StudyMed医師国家試験

5枚の指から骨折を探せ―骨端線・Heberden結節・脱臼という「ひっかけ」を見破る読影術

第119回医師国家試験 E問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第119回 E問題 第12問

手指のエックス線写真(①~⑤)を下に示す。  骨折を認めるのはどれか。

第119回 E問題 第12問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は手指のエックス線写真を5枚並べて、骨折しているものを1つ選ぶ読影問題だ。一見どれも「何か変」に見えるけれど、骨折と紛らわしい所見をきちんと区別できるかがポイントになる。まず、骨折を読むときに何を確認するか、言えるかな。
医学生医学生
骨折線があるかどうか、ですよね。黒い線が見えたら骨折、と思っていました。
ドクタードクター
半分正解。大事なのは「骨皮質の連続性が途絶えているか」だ。黒い線でも、骨折でないものはたくさんある。加えて、骨片が分かれていないか、骨の輪郭に段差がないか、骨折線が関節面に及んでいないかを順に見ていく。
医学生医学生
黒い線でも骨折じゃないもの……小児の骨端線がそうですね。整形外科の講義で「骨端線を骨折と見間違えるな」と何度も言われました。
ドクタードクター
その通り。今回の5枚には、まさにその小児の手指が含まれている。各指節骨の基部、つまり近位端に、関節面と平行な滑らかな透亮帯が並んでいる像だ。これは成長軟骨板で、正常像なんだよ。
医学生医学生
近位端なんですね。てっきり骨の両端にあるのかと思っていました。
ドクタードクター
指節骨の骨端核は基部にしかないんだ。逆に母指以外の中手骨では遠位端、骨頭側にある。骨端線は位置が決まっていて、形が滑らかで規則的、左右対称という特徴から骨折線と区別できる。迷ったら健側と比較撮影するのが実践的だね。
医学生医学生
では、関節の周りがゴツゴツしている写真はどうでしょう。DIP関節が横に張り出していて、骨折で変形したのかと迷いました。
ドクタードクター
そこはDIP関節の変形性関節症、Heberden結節の像だ。関節裂隙が狭くなり、関節縁に骨棘ができて張り出している。中年以降の女性に多く、指の背側に硬いこぶとして触れる。変形はあっても骨皮質の断裂や骨片はないから骨折ではない。
医学生医学生
PIP関節ならBouchard結節でしたね。関節リウマチはDIPを侵しにくい、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
よく整理できている。リウマチはMP・PIP・手関節が好発部位で、エックス線では骨びらんや関節周囲の骨萎縮が主体、骨棘は目立たない。次に、中節骨が基節骨に対して大きくずれている写真はどうかな。
医学生医学生
骨がずれているので骨折だと思いました……違うんですか?
ドクタードクター
そこが落とし穴。ずれているのは骨同士の位置関係、つまり関節の適合性が失われた状態で、これはPIP関節の脱臼だ。骨そのものの連続性は保たれていて、明らかな骨片も見えない。突き指で起こりやすく、中節骨が背側にずれる背側脱臼が多い。
医学生医学生
骨が折れているのか、関節が外れているのか、を分けて考えるわけですね。
ドクタードクター
そう。ただし実臨床では、PIP関節脱臼に中節骨基部掌側の裂離骨折を伴う脱臼骨折もあるので、側面像で小さな骨片がないか必ず確認する。そして残りの2枚のうち、1枚は骨端線が閉じていて骨皮質も関節裂隙も整った成人の正常像。最後の1枚が答えだ。
医学生医学生
中節骨の遠位部に何本も骨折線があって、骨片がずれている写真ですね。骨折線がDIP関節面まで届いているように見えます。
ドクタードクター
正解。DIP関節内に及ぶ中節骨の粉砕骨折で、5枚の中で骨皮質の断裂と骨片を認めるのはこれだけだ。関節内骨折は特に重要で、関節面に段差が残ると可動域制限や、後々の外傷後変形性関節症につながる。
医学生医学生
だから転位があれば、手術してでも関節面をきれいに戻す必要があるんですね。
ドクタードクター
その通り。整復と固定、必要なら内固定で関節面を解剖学的に復元することを目指す。発展として、手指の代表的な外傷も押さえておこう。DIP関節が伸ばせなくなる槌指には、終止腱が切れる腱性と、末節骨基部背側の裂離骨折による骨性がある。第5中手骨頸部骨折はボクサー骨折、第1中手骨基部の脱臼骨折はBennett骨折だ。
医学生医学生
救急外来の実習で突き指の患者さんを見たとき、正面像だけだと異常がわからなくて、側面像で骨片が見つかったことがありました。
ドクタードクター
まさにそれが読影の原則。骨折は必ず正面と側面の2方向で評価する。1方向だけでは骨折線や転位を見落とすことがある。小児なら骨端線を含む骨折は成長障害の原因にもなるから、なおさら慎重にね。

