StudyMed医師国家試験

「熱が下がったら登校OK」は誤り―麻疹の出席停止は「解熱後3日」

第102回医師国家試験 B問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第26問

麻疹罹患学童の出席停止期間の基準はどれか。

  1. a.解熱するまで
  2. b.発疹が消失するまで
  3. c.特有の咳が消失するまで
  4. d.解熱後3日を経過するまで
  5. e.発疹消失後3日を経過するまで

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、学校で流行しやすい感染症にかかった子どもを、いつまで登校させないかという出席停止期間の問題だ。ポイントは2つ。「何を起点にするか」と「そこから何日の余裕を置くか」。これを疾患ごとに区別できるかが問われているよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で学校保健安全法の表を見ましたが、疾患ごとに細かく違っていて、正直うろ覚えです。
ドクタードクター
丸暗記しようとすると混乱しやすいから、病気の経過と結びつけて考えよう。まず麻疹の経過を思い出してほしい。どんな流れだったかな。
医学生医学生
カタル期に発熱、咳、鼻汁、結膜充血があって、頬粘膜にKoplik斑が出ます。そのあと一度熱が下がりかけて、発疹とともにまた高熱になる二峰性発熱でした。
ドクタードクター
完璧だね。そして回復期に入って解熱し、発疹は褐色の色素沈着を残して消えていく。麻疹は空気感染・飛沫感染・接触感染のいずれでも広がり、感染力は既知の感染症の中でも最強クラスだ。ウイルスの排出はカタル期から始まり、発疹が出たあともしばらく続く。
医学生医学生
じゃあ、熱が下がった時点で登校させていいんでしょうか。症状がなければ大丈夫な気もします。
ドクタードクター
そこが落とし穴なんだ。発疹期の高熱がおさまった後も、数日は感染性が残りうる。だから「解熱するまで」では不十分で、学校保健安全法施行規則は麻疹を第二種感染症として「解熱した後3日を経過するまで」と定めている。これが正解だ。
医学生医学生
「発疹が消失するまで」も、いかにも麻疹っぽい選択肢に見えました。
ドクタードクター
それは風疹の基準だね。風疹は発疹が3日ほどで消えるので、それを指標にできる。一方、麻疹の発疹は消えたあとも色素沈着がしばらく残るから、発疹の消失を目安にするのは実際的でもないんだ。
医学生医学生
「特有の咳が消失するまで」は百日咳ですよね。小児科実習で、レプリーゼのある乳児を見せてもらいました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。百日咳は現行の規則では「特有の咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまで」となっている。麻疹でもカタル症状として咳は出るけれど、出席停止の指標にはなっていないよ。
医学生医学生
「発疹消失後3日」は、麻疹の「3日」と風疹の「発疹」が混ざったような選択肢ですね。
ドクタードクター
鋭いね。この基準をもつ第二種感染症はない。「3日」という数字だけを覚えて起点を取り違えると引っかかる、典型的なひっかけだ。
医学生医学生
ほかの疾患も起点と日数のセットで整理しておきたいです。
ドクタードクター
代表的なものを挙げよう。インフルエンザは「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)」。流行性耳下腺炎は「腫脹が出てから5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」。水痘は「すべての発疹が痂皮化するまで」。咽頭結膜熱は「主要症状が消退した後2日」。新型コロナウイルス感染症は「発症後5日を経過し、かつ症状軽快後1日」。どれも、医師が感染のおそれがないと認めた場合はこの限りではないという但し書きがつく。
医学生医学生
水痘が痂皮化なのは、水疱の中にウイルスがいるからですね。皮膚科の講義で、水疱・膿疱・痂皮が混在するのが特徴だと習いました。
ドクタードクター
その通り。病態の理解とつなげると忘れにくい。臨床では、診断書や登校許可の相談を受ける場面が必ずある。特に麻疹は、ワクチン未接種者や1回接種のみの人への感染が問題になるから、学校や保健所と連携した対応が欠かせない。曝露後72時間以内の緊急ワクチン接種という選択肢があることも覚えておこう。
医学生医学生
起点が解熱で、そこから3日。麻疹の感染力の強さが、その余裕の理由なんですね。
ドクタードクター
そう理解しておけば、制度の改正で他疾患の基準が変わっても、考え方の軸はぶれないよ。

まとめ

麻疹は学校保健安全法施行規則で第二種感染症に分類され、出席停止期間は「解熱した後3日を経過するまで」と定められています。麻疹は空気感染もする極めて感染力の強い疾患で、発疹期の高熱が下がった後もしばらく感染性が残りうるため、解熱後に3日間の余裕を設けています。発疹の消失は風疹、特有の咳の消失(または適正な抗菌薬治療5日間の終了)は百日咳、すべての発疹の痂皮化は水痘の基準であり、「発疹消失後3日」に該当する疾患はありません。出席停止期間は「何を起点に」「何日おくか」をセットで、各疾患の経過や感染性と結びつけて理解することが、試験対策にも臨床での登校許可の判断にも役立ちます。

