StudyMed医師国家試験

皮膚は内臓を映す鏡―デルマドロームの中にひとつだけ紛れた「紫外線の病気」

第117回医師国家試験 F問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第117回 F問題 第26問

デルマドロームでないのはどれか。

  1. a.Sweet病
  2. b.皮膚筋炎
  3. c.黒色表皮腫
  4. d.日光角化症
  5. e.壊疽性膿皮症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はデルマドロームの知識を問う問題だ。デルマドロームとは、内臓の悪性腫瘍や血液疾患、内分泌・代謝疾患、炎症性腸疾患などの全身疾患を反映して皮膚に現れる病変のこと。各選択肢について「その皮疹の背景に、皮膚以外の病気が隠れていることがあるか」を考えていけば答えにたどり着けるよ。
医学生医学生
皮膚科の講義で「皮膚は内臓の鏡」と習いました。皮膚を見て内臓の病気を見つける、という考え方ですよね。
ドクタードクター
その通り。皮膚は直接目で見える臓器だから、皮疹が内臓疾患の最初の手がかりになることがある。だからデルマドロームを知っていると、皮疹をみたときに「背景に何かないか」と全身を検索するスイッチが入るんだ。まず皮膚筋炎から考えてみよう。
医学生医学生
ヘリオトロープ疹やGottron徴候が出る病気ですね。成人では悪性腫瘍の合併が多いので、診断したらがん検索をすると膠原病内科の実習で聞きました。
ドクタードクター
完璧だね。成人の皮膚筋炎ではおよそ2〜3割に内臓悪性腫瘍が合併するとされ、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、悪性リンパ腫などが報告されている。特に抗TIF1-γ抗体陽性例は悪性腫瘍の合併率が高いから、自己抗体の種類にも注目したい。では黒色表皮腫は?
医学生医学生
腋窩や項部が黒くザラザラになる病気ですよね。肥満の人に多いイメージなので、内臓疾患とはあまり関係ないと思っていました。
ドクタードクター
そこは半分正解で半分は注意が必要なところ。黒色表皮腫には、肥満や2型糖尿病などのインスリン抵抗性に伴う良性型と、内臓悪性腫瘍に伴う悪性型がある。悪性型の背景は胃癌などの腹部腺癌が多い。良性型もインスリン抵抗性という全身の代謝異常を反映しているから、どちらにしてもデルマドロームなんだ。
医学生医学生
なるほど、肥満と関係していても「全身の病態を映している」ことに変わりはないんですね。悪性型を疑うのはどんなときですか。
ドクタードクター
肥満のない中高年で急に出てきた、急速に広がる、口腔粘膜や手掌にまで病変が及ぶ、といった場合だ。そうしたときは悪性腫瘍の検索が欠かせない。次はSweet病と壊疽性膿皮症をまとめて見てみよう。
医学生医学生
どちらも好中球が関係する病気だったと思います。病理実習で真皮に好中球がびっしり浸潤している標本を見ました。
ドクタードクター
いい記憶だね。両者は感染によらない好中球浸潤を主体とする好中球性皮膚症に属する。Sweet病は発熱と好中球増多を伴って、顔や頸部、上肢に有痛性の浮腫性紅斑が急に出る。上気道感染後に起こることも多いけれど、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病に合併することがあって、血液疾患のデルマドロームとして重要だ。
医学生医学生
壊疽性膿皮症は、消化器内科を回ったとき潰瘍性大腸炎の患者さんの足にひどい潰瘍があって、指導医の先生から皮膚科に紹介すると聞きました。
ドクタードクター
まさにそれだね。壊疽性膿皮症は下肢を中心に、辺縁が紫紅色で堤防状に隆起し、下掘れを伴う有痛性の潰瘍をつくる。潰瘍性大腸炎やCrohn病、関節リウマチ、白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患を高率に合併する。外傷部位に新しい病変が出るpathergyもあるから、安易なデブリードマンは避けたい。
医学生医学生
そうすると残る日光角化症だけは、内臓との関係が思い浮かびません。高齢者の顔にできるカサカサした赤い病変ですよね。
ドクタードクター
その通り、これが正解だ。日光角化症は長年の紫外線曝露を受けた顔面や禿頭部、手背などの露光部に、鱗屑や痂皮を伴う角化性の紅斑として生じる。表皮内に異型角化細胞が増える表皮内癌で、放置すると浸潤性の有棘細胞癌へ進むことがある。原因は紫外線という皮膚への外的な要因だから、内臓疾患を映した病変ではないんだ。
医学生医学生
「皮膚の癌の前駆病変」ではあっても、「内臓の病気のサイン」ではないということですね。癌という言葉につられて引っかかりそうでした。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。似た表皮内有棘細胞癌にBowen病があって、かつては内臓悪性腫瘍の合併が多いとされたけれど、現在その関連は否定的と考えられている。日光角化症の治療は凍結療法やイミキモド外用、外科的切除などだ。
医学生医学生
ほかにも覚えておくべきデルマドロームはありますか。CBTの過去問でLeser-Trélat徴候という名前を見た気がします。
ドクタードクター
いいところを突くね。脂漏性角化症が急速に多発するLeser-Trélat徴候は胃癌などの内臓悪性腫瘍のサインとして有名だ。ほかにも、匍行性迂回状紅斑は肺癌など、壊死性遊走性紅斑はグルカゴノーマ、腫瘍随伴性天疱瘡は悪性リンパ腫やCastleman病と関連する。代謝や内分泌なら、脛骨前粘液水腫はBasedow病、黄色腫は脂質異常症、リポイド類壊死は糖尿病。肝疾患ではくも状血管腫や手掌紅斑が知られている。
医学生医学生
臨床では、皮膚科の外来で皮疹を診るだけでなく、背景の全身疾患を探しに行く姿勢が大切なんですね。
ドクタードクター
その通り。特に皮膚筋炎や悪性型黒色表皮腫のように悪性腫瘍と結びつく皮疹は、がんが見つかる前に現れることもある。皮膚の変化をきっかけに早期発見につなげられるかどうかは、デルマドロームを知っているかにかかっているといっていい。

