StudyMed医師国家試験

メタボ健診の「その後」―特定保健指導は誰が、誰に、どう行うのか

第118回医師国家試験 F問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第30問

特定保健指導で正しいのはどれか。

  1. a.事業主が実施する。
  2. b.20歳以上を対象とする。
  3. c.健康増進法で規定されている。
  4. d.リスクファクターの数に応じて対象者を抽出する。
  5. e.ポピュレーションストラテジーに基づいて対策する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、特定健診のあとに行われる特定保健指導の制度を問う問題だ。押さえるべきは「根拠法」「実施主体」「対象年齢」「対象者の選び方」、そして「予防戦略としての位置づけ」の5点。似た制度と混同しやすいので、一つずつ整理していこう。
医学生医学生
いわゆるメタボ健診のことですよね。会社の健康診断とは別物なんでしょうか。
ドクタードクター
そこが最初のポイントだね。会社が行う定期健康診断は労働安全衛生法に基づき、事業者が実施する。一方、特定健診と特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律、いわゆる高齢者医療確保法に基づいていて、実施義務を負うのは医療保険者なんだ。
医学生医学生
保険者というと、健康保険組合や協会けんぽ、市町村の国民健康保険ですか。
ドクタードクター
その通り。だから「事業主が実施する」は誤り。会社員の場合、事業主健診の結果を保険者が受け取って特定健診の結果として活用することはできるけれど、保健指導そのものの主体は保険者だ。実際には医療機関や保健指導機関に委託することも多いよ。
医学生医学生
根拠法は健康増進法だと思い込んでいました。公衆衛生の講義で「健康づくりは健康増進法」と習ったので……。
ドクタードクター
よくある混同だね。健康増進法は、国民健康・栄養調査、受動喫煙防止、市町村のがん検診などの健康増進事業、「健康日本21」の根拠になる法律だ。特定健診は医療費適正化の流れで作られた制度だから、医療保険と高齢者医療をつかさどる高齢者医療確保法に入っている、と理由づけて覚えると忘れにくい。
医学生医学生
対象は20歳以上ではなく、40歳から74歳でしたよね。
ドクタードクター
正解。生活習慣病が増え始める40歳からで、75歳以上は後期高齢者医療制度に移って広域連合の健診の対象になる。それから、65〜74歳は基準上は積極的支援に該当しても動機付け支援として扱う、というルールもある。
医学生医学生
では正解は、リスクファクターの数に応じて対象者を抽出する、ですね。
ドクタードクター
そう。ここが制度の核心だ。まず腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上、またはBMI 25以上という内臓脂肪蓄積の基準に該当することが前提。そのうえで血圧・脂質・血糖の異常、そして喫煙歴という追加リスクがいくつあるかを数えて、「情報提供のみ」「動機付け支援」「積極的支援」に階層化する。
医学生医学生
腹囲が基準以上で追加リスクが2つ以上なら積極的支援、1つなら動機付け支援、という感じでしょうか。
ドクタードクター
その理解でいい。BMIだけが該当する場合は、3つ以上で積極的支援、1〜2つで動機付け支援と少し基準が厳しくなる。喫煙歴は、血圧・脂質・血糖のどれかに該当したときだけカウントする点も注意だね。それから、高血圧や糖尿病、脂質異常症で既に服薬中の人は医療機関で管理されているから、特定保健指導の対象外になる。
医学生医学生
最後のポピュレーションストラテジーは、リスクの高い人を選び出しているので当てはまらない気がします。
ドクタードクター
鋭いね。健診で危険因子を持つ人を拾い上げて個別に介入するのはハイリスクストラテジーだ。ポピュレーションストラテジーは、減塩の普及啓発や受動喫煙対策のように集団全体に働きかけて、リスクの分布そのものを良い方向にずらす方法。特定保健指導は前者の典型例だよ。
医学生医学生
地域医療の実習で保健センターを見学したとき、保健師さんが面談で行動目標を一緒に立てていたのを思い出しました。あれが動機付け支援だったんですね。
ドクタードクター
きっとそうだね。動機付け支援は原則1回の面接で行動計画を立て、3か月以上たってから評価する。積極的支援はそれに加えて3か月以上の継続的な支援を行う。2024年度からの第4期では、腹囲2cm・体重2kg減といったアウトカム評価も取り入れられた。臨床医として健診結果を見るときも、受診勧奨が必要なのか保健指導で対応できるのかを意識しておくと、患者さんへの説明がぐっと的確になるよ。

まとめ

特定健康診査・特定保健指導は、メタボリックシンドロームに着目して生活習慣病を予防する制度で、根拠法は高齢者医療確保法、実施主体は医療保険者、対象は40〜74歳の被保険者・被扶養者です。腹囲またはBMIによる内臓脂肪蓄積の判定を前提に、血圧・脂質・血糖・喫煙歴という追加リスクの数で動機付け支援と積極的支援に振り分けるため、「リスクファクターの数に応じて対象者を抽出する」が正しい記述です。事業者が行う一般健康診断は労働安全衛生法、がん検診や国民健康・栄養調査は健康増進法に基づくので、法律と実施主体をセットで区別することが重要です。また、リスクの高い人を選んで個別に介入する特定保健指導はハイリスクストラテジーの代表例であり、集団全体に働きかけるポピュレーションストラテジーとの対比も頻出です。制度の仕組みを理解しておくことは、健診結果を踏まえた患者指導や予防医療の実践にも直結します。

