染色体も卵巣も女性なのに―「46,XX・正常卵巣」が指す副腎性器症候群
第101回医師国家試験 B問題 第59問
国試問題にチャレンジ
核型46, XX,正常卵巣を有する性分化異常症はどれか。
- a.Turner症候群
- b.副腎性器症候群
- c.Klinefelter症候群
- d.精巣性女性化症候群
- e.混合型性腺形成不全症
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
性分化は染色体、性腺、内外性器の3段階で決まり、46,XXで正常卵巣をもちながら性分化の異常をきたすのは、性腺以外に由来するアンドロゲン過剰による46,XX DSDで、その代表が先天性副腎過形成による副腎性器症候群です。最多の21-水酸化酵素欠損症ではACTH上昇により副腎アンドロゲンが増え、女児で内性器は正常のまま外性器が男性化し、グルココルチコイド補充で妊孕性も期待できます。Turner症候群(45,X・索状性腺)、Klinefelter症候群(47,XXY・小精巣)、精巣性女性化症候群(46,XY・精巣)、混合型性腺形成不全症(45,X/46,XY・形成不全精巣と索状性腺)は、核型か性腺のいずれかが条件を満たしません。新生児マススクリーニングの17-OHPや塩喪失型の副腎クリーゼも併せて押さえておくと、新生児期の見逃しを防ぐ臨床判断につながります。
解答・解説
正解はbです
性分化異常症(現在は「性分化疾患」disorders of sex development:DSDと呼ばれる)のうち、染色体が正常女性型(46,XX)で、性腺も正常な卵巣であるものを選ぶ問題である。 性分化は、①染色体の性(XX か XY か)→ ②性腺の性(卵巣か精巣か)→ ③内性器・外性器の性(表現型)という3段階で決まる。Y染色体上のSRY遺伝子があると未分化性腺は精巣になり、精巣から分泌されるテストステロンとMüller管抑制物質(抗Müller管ホルモン:AMH)によって男性型の内外性器が作られる。SRYがなければ性腺は卵巣となり、内外性器は女性型に分化する。 したがって「46,XX で正常卵巣があるのに性分化の異常がある」状態とは、染色体と性腺は正常な女性なのに、性腺以外に由来する過剰なアンドロゲンによって外性器が男性化する病態を指す。現在の分類では「46,XX DSD」のうちのアンドロゲン過剰によるものにあたり、その代表が先天性副腎過形成(CAH)による副腎性器症候群である。 設問を解く際は、各選択肢について「核型は何か」「性腺は何か」の2点を確認すればよい。性染色体の数の異常(Turner症候群、Klinefelter症候群)、46,XY の疾患(精巣性女性化症候群)、性染色体モザイクで性腺が精巣系の疾患(混合型性腺形成不全症)は、いずれも条件を満たさない。
選択肢考察
- ×a. Turner症候群
Turner症候群の代表的な核型は45,X(かつては45,XOと表記された)で、46,X,i(Xq)などのX構造異常や45,X/46,XXなどのモザイクもある。X染色体短腕上のSHOX遺伝子の欠失が低身長の原因とされる。卵巣は胎児期に卵胞が急速に失われて索状性腺(線維性の痕跡的な性腺)となり、正常卵巣をもたない。主な症状は低身長、翼状頸、外反肘、性腺機能不全による二次性徴の欠如・原発性無月経で、大動脈縮窄症や馬蹄腎などの心・腎奇形、耐糖能異常、甲状腺炎などの自己免疫疾患、骨粗鬆症、難聴を合併しうる。知能は通常正常である。核型が46,XXでも正常卵巣でもないため誤り。
- ○b. 副腎性器症候群
副腎性器症候群は、副腎から性ホルモン(主にアンドロゲン)が過剰に分泌されて性徴に異常をきたす病態で、大部分は先天性副腎過形成(CAH)によるものである(ほかに性ホルモン産生副腎腫瘍がある)。CAHで最も多いのは21-水酸化酵素欠損症で、コルチゾール合成が障害され、負のフィードバックで副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が増加し、行き場を失った前駆体が副腎アンドロゲンに流れ込む。女児では染色体は46,XX、性腺は正常卵巣で、子宮・卵管などの内性器も女性型であるが、胎児期からのアンドロゲン過剰で陰核肥大や陰唇癒合などの外性器男性化が起こり、出生時に男児と誤認されることがある。常染色体劣性遺伝である。グルココルチコイド(と必要に応じて鉱質コルチコイド)の補充でACTHとアンドロゲンを抑えれば、月経が発来し妊娠も可能となる。本問の条件(46,XX・正常卵巣)に合致する。
- ×c. Klinefelter症候群