まとめ

骨折の読影では、骨皮質の連続性の途絶、骨片の有無、骨折線の関節面への波及を確認することが基本です。骨折と紛らわしい所見として、小児の骨端線(指節骨では基部にある滑らかで規則的な透亮帯)、変形性関節症(関節裂隙狭小化と骨棘形成、DIP関節ではHeberden結節、PIP関節ではBouchard結節)、脱臼(骨の連続性は保たれ関節の適合性が失われる)を区別する必要があります。本問では中節骨遠位部に複数の骨折線と転位した骨片を認め、DIP関節内に及ぶ粉砕骨折が骨折像でした。関節内骨折は関節面の不整が可動域制限や外傷後変形性関節症を招くため、正面・側面の2方向撮影で評価し、転位があれば整復・固定で関節面を復元します。「黒い線=骨折」と短絡せず、正常変異や他の病態と比較しながら読む姿勢は、救急外来での見落とし防止に直結します。

解答・解説

正解はeです

手指のエックス線写真5枚から、骨折を示すものを選ぶ読影問題である。

骨折の読影のポイント

・骨皮質の連続性が途絶えていないか(骨折線の有無)。 ・骨片が分かれていないか、骨の輪郭に段差や変形がないか。 ・骨折線が関節面に及んでいないか(関節内骨折かどうか)。

骨折と紛らわしい所見

骨折と見誤りやすいものとして、次の3つを区別する必要がある。 ・小児の骨端線(成長軟骨板):関節の近くに横走する透亮帯で、骨折線と紛らわしい。指節骨では骨端核は各指節骨の基部(近位端)にあるため、透亮帯は近位端に、関節面とほぼ平行な滑らかな帯としてみられる。 ・変形性関節症:関節裂隙の狭小化、骨棘形成、軟骨下骨の硬化など、関節周囲の変形が中心で、骨皮質の断裂はない。 ・脱臼:関節を構成する骨同士の位置関係(適合性)が失われるが、骨自体の連続性は保たれる。 これらの観点で5枚を順に読むと、①はDIP関節(遠位指節間関節)の変形性関節症、②は成人の正常像、③は骨端線が開いている小児の正常像、④はPIP関節(近位指節間関節)の脱臼であり、骨皮質の断裂と骨片を認めるのは⑤のみである。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    DIP関節の関節裂隙が狭小化し、関節縁に骨棘が形成されて関節部が横に張り出すように変形している。DIP関節に生じる変形性関節症(Heberden結節)の像である。中年以降の女性に多く、臨床的には指の背側の結節状の腫れとして触れる。骨皮質の断裂や骨片はなく、骨折ではない。