解答・解説

正解はdです

テーマ

特定健康診査(特定健診)と特定保健指導は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目して生活習慣病を予防する目的で、2008年度から始まった制度である。根拠法は「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」であり、実施が義務付けられているのは医療保険者(市町村国民健康保険、健康保険組合、協会けんぽ、共済組合など)である。対象は40~74歳の被保険者・被扶養者である。

対象者の選び方

特定健診の結果から、まず内臓脂肪蓄積(腹囲またはBMI)の基準該当を必須条件とし、そのうえで血圧・脂質・血糖の異常と喫煙歴という追加リスクの数を数えて、「動機付け支援」と「積極的支援」に階層化する。つまり、リスクファクターの数に応じて対象者を抽出・振り分ける仕組みであり、d が正しい。

予防戦略の位置づけ

健診で危険因子を持つ人を拾い上げ、その人に個別に介入する方法はハイリスクストラテジーに当たる。集団全体のリスク分布を下げるポピュレーションストラテジーとは区別して理解する。

選択肢考察

  1. ×a.  事業主が実施する。

    誤り。特定健診・特定保健指導の実施義務を負うのは医療保険者である。事業主が実施するのは労働安全衛生法に基づく一般健康診断(定期健康診断など)である。被用者の場合、事業主健診の結果を保険者が受け取り、特定健診の結果として活用することはできるが、特定保健指導そのものの実施主体は保険者である(保険者は医療機関や保健指導機関に委託してよい)。

  2. ×b.  20歳以上を対象とする。

    誤り。対象は40~74歳の医療保険加入者(被保険者・被扶養者)である。75歳以上は後期高齢者医療制度に移行し、後期高齢者医療広域連合による健康診査(努力義務)の対象となり、特定保健指導の対象外である。なお65~74歳では、基準上は積極的支援に該当しても動機付け支援として扱われる。

  3. ×c.  健康増進法で規定されている。

    誤り。特定健診・特定保健指導は高齢者医療確保法に規定されている。健康増進法は国民健康・栄養調査、受動喫煙防止、市町村による健康増進事業(がん検診、骨粗鬆症検診、歯周疾患検診、肝炎ウイルス検診など)、「健康日本21」の根拠となる法律であり、混同しやすいので区別する。

  4. ○d.  リスクファクターの数に応じて対象者を抽出する。

    正しい。腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)またはBMI 25以上に該当する者について、血圧高値・脂質異常・血糖高値・喫煙歴の追加リスクがいくつあるかで、保健指導の要否と支援レベル(情報提供のみ、動機付け支援、積極的支援)が決まる。腹囲該当では追加リスク1個で動機付け支援、2個以上で積極的支援、腹囲は非該当でBMIが該当する場合は1~2個で動機付け支援、3個以上で積極的支援となる。

  5. ×e.  ポピュレーションストラテジーに基づいて対策する。

    誤り。特定保健指導は、健診で生活習慣病のリスクが高いと判定された人を選び出して個別に支援するハイリスクストラテジー(ハイリスクアプローチ)に基づく。ポピュレーションストラテジーは、減塩の普及啓発や受動喫煙対策のように、集団全体に働きかけてリスク分布全体を良い方向へずらす方法である。

階層化の手順

ステップ1:内臓脂肪蓄積の判定 腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上、または腹囲は基準未満でもBMI 25以上 ステップ2:追加リスクの数を数える ・血圧:収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上 ・脂質:中性脂肪150mg/dL以上(随時採血の場合は175mg/dL以上)またはHDLコレステロール40mg/dL未満 ・血糖:空腹時血糖100mg/dL以上またはHbA1c 5.6%以上(空腹時血糖・HbA1cがない場合は随時血糖100mg/dL以上) ・喫煙歴:上記の血圧・脂質・血糖のいずれかに該当する場合にのみ追加リスクとして数える ステップ3:支援レベルの決定 ・腹囲該当:追加リスク2個以上→積極的支援、1個→動機付け支援 ・BMIのみ該当:追加リスク3個以上→積極的支援、1~2個→動機付け支援 ・65~74歳は積極的支援該当でも動機付け支援とする ・高血圧・糖尿病・脂質異常症で服薬中の者は、医療機関で管理されているため特定保健指導の対象外

支援の内容

動機付け支援:原則1回の面接で行動計画を立て、3か月以上経過後に実績を評価する。 積極的支援:面接に加え、3か月以上の継続的な支援を行う。第4期(2024年度~)からは腹囲2cm・体重2kg減少などのアウトカム評価が導入された。

関連法規の整理

高齢者医療確保法:特定健診・特定保健指導(40~74歳、保険者が実施)、後期高齢者の健診 労働安全衛生法:事業者による一般健康診断・特殊健康診断 健康増進法:がん検診などの健康増進事業、国民健康・栄養調査、受動喫煙防止

POINT

・特定健診・特定保健指導の根拠法は高齢者医療確保法、実施主体は医療保険者。 ・対象は40~74歳の被保険者・被扶養者。 ・腹囲またはBMIの該当を必須とし、追加リスク(血圧・脂質・血糖・喫煙)の数で動機付け支援/積極的支援に振り分ける。 ・65~74歳は積極的支援該当でも動機付け支援。服薬中の者は対象外。 ・リスクの高い者を選んで介入するハイリスクストラテジーである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。