StudyMed医師国家試験

「医療っぽい」けれど医行為じゃない―在宅で介護福祉士ができること・できないこと

第120回医師国家試験 C問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第120回 C問題 第29問

高齢者に対する在宅医療での医療的行為で介護福祉士が実施できないのはどれか。

  1. a.排泄後の陰部の洗浄
  2. b.持続静脈注射の注射針抜去
  3. c.パルスオキシメーターの装着
  4. d.自動血圧測定器による血圧測定
  5. e.電子体温計による腋窩体温測定

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、在宅医療の現場で介護福祉士が行える行為と行えない行為を見分ける問題だ。ポイントは「医行為かどうか」という線引き。見た目が医療的かどうかではなく、医学的な判断や技術が必要か、体を傷つける危険があるかで考えてみよう。
医学生医学生
正直、パルスオキシメーターや血圧測定も医療機器を使うので、介護職はできないのかと思いました。
ドクタードクター
そう感じるのも無理はないね。まず前提を整理しよう。医師法や保健師助産師看護師法によって、医療的な判断や技術を要する医行為は、医師か、医師の指示を受けた看護師などが診療の補助として行うものとされている。介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格で、入浴・排泄・食事などの身体介護や生活援助が本来の業務だ。
医学生医学生
でも在宅の現場だと、介護職の方がバイタルを測っている場面をよく見ます。
ドクタードクター
そこが大事なところ。生活の場には「医療っぽく見えるけど危険が少なく、医行為に当たらない行為」がたくさんある。厚生労働省は2005年の通知で、そうした行為を原則として医行為ではないと整理したんだ。電子体温計での腋窩体温測定、自動血圧測定器での血圧測定、新生児以外で入院治療の必要がない人へのパルスオキシメーター装着などがその例だよ。
医学生医学生
じゃあ、体温・血圧・SpO2の測定は介護福祉士もできるんですね。陰部洗浄はどうでしょう。
ドクタードクター
排泄後の陰部洗浄は、尿路感染症や皮膚トラブルを防ぐ日常の清潔ケアで、まさに身体介護そのもの。医行為ではなく、介護福祉士の本来業務だね。
医学生医学生
そうなると、残る持続静脈注射の抜針が実施できない行為ということですか。抜くだけなら簡単そうにも思えますが。
ドクタードクター
そこが落とし穴なんだ。正解は持続静脈注射の注射針抜去。点滴は医師の指示に基づく治療で、抜針もその管理の一部なんだよ。抜くときには、投与を終えてよいかの判断、出血や血腫を防ぐ圧迫止血、カテーテルが体内に残っていないかの確認、刺入部の炎症や薬液漏れの観察が必要になる。
医学生医学生
抗凝固薬を飲んでいる高齢者だと、止血がうまくいかないこともありそうですね。
ドクタードクター
その通り。在宅の高齢者は心房細動などで抗凝固薬を飲んでいる人も多く、出血のリスクが大きい。こうした判断と技術を伴うから、抜針は医行為として医師か看護師が行うんだ。
医学生医学生
パルスオキシメーターで低い値が出たら、介護福祉士が酸素の流量を上げてもいいんでしょうか。
ドクタードクター
いい質問だ。装着して測ることはできても、その値をもとに酸素流量を変えるといった判断は医療職の役割になる。血圧や体温も同じで、異常値が出たら医師や看護師に報告して判断を仰ぐ。測定と判断を分けて考えるといいよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、介護職が喀痰吸引をできるようになったと聞いた覚えがあります。
ドクタードクター
よく覚えているね。2011年の法改正、2012年度の施行で、所定の研修を修了した介護福祉士などは、医師の指示のもとで喀痰吸引と経管栄養を一定の条件下で行えるようになった。吸引は口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部、経管栄養は胃瘻・腸瘻と経鼻経管栄養だ。ただし、点滴に関わる行為は刺入・管理・抜針のいずれもこの範囲に入らない。
医学生医学生
研修で広がったのは吸引と経管栄養の2つだけで、点滴は対象外、と覚えればいいですね。
ドクタードクター
そう。ほかにも通知では、条件付きで軟膏塗布、湿布の貼付、点眼、一包化された内服薬の服用介助、坐薬の挿入、爪切りや口腔ケア、ストーマのパウチにたまった排泄物の処理なども医行為に当たらないとされている。一方、インスリン注射や摘便、膀胱留置カテーテルの挿入などは介護職は行えない。いずれも本人の状態が安定していることが前提だよ。
医学生医学生
地域医療の実習で訪問診療に同行したとき、ヘルパーさんと訪問看護師さんが役割を分けていたのはこういう理由だったんですね。
ドクタードクター
まさにそう。在宅医療は医師だけでは回らない。誰が何をできるかを知っていれば、医師として適切な指示を出し、多職種でうまく連携できる。将来、在宅患者さんを診るときに必ず役に立つ知識だよ。

まとめ

医師法・保健師助産師看護師法により、医学的判断や技術を要する医行為は医師や医師の指示を受けた看護師などが行い、介護福祉士は身体介護や生活援助を本来の業務とします。2005年の厚生労働省通知により、電子体温計による腋窩体温測定、自動血圧測定器による血圧測定、新生児以外で入院治療の必要がない人へのパルスオキシメーター装着などは原則として医行為に当たらず、陰部洗浄などの清潔ケアとともに介護福祉士が行えます。一方、持続静脈注射の抜針は投与終了の判断や止血・観察を伴う医行為であり、研修修了者に認められた喀痰吸引・経管栄養の範囲にも含まれないため、医師または看護師が行います。また、測定はできても、その値に基づく判断は医療職が担う点も押さえておきましょう。職種ごとの業務範囲を理解することは、在宅医療での多職種連携や医師としての適切な指示につながります。

