胸から始まり月経で締めくくる―女子の二次性徴「出現の順番」を一本の物語で覚える
第101回医師国家試験 B問題 第55問
国試問題にチャレンジ
思春期の女子で最も遅くみられるのはどれか。
- a.初経
- b.腋毛発生
- c.陰毛発生
- d.乳房発育
- e.身長急伸
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
女子の思春期はGnRHの脈動的分泌開始に始まり、エストロゲンによる乳房発育(約10歳)が最初の徴候となります。その後、アンドロゲンによる陰毛発生、11歳前後の身長急伸のピーク、腋毛発生と続き、卵巣機能がある程度成熟した結果として平均約12歳で初経が訪れるため、選択肢中で最も遅いのは初経です。初経は身長の伸びのピークを過ぎてから起こるので、その後の伸びは数cm程度にとどまります。男子の最初の徴候は精巣容量の増大であり、思春期全体の最終段階は骨端線閉鎖です。正常な順序と時期を押さえておくことは、思春期早発症・遅発症や原発性無月経を見抜く臨床判断の基礎になります。
解答・解説
正解はaです
女子の思春期に現れる身体変化(二次性徴)が、どの順番で起こるかを問う問題である。 思春期は、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が脈動的に分泌されるようになることで始まる。これにより下垂体から黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、卵巣でエストロゲンが作られるようになる。エストロゲンは乳房の発育と骨の成長を促す。一方、陰毛や腋毛は主に副腎や卵巣に由来するアンドロゲン(男性ホルモン)の作用で生えてくる。 日本人女子の標準的な順序はおおむね次のとおりである。 1. 乳房発育(乳房の膨らみ始め、thelarche):約10歳 2. 陰毛発生(pubarche):乳房発育のやや後、約10〜11歳 3. 身長急伸(成長スパート):11歳前後に身長の伸びが最大になる(最大成長速度期) 4. 腋毛発生:陰毛より遅れて11〜12歳ごろ 5. 初経(初めての月経、menarche):日本人の平均は約12歳(12〜13歳) 初経は、エストロゲンによって子宮内膜が十分に厚くなり、その後の消退出血として起こる。つまり卵巣機能がある程度成熟して初めて現れる現象であり、乳房発育から平均で2年半前後遅れる。また、初経は身長の伸びのピークを過ぎてから起こるため、初経の後に伸びる身長は一般に数cm程度にとどまる。 したがって、選択肢の中で最も遅く現れるのは初経である。
選択肢考察
- ○a. 初経
初経は日本人女子で平均約12歳(12〜13歳)にみられ、選択肢の中で最も遅い。子宮内膜がエストロゲンで十分に増殖し、視床下部-下垂体-卵巣系がある程度成熟してはじめて起こるため、乳房発育の開始から平均2年半前後遅れ、身長の伸びが最大となる時期(身長急伸のピーク)よりも後になる。
- ×b. 腋毛発生
腋毛はアンドロゲンの作用で生え、陰毛より遅れて11〜12歳ごろに現れる。選択肢の中では初経に次いで遅い変化であり、初経と時期が近いため紛らわしいが、標準的な順序では初経より前に位置づけられる。誤って選びやすい選択肢である。
- ×c. 陰毛発生
陰毛は副腎・卵巣由来のアンドロゲンの作用で生え始め、乳房発育のやや後、約10〜11歳でみられる。初経よりも早い。
- ×d. 乳房発育
乳房発育は女子の思春期で最初に現れる徴候で、約10歳で始まる。エストロゲン分泌開始の最初の目に見える表れである。8歳未満(7歳6か月未満とする基準もある)で乳房発育がみられれば思春期早発症を疑う。初経よりもかなり早い。
- ×e. 身長急伸
女子の身長急伸(成長スパート)は乳房発育とほぼ同時期に始まり、11歳前後に最大成長速度となる。女子のスパートは男子より約2年早く始まる。初経は身長急伸のピークを過ぎてから起こるので、身長急伸は初経より早い。
二次性徴の評価:Tanner分類
乳房と陰毛の発達をそれぞれ1〜5度に分けて評価する。1度は思春期前、2度が思春期の開始(乳房では乳輪下の小さな膨らみ=乳房芽)、5度が成人型である。初経は乳房Tanner 3〜4度のころにみられることが多い。
女子と男子の順序の比較
女子:乳房発育 → 陰毛 → 身長急伸(ピーク)→ 腋毛 → 初経 男子:精巣容量の増大(4mL以上)→ 陰毛 → 陰茎の増大 → 身長急伸 → 腋毛・ひげ・声変わり 男子の最初の徴候は精巣の増大であり、身長急伸は女子より約2年遅れて起こる。
思春期全体の最後の変化
男女とも、成長の最終段階は骨端線(成長軟骨板)の閉鎖であり、これにより身長の伸びが止まる。エストロゲンは骨端線閉鎖を促進する。本問の選択肢には含まれていないが、思春期に起こる変化として最も遅いのはこの骨端線の閉鎖である。
思春期の異常
・思春期早発症:女子では7歳6か月未満の乳房発育、8歳未満の陰毛発生、10歳6か月未満の初経などが目安である(日本の診断の手引き)。 ・思春期遅発症:女子で13歳になっても乳房発育がない場合などが目安とされる。原発性無月経は18歳になっても初経がない状態をいう。
POINT
・女子の二次性徴の順序:乳房発育 → 陰毛 → 身長急伸 → 腋毛 → 初経 ・最初は乳房発育(約10歳)、選択肢中で最後は初経(平均約12歳) ・初経は身長の伸びのピークより後に起こる ・腋毛は初経の直前で時期が近く、誤答しやすい ・男子の最初の徴候は精巣容量の増大 ・思春期の最終段階は骨端線閉鎖