  2. ×b.  ②

    基節骨・中節骨・末節骨の骨皮質はいずれも連続しており、PIP関節・DIP関節の関節裂隙も均一に保たれている。骨端線は閉鎖しており、成人の正常な手指の像である。

  3. ×c.  ③

    各指節骨の近位端(基部)に、関節面と平行に走る帯状の透亮像がみられる。これは骨端線(成長軟骨板)であり、成長期の小児の正常像である。骨端線は位置(指節骨の基部)、形(滑らかで規則的)、左右対称性から骨折線と区別でき、迷う場合は健側との比較撮影が役立つ。骨皮質の断裂はなく、骨折ではない。

  4. ×d.  ④

    PIP関節で基節骨頭と中節骨基部の位置関係が失われ、中節骨が基節骨に対して大きくずれている。関節の適合性が失われた脱臼の像である。突き指などで生じ、PIP関節では中節骨が背側へ脱臼する背側脱臼が多い。写真上では明らかな骨片や骨折線は認めず、骨折は合併していないと考えられる。なお、PIP関節の脱臼では中節骨基部掌側の裂離骨折(脱臼骨折)を伴うことがあるため、実臨床では側面像で骨片の有無を慎重に確認する。

  5. ○e.  ⑤

    中節骨の遠位部(骨頭部)に複数の骨折線と骨片を認め、骨片は転位しており、骨折線はDIP関節面に及んでいる。DIP関節内に及ぶ中節骨の粉砕骨折であり、5枚の中で骨折を認めるのは本像である。関節内骨折は関節面の不整が残ると可動域制限や外傷後の変形性関節症をきたしやすいため、転位がある場合は整復と固定(必要に応じて手術による内固定)を行い、関節面をできるだけ解剖学的に復元することが求められる。

手指の骨と関節

・母指以外の指:基節骨・中節骨・末節骨の3つの指節骨からなり、中手骨と基節骨の間がMP関節(中手指節関節)、基節骨と中節骨の間がPIP関節、中節骨と末節骨の間がDIP関節である。 ・母指:中節骨がなく、基節骨と末節骨の間はIP関節(指節間関節)と呼ぶ。

手指の変形性関節症

・Heberden結節:DIP関節の変形性関節症。 ・Bouchard結節:PIP関節の変形性関節症。 ・関節リウマチとの違い:関節リウマチはMP関節・PIP関節・手関節が好発部位で、DIP関節は侵されにくい。エックス線では骨びらんや関節周囲の骨萎縮が主体で、骨棘形成は目立たない。

小児の骨端線

指節骨の骨端核は基部(近位端)に、母指以外の中手骨の骨端核は遠位端(骨頭側)にある。骨端線は思春期以降に閉鎖する。骨端線を含む骨折(Salter-Harris分類で分類される骨端線損傷)は成長障害の原因となりうるため、小児の外傷では骨端線と骨折線の区別が重要である。

代表的な手指の骨折・外傷

・槌指(マレットフィンガー):DIP関節の伸展ができなくなる。終止腱(伸筋腱の末節骨付着部)の断裂による腱性と、末節骨基部背側の裂離骨折による骨性がある。 ・PIP関節脱臼・脱臼骨折:突き指で多く、中節骨基部掌側の骨片を伴うことがある。 ・ボクサー骨折:第5中手骨頸部骨折。 ・Bennett骨折:第1中手骨基部の脱臼骨折。

読影の原則

骨折の評価は正面像と側面像の2方向で行う。1方向だけでは骨折線や転位を見落とすことがある。

POINT

・骨折の読影では、骨皮質の連続性の途絶、骨片、関節面への骨折線の波及を確認する。 ・骨折と区別すべきもの:小児の骨端線(指節骨では基部にある規則的な透亮帯)、変形性関節症(関節裂隙狭小化・骨棘形成)、脱臼(骨の連続性は保たれ、関節の適合性が失われる)。 ・DIP関節の変形性関節症はHeberden結節、PIP関節はBouchard結節。 ・関節内骨折は関節面の整復が重要であり、正面・側面の2方向撮影で評価する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。