子宮収縮と鏡写しの徐脈―早発一過性徐脈が語る「児頭圧迫」
第102回医師国家試験 G問題 第12問
国試問題にチャレンジ
胎児心拍数陣痛図を別に示す。 心拍数陣痛パターンと最も関係するのはどれか。

- a.臍帯圧迫
- b.児頭圧迫
- c.羊水過多
- d.子宮破裂
- e.常位胎盤早期剝離
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
胎児心拍数陣痛図では、一過性徐脈を心拍数の下降速度と子宮収縮との時間関係から分類します。緩やかに下降し、最下点が子宮収縮のピークと一致して収縮と鏡像のように同期する早発一過性徐脈は、児頭圧迫による迷走神経反射で生じる生理的な反応であり、胎児低酸素を意味しません。急峻で形が一定しない変動一過性徐脈は臍帯圧迫、最下点が収縮ピークより遅れる遅発一過性徐脈は子宮胎盤循環不全を反映し、常位胎盤早期剝離や子宮破裂では遅発一過性徐脈から遷延一過性徐脈・高度徐脈へと進みます。羊水過多には特徴的な心拍数パターンはなく、臍帯圧迫による変動一過性徐脈はむしろ羊水過少で目立ちます。徐脈の種類に加えて基線細変動を併せて評価する姿勢は、分娩管理での介入判断の基礎となります。
解答・解説
正解はbです
図の読み方
胎児心拍数陣痛図(CTG:cardiotocogram)は、上段に胎児心拍数、下段に子宮収縮曲線を同じ時間軸で記録したものである。一過性徐脈の種類は、心拍数の下降の仕方(緩やかか急峻か)と、子宮収縮との時間的関係の二点から判定する。 本図では、心拍数基線はおおむね140 bpm前後で正常範囲(110~160 bpm)にある。子宮収縮が繰り返し起こり、そのたびに胎児心拍数が低下しているが、その低下は緩やかに始まり(下降開始から最下点まで30秒以上)、最下点は110~120 bpm程度と浅く、子宮収縮のピークとほぼ同じ時点で最下点に達し、収縮の終了とともに基線へ戻っている。すなわち、心拍数曲線が子宮収縮曲線を上下反転させたような鏡像の形をとっている。以上から、早発一過性徐脈と判定できる。
判定から原因へ
一過性徐脈の種類と主な原因は、次のように対応づけて理解する。 ・早発一過性徐脈:児頭圧迫による迷走神経反射(生理的) ・変動一過性徐脈:臍帯圧迫 ・遅発一過性徐脈:子宮胎盤循環不全による胎児低酸素状態 ・遷延一過性徐脈:高度の低酸素状態、臍帯脱出、過強陣痛など 本問は早発一過性徐脈なので、最も関係するのは児頭圧迫である。
選択肢考察
- ×a. 臍帯圧迫
臍帯が圧迫されると、まず壁の薄い臍帯静脈が閉塞して胎児への血液還流が減り、続いて臍帯動脈も閉塞して胎児の血圧が上昇し、圧受容体反射を介して急激な徐脈が起こる。このため心拍数は15秒未満で急峻に下降し、形・深さ・子宮収縮との時間関係が一定しない変動一過性徐脈を呈する。本図のように緩やかで子宮収縮と同期した波形とは異なる。
- ○b. 児頭圧迫
子宮収縮や児頭の骨盤内への下降に伴って児頭が圧迫されると、頭蓋内圧が上昇し、迷走神経反射によって一時的に心拍数が低下する。圧迫の強さは子宮収縮の強さに比例するため、心拍数の下降は収縮と同期して緩やかに生じ、最下点が収縮のピークに一致する早発一過性徐脈となる。胎児の低酸素状態を意味しない生理的な反応であり、主に分娩第1期後半から第2期に児頭が下降してくる時期にみられる。
- ×c. 羊水過多
羊水過多そのものに特徴的な胎児心拍数パターンはない。羊水過多では子宮の過伸展による切迫早産、破水時の臍帯脱出や常位胎盤早期剝離、分娩後の弛緩出血などが問題となるが、早発一過性徐脈と直接結びつくものではない。なお、臍帯圧迫が起こりやすく変動一過性徐脈が目立つのは、むしろ羊水過少の場合である。
- ×d. 子宮破裂
子宮破裂の前段階(切迫子宮破裂)では過強陣痛を反映した強く頻回の子宮収縮波形がみられ、破裂により胎児が低酸素状態に陥ると遅発一過性徐脈、さらに重症化すると遷延一過性徐脈や高度徐脈が出現する。破裂後は子宮収縮が消失することもある。早発一過性徐脈を示す病態ではない。
- ×e. 常位胎盤早期剝離
常位胎盤早期剝離では、胎盤が分娩前に子宮壁から剝がれることで子宮胎盤間のガス交換が障害され、胎児が低酸素状態となる。そのためCTGでは遅発一過性徐脈や基線細変動の減少・消失が出現し、重症例では遷延一過性徐脈・高度徐脈に至る。子宮収縮曲線では、さざ波様の頻回で不規則な収縮がみられることがある。早発一過性徐脈との関係は乏しい。
胎児心拍数の正常と基本用語
・心拍数基線:110~160 bpmが正常。110 bpm未満を徐脈、160 bpmを超えるものを頻脈とする。 ・基線細変動:心拍数の細かな揺らぎで、振幅6~25 bpmを中等度(正常)とする。胎児の自律神経機能が保たれていることを示す重要な指標であり、減少・消失は胎児の状態悪化を示唆する。 ・一過性頻脈:胎動などに伴う一時的な心拍数増加で、胎児が元気であること(well-being)を示す。
一過性徐脈の分類
1. 早発一過性徐脈:子宮収縮に伴い心拍数が緩やかに(下降開始から最下点まで30秒以上)下降し、最下点が子宮収縮のピークとほぼ一致して、収縮の終了とともに回復する。原因は児頭圧迫による迷走神経反射で、生理的な反応とされる。 2. 遅発一過性徐脈:緩やかな下降だが、最下点が子宮収縮のピークより遅れ、回復も収縮の終了より遅れる。子宮胎盤循環不全による胎児低酸素状態を示し、常位胎盤早期剝離、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全、過強陣痛などでみられる。 3. 変動一過性徐脈:15秒未満で急速に下降し、形・深さ・持続時間・子宮収縮との関係が一定しない。原因は臍帯圧迫である。 4. 遷延一過性徐脈:心拍数の低下が2分以上10分未満持続するもの。10分以上続く場合は基線の変化(徐脈)と判断する。
波形レベル分類
日本産科婦人科学会の分類では、胎児心拍数陣痛図をレベル1(正常波形)からレベル5(異常波形・高度)の5段階に分け、基線、基線細変動、一過性徐脈の種類と程度の組み合わせで判定して対応(経過観察、監視強化、急速遂娩の準備・実行など)を決める。基線・基線細変動が正常で、早発一過性徐脈のみの場合は、レベル1(正常波形)に分類される。
POINT
・早発一過性徐脈は、子宮収縮と鏡像のように同期し、緩やかに下降して最下点が収縮ピークに一致する。 ・原因は児頭圧迫による迷走神経反射で、胎児低酸素を意味しない生理的反応である。 ・対応関係:早発=児頭圧迫、変動=臍帯圧迫、遅発=子宮胎盤循環不全(胎児低酸素)。 ・常位胎盤早期剝離や子宮破裂では遅発一過性徐脈、重症化で遷延一過性徐脈・高度徐脈を呈する。
