「炭水化物は半分強、脂質は3割まで」―数字で覚えるエネルギー産生栄養素バランス
第118回医師国家試験 E問題 第24問
国試問題にチャレンジ
健康成人の総エネルギー摂取量に占める栄養素の割合で,日本人の食事摂取基準の目標値の範囲にある組合せはどれか。(編註:選択肢表は下記をご参照ください。) 炭水化物(%) 蛋白質(%) 脂質(%) a 35 35 30 b 35 15 50 c 55 35 10 d 55 15 30 e 75 15 10
- a.35 35 30
- b.35 15 50
- c.55 35 10
- d.55 15 30
- e.75 15 10
対話形式の解説
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ドクターまとめ
日本人の食事摂取基準では、成人のエネルギー産生栄養素バランスの目標量を炭水化物50〜65%、蛋白質13〜20%、脂質20〜30%と定めており、蛋白質の下限は50〜64歳で14%、65歳以上で15%に引き上げられています。選択肢は炭水化物で候補を絞り、蛋白質・脂質を順に照合すると効率よく判断でき、炭水化物55%・蛋白質15%・脂質30%がすべて範囲内に収まります。脂質の過剰、特に飽和脂肪酸の過剰は脂質異常症や冠動脈疾患のリスクとなり、逆に脂質が少なすぎると必須脂肪酸や脂溶性ビタミンが不足するおそれがあります。このバランスは生活習慣病予防を目的とした「目標量」に当たり、飽和脂肪酸7%以下や食塩相当量の目標とあわせて、栄養指導や生活習慣病診療の基礎となる知識です。
解答・解説
正解はdです
問われていること
総エネルギー摂取量に対して三大栄養素(炭水化物・蛋白質・脂質)からのエネルギーがそれぞれ何%を占めるのが望ましいか、という「エネルギー産生栄養素バランス」の目標量を問う問題である。
日本人の食事摂取基準における目標量(成人)
・炭水化物:50~65% ・蛋白質:13~20%(18~49歳)。50~64歳では14~20%、65歳以上では15~20%と下限が引き上げられている ・脂質:20~30%(うち飽和脂肪酸は7%以下)
解き方
三つの値のすべてが範囲内に入る組合せを探す。まず炭水化物で絞ると、50~65%に入るのは55%の c と d だけである(35%の a・b は低すぎ、75%の e は高すぎる)。次に蛋白質を見ると、c は35%で上限20%を大きく超え、d は15%で範囲内である。最後に d の脂質30%は20~30%の上限ちょうどで範囲内に収まる。したがって d が正解となる。 なお三つの割合の合計は必ず100%になる(アルコールを除けば、エネルギー源はこの三つである)ため、どれか一つが範囲から外れると他の値も偏りやすい。目標量の三つの範囲の中央付近(炭水化物約57%、蛋白質約16%、脂質約25%)を組み合わせると合計がおよそ100%になる、というイメージをもっておくと覚えやすい。
選択肢考察
- ×a. 35 35 30
炭水化物35%は目標量の下限50%を大きく下回り、蛋白質35%は上限20%を大きく上回る。脂質30%のみ範囲内だが、極端な低炭水化物・高蛋白食であり目標の範囲にはない。蛋白質の過剰摂取は腎臓への負担などが懸念される。
- ×b. 35 15 50
蛋白質15%は範囲内であるが、炭水化物35%は下限50%未満、脂質50%は上限30%を大きく超えている。脂質の過剰、特に飽和脂肪酸の過剰は血中LDLコレステロールを上昇させ、脂質異常症や冠動脈疾患などの生活習慣病のリスクとなる。
- ×c. 55 35 10
炭水化物55%は範囲内であるが、蛋白質35%は上限20%を超え、脂質10%は下限20%を下回る。脂質が少なすぎると、必須脂肪酸(n-6系・n-3系脂肪酸)や脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の摂取・吸収が不足するおそれがある。
- ○d. 55 15 30
炭水化物55%(目標50~65%)、蛋白質15%(目標13~20%)、脂質30%(目標20~30%の上限ちょうど)と、三つすべてが目標量の範囲内にある。高齢者で蛋白質の下限が15%に引き上げられている年代でも範囲内に収まる組合せである。
- ×e. 75 15 10
蛋白質15%は範囲内であるが、炭水化物75%は上限65%を超え、脂質10%は下限20%を下回る。高炭水化物・低脂肪の偏った配分であり、目標の範囲にはない。
日本人の食事摂取基準とは
健康増進法に基づき厚生労働大臣が定める、エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準であり、5年ごとに改定される。健康な個人・集団を対象とし、生活習慣病の発症予防・重症化予防やフレイル予防も視野に入れている。
栄養素の指標の種類
・推定平均必要量(EAR):集団の50%が必要量を満たすと推定される量 ・推奨量(RDA):集団のほとんど(97~98%)が必要量を満たすと推定される量 ・目安量(AI):十分な科学的根拠がなく推定平均必要量を算定できない場合に、一定の栄養状態を維持するのに十分な量 ・耐容上限量(UL):過剰摂取による健康障害を起こさないための上限 ・目標量(DG):生活習慣病の発症予防を目的として、当面の目標とすべき摂取量 本問のエネルギー産生栄養素バランスは「目標量」に当たる。
エネルギー産生栄養素の熱量
炭水化物と蛋白質は1gあたり約4kcal、脂質は約9kcal、アルコールは約7kcalである。脂質はエネルギー密度が高いため、同じ重量でも総エネルギーに占める割合が大きくなりやすい。
関連する目標量
・飽和脂肪酸:成人で総エネルギーの7%以下 ・食物繊維:成人男性で1日21g以上、成人女性で18g以上(年齢区分により異なる) ・食塩相当量:成人男性で1日7.5g未満、成人女性で6.5g未満(高血圧・慢性腎臓病の重症化予防には6g未満)
POINT
・エネルギー産生栄養素バランスの目標量(成人):炭水化物50~65%、蛋白質13~20%、脂質20~30% ・蛋白質の下限は高齢になるほど引き上げられる(50~64歳14%、65歳以上15%) ・飽和脂肪酸は7%以下 ・目標量は生活習慣病の発症予防・重症化予防を目的とした指標である
