StudyMed医師国家試験

「今日は何日?」「ここはどこ?」―見当識を正しく測る質問の選び方

第101回医師国家試験 B問題 第78問

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第101回 B問題 第78問

見当識の評価に適切な質問はどれか。2つ選べ。

  1. a.「100から7を引くといくつですか」
  2. b.「今日は何年何月何日ですか」
  3. c.「今いるところはどこですか」
  4. d.「誕生日はいつですか」
  5. e.「住所はどちらですか」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、見当識を評価する質問を選ぶ問題だ。認知機能の検査にはいろいろな質問が並ぶけれど、それぞれが「どの機能」を調べているのかを区別できるかがカギになる。まず、見当識とはどんな能力か説明できるかな。
医学生医学生
自分がいつ、どこにいるのかがわかる能力、ですよね。
ドクタードクター
いいね。もう少し正確に言うと、自分が今どんな状況に置かれているかを正しく把握する能力で、通常は「時間」「場所」「人物」の3つの側面で評価する。今日の日付や季節がわかるか、今いる場所がわかるか、目の前の人が誰かわかるか、ということだ。
医学生医学生
精神科の講義で、意識障害の評価にも使うと習いました。JCSの1桁にも見当識障害の項目がありますよね。
ドクタードクター
その通り。見当識はせん妄などの意識障害や認知症で障害されやすい。そして一般に、時間、場所、人物の順に失われていく。だから評価の基本は、まず日付と場所を尋ねることなんだ。では選択肢を見ていこう。日付を尋ねる質問はどうかな。
医学生医学生
今日が何年何月何日かを聞くので、時間の見当識ですね。
ドクタードクター
正解。時間の見当識は最も障害されやすく、せん妄や認知症の早い段階から誤りが出やすい。HDS-RやMMSEにも年・月・日・曜日を聞く項目があって、MMSEでは季節も尋ねる。
医学生医学生
今いるところを聞くのは、場所の見当識ですね。
ドクタードクター
そう。病院なのか自宅なのかを答えられるかをみる。MMSEでは都道府県や市町村、病院名、階数まで確認するんだ。この2つが正解になる。では、100から7を引く質問はどうだろう。
医学生医学生
OSCEの練習でHDS-Rを使ったとき、日付の質問の後に出てきた気がします。だから見当識の一部かと思っていました。
ドクタードクター
同じ検査の中にあるから混同しやすいね。でも100から順に7を引いていく課題は、計算能力と注意・集中力、つまり作業記憶を評価するものだ。HDS-Rでは計算の項目、MMSEでは「注意と計算」の項目として使われている。今の状況を把握しているかを聞いているわけではないんだ。
医学生医学生
誕生日や住所は、自分のことを正しくわかっているかなので、人物の見当識にあたるのではないですか。
ドクタードクター
そこがこの問題で一番引っかかりやすいところだね。誕生日や住所は本人の生活史に関する情報で、以前覚えた情報を思い出せるか、つまり記憶を調べる質問なんだ。見当識が問うのは「今この時点の状況」。誕生日は何年経っても変わらない知識だし、住所も「今いる場所」とは別物だ。人物の見当識は「私は誰ですか」のように、そばにいる人を尋ねて評価するよ。
医学生医学生
なるほど、住所を聞くのは場所の見当識っぽく見えますが、自宅の場所を覚えているかどうかの問題なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。しかも誕生日のような古い記憶は、認知症でも比較的後期まで保たれやすい。だから見当識障害があっても答えられてしまうことが多く、見当識の評価には向かないんだ。なお、引っ越して間もない住所なら、比較的新しい記憶を調べることにもなる。
医学生医学生
質問の見た目ではなく、何を調べているかで分類することが大事なんですね。見当識障害が出る病態として、臨床では何を考えればいいですか。
ドクタードクター
代表的なのは3つ。まずせん妄で、急に発症して日内変動があり、注意障害を伴うのが特徴だ。次に認知症で、アルツハイマー型では記憶障害に続いて時間の見当識障害が目立ってくる。そしてコルサコフ症候群では、記銘力障害や作話とともに見当識障害がみられる。
医学生医学生
内科の実習で、入院中の高齢の方が夜になると「ここは家だ」と言っていたのは、せん妄による場所の見当識障害だったのかもしれません。
ドクタードクター
十分ありうるね。入院や手術をきっかけにしたせん妄はよくあるから、日付や場所の質問で変化を早めに捉えることが大切だ。ちなみにHDS-Rは30点満点で20点以下、MMSEも30点満点で23点以下が認知症を疑う目安とされる。ただし点数だけで診断が決まるわけではなく、どの領域で失点しているかをみることで、障害されている機能が見えてくるんだ。

