StudyMed医師国家試験

「色」と「性質」で治療が決まる―皮膚疾患と治療法の正しい組合せ

第102回医師国家試験 A問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第102回 A問題 第8問

疾患と対応の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.Bowen病 ―― 経過観察
  2. b.太田母斑 ―― レーザー療法
  3. c.尋常性白斑 ―― PUVA療法
  4. d.リンパ管腫 ―― 放射線治療
  5. e.単純性血管腫 ―― 副腎皮質ステロイド薬治療

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は代表的な皮膚疾患と、その治療法の対応を問う問題だ。丸暗記ではなく、それぞれの病変の本態――悪性か良性か、色素の異常か血管の異常か――を考えれば、自然と適切な治療が見えてくる。正しい組合せを2つ選ぶ問題だね。
医学生医学生
太田母斑とレーザーは、セットで覚えた記憶があります。
ドクタードクター
そう、それは正しい組合せだ。太田母斑は三叉神経第1・第2枝の領域、つまり眼の周りや頬、額に片側性に出る青褐色の色素斑で、東洋人の女性に多い。白目に青い色素沈着を伴うこともある。本態は真皮メラノサイトの増加なんだ。
医学生医学生
真皮にあるメラニンが、深いから青く見えるんでしたっけ。組織学の講義でチンダル現象と習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。深い位置にある色素なので塗り薬では届かないし、自然にも消えない。そこで、非常に短いパルスでメラニンを選択的に破壊できるQスイッチレーザー、たとえばルビーやアレキサンドライト、Nd:YAGレーザーが第一選択になる。周りの組織への熱損傷を抑えつつ、複数回の照射で色調がかなり改善するんだ。
医学生医学生
もう一つは尋常性白斑とPUVA療法ですか。白斑は色が抜ける病気だから、紫外線で色を戻すというイメージです。
ドクタードクター
その通り、それがもう一つの正解だ。尋常性白斑は自己免疫機序などで表皮のメラノサイトが失われる後天性の脱色素斑。PUVA療法は光感受性物質のソラレンを内服か外用したあとに長波長紫外線のUVAを照射する光化学療法で、毛包などに残ったメラノサイトの増殖と表皮への移動を促して色素を再生させるんだ。
医学生医学生
皮膚科の実習で、ナローバンドUVBの照射装置を見ました。白斑にはそちらも使うんですよね。
ドクタードクター
そう。現在はソラレンが不要で副作用の少ないナローバンドUVBやエキシマライトが広く使われているし、ステロイドやタクロリムスの外用も選択肢だ。PUVAは乾癬、掌蹠膿疱症、菌状息肉症にも用いられる。では誤りの選択肢を見ていこう。Bowen病を経過観察、というのはどうかな。
医学生医学生
Bowen病は確か上皮内癌でしたよね。浸潤していないなら、急がなくてもいいような気もしますが……。
ドクタードクター
そこが落とし穴だ。Bowen病は表皮内有棘細胞癌、つまり悪性腫瘍だ。放置すれば癌細胞が基底膜を越えて真皮に浸潤し、Bowen癌として転移することもある。治療の基本は適切な範囲での外科的切除で、手術が難しければ凍結療法やフルオロウラシル外用、光線力学療法を考える。悪性は放置しない、が原則だね。
医学生医学生
リンパ管腫に放射線というのも、なんだか違和感があります。
ドクタードクター
その違和感は正しい。リンパ管腫は現在のISSVA分類ではリンパ管奇形と呼ばれ、真の腫瘍ではない良性の脈管奇形だ。小児の頸部や腋窩に多い。放射線は効果が乏しいうえ、成長障害や二次がんなどの晩期障害が問題になるから、小児の良性病変には使うべきではない。治療は切除や、OK-432を病変内に注入する硬化療法が中心で、難治例ではシロリムスが使われることもある。
医学生医学生
単純性血管腫にステロイドというのは、いちご状血管腫と混同させるひっかけでしょうか。
ドクタードクター
まさにそうだね。単純性血管腫は毛細血管奇形、いわゆるポートワイン母斑で、内皮細胞が増える腫瘍ではなく血管の形成異常だ。だからステロイドは効かず、自然にも消えない。治療はヘモグロビンに選択的に吸収されるパルス色素レーザーだ。一方、乳児血管腫は内皮細胞が増殖する血管性腫瘍で、かつてはステロイドが使われたけれど、現在はプロプラノロール内服が第一選択になっている。
医学生医学生
腫瘍か奇形か、で治療の考え方が変わるんですね。レーザーも標的がメラニンかヘモグロビンかで使い分ける、と。
ドクタードクター
その整理が大事だ。メラニンが標的のQスイッチレーザーは太田母斑や異所性蒙古斑、外傷性刺青に、ヘモグロビンが標的の色素レーザーは毛細血管奇形や乳児血管腫に使う。臨床では、顔面の三叉神経第1枝領域に毛細血管奇形がある子を見たら、同側の脳軟膜の血管奇形によるてんかんや緑内障を伴うSturge-Weber症候群を必ず考えること。またPUVAは長期使用で皮膚癌のリスクがあり、ソラレン内服時は照射後の遮光も必要だから、副作用管理まで意識しておこう。