まとめ

デルマドロームとは、内臓悪性腫瘍・血液疾患・内分泌代謝疾患・炎症性腸疾患などの全身疾患を反映して皮膚に現れる病変です。皮膚筋炎は内臓悪性腫瘍(特に抗TIF1-γ抗体陽性例)、黒色表皮腫は胃癌などの腺癌やインスリン抵抗性、Sweet病は骨髄異形成症候群や白血病、壊疽性膿皮症は炎症性腸疾患や血液疾患と関連する代表的なデルマドロームです。一方、日光角化症は長年の紫外線曝露によって露光部に生じる表皮内癌(有棘細胞癌の前駆病変)であり、内臓疾患を反映した病変ではないためデルマドロームには含まれません。Leser-Trélat徴候や壊死性遊走性紅斑など他のデルマドロームも含めて整理しておくと、皮疹を手がかりに全身疾患を早期に見つけ出す臨床力につながります。

解答・解説

正解はdです

デルマドロームとは

デルマドローム(dermadrome)は「dermatology(皮膚)」と「syndrome(症候群)」を合わせた語で、内臓の悪性腫瘍、血液疾患、内分泌・代謝疾患、炎症性腸疾患などの全身疾患を反映して出現する皮膚病変を指す。皮膚は直接目に見えるため、こうした皮膚症状が内臓疾患を見つけるきっかけになることがある。したがって、デルマドロームに該当する皮疹をみたら、背景にある全身疾患を積極的に検索することが臨床上重要である。

本問の考え方

各選択肢について「その皮膚疾患が皮膚以外の疾患と関連して出現するか」を判断すればよい。Sweet病(血液腫瘍)、皮膚筋炎(内臓悪性腫瘍)、黒色表皮腫(内臓悪性腫瘍・インスリン抵抗性)、壊疽性膿皮症(炎症性腸疾患・血液疾患など)はいずれも内臓疾患との関連が強く、代表的なデルマドロームである。一方、日光角化症は長年の紫外線曝露によって皮膚そのものに生じる表皮内癌(有棘細胞癌の前駆病変)であり、内臓疾患を反映した病変ではない。よってデルマドロームでないのは日光角化症である。

選択肢考察

  1. ×a.  Sweet病

    デルマドロームである。Sweet病(急性熱性好中球性皮膚症)は、発熱・末梢血好中球増多とともに、顔面・頸部・上肢などに有痛性で浮腫性に隆起した紅斑(隆起が強く偽水疱様にみえることもある)が急に出現する疾患である。病理では真皮に密な好中球浸潤を認め、血管炎は伴わない。上気道感染などに続発する例が多いが、骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病などの血液悪性腫瘍に先行・合併する例があり、血液疾患のデルマドロームとして重要である。治療は副腎皮質ステロイドがよく効く。

  2. ×b.  皮膚筋炎

    デルマドロームである。皮膚筋炎はヘリオトロープ疹(上眼瞼の紫紅色浮腫性紅斑)、Gottron丘疹・Gottron徴候(手指関節背面の角化性紅斑)、機械工の手、ショールサイン、Vネックサインなどの特徴的皮疹と近位筋優位の筋力低下を示す自己免疫疾患である。成人例ではおよそ2〜3割に内臓悪性腫瘍が合併し、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、悪性リンパ腫などが報告されている。とくに抗TIF1-γ抗体陽性例では悪性腫瘍合併率が高い。そのため成人の皮膚筋炎と診断したら全身の悪性腫瘍検索を行う。