まとめ

見当識は、自分が今置かれている状況を把握する能力で、時間・場所・人物の3つの側面から評価し、障害は一般に時間→場所→人物の順に進みます。「今日は何年何月何日か」は時間の見当識、「今いるところはどこか」は場所の見当識を直接問う質問です。一方、「100から7を引く」は計算と注意・集中力の評価、誕生日や住所は生活史に関する記憶の評価であり、見当識とは区別されます。見当識障害はせん妄、認知症、コルサコフ症候群などでみられ、HDS-RやMMSEでもまず確認される項目です。各質問がどの認知機能を測っているかを理解しておくことは、意識障害や認知症を正しく評価するための基本になります。

解答・解説

正解はb, cです

見当識(orientation)とは、自分が今どのような状況に置かれているかを正しく把握する能力であり、通常は「時間」「場所」「人物」の3つの側面で評価する。 ・時間の見当識:今日の年・月・日・曜日、季節、おおよその時刻がわかるか ・場所の見当識:今いる場所(病院・自宅など)や、その地名・階数がわかるか ・人物の見当識:目の前にいる人(家族・医師・看護師など)が誰かわかるか 見当識は意識障害(特にせん妄)や認知症で障害されやすく、一般に時間→場所→人物の順に失われていく。そのため、まず日付と場所を尋ねるのが基本的な評価法となる。 本問では、各質問が認知機能のどの領域を調べているのかを区別することが求められる。「今日は何年何月何日か」「今いるところはどこか」は、その時点の状況を把握しているかを直接問うので見当識の質問である。これに対し、誕生日や住所は本人の生活史に関する知識であり、以前に覚えた情報を思い出せるか(記憶)を調べる質問である。見当識障害があっても保たれていることが多い情報なので、見当識の評価には適さない。

選択肢考察

  1. ×a.  「100から7を引くといくつですか」

    100から7を順に引いていく課題(serial 7s)は、計算能力と注意・集中力(作業記憶)を評価する質問である。改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では計算の項目として、Mini-Mental State Examination(MMSE)では「注意と計算」の項目として用いられる。見当識の評価ではない。

  2. ○b.  「今日は何年何月何日ですか」

    現在の日付を正しく把握しているかを問う質問であり、時間の見当識の評価である。時間の見当識は最も障害されやすく、せん妄や認知症の早期から誤りがみられやすい。HDS-RやMMSEでも、年・月・日・曜日(MMSEでは季節も)を尋ねる項目が設けられている。

  3. ○c.  「今いるところはどこですか」

    自分が今いる場所を理解しているかを問う質問であり、場所の見当識の評価である。「ここは病院か、自宅か」などを答えられるかをみる。MMSEでは都道府県・市町村・病院名・階数なども含めて場所の見当識を確認する。

  4. ×d.  「誕生日はいつですか」

    誕生日は本人の生活史に関する情報で、長年保持してきた記憶(遠隔記憶)を思い出せるかを問う質問である。現在の状況把握を問うものではないため、見当識の評価には当たらない。遠隔記憶は認知症でも比較的後期まで保たれやすい。

  5. ×e.  「住所はどちらですか」

    自宅の住所も個人の生活史に属する既知の情報であり、記憶(比較的古い記憶)を調べる質問である。「今いる場所」を問う場所の見当識とは異なる点に注意する。なお、転居後間もない住所であれば比較的新しい記憶の評価ともなる。

見当識の3要素と質問例

・時間:「今日は何年何月何日ですか」「今日は何曜日ですか」「今の季節は」 ・場所:「ここはどこですか」「ここは何階ですか」 ・人物:「私(そばにいる人)は誰ですか」 障害は通常、時間→場所→人物の順に進む。

見当識障害をきたす主な病態

・意識障害、特にせん妄:急性発症で日内変動があり、注意障害を伴う ・認知症:アルツハイマー型認知症では記憶障害に続いて時間の見当識障害が目立つ ・コルサコフ症候群:記銘力障害、作話とともに見当識障害を呈する

簡易認知機能検査で評価される主な領域

・HDS-R(30点満点、20点以下で認知症を疑う):年齢、日時の見当識、場所の見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算(100−7)、数字の逆唱、5物品記銘、野菜の名前の列挙(言語の流暢性) ・MMSE(30点満点、23点以下で認知症を疑う):時間・場所の見当識、3単語の記銘と再生、注意と計算(serial 7s)、物品呼称、文の復唱、3段階の口頭命令、読字理解、書字、図形模写

POINT

・見当識は時間・場所・人物の3つで評価し、障害は時間→場所→人物の順に進む。 ・「今日は何日か」=時間、「ここはどこか」=場所、「この人は誰か」=人物の見当識。 ・「100−7」は計算・注意の評価、誕生日や住所は記憶(生活史)の評価であり、見当識とは区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。