StudyMed医師国家試験

かすれ声の正体は「声の使いすぎ」―声帯ポリープは治療の第一歩も声から

第99回医師国家試験 E問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第99回 E問題 第14問

声帯ポリープについて正しいのはどれか。

  1. a.痛みを伴う。
  2. b.声帯運動が障害される。
  3. c.好発部位は声帯後方である。
  4. d.前癌病変である。
  5. e.発声指導を行う。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は声帯ポリープの基本事項を問う問題だ。考えるカギは、ポリープが「どこに」「なぜ」できる病変なのか。成因と病変の深さが分かれば、症状も治療も自然に導けるよ。
医学生医学生
声帯ポリープは、歌手や大声を出す仕事の人に多いイメージがあります。
ドクタードクター
いい出発点だね。大声や叫び声、長時間の発声といった声の酷使が主な誘因だ。声帯の粘膜のすぐ下、粘膜固有層浅層、いわゆるReinke腔に出血やむくみが起こり、それが限局した隆起になったのが声帯ポリープ。喫煙や上気道炎、咽喉頭酸逆流も悪化因子になる。
医学生医学生
組織学の講義で、声帯は柔らかいカバーが波打つように振動すると習いました。その表層の病変ということですね。
ドクタードクター
そう、body-cover理論だね。ポリープはそのカバーにできる病変だ。では、症状を考えてみよう。痛みはあると思う?
医学生医学生
炎症があるなら、少しは痛みそうな気もしますが……。
ドクタードクター
そう考えたくなるけれど、実際はほとんど痛まない。潰瘍も深部への浸潤もないからね。主症状はかすれ声、つまり嗄声で、大きいものでは息漏れや声の疲れやすさが出る程度だ。喉の痛みや飲み込むときの痛みがあれば、急性喉頭炎や喉頭癌など別の病気を考える必要がある。
医学生医学生
声帯の動きはどうでしょう。ポリープが邪魔をして動きにくくなりそうですが。
ドクタードクター
そこが大事なポイント。ポリープは粘膜表層の病変だから、声帯を開閉する内喉頭筋や、それを支配する反回神経には影響しない。声帯の動き自体は正常に保たれるんだ。声帯が動かないなら、反回神経麻痺や、筋層まで浸潤した進行喉頭癌を疑うことになる。
医学生医学生
耳鼻科の実習で、嗄声の患者さんに甲状腺や胸部の検査をしていたのはそのためですね。
ドクタードクター
その通り。反回神経は胸の中まで下りてから喉頭に戻るから、甲状腺癌、食道癌、肺癌、大動脈瘤などが原因になる。次に好発部位だ。どこにできやすいと思う?
医学生医学生
声帯の後ろのほうでしょうか。
ドクタードクター
そこは間違えやすいところ。発声時に左右の声帯が一番強くぶつかり合うのは、声帯膜様部の中央付近、前1/3と中1/3の境界あたりで、声帯全体でみると前寄りになる。振動の振幅が最大になる場所だから、機械的刺激を受けやすいんだ。声帯の後方、声帯突起付近にできやすいのは、気管挿管や胃食道逆流がきっかけになる喉頭肉芽腫だよ。
医学生医学生
前癌病変かどうかも気になります。嗄声と聞くとつい喉頭癌を思い浮かべてしまって。
ドクタードクター
その警戒心自体は大切だけど、声帯ポリープは炎症性・反応性の良性病変で、前癌病変とはみなされない。喉頭で前癌病変として扱うのは喉頭白板症で、白い角化病変として見え、異形成を伴うことがあるから生検と経過観察が必要になる。
医学生医学生
ということは、正解は発声指導ですね。原因が声の使いすぎなら、まず使い方を直すのが筋だと思います。
ドクタードクター
正解。声の安静と、声帯に負担をかけない発声法を身につける発声指導、つまり音声治療が治療の基本だ。小さく早期のポリープなら、これだけで縮小や消失が期待できる。改善しない場合や大きいものは喉頭微細手術で切除するけれど、術後も再発予防のために発声指導を続ける。禁煙や逆流症の治療も合わせて行うよ。
医学生医学生
似た病気の声帯結節やポリープ様声帯との違いも整理しておきたいです。
ドクタードクター
いい心がけだね。声帯結節は両側対称に小さく硬い隆起ができ、教師や歌手、学童期の男児に多い。ポリープ様声帯、いわゆるReinke浮腫は両側の声帯全長がむくむもので、中年以降の喫煙者に多く、声が低くなるのが特徴だ。こちらは禁煙が重要になる。臨床では、喫煙歴のある中高年の嗄声なら、まず喉頭内視鏡で声門癌を見逃さないことを忘れないでほしい。

まとめ

声帯ポリープは、音声酷使を主な誘因として声帯の粘膜固有層浅層(Reinke腔)に出血や浮腫が生じてできる良性病変で、通常は片側性です。好発部位は左右の声帯が最も強く接触する膜様部中央付近(前1/3と中1/3の境界付近)で、症状は嗄声が主体であり、痛みはなく声帯運動も保たれます。前癌病変ではなく、喉頭の前癌病変として重要なのは喉頭白板症です。治療は声の安静と発声指導が基本で、無効例や大きな病変には喉頭微細手術を行い、術後も再発予防の発声指導を続けます。声帯運動障害や痛みを伴う嗄声では反回神経麻痺や喉頭癌を考えるという鑑別の視点は、嗄声の診療全般に通じる重要な考え方です。