解答・解説

正解はdです

学校で流行しやすい感染症については、学校保健安全法(出題当時は学校保健法)とその施行規則によって、罹患した児童生徒を登校させない期間(出席停止期間)の基準が疾患ごとに定められている。麻疹はこのうち第二種感染症(出題当時の呼称は第二種伝染病)に分類され、基準は「解熱した後3日を経過するまで」である。 麻疹は空気感染・飛沫感染・接触感染のいずれでも広がり、感染力は既知の感染症の中でも最も強い部類に入る。ウイルスの排出はカタル期(発疹が出る前の数日間)から始まり、発疹出現後もしばらく続く。典型例では、カタル期の発熱がいったん下がりかけたのち、発疹の出現とともに再び高熱となる(二峰性発熱)。発疹期の高熱がおさまってからさらに数日間は感染性が残りうるため、単に「解熱するまで」ではなく、解熱後に3日間の余裕を設けている。 出席停止期間の問題では、「何を指標とするか(解熱・発疹・咳・腫脹・痂皮化など)」と「その後に何日の猶予を置くか」の2点を疾患ごとに正確に区別できるかが問われる。本問の選択肢も、他の第二種感染症の基準を混ぜ込んだ構成になっている。

選択肢考察

  1. ×a.  解熱するまで

    誤り。麻疹では解熱した時点でもまだウイルスを排出している可能性があるため、解熱をもって登校可能とはしていない。解熱後さらに3日を経過することが求められる。

  2. ×b.  発疹が消失するまで

    誤り。「発疹が消失するまで」は風疹の出席停止基準である。麻疹の発疹は消退後に褐色の色素沈着を残し、しばらく跡が見えるため、発疹の消失を指標にするのは実際的でもない。麻疹の基準は解熱を起点とする。

  3. ×c.  特有の咳が消失するまで

    誤り。「特有の咳が消失するまで」は百日咳の基準である(現行規則では「特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまで」)。麻疹でもカタル症状として咳は出るが、出席停止の指標にはなっていない。

  4. ○d.  解熱後3日を経過するまで

    正しい。学校保健安全法施行規則は、麻疹の出席停止期間を「解熱した後3日を経過するまで」と定めている。麻疹は感染力が非常に強く、発疹期の高熱が下がった後もしばらく感染性が残りうるため、解熱後に3日間の期間を加えている。なお、病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めた場合はこの限りではない。

  5. ×e.  発疹消失後3日を経過するまで

    誤り。このような基準を定めている第二種感染症はない。麻疹の基準は発疹ではなく解熱を起点とし、そこから3日である。「3日」という数字だけを覚えて起点を取り違えないよう注意する。

学校感染症の分類

学校保健安全法施行規則では、学校において予防すべき感染症を第一種から第三種に分けている。 ・第一種:感染症法の一類感染症と、結核を除く二類感染症など(エボラ出血熱、ペスト、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群〈SARS〉、特定鳥インフルエンザなど)。出席停止期間は「治癒するまで」。 ・第二種:飛沫感染などで学校内に広がりやすい感染症。疾患ごとに基準が定められている。 ・第三種:学校教育活動を通じて流行が広がる可能性がある感染症(腸管出血性大腸菌感染症、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎、コレラ、細菌性赤痢など)。出席停止期間は「病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで」。

第二種感染症の出席停止期間(現行規則)

・インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ等を除く):発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで。 ・百日咳:特有の咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌薬による治療が終了するまで。 ・麻疹:解熱した後3日を経過するまで。 ・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ):耳下腺・顎下腺・舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで。 ・風疹:発疹が消失するまで。 ・水痘:すべての発疹が痂皮化するまで。 ・咽頭結膜熱:主要症状が消退した後2日を経過するまで。 ・新型コロナウイルス感染症:発症した後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで。 ・結核、髄膜炎菌性髄膜炎:病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めるまで。 いずれも、病状により医師が感染のおそれがないと認めたときは、この限りではない。

制度の変遷

2009年に学校保健法は学校保健安全法へ改められ、「伝染病」の呼称は「感染症」に変更された。2012年には、インフルエンザに「発症後5日」の条件が加わり、百日咳と流行性耳下腺炎の基準が改められ、髄膜炎菌性髄膜炎が第二種に追加された。2023年には新型コロナウイルス感染症が第二種に加えられた。出題当時の基準と一部異なるが、麻疹の基準は変わっていない。

麻疹の臨床経過

潜伏期は約10~12日。カタル期(発熱、咳、鼻汁、結膜充血が3~4日続き、頬粘膜にコプリック斑が現れる)→ 発疹期(いったん下がりかけた熱が再上昇し、耳後部・顔面から体幹・四肢へ融合傾向のある紅斑が広がる)→ 回復期(解熱し、発疹は色素沈着を残して消退する)と進む。感染力が最も強いのはカタル期である。

POINT

・麻疹の出席停止期間は「解熱した後3日を経過するまで」。 ・発疹の消失が基準になるのは風疹、特有の咳の消失は百日咳、すべての発疹の痂皮化は水痘。 ・「解熱後2日」はインフルエンザ(発症後5日も必要。幼児は解熱後3日)、「主要症状消退後2日」は咽頭結膜熱。 ・流行性耳下腺炎は「腫脹発現後5日を経過し、かつ全身状態良好」。 ・どの疾患も、医師が感染のおそれがないと認めればこの限りではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。