「健康食品」にお墨付きはない―トクホ・特別用途食品・食事摂取基準を整理する
第102回医師国家試験 B問題 第25問
国試問題にチャレンジ
誤っているのはどれか。
- a.健康食品は農林水産省が認定する。
- b.高齢者用食品は特別用途食品に含まれる。
- c.食品添加物には表示義務が課せられている。
- d.保健機能食品には栄養機能食品と特定保健用食品とがある。
- e.日本人の食事摂取基準には栄養素の「上限量」の記載が含まれる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
いわゆる「健康食品」には法律上の定義がなく、農林水産省を含め国が認定する制度は存在しないため、「健康食品は農林水産省が認定する」が誤った記述です。国が関与するのは保健機能食品(特定保健用食品・栄養機能食品、2015年からは機能性表示食品も)と、病者や嚥下困難者、妊産婦、乳児などを対象とする特別用途食品で、許可・届出の所管は消費者庁です。旧来の高齢者用食品は現在えん下困難者用食品として特別用途食品に含まれ、食品添加物には原則として表示義務があります。日本人の食事摂取基準は欠乏だけでなく過剰摂取も防ぐため、耐容上限量(旧称・上限量)を含む5指標で構成されます。制度の区分と対象者を整理しておくことは、患者さんのサプリメント相談や栄養指導に役立つ実践的な知識です。
解答・解説
正解はaです
食品の表示制度と栄養摂取の基準に関する知識を問う問題である。「誤っているのはどれか」を選ぶ形式なので、記述内容が誤っている選択肢が正解となる。 整理のポイントは次の3点である。 1. 国が制度として定めている食品の区分 ・保健機能食品:健常者を対象に、一定の保健機能を表示できる食品。特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品(2015年に創設)の3つからなる。 ・特別用途食品:病者、嚥下困難者、妊産婦・授乳婦、乳児など、特別な配慮を要する人の用途に適することを表示できる食品で、表示には国の許可が必要である。 ・これら以外のいわゆる「健康食品」には法律上の定義がなく、国が認定・許可する制度もない。 2. 所管官庁 食品表示に関する行政は2009年に消費者庁へ移管され、現在、特定保健用食品や特別用途食品の許可は消費者庁長官が行う(出題当時は厚生労働省が所管していた)。いずれの時期でも、農林水産省が健康食品を認定する制度は存在しない。 3. 食品添加物の表示と食事摂取基準 食品添加物は原則としてすべて表示が義務づけられている。日本人の食事摂取基準には、欠乏の回避だけでなく過剰摂取による健康障害を防ぐための上限値も設定されている。 以上から、「健康食品は農林水産省が認定する」が誤った記述である。
選択肢考察
- ○a. 健康食品は農林水産省が認定する。
誤った記述であり、本問の正解である。いわゆる「健康食品」は法律上の定義がない呼び名であり、農林水産省を含め国が認定する制度はない。国が関与するのは、そのうち制度化された保健機能食品と特別用途食品に限られる。特定保健用食品は製品ごとに有効性・安全性の審査を受けて許可され、栄養機能食品は国の定めた規格基準に適合すれば届出なしに表示でき、機能性表示食品は事業者の責任で科学的根拠を消費者庁長官に届け出て表示する。これらの許可・届出を所管するのは消費者庁であり(出題当時は厚生労働省)、農林水産省ではない。なお、制度外の健康食品については、業界団体(日本健康・栄養食品協会)が自主的な規格基準に基づいて認定マーク(JHFAマーク)を付与する仕組みがあるが、これは国の認定ではない。
- ×b. 高齢者用食品は特別用途食品に含まれる。
正しい記述。出題当時、特別用途食品には病者用食品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳とともに「高齢者用食品」が含まれていた。高齢者用食品は、咀嚼や嚥下が困難な高齢者に適した食品として位置づけられていた。2009年の制度見直しにより、この区分は「えん下困難者用食品」に改められ、高齢者に限らず嚥下機能が低下した人全般を対象とするようになった(現在はとろみ調整用食品も含まれる)。特別用途食品は健常者ではなく、医学的・栄養学的な配慮を要する人を対象とする点が保健機能食品との違いである。
- ×c. 食品添加物には表示義務が課せられている。