Klinefelter症候群は47,XXYが代表的な核型で(46,XY/47,XXYなどのモザイクもある)、性腺は精巣である。精細管の硝子化により小さく硬い精巣、無精子症となり、テストステロン低値とLH・FSH高値(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を示す。高身長で手足が長く、女性化乳房、女性型の体型、小陰茎などを伴い、軽度の学習障害を示すこともある。男性不妊・性腺機能低下の原因として頻度が高い。46,XXでなく卵巣もないため誤り。
- ×d. 精巣性女性化症候群
現在はアンドロゲン不応症(アンドロゲン受容体異常症)と呼ばれる。核型は46,XYで性腺は精巣であり、テストステロンは男性の基準範囲かそれ以上に分泌されるが、X連鎖性のアンドロゲン受容体遺伝子異常のため作用しない。精巣のSertoli細胞からAMHは正常に分泌されるので、Müller管由来の子宮・卵管・腟上部はできない。テストステロンが効かないためWolff管由来の精巣上体・精管・精嚢も発育せず、外性器は女性型で、腟は短く盲端に終わる。完全型では外見は女性で、思春期の原発性無月経、陰毛・腋毛の乏しさ、鼠径ヘルニア内の精巣などを契機に見つかる。乳房はテストステロンから変換されたエストロゲンで発育する。受容体機能が部分的に残る不全型(Reifenstein症候群を含む)では、陰核肥大や陰唇癒合など様々な程度の男性化がみられる。精巣は悪性化の危険があり、摘除が検討される。46,XYで卵巣がないため誤り。
- ×e. 混合型性腺形成不全症
混合型性腺形成不全症は、45,X/46,XYのモザイクが最も多く、片側に形成不全の精巣、反対側に索状性腺をもつ。形成不全精巣のAMH分泌が不十分なため子宮・卵管が存在することが多く、アンドロゲン分泌の程度に応じて外性器の男性化は様々である。Turner症候群様の身体所見(低身長など)を伴うこともある。Y染色体成分をもつ形成不全性腺は性腺芽腫などの胚細胞腫瘍の発生リスクが高い。核型も性腺も条件を満たさないため誤り。
性分化疾患(DSD)の現在の分類
2006年のシカゴ・コンセンサス以降、「仮性半陰陽」「真性半陰陽」などの旧用語に代わり、核型を基にした次の3群に分ける。 1. 性染色体異常に伴うDSD:Turner症候群(45,X)、Klinefelter症候群(47,XXY)、混合型性腺形成不全症(45,X/46,XY)、卵精巣性DSD(46,XX/46,XYキメラなど) 2. 46,XY DSD:精巣形成異常(完全型性腺形成不全=Swyer症候群など)、アンドロゲン合成障害、アンドロゲン作用障害(アンドロゲン不応症、5α-還元酵素欠損症) 3. 46,XX DSD:卵巣形成異常(卵精巣性DSD、46,XX精巣性DSD=SRY転座など)、アンドロゲン過剰(先天性副腎過形成、胎盤アロマターゼ欠損症、母体の男性ホルモン産生腫瘍や薬剤) 旧用語との対応:女性仮性半陰陽 ≒ 46,XX DSD(アンドロゲン過剰)、男性仮性半陰陽 ≒ 46,XY DSD、真性半陰陽 ≒ 卵精巣性DSD。
先天性副腎過形成(21-水酸化酵素欠損症)の要点
・新生児マススクリーニングで血中17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)高値により発見される。 ・塩喪失型ではアルドステロンも不足し、生後数週で低Na血症・高K血症・脱水・ショック(副腎クリーゼ)をきたす。 ・男児では外性器異常が目立たず、塩喪失症状や、後の早期の陰毛発生・身長急伸(仮性思春期早発症)で気づかれる。 ・治療はヒドロコルチゾールの補充(塩喪失型ではフルドロコルチゾン、食塩も併用)。
性分化の基本
・SRYあり → 精巣 → Leydig細胞のテストステロンでWolff管が精巣上体・精管・精嚢へ、Sertoli細胞のAMHでMüller管が退縮。 ・外性器の男性化にはテストステロンが5α-還元酵素で変換されたジヒドロテストステロン(DHT)が必要。 ・SRYなし → 卵巣 → Müller管が卵管・子宮・腟上部へ分化し、Wolff管は退縮する。
POINT
・46,XX・正常卵巣で外性器が男性化 → アンドロゲン過剰による46,XX DSD、代表は先天性副腎過形成(副腎性器症候群) ・最多は21-水酸化酵素欠損症、17-OHP高値、新生児マススクリーニング対象 ・Turner症候群:45,X、索状性腺 ・Klinefelter症候群:47,XXY、小精巣・無精子症 ・精巣性女性化症候群(アンドロゲン不応症):46,XY、精巣あり、子宮なし、外見は女性 ・混合型性腺形成不全症:45,X/46,XY、片側形成不全精巣+片側索状性腺、腫瘍化に注意