まとめ

皮膚疾患の治療は、病変が悪性か良性か、色素の異常か血管の異常かという本態から考えると整理しやすくなります。真皮メラノサイトが増加する太田母斑にはメラニンを標的とするQスイッチレーザーが、表皮メラノサイトが失われる尋常性白斑にはPUVA療法やナローバンドUVBなどの紫外線療法が有効です。一方、表皮内有棘細胞癌であるBowen病は浸潤癌へ進展しうるため切除が基本で、良性の脈管奇形であるリンパ管腫には放射線ではなく切除や硬化療法を、毛細血管奇形である単純性血管腫にはステロイドではなく色素レーザーを用います。血管病変は内皮細胞が増殖する腫瘍(乳児血管腫など)と自然消退しない脈管奇形に分けて理解し、乳児血管腫ではプロプラノロールが第一選択である点も押さえておきましょう。疾患の本態と治療の作用標的を結びつけて覚えることが、ひっかけ選択肢に惑わされない確かな知識につながります。

解答・解説

正解はb, cです

代表的な皮膚疾患と、その標準的な治療法の対応を問う一般問題である。各疾患の本態を押さえれば、適切な治療を選びやすい。 ・Bowen病:表皮内にとどまる有棘細胞癌(上皮内癌)。悪性腫瘍であり、治療(切除など)が必要である。 ・太田母斑:真皮内にメラノサイトが増えて生じる青色〜褐色の色素斑。真皮の色素に届くQスイッチレーザーが有効である。 ・尋常性白斑:自己免疫機序などで表皮メラノサイトが失われる後天性の脱色素斑。メラノサイトの再生を促す紫外線療法(PUVA療法、ナローバンドUVB)や、ステロイド外用などを行う。 ・リンパ管腫(リンパ管奇形):リンパ管の形成異常による良性病変。治療は切除や硬化療法で、放射線治療は行わない。 ・単純性血管腫(毛細血管奇形、いわゆるポートワイン母斑):真皮の毛細血管の拡張による血管奇形。自然には消えず、色素レーザーで治療する。 「良性で色の問題が主体の病変にはレーザー」「脱色素にはPUVA」「悪性は放置しない」「良性疾患に放射線は使わない」という原則に当てはめると、太田母斑とレーザー療法(b)、尋常性白斑とPUVA療法(c)の組合せが正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  Bowen病 ―― 経過観察

    誤り。Bowen病は表皮内有棘細胞癌であり、悪性腫瘍である。高齢者の体幹や四肢に、境界明瞭で表面に鱗屑や痂皮を伴う紅褐色の局面としてみられる。ヒ素への曝露やヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連も知られている。放置すると、癌細胞が基底膜を越えて真皮に浸潤し、浸潤性の有棘細胞癌(Bowen癌)となり、リンパ節などへ転移することがある。治療の基本は、適切な切除範囲をとった外科的切除である。手術が難しい場合は、液体窒素による凍結療法、フルオロウラシル外用、光線力学療法などが選択肢となる。経過観察は不適切である。

  2. ○b.  太田母斑 ―― レーザー療法

    正しい。太田母斑は、三叉神経第1・第2枝の支配領域(眼の周囲、頬、額など)に片側性に生じる青褐色の色素斑で、東洋人の女性に多い。強膜(白目)の青色の色素沈着を伴うことがある。病変の本態は真皮メラノサイトの増加であり、自然には消えない。Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザー、QスイッチNd:YAGレーザーなどは、非常に短いパルスでメラニンを選択的に破壊し、周りの組織への熱損傷を抑える。複数回の照射で色調はかなり改善し、第一選択の治療となっている。