正しい記述。容器包装に入れられた加工食品では、使用したすべての食品添加物を物質名で表示することが原則として義務づけられている。甘味料、着色料、保存料、酸化防止剤など8種類の用途では、物質名に用途名を併記する(例:保存料(ソルビン酸K))。一方、加工助剤(最終製品にほとんど残らないもの)、キャリーオーバー(原材料に含まれていて最終製品では効果を示さないもの)、栄養強化の目的で使用したものは表示が免除される。出題当時は食品衛生法に基づく義務であったが、2015年に食品衛生法・JAS法・健康増進法の表示規定が食品表示法に一元化され、現在は同法の食品表示基準に基づいている。
- ×d. 保健機能食品には栄養機能食品と特定保健用食品とがある。
正しい記述。保健機能食品制度は2001年に創設され、出題当時は特定保健用食品と栄養機能食品の2つで構成されていた。特定保健用食品は、「お腹の調子を整える」「血圧が高めの方に」などの保健の効果を、製品ごとに国の審査・許可を受けて表示できる個別許可型の食品である。栄養機能食品は、ビタミンやミネラルなどの特定の栄養成分が国の定めた上限・下限の範囲内で含まれていれば、その成分の機能を表示できる規格基準型の食品で、個別の許可や届出は不要である。なお、2015年には事業者の責任で届け出る機能性表示食品が加わり、現在の保健機能食品は3区分となっている。
- ×e. 日本人の食事摂取基準には栄養素の「上限量」の記載が含まれる。
正しい記述。日本人の食事摂取基準は、健康な個人・集団が健康の保持・増進や生活習慣病予防のために摂取すべきエネルギーと栄養素の量を示したもので、健康増進法に基づき厚生労働大臣が定め、5年ごとに改定される。1999年の第6次改定日本人の栄養所要量で、過剰摂取による健康障害を防ぐための上限の考え方(許容上限摂取量)が初めて導入された。2005年版の食事摂取基準では、推定平均必要量、推奨量、目安量、上限量、目標量の5つの指標が設定された。2010年版以降、「上限量」は「耐容上限量」に名称が改められたが、意味は同じである。
機能や用途を表示できる食品の整理
1. 保健機能食品(健常者が対象) ・特定保健用食品(トクホ):個別許可型。製品ごとに有効性・安全性を審査し、消費者庁長官が許可する。関与成分の科学的根拠の水準によって、条件付き特定保健用食品や規格基準型の特定保健用食品もある。 ・栄養機能食品:規格基準型。ビタミン・ミネラル・n-3系脂肪酸などの含有量が基準内であれば、定められた表現で機能を表示できる。許可・届出は不要。 ・機能性表示食品(2015年~):届出型。事業者が安全性と機能性の科学的根拠を販売前に消費者庁長官へ届け出て、自己の責任で表示する。国による個別審査はない。 2. 特別用途食品(病者などが対象、消費者庁長官の許可が必要) ・病者用食品(低たんぱく質食品、アレルゲン除去食品、無乳糖食品、総合栄養食品など) ・妊産婦・授乳婦用粉乳 ・乳児用調製乳(粉乳・液状乳) ・えん下困難者用食品(とろみ調整用食品を含む)。2009年以前は高齢者用食品と呼ばれていた。 ・特定保健用食品は、特別用途食品の一つとしても位置づけられている。 3. いわゆる健康食品:法律上の定義なし。医薬品のような効能効果を表示・広告することは医薬品医療機器等法(旧薬事法)違反となる。
食事摂取基準の指標
・推定平均必要量:集団の50%が必要量を満たすと推定される量 ・推奨量:集団のほとんど(97~98%)が必要量を満たすと推定される量 ・目安量:推定平均必要量が算定できない場合に、一定の栄養状態を維持するのに十分な量 ・耐容上限量:健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限 ・目標量:生活習慣病の発症予防のために当面の目標とすべき摂取量 ・エネルギーについては推定エネルギー必要量が示され、2015年版からは体格(BMI)が指標として用いられている。
関連する法律と所管
・食品表示法(2015年施行):食品衛生法、JAS法、健康増進法の表示規定を一元化。消費者庁が所管。 ・健康増進法:食事摂取基準の策定、特別用途表示の許可の根拠。
POINT
・いわゆる「健康食品」には法律上の定義がなく、国が認定する制度はない。 ・保健機能食品=特定保健用食品(個別許可型)+栄養機能食品(規格基準型)+機能性表示食品(届出型、2015年~)。 ・特別用途食品は病者・嚥下困難者・妊産婦・乳児などが対象。旧「高齢者用食品」は現在「えん下困難者用食品」。 ・食品表示の所管は消費者庁(2009年~)。 ・食品添加物は原則すべて表示義務がある(加工助剤・キャリーオーバー・栄養強化目的は免除)。 ・食事摂取基準の5指標:推定平均必要量、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量。
