表皮に棲む見張り番―Langerhans細胞と皮膚の「住所録」
第120回医師国家試験 C問題 第30問
国試問題にチャレンジ
表皮内に存在するのはどれか。
- a.皮脂腺
- b.肥満細胞
- c.毛母細胞
- d.線維芽細胞
- e.Langerhans細胞
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
表皮は血管のない重層扁平上皮で、構成細胞の大部分はケラチノサイトですが、基底層のメラノサイトとMerkel細胞、主に有棘層のLangerhans細胞も存在します。Langerhans細胞は造血系由来の抗原提示細胞で、CD1a陽性、Birbeck顆粒をもち、アレルギー性接触皮膚炎の感作に関わります。一方、線維芽細胞や肥満細胞は真皮に、皮脂腺や毛母細胞などの皮膚付属器の本体は真皮から皮下組織にあり、表皮内には存在しません。「どの層にどの細胞がいるか」という住所録を押さえておくと、悪性黒色腫やMerkel細胞癌、じんま疹や接触皮膚炎といった皮膚疾患の病態理解がぐっと容易になります。
解答・解説
正解はeです
本問は、皮膚の層構造と、それぞれの層にどの細胞・構造があるかを問う一般問題である。 皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織の3層からなる。表皮は血管のない重層扁平上皮で、深いほうから基底層、有棘層、顆粒層、角質層(手のひら・足の裏ではさらに淡明層)に分かれる。表皮の細胞の大部分はケラチノサイト(角化細胞)で、基底層で分裂した細胞が上へ移動しながら角化し、最後に垢として剥がれ落ちる。ケラチノサイトの間には、少数ながら別の種類の細胞が入り込んでいる。基底層のメラノサイト(メラニンをつくる細胞)とMerkel細胞(触覚に関わる細胞)、主に有棘層にあるLangerhans細胞の3つが代表である。 これに対し真皮は、膠原線維(コラーゲン線維)や弾性線維などでできた結合組織で、線維芽細胞、肥満細胞、マクロファージ、血管、神経がある。毛包の深い部分や皮脂腺・汗腺などの皮膚付属器も、真皮から皮下組織にかけて位置している。 したがって「表皮内」にある細胞は、ケラチノサイトと、上記の3種類の細胞であると整理しておけば正解を選べる。
選択肢考察
- ×a. 皮脂腺
誤り。皮脂腺は真皮にある皮膚付属器で、多くは毛包に付属し、その導管は毛包の上部(漏斗部)に開く。腺細胞そのものが壊れて分泌物になる全分泌(ホロクリン分泌)という形式で皮脂を出す。手のひらと足の裏にはない。表皮に入り込むのは毛包の出口の部分だけで、腺の本体は表皮にはない。
- ×b. 肥満細胞
誤り。肥満細胞(マスト細胞)は、主に真皮の血管のまわりに分布し、皮下組織にもみられる。細胞の表面にIgEが結合する受容体(FcεRI)をもち、抗原がIgEに結合すると、ヒスタミンなどを放出する。これがじんま疹などのI型アレルギー(即時型アレルギー)の中心となる。表皮には通常存在しない。
- ×c. 毛母細胞
誤り。毛母細胞は、毛包の最も深い部分である毛球にあり、毛乳頭(真皮由来の結合組織)を包むように並んでいる。盛んに分裂して毛をつくり出す。毛球は真皮の深い部分から皮下組織にかけてあるため、表皮内の細胞ではない。分裂が盛んなので、抗がん薬による脱毛の原因となる。
- ×d. 線維芽細胞
誤り。線維芽細胞は真皮の主な細胞で、膠原線維(コラーゲン)、弾性線維、基質(ヒアルロン酸など)をつくり、皮膚の強さと弾力を保つ。皮下組織にも存在する。創傷治癒の際には増殖して肉芽組織をつくる。表皮には存在しない。
- ○e. Langerhans細胞
正しい。Langerhans細胞は、主に表皮の有棘層にある樹状細胞(突起をもつ免疫細胞)で、造血系の細胞に由来する。表皮に入ってきた抗原を取り込み、所属リンパ節に移動してT細胞に抗原を提示する抗原提示細胞として働く。アレルギー性接触皮膚炎(IV型アレルギー)の感作の段階で重要である。CD1aやランゲリン(CD207)が目印となり、電子顕微鏡ではテニスラケットのような形のBirbeck顆粒がみられる。
表皮の構成細胞
・ケラチノサイト(角化細胞):表皮の細胞の大部分を占める。基底層で分裂し、有棘層・顆粒層を経て角質層になる。正常ではおよそ4週間ほどで入れ替わるとされる。 ・メラノサイト:基底層にあり、神経堤(神経管ができるときに生じる細胞群)に由来する。メラニンを合成し、周りのケラチノサイトへ渡して紫外線から細胞を守る。悪性化したものが悪性黒色腫である。 ・Langerhans細胞:主に有棘層にある抗原提示細胞。CD1a陽性、Birbeck顆粒をもつ。この細胞が異常に増える病気がLangerhans細胞組織球症である。 ・Merkel細胞:基底層にあり、知覚神経の末端と接して触覚の受容に関わる。神経内分泌の性質をもち、その腫瘍がMerkel細胞癌である。 ※ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色では、ケラチノサイト以外の3種類は細胞質が明るく抜けて見えるため「明調細胞」と呼ばれる。ただし、HE染色だけで3種類を区別するのは難しく、免疫染色などを使う。
真皮・皮下組織にあるもの
・真皮:線維芽細胞、肥満細胞、マクロファージ、膠原線維・弾性線維、血管、リンパ管、神経、Meissner小体(触覚) ・皮膚付属器:毛包(毛母細胞、毛乳頭)、皮脂腺、エクリン汗腺、アポクリン汗腺。腺の本体は真皮から皮下組織にある。 ・皮下組織:脂肪細胞が中心。Pacini小体(振動覚)がある。
表皮を貫く構造
毛包の上部や、エクリン汗腺の導管(表皮内では表皮内汗管と呼ぶ)は表皮を貫いて皮膚の表面に開く。
POINT
・表皮にある細胞は、ケラチノサイト、メラノサイト、Langerhans細胞、Merkel細胞である。 ・Langerhans細胞は有棘層にある抗原提示細胞で、CD1a陽性、Birbeck顆粒をもつ。 ・メラノサイトとMerkel細胞は基底層にある。 ・線維芽細胞と肥満細胞は真皮にある。 ・皮脂腺や毛母細胞などの皮膚付属器の本体は、真皮から皮下組織にかけてある。