解答・解説

正解はbです

本問は、在宅で暮らす高齢者のケアにおいて、介護福祉士が行ってよい行為と行ってはならない行為を見分けられるかを問う一般問題である。 介護福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格の介護職で、入浴・排泄・食事などの身体介護や生活援助を担う。一方、医師法・保健師助産師看護師法により、医療的な判断や技術を必要とする「医行為」は、医師や、医師の指示を受けた看護師など(診療の補助)でなければ行うことができない。 ただし、生活の場では「医療っぽく見えるが、実際には危険が少なく医行為に当たらない行為」が多くある。厚生労働省は2005年の通知で、これらを原則として医行為ではないと整理した。具体的には、電子体温計で腋の下の体温を測る、自動血圧測定器で血圧を測る、入院治療の必要がない人(新生児を除く)にパルスオキシメーターを付ける、軽い切り傷・擦り傷の処置などである。これらは介護職が行える。 また、2011年の法改正(2012年度施行)で、所定の研修を修了した介護福祉士などは、医師の指示のもとで喀痰吸引と経管栄養を一定の条件下で行えるようになった。しかし、点滴(静脈内への持続注射)に関わる行為は、針の刺入・管理・抜去のいずれもこれらの範囲に含まれず、医行為として医師・看護師が行う。 したがって、日常の清潔ケアやバイタルサインの測定はできるが、持続静脈注射の抜針はできない、という整理になる。

選択肢考察

  1. ×a.  排泄後の陰部の洗浄

    実施できる。排泄後に陰部を洗って清潔にすることは、尿路感染症や皮膚トラブルを防ぐための日常的な清潔ケアであり、身体介護そのものである。医学的な判断や医療技術を必要としないため医行為ではなく、介護福祉士の本来の業務に当たる。

  2. ○b.  持続静脈注射の注射針抜去

    実施できない。持続静脈注射(点滴)は医師の指示に基づく治療行為であり、抜針もその管理の一部である。抜くときには、投与の終了を判断すること、出血や血腫を防ぐために圧迫止血すること、カテーテルが体内に残っていないか確認すること、刺入部に炎症や薬液の漏れがないか観察することなどが必要になる。特に抗凝固薬を使っている高齢者では出血の危険が大きい。こうした医学的判断と技術を伴うため医行為に当たり、医師または看護師が行う。研修を受けた介護福祉士に認められている喀痰吸引・経管栄養にも含まれない。

  3. ×c.  パルスオキシメーターの装着

    実施できる。パルスオキシメーターは指先にはさむだけで、皮膚の上から経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測る機器であり、体を傷つけない。厚生労働省の通知では、新生児以外で入院治療の必要がない人に装着することは原則として医行為に当たらないとされ、介護職が行える。ただし、測った値をもとに酸素流量を変えるなどの判断は医療職が行う。

  4. ×d.  自動血圧測定器による血圧測定

    実施できる。自動血圧計による測定は、家庭でも本人や家族が日常的に行っている安全な行為であり、通知で医行為に当たらないとされている。介護福祉士は日々の体調確認として行うことができる。異常な値が出たときは、医師や看護師に報告して判断を仰ぐ。

  5. ×e.  電子体温計による腋窩体温測定

    実施できる。電子体温計で腋の下の体温を測ることは体を傷つけない簡単な行為で、通知では外耳道での体温測定とあわせて医行為に当たらないとされている。発熱の早期発見のために介護の場面で日常的に行われている。

原則として医行為に当たらないとされる主な行為(2005年 厚生労働省通知)

・電子体温計による腋窩での体温測定、耳式電子体温計による外耳道での体温測定 ・自動血圧測定器による血圧測定 ・新生児以外で入院治療の必要がない人へのパルスオキシメーターの装着 ・軽い切り傷・擦り傷・やけどなどの処置(専門的な判断や技術を必要としないもの) ・一定の条件を満たす場合の、皮膚への軟膏塗布、湿布の貼付、点眼、一包化された内服薬の服用介助、坐薬の挿入、鼻腔への薬剤噴霧の介助 ・爪切り、口腔ケア、耳垢の除去(耳垢塞栓を除く)、ストーマ装具のパウチにたまった排泄物の処理、自己導尿の補助、市販の使い捨て浣腸器による浣腸 ※いずれも、本人の状態が安定していることなどが前提であり、異常があれば医療職に報告する。

研修を修了した介護職が行える医療的ケア(2012年度から)

・喀痰吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部) ・経管栄養(胃瘻・腸瘻、経鼻経管栄養) 認定特定行為業務従事者として、医師の指示のもと、看護職と連携して行う。

介護職が行えない行為の例

・注射、点滴の開始・管理・抜針 ・インスリン注射 ・褥瘡の処置のうち専門的な判断を要するもの ・摘便、膀胱留置カテーテルの挿入など

関連職種の整理

・医師:医行為全般を行う。 ・看護師:療養上の世話と、医師の指示による診療の補助を行う。 ・介護福祉士:身体介護・生活援助を中心に行い、研修修了者は喀痰吸引・経管栄養を行える。

POINT

・介護福祉士は、清潔ケアや体温・血圧・SpO2の測定などのバイタルサイン確認を行える。 ・点滴(持続静脈注射)は、抜針も含めて医行為であり、医師・看護師が行う。 ・研修を修了した介護福祉士は、医師の指示のもと喀痰吸引と経管栄養を行える。 ・パルスオキシメーターの装着は、新生児以外で入院治療の必要がない人に対しては医行為に当たらない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。