  3. ○c.  尋常性白斑 ―― PUVA療法

    正しい。PUVA療法(psoralen + ultraviolet A)は、光感受性物質であるソラレン(わが国ではメトキサレン)を内服または外用したあとに、長波長紫外線(UVA:320〜400nm)を照射する光化学療法である。尋常性白斑では、毛包などに残るメラノサイトの増殖と表皮への移動を促し、色素再生を得る。PUVA療法は白斑のほか、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症、菌状息肉症などにも用いられる。なお現在の白斑治療では、ソラレンが不要で副作用の少ないナローバンドUVB療法(311nm付近)やエキシマライトが広く使われている。ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬も用いられる。

  4. ×d.  リンパ管腫 ―― 放射線治療

    誤り。リンパ管腫は、現在の分類(ISSVA分類)ではリンパ管奇形と呼ばれる、真の腫瘍ではない良性の脈管奇形である。小児、とくに頸部や腋窩に多い。放射線は効果が乏しいうえ、成長障害、皮膚障害、二次がんなどの晩期障害が問題になる。特に小児の良性病変には用いるべきではない。治療は、外科的切除、硬化療法(OK-432〈ピシバニール〉などを病変内に注入する)が中心である。難治例ではmTOR阻害薬のシロリムスが用いられることもある。

  5. ×e.  単純性血管腫 ―― 副腎皮質ステロイド薬治療

    誤り。単純性血管腫は、現在の分類では毛細血管奇形(ポートワイン母斑)にあたる。生まれつきある境界明瞭な平らな紅斑で、自然に消えることはなく、成長に伴って色が濃くなったり盛り上がったりすることがある。血管内皮細胞が増える腫瘍ではなく、血管の形成異常であるため、副腎皮質ステロイド薬は内服・外用とも効果がない。治療は、ヘモグロビンに選択的に吸収される波長のパルス色素レーザーである。ステロイドがかつて用いられたのは、増殖期の乳児血管腫(いちご状血管腫)や、Kasabach-Merritt現象(カポジ肉腫様血管内皮腫などに伴う血小板減少・消費性凝固障害)であった。なお乳児血管腫では、現在はプロプラノロール内服が第一選択となっている。

レーザー治療の主な適応

・Qスイッチレーザー(ルビー、アレキサンドライト、Nd:YAG):メラニンが標的。太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺青、扁平母斑(再発しやすい)など。 ・色素レーザー(パルス色素レーザー):ヘモグロビンが標的。単純性血管腫(毛細血管奇形)、乳児血管腫、毛細血管拡張症など。

光線療法

・PUVA療法:ソラレン+UVA。尋常性乾癬、尋常性白斑、掌蹠膿疱症、菌状息肉症など。副作用として日焼け様の紅斑、長期使用による皮膚癌リスク、ソラレン内服時の眼障害(照射後の遮光が必要)がある。 ・ナローバンドUVB療法:311nm付近の狭い波長のUVB。ソラレンが不要で、現在は乾癬・白斑・アトピー性皮膚炎などで広く用いられる。

血管病変の分類(ISSVA分類)

・血管性腫瘍(内皮細胞が増殖する):乳児血管腫(いちご状血管腫)、房状血管腫、カポジ肉腫様血管内皮腫など。乳児血管腫は生後まもなく出現して増大し、その後数年で自然に退縮する。治療が必要な例にはプロプラノロール内服や色素レーザーを用いる。 ・脈管奇形(血管の形成異常で自然には消えない):毛細血管奇形(単純性血管腫)、静脈奇形(海綿状血管腫)、リンパ管奇形(リンパ管腫)、動静脈奇形など。 ・Sturge-Weber症候群:顔面(三叉神経第1枝領域)の毛細血管奇形に、同側の脳軟膜の血管奇形(てんかん、石灰化)と緑内障を伴う。

皮膚の上皮内癌・前癌病変

Bowen病(表皮内有棘細胞癌)、日光角化症、乳房外Paget病(上皮内癌として始まる)などは、いずれも浸潤癌へ進展しうるため治療対象である。

POINT

・Bowen病は表皮内有棘細胞癌であり、経過観察ではなく切除が基本である。 ・太田母斑はQスイッチレーザーで治療する(真皮メラノサイトが標的)。 ・尋常性白斑はPUVA療法やナローバンドUVBなどの紫外線療法で治療する。 ・リンパ管腫(リンパ管奇形)は切除や硬化療法(OK-432)で治療し、放射線治療は行わない。 ・単純性血管腫(毛細血管奇形)は色素レーザーで治療し、ステロイドは無効である。乳児血管腫の第一選択はプロプラノロールである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。