解答・解説

正解はeです

声帯ポリープの成因・好発部位・症状・治療を問う問題である。 声帯ポリープは、大声や叫び声、長時間の発声などの音声酷使(声の乱用)を主な誘因として、声帯粘膜の上皮下にある粘膜固有層浅層(Reinke腔)に出血や浮腫が生じ、それが限局性の隆起となった良性病変である。喫煙、飲酒、上気道炎、咽喉頭酸逆流なども増悪因子となる。 発声時に左右の声帯が最も強くぶつかり合うのは声帯膜様部の中央付近(前1/3と中1/3の境界付近)であり、ここが好発部位となる。病変は粘膜表層にとどまるため、声帯を動かす筋や反回神経には影響せず、声帯運動は正常に保たれる。症状は声門閉鎖不全や声帯振動の乱れによる嗄声(かすれ声)が主体で、痛みはほとんど伴わない。 治療は、まず声の安静と発声指導(音声治療)などの保存的治療を行い、改善が乏しい場合や病変が大きい場合には喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)で切除する。本問ではこの治療方針に合致する選択肢を選ぶ。

選択肢考察

  1. ×a.  痛みを伴う。

    誤り。声帯ポリープは粘膜固有層浅層の浮腫・出血による隆起であり、潰瘍形成や深部への浸潤を伴わないため、通常は痛みを生じない。主症状は嗄声であり、大きなものでは発声時の息漏れや声の疲れやすさ、まれに咳払いや異物感を訴える程度である。咽頭痛や嚥下痛を伴う場合は、急性喉頭炎や喉頭癌などの別の病態を考える。

  2. ×b.  声帯運動が障害される。

    誤り。ポリープは声帯粘膜表層の病変であり、声帯を内転・外転させる内喉頭筋やそれを支配する反回神経には影響しないため、声帯の可動性は保たれる。声帯運動障害(声帯固定)がみられる場合は、反回神経麻痺や、癌が筋層・披裂軟骨まで浸潤した進行喉頭癌(T3以上)などを考える必要がある。

  3. ×c.  好発部位は声帯後方である。

    誤り。声帯ポリープの好発部位は声帯膜様部の中央付近(前1/3と中1/3の境界付近)で、声帯全体でみれば前方寄りである。この部位は発声時に声帯振動の振幅が最大となり、左右の声帯が最も強く接触するため機械的刺激を受けやすい。なお声帯後方(披裂軟骨の声帯突起付近)に好発するのは、気管挿管や胃食道逆流が誘因となる喉頭肉芽腫である。

  4. ×d.  前癌病変である。

    誤り。声帯ポリープは炎症性・反応性の良性病変であり、癌化することはまずなく、前癌病変とはみなされない。喉頭の前癌病変として重要なのは喉頭白板症(声帯粘膜の白色の角化病変で、異形成を伴うことがある)であり、これは生検による病理評価と経過観察が必要となる。

  5. ○e.  発声指導を行う。

    正しい。声帯ポリープの主因は音声酷使であるため、声の安静を保ち、声帯に過度の負担をかけない発声法を身につけさせる発声指導(音声治療)が治療の基本となる。小さく発症早期のポリープは保存的治療で縮小・消失することがある。保存的治療で改善しない例や大きな病変では喉頭微細手術で切除するが、術後にも再発予防のために声の安静と発声指導を行う。禁煙や上気道炎・逆流症の治療などの増悪因子への対策も併せて行う。

声帯の良性病変の比較

・声帯ポリープ:通常は片側性。声帯膜様部中央付近に広基性または有茎性の隆起。音声酷使が誘因。成人に多い。 ・声帯結節:両側対称性。声帯膜様部の前1/3と中1/3の境界付近に小さな硬い隆起。歌手・教師などの職業性音声酷使者や、学童期の男児(学童結節)、女性に多い。音声治療が第一選択。 ・ポリープ様声帯(Reinke浮腫):両側の声帯全長にわたる浮腫性の腫脹。中年以降の喫煙者(とくに女性)に多く、声が低くなる(男性様の低い声)。禁煙が重要。 ・喉頭肉芽腫:声帯後方(声帯突起部)に好発。気管挿管や胃食道逆流、咳払いが誘因。 ・喉頭白板症:白色の角化病変で前癌病変として扱う。

声帯の構造と層構造(body-cover理論)

声帯は、上皮・粘膜固有層浅層(Reinke腔)・中間層・深層・声帯筋からなる。上皮と浅層が柔らかい「カバー」として波動状に振動し、発声に関与する。声帯ポリープやReinke浮腫はこの浅層に生じる病変である。

鑑別の要点

嗄声を主訴とする場合、喫煙歴のある中高年では喉頭癌(声門癌)との鑑別が重要であり、喉頭内視鏡での観察と必要に応じた生検を行う。声帯運動障害を伴えば反回神経麻痺の原因検索(甲状腺癌、食道癌、肺癌、胸部大動脈瘤など)が必要である。

POINT

・声帯ポリープは音声酷使による良性病変で、通常は片側性。 ・好発部位は声帯膜様部の中央付近(前1/3と中1/3の境界付近)。 ・症状は嗄声のみで、痛みはなく、声帯運動は正常。 ・前癌病変ではない(喉頭の前癌病変は白板症)。 ・治療は声の安静・発声指導が基本、無効例や大きな病変は喉頭微細手術。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。