  3. ×c.  黒色表皮腫

    デルマドロームである。黒色表皮腫は項部、腋窩、鼠径部、臍窩など間擦部に、黒褐色の色素沈着を伴うビロード状・乳頭状の皮膚肥厚を生じる疾患である。肥満・2型糖尿病などのインスリン抵抗性や内分泌異常に伴う良性型と、内臓悪性腫瘍に伴う悪性型に分けられる。悪性型の背景としては胃癌をはじめとする腹部の腺癌が多く、急速に進行・広範囲に及ぶ例、口腔粘膜や手掌(tripe palms)にも病変が及ぶ例、非肥満の中高年発症例では悪性腫瘍の検索が必須である。

  4. ○d.  日光角化症

    デルマドロームではない。日光角化症(光線角化症)は、長期にわたる紫外線曝露を受けた高齢者の顔面・頭部(禿頭部)・手背などの露光部に、鱗屑や痂皮を伴う紅色〜褐色の角化性局面として生じる。表皮内に異型角化細胞が増殖する表皮内癌(上皮内有棘細胞癌)と位置づけられ、放置すると浸潤性の有棘細胞癌へ進展することがある。原因は紫外線という皮膚への外的要因であり、内臓疾患を反映して出現する皮膚病変ではないため、デルマドロームには含まれない。治療は凍結療法、イミキモド外用、外科的切除などが用いられる。

  5. ×e.  壊疽性膿皮症

    デルマドロームである。壊疽性膿皮症は好中球性皮膚症の一つで、下肢を中心に(体幹にも生じる)、無菌性の膿疱・丘疹・結節が急速に崩れて、紫紅色に縁取られ辺縁が堤防状に隆起し、下掘れを伴う有痛性の潰瘍を形成する。外傷部位に新たな病変が生じる現象(pathergy)がみられる。潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患、関節リウマチ、高安動脈炎(大動脈炎症候群)、白血病・骨髄異形成症候群・IgA型骨髄腫などの血液疾患を高率に合併するため、全身疾患の検索が必要である。治療は副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬、TNF阻害薬などである。

主なデルマドロームと関連する全身疾患

・内臓悪性腫瘍と関連するもの:皮膚筋炎、悪性型黒色表皮腫、Leser-Trélat徴候(脂漏性角化症の急速多発;胃癌など)、匍行性迂回状紅斑(肺癌など)、腫瘍随伴性天疱瘡(悪性リンパ腫、Castleman病など)、壊死性遊走性紅斑(グルカゴノーマ)、乳房外Paget病(一部で直腸癌・尿路癌に伴う二次性病変)、後天性魚鱗癬(悪性リンパ腫など) ・血液疾患と関連するもの:Sweet病、壊疽性膿皮症 ・炎症性腸疾患と関連するもの:結節性紅斑、壊疽性膿皮症 ・内分泌・代謝疾患と関連するもの:良性型黒色表皮腫(インスリン抵抗性)、リポイド類壊死・糖尿病性水疱(糖尿病)、脛骨前粘液水腫(Basedow病)、黄色腫(脂質異常症) ・肝疾患と関連するもの:くも状血管腫、手掌紅斑

好中球性皮膚症

Sweet病と壊疽性膿皮症はいずれも感染によらない好中球浸潤を主体とする疾患群(好中球性皮膚症)に属し、血液疾患や炎症性腸疾患との合併、ステロイドへの反応性など共通点が多い。Behçet病も同じ枠組みで理解される。

日光角化症の位置づけ

日光角化症はBowen病と並ぶ代表的な表皮内有棘細胞癌である。Bowen病は露光部以外にも生じ、ヒ素曝露やヒトパピローマウイルスとの関連が知られる。かつてBowen病は内臓悪性腫瘍の合併が多いとされたが、現在はその関連は否定的である。

POINT

・デルマドローム=内臓疾患(悪性腫瘍、血液疾患、内分泌疾患、炎症性腸疾患など)を反映して現れる皮膚病変。 ・Sweet病→MDS・白血病、皮膚筋炎→内臓悪性腫瘍(抗TIF1-γ抗体)、黒色表皮腫→胃癌などの腺癌/インスリン抵抗性、壊疽性膿皮症→潰瘍性大腸炎・Crohn病・血液疾患。 ・日光角化症は紫外線による表皮内癌(有棘細胞癌の前駆病変)で、デルマドロームではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。