なつかみ動作に置き換わる。したがって8か月児では認められない。なお、足底把握反射は手掌把握反射より遅く、生後9~10か月頃まで残る。
- ○d. パラシュート反射
パラシュート反射(保護伸展反応)は、児の体幹を支えて空中に保持し、急に頭を下へ向けて落下させるようにすると、両上肢を前方に伸ばし手を開いて体を支えようとする姿勢反応である。新生児期には認められず、生後6~7か月頃に出現しはじめ、9~10か月頃にはほぼ全員でみられ、以後生涯持続する。8か月児で認められる反射として適切である。出現が遅れる場合や左右差がある場合は、運動発達の遅れや片麻痺などを疑う手がかりとなる。
- ×e. 非対称性緊張性頸反射
非対称性緊張性頸反射(ATNR:asymmetric tonic neck reflex)は、仰臥位で頭部を一方に回旋させると、顔が向いた側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する原始反射で、フェンシングの構えに似た姿勢をとる。新生児期から認められ、生後4~6か月頃までに消失するため、8か月児ではみられない。残存する場合は脳性麻痺などの中枢神経障害が疑われる。
主な原始反射と消失時期の目安
・吸啜反射、探索反射(rooting reflex):生後4~6か月頃に消失 ・Moro反射:生後4か月頃(遅くとも6か月)に消失 ・手掌把握反射:生後3~4か月頃から弱まり、6か月頃までに消失 ・足底把握反射:生後9~10か月頃に消失(つかまり立ち・歩行の準備と関連) ・非対称性緊張性頸反射:生後4~6か月頃に消失 ・背反射(Galant反射):生後2~4か月頃に消失 ・自動歩行:生後1~2か月頃に消失 ※消失時期には文献によって幅がある。
主な姿勢反応と出現時期の目安
・Landau反射(腹臥位で水平に持ち上げると頭部・体幹・下肢を伸展する):生後5~6か月頃に出現し、2歳前後で消失 ・パラシュート反射(保護伸展反応):生後6~7か月頃に出現し、9~10か月頃にはほぼ全員でみられ、生涯持続 ・座位での側方保護伸展反応:生後6~8か月頃に出現 ・立ち直り反応、平衡反応:乳児期後半から順次出現し、生涯持続
臨床的意義
原始反射が本来出現すべき時期に出現しない、左右差がある、減弱・亢進している、あるいは消失すべき時期を過ぎても残存する場合は、中枢神経障害(脳性麻痺など)や末梢神経障害を疑う。逆に、姿勢反応の出現が遅れる場合も運動発達の遅れを示す所見となる。
POINT
・原始反射(Moro反射、手掌把握反射、ATNR、背反射など)は新生児期から存在し、生後数か月で消失する。 ・パラシュート反射は原始反射ではなく姿勢反応で、生後6~7か月頃に出現し、9~10か月でほぼ全員に認められ、生涯持続する。 ・8か月児で認められる反射としてはパラシュート反射が該当する(足底把握反射もまだ残る時期である)。 ・原始反射の残存・左右差、姿勢反応の出現遅延は中枢神経障害を疑う手がかりとなる。
